中小法人と中小企業者の違い|定義・要件・適用される特例を徹底解説

法人税

この記事のポイント
  • 「中小法人」は法人税法、「中小企業者」は租税特別措置法の用語で、根拠となる法律が異なります。
  • 資本金1億円以下という入口は共通ですが、除外の考え方が「完全支配関係(100%保有)」か「株式保有割合(2分の1・3分の2)」かで決定的に違います。
  • そのため、資本金1億円超5億円未満の親会社に100%支配される子会社は、中小法人には該当するのに中小企業者には該当しないという逆転が起きます。
  • 軽減税率・交際費の定額控除・貸倒引当金・繰越欠損金の全額控除は中小法人、投資促進税制・賃上げ促進税制・少額減価償却資産の特例は中小企業者が判定基準です。
  • いずれの基準でも、前3事業年度の平均所得が15億円を超える「適用除外事業者」は、多くの優遇から外れます。

税法には、一般的な語感の「中小企業」に対応する定義が一つだけあるわけではありません。法人税法が定める中小法人と、租税特別措置法が定める中小企業者という似て非なる二つの概念が併存しており、両者を同じものと考えると、使えない特例を適用したり、使えるはずの特例を取りこぼしたりする誤りに直結します。

定義が分かれるのは、中小企業への配慮を性質の異なる二系統で講じているからです。中小法人は担税力の乏しい法人に本則的な軽減を認める法人税法本体の措置、中小企業者は投資や賃上げなど特定の政策目的のために期間を区切って設ける租税特別措置法の政策税制であり、目的が違えば優遇の線引きも異なります。本記事では、両者の定義と「大法人」「大規模法人」の違い、判定が逆転する類型、令和7年度改正の軽減税率、そして双方に共通する適用除外事業者までを整理します。

  1. 中小法人とは(法人税法上の定義)
    1. 定義の骨格は「資本金1億円以下、ただし大法人の100%子会社を除く」
    2. キーワードとなる「大法人」とは
    3. 中小法人が対象となる主な特例
  2. 中小企業者とは(租税特別措置法上の定義)
    1. 定義の骨格は「資本金1億円以下、ただし大規模法人の持分割合で除く」
    2. キーワードとなる「大規模法人」とは
    3. 中小企業者(等)が対象となる主な特例
  3. 中小法人と中小企業者の違いを一覧で整理
  4. 見落としやすい「適用除外事業者」
  5. 令和7年度改正で見直された中小法人の軽減税率
  6. 類型別の当てはめ(具体例で判定)
  7. 判定の手順(判断フロー)
  8. 判定を裏づける立証と手続
  9. 実務でありがちな落とし穴
  10. 想定問答
    1. 問1 中小法人と中小企業者はどちらが範囲が広いのですか
    2. 問2 資本金がちょうど1億円の会社はどちらに該当しますか
    3. 問3 資本金3億円の親会社に100%保有される子会社はどうなりますか
    4. 問4 大法人と大規模法人は何が違うのですか
    5. 問5 軽減税率はどちらの基準で判定しますか
    6. 問6 交際費の800万円の定額控除はどちらの基準ですか
    7. 問7 少額減価償却資産の特例はどちらの基準ですか
    8. 問8 適用除外事業者になると何が使えなくなりますか
    9. 問9 資本金を1億円以下に減資すれば中小向けの優遇は使えますか
    10. 問10 個人事業主にも中小企業者の概念は関係しますか
    11. 問11 通算法人でも軽減税率は使えますか
    12. 問12 税法上の中小企業者と、中小企業基本法の中小企業者は同じですか
    13. 問13 従業員数は中小法人の判定に影響しますか

中小法人とは(法人税法上の定義)

中小法人は、法人税法が軽減税率や貸倒引当金などの本則的な優遇を適用する対象を画するために用いる概念です。軽減税率について定める法人税法66条や、欠損金の繰越控除の控除限度額について定める法人税法57条11項などに、その範囲が規定されています。

