住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末のローン残高の0.7%を所得税・住民税から控除できる制度です。令和8年度税制改正で5年延長され、令和8年1月から令和12年12月までに入居した場合が対象になりました。最大のポイントは、子育て世帯・若者夫婦世帯への借入限度額の上乗せが維持され、床面積要件が40㎡以上に緩和される一方、省エネ基準への適合が事実上の必須要件になった点です。この記事では、令和8年入居からの借入限度額、子育て世帯の優遇、床面積・所得要件、省エネ要件の落とし穴まで、計算例つきで整理します。
この記事のポイント
- 5年延長され、令和8年1月〜令和12年12月入居が対象。控除率0.7%・控除期間は原則13年
- 子育て世帯(19歳未満の扶養親族あり)・若者夫婦世帯(夫婦いずれか40歳未満)に借入限度額の上乗せ
- 新築の借入限度額は認定長期優良で子育て世帯等5,000万円・一般4,500万円など住宅種類で変動
- 既存(中古)住宅も省エネ性能があれば控除期間13年に拡充、子育て世帯等は上乗せ
- 床面積要件が40㎡以上に緩和。ただし所得1,000万円超・上乗せ利用者は50㎡以上
- 省エネ基準非適合の新築は原則対象外。令和10年以降は要件がさらに厳格化
目次
住宅ローン控除とは(令和8年改正の全体像)
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを取得した人の税負担を軽減する制度です。年末のローン残高に控除率0.7%を乗じた金額を、所得税(引ききれない分は住民税の一部)から控除します。令和8年度税制改正で、入居期限が令和8年1月1日から令和12年12月31日まで5年延長されました。
基本の要件
返済期間10年以上のローンであること、合計所得金額が2,000万円以下であること、床面積が原則40㎡以上(後述の例外あり)で2分の1以上が居住用であること、原則として省エネ基準に適合していること、が主な要件です。控除期間は新築・買取再販が原則13年、既存(中古)は原則10年(省エネ性能のある既存住宅は13年)です。
子育て世帯・若者夫婦世帯の定義
令和8年改正の中心は、子育て世帯等への借入限度額の上乗せ措置の継続です。少子化対策として、良質で広い住宅を取得しやすくする狙いがあります。定義は次のとおりです。
| 区分 | 定義 |
|---|---|
| 子育て世帯 | 19歳未満の扶養親族(子ども)がいる世帯(年齢はその年12月31日時点で判定) |
| 若者夫婦世帯 | 夫婦のいずれかが40歳未満の世帯 |
ヒント:子育て世帯と若者夫婦世帯の両方に該当しても、上乗せは1回のみです。二重には増えません。上乗せ措置は令和8年から令和12年入居まで継続されます。子どもがいなくても、夫婦どちらかが40歳未満なら若者夫婦世帯として上乗せ対象になる点は見落とされがちです。
新築の借入限度額(住宅種類別)
借入限度額は、住宅の省エネ性能と世帯属性で決まります。控除額は「年末ローン残高(借入限度額が上限)× 0.7%」で計算するため、借入限度額が大きいほど控除も大きくなります。令和8年〜令和12年入居の新築は次のとおりです。
| 住宅の種類 | 子育て世帯等 | 一般世帯 |
|---|---|---|
| 認定長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,000万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,500万円 | 3,000万円 |
| その他の住宅(省エネ基準非適合) | 原則対象外 | |
ZEH水準住宅では、子育て世帯等(4,500万円)と一般世帯(3,000万円)で1,500万円もの差がつきます。子育て世帯等にとって、省エネ性能の高い住宅を選ぶメリットが特に大きい設計です。なお、省エネ基準に適合しない「その他の住宅」は、新築では原則として控除の対象外です(一部の経過措置を除く)。
既存(中古)住宅の借入限度額
令和8年改正では、既存(中古)住宅への支援が拡充されました。省エネ性能のある既存住宅は控除期間が10年から13年に延長され、子育て世帯等への上乗せも適用されます。
