資産の評価損益とは|評価益は益金不算入・評価損は損金不算入の原則と例外を解説

法人税

保有する株式や土地の時価が上がっても、法人税はかかりません。逆に時価が下がっても、原則として損金にできません。法人税は資産を売却するなど外部との取引で損益が実現した時点で課税する建前(実現主義・取得原価主義)を採っており、帳簿上の評価換えによる評価益は益金不算入(法人税法25条1項)、評価損は損金不算入(同33条1項)とされているためです。もっとも、この原則には重要な例外が2系統あります。災害や法的整理など一定の事実が生じた場合の評価換えと、売買目的有価証券や暗号資産のようにそもそも期末の時価評価が強制される資産です。この記事では、原則と例外の全体像を条文・通達ベースで整理します。

この記事のポイント

  • 評価益は益金不算入・評価損は損金不算入が原則(法人税法25条1項・33条1項)。単なる時価の変動では課税所得に影響しない
  • 評価損の例外は「物損等の事実」+「損金経理」が要件(33条2項・施行令68条)。資産区分ごとに認められる事実が異なる
  • 上場株式の評価損は「期末時価が帳簿価額のおおむね50%を下回り、かつ回復の見込みがない」ことが必要(基本通達9-1-7)
  • 金銭債権(売掛金・貸付金)は評価損の対象外。貸倒損失・貸倒引当金で対応する(通達9-1-3の2)
  • 売買目的有価証券・活発な市場が存在する暗号資産・デリバティブなどは例外的に期末時価評価が強制され、評価損益が益金・損金に算入される
  • 会計上の減損損失や強制評価減は、税務の要件を満たさない限り別表四で加算(自己否認)する

  1. 原則:評価益は益金不算入・評価損は損金不算入
  2. 評価損が認められる例外(33条2項)と2つの要件
  3. 資産区分別:評価損が認められる事実(施行令68条)
    1. 棚卸資産(施行令68条1項1号)
    2. 有価証券(施行令68条1項2号)
    3. 固定資産(施行令68条1項3号)
    4. 金銭債権は評価損の対象外
  4. 評価益が計上される例外(会社更生・民事再生)
  5. 期末時価評価が強制される資産
  6. 会計の減損・低価法との違いと別表調整
  7. 手続と立証(損金経理・証拠資料)
  8. 仕訳と別表の記載例
  9. 想定Q&A(資産の評価損益)
    1. Q1. 保有する土地の時価が大きく上がりました。課税されますか
    2. Q2. 上場株式が取得時から40%下落しています。評価損を計上できますか
    3. Q3. 会計監査で減損損失を計上しました。損金になりますか
    4. Q4. 売掛金の回収が危ぶまれます。評価損を計上できますか
    5. Q5. 機械が旧式になり生産効率が悪いです。評価損の対象になりますか
    6. Q6. 評価損の計上は申告書の減算だけで対応できますか
    7. Q7. 法人で保有するビットコインに含み益があります。期末に課税されますか
    8. Q8. 評価損を計上した翌期に時価が回復しました。戻し入れが必要ですか
    9. Q9. 100%子会社の株式に多額の含み損があります。評価損を計上できますか
    10. Q10. 民事再生の認可決定を受けました。資産の評価はどうなりますか
    11. Q11. 低価法を採用していれば評価損の要件は不要ですか
    12. Q12. 評価損の「時価」はどうやって算定しますか
  10. 判断フロー(評価損を検討するとき)

原則:評価益は益金不算入・評価損は損金不算入

法人税法25条1項は、資産の評価換えにより帳簿価額を増額した場合のその増額部分(評価益)を益金の額に算入しないと定め、33条1項は、評価換えにより帳簿価額を減額した場合のその減額部分(評価損)を損金の額に算入しないと定めています。つまり法人が自主的に資産を時価に評価し直しても、税務上はなかったものとして扱われます。

なぜ評価損益を認めないのか

理由は大きく2つです。第一に、評価損益は売却していない未実現の損益であり、時価の見積りに恣意性が入り込む余地が大きいこと。第二に、評価換えを自由に認めると、黒字の年に含み損だけを吐き出し、含み益は温存するといった利益操作(租税回避)に使われやすいことです。だからこそ、例外は「恣意性が入りにくい客観的な事実」がある場合に限定されています。この視点を持つと、後述の要件の意味が理解しやすくなります。

評価損が認められる例外(33条2項)と2つの要件

法人税法33条2項は、政令で定める事実が生じた場合に、損金経理により帳簿価額を減額したときは、期末時価との差額に達するまでの金額を損金算入できると定めています。施行令68条はこの事実を「物損等の事実」と「法的整理の事実」(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実)の2つに整理しています。適用の判断軸は次の2つです。

要件 内容
①事実要件 物損等の事実か法的整理の事実が生じ時価が簿価を下回る
②損金経理要件 決算で評価損を費用計上し帳簿価額を減額している

重要なのは、物損等の事実とは資産そのものの物理的・機能的な価値毀損を指すことです。単に市況が悪くて時価が下がっただけでは該当しません。また②のとおり損金経理(決算での費用計上)が要件のため、申告書だけで減算する処理は認められません。

落とし穴:単なる時価下落・過剰生産・建値の変更では計上できない:棚卸資産について、物価変動や過剰生産、建値の変更などにより時価が下落しただけでは、評価損は認められません(基本通達9-1-6)。「安くしないと売れない」という事情は市況の問題であって、資産自体の損傷や陳腐化ではないからです。ここを混同した評価損は税務調査で否認される典型例です。

資産区分別:評価損が認められる事実(施行令68条)

物損等の事実は、資産の区分ごとに施行令68条1項が限定列挙しています。実務での当てはめを区分別に整理します。

棚卸資産(施行令68条1項1号)