定義の骨格は「資本金1億円以下、ただし大法人の100%子会社を除く」

中小法人とは、普通法人のうち、各事業年度終了の時における資本金の額または出資金の額が1億円以下であるもの、および資本または出資を有しないもの(相互会社などを除く)をいいます。ここまでは語感どおりですが、重要なのは例外です。資本金1億円以下であっても、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある普通法人は、中小法人から除外されます(法人税法66条6項)。つまり、期末資本金が1億円以下でも、資本金5億円以上の親会社に100%支配されている子会社は中小法人になれません。

除外の判断は「完全支配関係」、すなわち発行済株式等の全部(100%)を直接または間接に保有される関係が基準です。したがって、大法人が孫会社を間接的に100%保有している場合も、その孫会社は大法人による完全支配関係があるものとして中小法人から除外されます(法人税基本通達16-5-1)。

キーワードとなる「大法人」とは

中小法人の除外要件に登場する大法人とは、次のいずれかに該当する法人をいいます。資本金の額または出資金の額が5億円以上である法人、常時使用する従業員数が1000人を超える相互会社および外国相互会社、そして受託法人です。ポイントは資本金の基準が5億円以上である点で、中小企業者の判定で登場する大規模法人の1億円超とは水準が異なります。

区分 中小法人から除外される普通法人
1 資本金5億円以上の大法人による
完全支配関係がある普通法人
2 複数の大法人に発行済株式等の全部を
保有される関係にある普通法人
3 投資法人・特定目的会社・受託法人など

中小法人が対象となる主な特例

国税庁は、資本金5億円以上の大法人などの100%子法人等について適用されない中小企業向け特例措置として、次の7つを挙げています(国税庁タックスアンサー5800)。これらはいずれも、完全支配関係を軸とする中小法人の枠で判定されるものと整理できます。

中小法人向けの主な特例 根拠
法人税の軽減税率 法66・措法42の3の2
特定同族会社の留保金課税の不適用 法67
貸倒引当金の繰入と法定繰入率 法52・措法57の9
交際費等の定額控除限度額(800万円) 措法61の4
繰越欠損金の控除限度額(全額控除) 法57
欠損金の繰戻しによる還付 措法66の12

注意したいのは、これらのうち軽減税率を定める租税特別措置法42条の3の2が用いる「中小法人」も、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係を除外する法人税法と同じ考え方で範囲を画している点です。条文は措置法にありますが、除外の物差しは完全支配関係であり、後述する中小企業者の株式保有割合基準とは異なります。

中小企業者とは(租税特別措置法上の定義)

中小企業者は、投資促進税制や賃上げ促進税制など、政策目的で設けられた租税特別措置法上の優遇を適用する対象を画する概念です。中心となる定義は租税特別措置法42条の4第19項および同法施行令27条の4に置かれ、研究開発税制をはじめ多くの中小企業向け措置がこの定義を借用しています。

定義の骨格は「資本金1億円以下、ただし大規模法人の持分割合で除く」

中小企業者とは、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人、および資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1000人以下の法人をいいます。入口の資本金1億円以下は中小法人と同じですが、除外要件が根本的に異なります。中小企業者では、次のいずれかに該当する法人が除かれます。ひとつは、同一の大規模法人に発行済株式または出資の総数・総額の2分の1以上を所有されている法人。もうひとつは、2以上の大規模法人に発行済株式または出資の総数・総額の3分の2以上を所有されている法人です。

中小企業者の持分割合による除外判定は、直接保有だけで行い、間接保有は含めません。したがって、資本金1億円超の親会社の下に子会社があり、その子会社の下に資本金1億円以下の孫会社がある場合、子会社は中小企業者に該当しなくても、孫会社は中小企業者に該当し得ます。完全支配関係で間接保有まで拾う中小法人とは、ここが大きく違います。

キーワードとなる「大規模法人」とは

中小企業者の除外要件に登場する大規模法人とは、次のいずれかに該当する法人をいい、中小企業投資育成株式会社は除かれます。資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人、資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1000人を超える法人、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある普通法人、そして完全支配関係にある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有される普通法人です。資本金の閾値が1億円超である点が、大法人の5億円以上との決定的な違いです。

