役員貸付金・役員借入金の税務|認定利息の計算と税務リスクを解説

所得税

中小企業では、会社と社長(役員)の間でお金を貸し借りすることがよくあります。会社が役員にお金を貸す「役員貸付金」、役員が会社にお金を貸す「役員借入金」です。どちらも身内同士のやりとりに見えますが、税務上は無視できない論点が潜んでいます。とくに役員貸付金で利息を取らないと、認定利息として課税されたり、税務調査で必ずといってよいほどチェックされたりします。

この記事では、役員貸付金・役員借入金の税務上の取扱いについて、国税庁No.2606や通達をもとに、認定利息の計算方法、給与課税されない例外、役員借入金の注意点(債務免除益・相続財産)まで解説します。

この記事のポイント
  • 役員貸付金は適正な利息を取らないと認定利息が課税される
  • 利率は会社の借入転貸ならその利率、それ以外は国税庁が定める利率(貸付年で判定)
  • 一定の例外(合理的理由・平均調達金利・差額年5,000円以下)では給与課税されない
  • 役員借入金は利息を取らなくても会社・役員とも原則課税なし
  • 役員借入金の安易な債務免除は債務免除益課税、放置すれば相続財産になる

役員貸付金と役員借入金の違い

まず両者を整理します。お金の流れの向きが逆なだけですが、税務上の扱いは大きく異なります。

区分 お金の流れ 主な税務論点
役員貸付金 会社から役員へ 認定利息・給与課税
役員借入金 役員から会社へ 債務免除益・相続財産

会社は営利を目的とする存在のため、役員にお金を貸すなら利息を取るのが原則です。一方、役員が会社に貸す場合は、利息を取らなくても基本的に課税の問題は生じません。この非対称性が、両者の税務の出発点になります。

役員貸付金の認定利息

会社が役員に無利息または低い利息でお金を貸した場合、本来受け取るべき利息(適正利息)と実際に受け取った利息との差額が、役員への給与(経済的利益)として課税されます。これがいわゆる認定利息の問題です。会社側では受取利息の計上もれ、役員側では給与課税という二重の論点が生じます。

適正利率の決め方

適正利率は、所得税基本通達36-49により次のように決まります。

ケース 適正利率
会社が他から借りて貸したことが明らかな場合 その借入金の利率
その他の場合 貸付けを行った年の利子税特例基準割合による利率

後者の利率は、国税庁タックスアンサーNo.2606で年ごとに示されています。たとえば令和4年から令和7年中に貸付けを行ったものは年0.9%です。利率は貸付けを行った年で判定し、その後の市場金利によって毎年見直されるため、適用する際は最新のNo.2606で当年の利率を確認してください。

認定利息は単利で計算します。発生した利息を元本に組み入れて、その利息にさらに利息を付ける(複利計算する)ことは、原則として行いません。これは古い通達で明らかにされている取扱いです。

給与課税されない3つの例外

無利息・低利で貸し付けても、次のいずれかに当たる場合は、差額について給与課税しなくてよいとされています(国税庁No.2606)。

例外
災害・病気などで臨時に多額の生活資金が必要となり、合理的な金額・返済期間で貸し付ける場合
会社の借入金の平均調達金利など、合理的と認められる利率で貸し付ける場合
上記以外で、適正利息と実際の利息の差額が1年間で5,000円以下である場合

少額(差額が年5,000円以下)であれば課税されない点は、小規模な貸付けでは実務上よく使われます。とはいえ、貸付額が大きくなれば差額も5,000円を超えるため、原則は適正利息を徴収しておくのが安全です。

役員貸付金が税務調査で狙われる理由

役員貸付金は、税務調査で必ずといってよいほど確認される項目です。理由は、利息計上もれ(認定利息)が生じやすいことと、実態が貸付けではなく役員給与や経費の付け替えではないかと疑われやすいことにあります。使途が不明な資金が役員貸付金として計上されていると、その性質を問われます。