| 住宅の種類 | 子育て世帯等 | 一般世帯 |
|---|---|---|
| 認定住宅・ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 2,000万円 |
控除期間はいずれも13年です。中古でも省エネ性能を備えた住宅であれば、新築に近い優遇を受けられるようになりました。中古住宅の場合は、住宅省エネルギー性能証明書や建設住宅性能評価書などで省エネ性能を証明できるかが鍵になります。築年数より省エネ性能の証明がポイントです。
床面積40㎡緩和と所得要件の落とし穴
床面積要件が、新築・既存とも原則40㎡以上に緩和されました(従来は原則50㎡以上)。コンパクトな住宅も対象になり、都心の単身・少人数世帯にも使いやすくなっています。ただし例外があります。
40㎡台は所得・上乗せ利用で要件が変わる
床面積40㎡以上50㎡未満の住宅は、合計所得金額が1,000万円以下の年でなければ控除を受けられません。さらに、子育て世帯等への上乗せ措置を利用する場合は、床面積50㎡以上が必要です。つまり、40㎡台の住宅で子育て世帯の上乗せ(5,000万円等)を使うことはできません。40㎡台で上乗せを受けようとして要件を満たさない、という取り違えに注意が必要です。
所得要件は、全体として合計所得金額2,000万円以下です。40㎡台の住宅はこれに加えて「その年の合計所得1,000万円以下」が必要で、所得が1,000万円を超えた年はその年分の控除が受けられません。
省エネ要件の必須化と令和10年以降の注意
- 新築は省エネ基準適合が原則必須:令和6年以降に建築確認を受けた新築は、省エネ基準に適合しない住宅(その他の住宅)は原則として控除の対象外です。2025年4月以降、新築住宅は省エネ基準への適合が義務化されています。
- 令和10年以降の建築確認はZEH水準以上:令和10年(2028年)以降に建築確認を受ける新築は、ZEH水準以上の省エネ性能が住宅ローン控除の必須条件になります。省エネ基準適合にとどまる住宅は対象外となるため、建築確認の時期に注意が必要です。
- 災害レッドゾーンの制限:令和10年以降に入居する、土砂災害特別警戒区域などの災害レッドゾーン内の新築住宅は原則対象外です(建替え・既存・リフォームは対象)。
ヒント:住宅取得で親や祖父母から資金援助を受ける場合は、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置(省エネ等住宅1,000万円・その他500万円、現行は令和8年12月31日までの贈与が対象)(暦年贈与と相続時精算課税との関係も要確認)も併せて確認しましょう。住宅ローン控除とは適用期限も省エネの判定基準も異なるため、贈与の時期・金額・入居時期・必要書類をセットで整理しておくと安心です。
控除額の計算と住民税からの控除
計算例:認定長期優良住宅・子育て世帯(借入限度額5,000万円)
年末ローン残高が5,000万円以上の年:5,000万円 × 0.7% = 年35万円が控除
13年間の控除総額の目安:残高の逓減を考慮して最大約455万円
控除は毎年の年末残高で再計算します。残高が借入限度額を下回る年は、その残高に0.7%を乗じた額が控除額です。控除額がその年の所得税額を上回って引ききれない場合は、課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)を限度に住民税から控除されます。所得税が少ない年でも、一定額までは住民税で取り戻せる仕組みです。
確定申告と年末調整
- 1年目は確定申告が必須:入居した翌年の2月〜3月に確定申告を行います。住宅ローンの年末残高証明書、登記事項証明書、売買契約書の写し、省エネ性能を証明する書類(省エネ性能証明書等)などを添付します。
- 2年目以降は年末調整で完結:給与所得者は、税務署から送られる控除証明書と金融機関の年末残高証明書を勤務先に提出すれば、年末調整で控除を受けられます。確定申告は不要です。
- 必要書類の準備:特に省エネ性能の証明書類は、入居後すぐに取得できないことがあります。住宅会社・不動産会社に早めに依頼しておくことが、1年目の申告をスムーズにするコツです。
想定Q&A
Q1. 子どもがいませんが、夫が38歳です。上乗せは受けられますか