除外要件 内容(直接保有で判定)
単独保有 1つの大規模法人に
発行済株式等の2分の1以上を保有
複数保有 2以上の大規模法人に
発行済株式等の3分の2以上を保有

中小企業者(等)が対象となる主な特例

中小企業者(または一定の協同組合等を加えた中小企業者等)を判定基準とする代表的な特例は、次のとおりです。設備投資や研究開発、賃上げといった政策目的に沿った措置が並びます。

中小企業者(等)向けの主な特例 根拠
中小企業投資促進税制 措法42の6
中小企業経営強化税制 措法42の12の4
研究開発税制の
中小企業技術基盤強化税制
措法42の4
賃上げ促進税制(中小企業者等向け) 措法42の12の5
中小企業者等の
少額減価償却資産の特例
措法67の5

なお、少額減価償却資産の特例は、常時使用する従業員数の要件があり、取得価額の上限や従業員数の基準は改正のたびに見直されています。令和8年3月31日までに取得する資産は取得価額30万円未満・従業員500人以下が基準ですが、令和8年4月1日以後に取得する資産については取得価額40万円未満・従業員400人以下へと見直され、適用期限も延長されています。適用年度の要件を都度確認する必要があります。

中小法人と中小企業者の違いを一覧で整理

ここまでの内容を、判断軸ごとに一覧化します。資本金1億円以下という入口が同じでも、除外の考え方・保有判定の範囲・従業員基準・想定する特例が異なることが、両者を分ける本質です。

判断軸 中小法人 中小企業者
根拠法 法人税法
(66条・57条など)
租税特別措置法
(42の4・施行令27の4)
資本金基準 1億円以下 1億円以下
除外の考え方 完全支配関係
(100%保有)
株式保有割合
(2分の1・3分の2)
保有判定 直接・間接を含む 直接保有のみ
親の資本金 大法人は5億円以上 大規模法人は1億円超
従業員基準 資本を有する
法人には無し
資本を有しない
法人は1000人以下
主な特例 軽減税率・交際費・
貸引・繰越欠損金・
留保金課税の不適用
投資促進・経営強化・
研究開発強化・
賃上げ・少額減価償却

迷ったときの見分け方は明快です。その特例が法人税法本体(軽減税率・貸倒引当金・繰越欠損金・留保金課税など)の話なら中小法人、設備投資や賃上げなど政策目的の措置法特例の話なら中小企業者で判定する、と押さえておけば実務上の入口を誤りません。そのうえで、支配関係のある法人が絡む場合には、除外要件が完全支配関係か持分割合かを確認します。

見落としやすい「適用除外事業者」

中小法人や中小企業者の要件を満たしていても、そこで安心はできません。租税特別措置法42条の4第19項8号は、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から、所得水準が大企業並みの中小企業を優遇の対象から外す仕組みとして、適用除外事業者を定めています。適用除外事業者とは、その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度(基準年度)の所得金額の平均額が15億円を超える法人をいいます。

適用除外事業者に該当すると、租税特別措置法に基づく中小企業向けの優遇の多くが使えなくなります。一方で、法人税法本体に根拠を置く一部の措置は影響を受けません。この線引きは実務で混乱しやすいため、代表的なものを整理します。

制度 適用除外事業者
軽減税率15%(措法42の3の2) 使えない
(本則19%)
貸倒引当金の法定繰入率(措法57の9) 使えない
投資促進・経営強化・研究開発強化・
賃上げ・少額減価償却
使えない
交際費等の定額控除限度額(措法61の4) 使える
繰越欠損金の全額控除(法57) 使える
留保金課税の不適用(法67) 使える

令和7年度改正で見直された中小法人の軽減税率

中小法人向けの代表的な優遇である軽減税率は、令和7年度税制改正で延長とともに見直しが入りました。年800万円以下の所得部分に適用される15%の軽減税率は、適用期限が令和9年3月31日までに開始する事業年度へと2年延長されました。一方で、所得の金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率が15%から17%へ引き上げられています(令和7年4月1日以後に開始する事業年度)。さらに、グループ通算制度の適用を受けている通算法人は、この軽減税率の適用対象から除外されました。