また、役員貸付金は金融機関からの評価でもマイナスに働きます。決算書に多額の役員貸付金があると、会社の資金が社長個人に流れていると見られ、融資審査で不利になることがあります。税務・財務の両面で、できるだけ計上を避け、あれば計画的に解消することが望ましい資産です。

役員貸付金を会社が安易に債務免除すると、免除した金額が役員への給与とされ、役員に給与課税(会社は源泉徴収義務)が生じます。さらに定期同額給与等にも当たらないため、会社側で損金不算入になることもあります。「貸したことにしていたお金をなかったことにする」処理は、思わぬ課税を招きます。

役員借入金の取扱い

役員借入金は、役員が会社に資金を貸している状態です。資金繰りの厳しい中小企業で、社長が会社にお金を入れているケースは珍しくありません。会社が役員に利息を支払わなくても、原則として会社・役員のいずれにも課税の問題は生じません。役員側は利益を得ていないため給与課税もありません。

なお、会社が役員に利息を支払う場合、その利息は会社の損金になりますが、役員側では雑所得などとして所得税の対象になります。利息を払うかどうかは任意ですが、払うなら金銭消費貸借契約で利率・返済条件を定めておきましょう。

放置すると相続財産になる

役員借入金で見落とされがちなのが、相続の問題です。役員借入金は、役員(社長)からみれば会社に対する貸付金(債権)です。社長が亡くなると、この貸付金は相続財産として相続税の課税対象になります。会社の財務状況が悪く、実際には回収できそうにない貸付金でも、額面で相続財産に計上され、相続税がかかってしまうことがあります。

解消方法と債務免除の注意点

役員借入金を減らす方法として、役員が会社への債権を放棄する(会社からみれば債務免除を受ける)方法があります。ただし、会社が債務免除を受けると、その金額は債務免除益として会社の益金になり、法人税の課税対象になります。繰越欠損金がある範囲なら税負担を抑えられますが、無計画に免除すると課税が生じます。また、他に株主がいる場合は、株式の価値が上がることで他の株主への贈与とみなされる論点もあります。役員借入金の整理は、相続対策と法人税・贈与税の両面から、計画的に進める必要があります。

実務上のポイント

会社と役員の金銭の貸し借りは、身内同士でもきちんと契約書を残すことが大切です。金銭消費貸借契約書で貸付額・利率・返済期間・返済方法を定めておけば、税務調査でも貸付けの事実を説明できます。役員貸付金は適正利息を毎期計上し、計画的に返済して残高を減らしていくこと、役員借入金は将来の相続・債務免除益も見据えて整理方針を考えておくことが、トラブルを避けるポイントです。

まとめ

役員貸付金は、適正な利息を取らないと認定利息が課税され、税務調査でも重点的に見られます。利率は貸付年に応じた国税庁の利率(令和4〜7年は0.9%)か会社の借入利率を用い、最新の数値はNo.2606で確認します。役員借入金は利息なしでも基本的に課税はありませんが、相続財産になる点と、安易な債務免除による債務免除益課税に注意が必要です。いずれも契約書を整え、計画的に管理・解消することが大切です。

この記事のまとめ
  • 役員貸付金は適正利息が必要。差額は認定利息として給与課税
  • 利率は借入転貸ならその利率、他は貸付年の利率(令和4〜7年0.9%、最新はNo.2606で確認)
  • 合理的理由・平均調達金利・差額年5,000円以下なら給与課税なし。認定利息は単利
  • 役員貸付金の安易な債務免除は給与課税。融資審査でも不利
  • 役員借入金は課税は原則なしだが、相続財産化と債務免除益に注意

※本記事は作成時点の法令・通達・公表資料(国税庁タックスアンサーNo.2606、所得税基本通達36-49、租税特別措置法93条等)に基づいています。利率は毎年改定されるため最新の公表値をご確認ください。個別の取扱いは事実関係により異なる場合があるため、具体的な判断は税理士へのご相談をおすすめします。

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