受けられます。夫婦のいずれかが40歳未満なら「若者夫婦世帯」に該当し、子どもの有無にかかわらず借入限度額の上乗せ対象です。子育て世帯と若者夫婦世帯のどちらかに当てはまれば上乗せされます。
Q2. 45㎡のマンションを買う子育て世帯です。5,000万円の上乗せを使えますか
使えません。子育て世帯等への上乗せ措置を利用する場合は床面積50㎡以上が必要です。45㎡では上乗せは受けられず、また40㎡台は合計所得1,000万円以下の年に限り通常の控除が受けられる扱いです。上乗せを使いたい場合は50㎡以上の住宅を選ぶ必要があります。
Q3. 省エネ基準に適合しない新築は、まったく控除を受けられませんか
令和6年以降に建築確認を受けた省エネ基準非適合の新築(その他の住宅)は、原則として控除の対象外です。ただし、令和5年末までに建築確認を受けたものなど一部の経過措置に該当する場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年で受けられることがあります。建築確認の日付の確認が重要です。
Q4. 中古住宅でも13年間の控除を受けられますか
省エネ性能のある既存住宅(認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合)なら、控除期間が13年に延長されます。子育て世帯等なら借入限度額の上乗せもあり、認定住宅・ZEH水準で4,500万円まで対象です。省エネ性能を証明する書類を用意できるかがポイントです。
Q5. 子どもが19歳になったら上乗せは打ち切られますか
子育て世帯等の判定は、原則として入居した年(措置を適用する基準となる年)の状況で行われます。一度上乗せされた借入限度額に基づく控除は、その後子どもが19歳以上になっても、当初の借入限度額をベースに継続されます。毎年判定し直して打ち切られるものではありません。
Q6. 親から住宅資金の援助を受けます。住宅ローン控除と両方使えますか
併用できます。住宅取得等資金の贈与税の非課税措置(省エネ等住宅1,000万円・その他500万円、現行は令和8年12月31日までの贈与)と住宅ローン控除は別制度です。ただし、贈与で取得した部分は住宅ローン控除の対象となる借入金に含まれないため、自己資金・贈与・ローンの内訳を整理して、控除対象となる借入額を正しく把握しておく必要があります。
適用の判断フロー
| 手順 | 判断内容 |
|---|---|
| 1 | 令和8年1月〜令和12年12月に入居予定か。合計所得2,000万円以下か |
| 2 | 住宅の省エネ性能を確認(認定長期優良・ZEH水準・省エネ基準適合のどれか)。新築は適合が原則必須 |
| 3 | 子育て世帯(19歳未満の扶養親族)・若者夫婦世帯(夫婦いずれか40歳未満)に該当するか |
| 4 | 床面積を確認。40㎡台は所得1,000万円以下の年のみ・上乗せ利用は50㎡以上が必要 |
| 5 | 住宅種類と世帯属性から借入限度額を確定し、年末残高×0.7%で控除額を試算 |
| 6 | 1年目は確定申告(省エネ証明書等を添付)、2年目以降は年末調整で控除 |
まとめ
- 令和8年改正で5年延長(令和8年1月〜令和12年12月入居)。控除率0.7%・原則13年。
- 子育て世帯(19歳未満の扶養)・若者夫婦世帯(40歳いずれか未満)に借入限度額の上乗せ。両方該当でも上乗せは1回。
- 新築は認定長期優良で子育て世帯等5,000万円等。省エネ非適合の新築は原則対象外。
- 既存住宅も省エネ性能があれば控除期間13年・子育て世帯等の上乗せ対象に。
- 床面積40㎡に緩和。ただし40㎡台は所得1,000万円以下の年のみ、上乗せ利用は50㎡以上。
- 1年目は確定申告、2年目以降は年末調整。住宅資金贈与の非課税措置も併せて確認。
出典・参考
※本記事は令和8年6月時点の法令・公表資料(租税特別措置法、国土交通省の住宅ローン減税ページ・報道発表、令和8年度税制改正大綱等)に基づく一般的な解説です。借入限度額・要件・経過措置は住宅の種類や建築確認の時期により細かく異なり、計算例は概算です。適用にあたっては最新の国土交通省・国税庁資料の確認、税務署や税理士への相談をおすすめします。


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