法人の状況 800万円以下部分
所得10億円以下の中小法人 15%
所得10億円超の中小法人 17%
適用除外事業者・通算法人 19%(本則)

類型別の当てはめ(具体例で判定)

定義の違いが実際の判定でどう効いてくるのかを、支配関係の類型ごとに当てはめます。いずれも判定対象となる会社の資本金は1億円以下であることを前提とします。

類型(資本金1億円以下の会社) 中小法人 中小企業者
親会社のない独立した会社 該当 該当
資本金3億円の親会社に
100%保有される子会社
該当 非該当
資本金3億円の親会社に
40%だけ保有される会社
該当 該当
資本金5億円の親会社に
100%保有される子会社
非該当 非該当
2社の大規模法人に
合計3分の2以上を保有
該当 非該当
資本金5億円の親会社の
下にある資本金2億円の会社を
介した孫会社(間接100%)
非該当 非該当

特に実務で盲点になりやすいのが2つ目の類型です。資本金3億円の親会社に100%保有される子会社は、親が5億円未満で大法人ではないため中小法人には該当します。ところが親は資本金1億円超の大規模法人にあたり、その大規模法人に2分の1以上を保有されているため、中小企業者には該当しません。この会社は軽減税率や交際費の定額控除は使えるのに、少額減価償却資産の特例や投資促進税制は使えない、という食い違いが生じます。中小法人だから中小企業向けの措置法特例も当然使える、という思い込みが誤りを生む典型例です。

判定の手順(判断フロー)

実務では、次の順序で判定すると迷いにくくなります。使いたい特例がどちらの概念で判定されるかを最初に確定させることが要点です。

手順 確認する内容
1 使いたい特例が中小法人ベースか
中小企業者ベースかを特定する
2 期末の資本金が1億円以下かを確認する
3 中小法人なら大法人による完全支配関係の
有無、中小企業者なら大規模法人の
持分割合を確認する
4 前3事業年度の平均所得が15億円を
超える適用除外事業者でないかを確認する
5 通算法人など個別の除外規定に
該当しないかを確認する

判定を裏づける立証と手続

中小法人・中小企業者の該当性は、資本金と株主構成という客観的事実で決まります。税務調査で説明を求められた際に速やかに示せるよう、次の資料を整えておくことが実務上の要点です。

確認事項 客観資料
期末資本金 登記事項証明書・
貸借対照表・法人事業概況説明書
株主構成・持分割合 株主名簿・
別表二(同族会社等の判定に関する明細書)
親会社の資本金・従業員数 親会社の登記事項証明書・
決算書
措置法特例の適用 各特例の別表・適用額明細書

租税特別措置法の特例を適用する場合は、確定申告書に所定の別表とともに適用額明細書を添付することが原則的な要件です。添付が漏れると特例そのものが受けられなくなるおそれがあるため、申告実務では別表の作成と適用額明細書の記載をセットで管理します。株主構成の判定にあたっては、別表二で株主の状況を整理する過程が、そのまま持分割合の確認資料になります。

実務でありがちな落とし穴

落とし穴1:中小法人イコール中小企業者と考えてしまう
資本金1億円以下でも、資本金1億円超5億円未満の親会社に2分の1以上保有される会社は、中小法人には該当するのに中小企業者には該当しません。軽減税率が使えるからといって、投資促進税制や少額減価償却資産の特例まで当然に使えるわけではありません。
落とし穴2:間接保有の扱いを取り違える
中小法人の完全支配関係は間接保有を含めて判定しますが、中小企業者の持分割合は直接保有のみで判定します。孫会社の判定では、両者で結論が分かれることがあるため、支配の経路を図に落として確認する必要があります。
落とし穴3:適用除外事業者の判定を忘れる
前3事業年度の平均所得が15億円を超えると、資本金1億円以下でも軽減税率や中小企業向けの措置法特例が使えなくなります。好業績が続いた法人では、要件を満たしていると思い込んだまま特例を適用してしまう誤りが起きやすい論点です。
落とし穴4:減資で資本金を1億円以下にすれば無条件で優遇が戻ると考える
資本金を1億円以下にしても、大法人の完全支配関係や大規模法人の持分割合、適用除外事業者の判定が変わらなければ、中小向けの優遇は戻りません。資本金の額だけを見て判断すると誤ります。

想定問答

問1 中小法人と中小企業者はどちらが範囲が広いのですか

結論として、支配関係のある法人については中小法人のほうが広くなる場面が多くなります。中小法人の除外は資本金5億円以上の大法人による完全支配関係に限られる一方、中小企業者の除外は資本金1億円超の大規模法人による2分の1以上の保有まで及ぶためです。ただし、独立した会社ではどちらにも該当するため差は出ませんし、資本を有しない法人では中小企業者に従業員数の基準がある点で結論が入れ替わることもあります。単純にどちらかが常に広いとは言い切れません。

問2 資本金がちょうど1億円の会社はどちらに該当しますか

結論として、資本金1億円ちょうどは、いずれの入口も「1億円以下」であるため該当します。基準が1億円以下であって1億円未満ではないためです。反対に、資本金が1円でも1億円を超えると、いずれの概念からも外れます。1億円を境に扱いが大きく変わるため、増資や資本政策を検討する際は期末時点の資本金を強く意識する必要があります。

問3 資本金3億円の親会社に100%保有される子会社はどうなりますか

結論として、この子会社は中小法人には該当し、中小企業者には該当しません。理由は、親会社の資本金が5億円未満で大法人ではないため完全支配関係による除外に当たらない一方、親会社は資本金1億円超の大規模法人であり、2分の1以上を保有されているため中小企業者からは除外されるからです。もし親会社の資本金が5億円以上であれば、この子会社はどちらにも該当しなくなります。判定は親会社の資本金水準で大きく変わります。

問4 大法人と大規模法人は何が違うのですか

結論として、資本金の閾値が異なります。大法人は資本金5億円以上を基準とし中小法人の判定で用いる概念、大規模法人は資本金1億円超を基準とし中小企業者の判定で用いる概念です。理由は両者が別の法律・別の目的で定義されているためで、名称が似ていても中身は別物です。仮に資本金2億円の親会社があれば、これは大法人ではありませんが大規模法人には当たります。混同すると判定を誤ります。

問5 軽減税率はどちらの基準で判定しますか

結論として、軽減税率は中小法人(完全支配関係で除外する概念)で判定します。理由は、軽減税率を定める租税特別措置法42条の3の2が用いる中小法人が、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係を除外する法人税法と同じ物差しを採用しているためです。条文が措置法にあるからといって、中小企業者の持分割合基準で判定するわけではありません。ここは条文の位置だけで判断すると誤りやすい点です。

問6 交際費の800万円の定額控除はどちらの基準ですか

結論として、交際費等の定額控除限度額は期末資本金1億円以下という中小法人の枠で判定し、大法人による完全支配関係がある法人は除かれます。理由は、租税特別措置法61条の4が資本金基準と大法人の完全支配関係による除外を用いているためです。反対に、資本金1億円超の親会社に支配されているだけの会社(大法人には支配されていない会社)は、中小企業者ではなくても交際費の定額控除は使える場合があります。制度ごとにどちらの概念かを確認することが重要です。

問7 少額減価償却資産の特例はどちらの基準ですか

結論として、少額減価償却資産の特例は中小企業者等(持分割合で除外する概念)で判定し、常時使用する従業員数の要件も課されます。理由は、この特例が租税特別措置法67条の5に基づく政策税制であり、中小企業者の定義を借用しているためです。したがって、中小法人には該当しても、大規模法人に2分の1以上を保有されて中小企業者に該当しない会社では、この特例は使えません。軽減税率が使えるからといって少額減価償却資産の特例も使えると考えるのは誤りです。

問8 適用除外事業者になると何が使えなくなりますか

結論として、軽減税率15%や貸倒引当金の法定繰入率、投資促進税制や賃上げ促進税制などの措置法特例が使えなくなります。理由は、これらが租税特別措置法上の中小企業向け優遇であり、前3事業年度の平均所得が15億円を超える法人を対象から外しているためです。反対に、交際費の定額控除や繰越欠損金の全額控除、留保金課税の不適用といった法人税法本体に根拠を置く措置は、適用除外事業者でも引き続き使えます。制度の根拠が本体か特別措置かで結論が分かれます。

問9 資本金を1億円以下に減資すれば中小向けの優遇は使えますか

結論として、減資で資本金を1億円以下にしても、除外要件を満たしていれば優遇は戻りません。理由は、中小法人・中小企業者の判定が資本金だけでなく、大法人の完全支配関係や大規模法人の持分割合、適用除外事業者の所得水準といった複数の要素で決まるためです。たとえば資本金を1億円に減資しても、資本金5億円以上の親会社に100%支配されていれば、中小法人にも中小企業者にも該当しません。資本金の見た目だけで判断しないことが大切です。

問10 個人事業主にも中小企業者の概念は関係しますか

結論として、個人事業主にも中小企業者等の枠組みは関係します。理由は、少額減価償却資産の特例や賃上げ促進税制などが、法人だけでなく一定の要件を満たす個人事業主も対象にしているためです。ただし、個人には資本金という概念がないため、常時使用する従業員数などの別の基準で判定します。法人の判定基準をそのまま個人に当てはめられるわけではない点に注意が必要です。

問11 通算法人でも軽減税率は使えますか

結論として、令和7年度改正により、グループ通算制度の適用を受ける通算法人は軽減税率15%の適用対象から除外されました。理由は、グループ全体で相応の規模を有する企業への優遇を見直す趣旨によるものです。反対に、通算制度を選択していない単体の中小法人であれば、所得10億円以下なら従来どおり15%を適用できます。通算制度を選択しているかどうかが結論を分けます。

問12 税法上の中小企業者と、中小企業基本法の中小企業者は同じですか

結論として、別物です。理由は、税法上の中小企業者は資本金1億円以下や大規模法人の持分割合などで判定するのに対し、中小企業基本法の中小企業者は業種ごとに資本金と従業員数の両面から範囲を定めているためです。たとえば製造業では資本金3億円以下または従業員300人以下が基準とされ、税法の1億円以下とは水準が異なります。補助金や中小企業施策の対象と、税務上の優遇の対象は必ずしも一致しないことに留意が必要です。

問13 従業員数は中小法人の判定に影響しますか

結論として、資本を有する普通法人の中小法人判定では、従業員数は基準になりません。理由は、中小法人が資本金の額と大法人による完全支配関係の有無で範囲を定めているためです。ただし、資本または出資を有しない法人については、中小企業者の判定で常時使用する従業員数1000人以下という基準が用いられます。資本を有するかどうかで、従業員数が効いてくる場面が異なります。

まとめ
  • 中小法人は法人税法、中小企業者は租税特別措置法の概念で、資本金1億円以下という入口は共通です。
  • 除外の考え方は、中小法人が完全支配関係(100%・間接保有含む)、中小企業者が株式保有割合(2分の1・3分の2・直接保有のみ)で、これが両者を分ける核心です。
  • 登場する用語も、中小法人は資本金5億円以上の大法人、中小企業者は資本金1億円超の大規模法人と異なります。
  • 軽減税率・交際費・貸倒引当金・繰越欠損金は中小法人、投資促進・賃上げ・少額減価償却は中小企業者で判定します。
  • いずれの概念でも、前3事業年度の平均所得が15億円を超える適用除外事業者は、多くの優遇から外れます。

※本記事は作成時点の法令および公表資料(法人税法66条・57条、法人税基本通達16-5-1、租税特別措置法42条の3の2・42条の4・61条の4・67条の5、同法施行令27条の4、国税庁タックスアンサー5432・5800・5408、令和7年度税制改正関係資料)に基づく一般的な解説です。個別の判定にあたっては、最新の法令および顧問税理士への確認をお願いします。

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