認められる事実は、(イ)災害による著しい損傷、(ロ)著しい陳腐化、(ハ)これらに準ずる特別の事実です。著しい陳腐化とは、季節商品の売れ残りで今後通常価額では販売できないことが既往の実績等から明らかな場合や、型式・性能・品質が著しく異なる新製品の発売により通常の方法で販売できなくなった場合をいいます(基本通達9-1-4)。破損・型崩れ・棚ざらし・品質変化により通常の方法で販売できなくなったことは「準ずる特別の事実」に当たります(同9-1-5)。棚卸資産の通常の評価方法(原価法・低価法)は棚卸資産の評価方法の記事で解説しています。

有価証券(施行令68条1項2号)

上場株式など市場価格のある有価証券(企業支配株式を除く)は「価額が著しく低下したこと」が事実要件です。基本通達9-1-7はこれを、期末時価が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことと定めています。回復可能性の判断は過去の市場価格の推移や発行法人の業況等を踏まえて期末時点で行い、証券アナリスト等の第三者の見通しや、監査法人のチェックを経た合理的な形式基準による判断も認められます(国税庁「上場有価証券の評価損に関するQ&A」)。非上場株式など市場価格のないものは、発行法人の資産状態が著しく悪化したため価額が著しく低下したことが要件で、破産手続開始の決定等のほか、1株当たり純資産価額が取得時のおおむね50%を下回ることが目安になります(通達9-1-9)。詳しくは国税庁タックスアンサーNo.5574にまとめられています。保有目的別の会計処理は有価証券の会計処理の記事を参照してください。

固定資産(施行令68条1項3号)

認められる事実は、(イ)災害による著しい損傷、(ロ)1年以上にわたる遊休状態、(ハ)本来の用途に使用できず他の用途に転用されたこと、(ニ)所在場所の状況が著しく変化したこと(周辺環境の激変等)、(ホ)これらに準ずる特別の事実です。過度の使用や修理の不十分による著しい損耗、償却不足、取得時の事情による高値づかみ(旧式化しただけの機械を含む)は、評価損の事実に該当しません(基本通達9-1-16・9-1-17)。

金銭債権は評価損の対象外

売掛金・貸付金などの金銭債権は、法人税法33条2項の評価換えの対象になりません(33条2項かっこ書、基本通達9-1-3の2)。回収不能のおそれは評価損ではなく、貸倒損失や貸倒引当金の制度で対応します。なお法的整理の事実が生じ金銭債権を損金経理で減額した場合は、貸倒引当金の繰入として扱われます(通達9-1-3の2注書)。

資産区分 主な該当事実 該当しない例
棚卸資産 災害損傷・著しい陳腐化・破損型崩れ 単なる時価下落・過剰生産
上場有価証券 50%超下落かつ回復見込みなし 一時的な株価下落
非上場株式 発行法人の資産状態の著しい悪化 業績不振のみ・高値取得
固定資産 災害損傷・1年以上遊休・転用等 旧式化・償却不足・損耗
金銭債権 対象外(貸倒損失・貸引で対応) 回収懸念による評価減

落とし穴:完全支配関係の子会社株式・通算法人株式:完全支配関係がある清算中の子会社等の株式や、グループ通算制度における他の通算法人の株式に対する評価損は、要件を満たしても損金算入できません(法人税法33条5項)。グループ内の損失の二重利用を防ぐ趣旨です。子会社整理の局面では、評価損ではなく解散・清算に伴う処理の中で検討することになります。

評価益が計上される例外(会社更生・民事再生)

評価益側の例外は、法的整理の場面に限られます。会社更生法等の規定に従って行う評価換えにより帳簿価額を増額した場合はその増額部分が益金に算入され(法人税法25条2項)、民事再生法の再生計画認可の決定その他これに準ずる事実が生じ、一定の資産評定を行った場合の評価益も益金に算入されます(同25条3項)。評価損側も同様に、会社更生の評価換え(33条3項)、民事再生等の資産評定による評価損(33条4項)が認められています。

なぜ法的整理では時価に洗い替えるのか

再建局面では、繰越欠損金と資産の含み損益を精算し、再スタート時点の財産状態を正しく反映させる必要があるためです。裁判所の関与する手続の中で資産評定が行われるため、恣意性の懸念が小さいことも理由です。なお民事再生等の評価益には少額除外があり、資産の評価差額が資本金等の額の2分の1と1,000万円のいずれか少ない金額に満たない場合は対象外です(施行令24条の2)。

期末時価評価が強制される資産

ここまでの原則・例外とは別枠で、そもそも期末に時価評価することが法律で強制され、評価損益が毎期の益金・損金に算入される資産があります。短期売買や投機で保有される資産は、時価の変動そのものが損益の実態だからです。33条1項・25条1項の「原則」はこれらには適用されません。

資産・取引 根拠条文 処理
売買目的有価証券 法61条の3 時価法で評価し洗替
短期売買商品(金地金等) 法61条 時価法で評価し洗替
活発な市場が存在する暗号資産 法61条 時価法で評価し洗替
未決済デリバティブ取引 法61条の5 みなし決済で損益計上
外貨建資産等(発生時換算法除く) 法61条の9 期末換算差益差損を計上

実務でインパクトが大きいのが暗号資産です。法人が活発な市場が存在する暗号資産(ビットコイン等、継続的に売買価格が公表され十分な取引量があるもの)を自己の計算で保有する場合、売却していなくても期末の時価と帳簿価額の差額が益金・損金に算入されます(法人税法61条2項・3項)。含み益に課税される点が個人の雑所得課税と大きく異なります。なお令和5年度・6年度改正で、発行者が継続保有する譲渡制限付きの自己発行暗号資産や、一定の譲渡制限等の要件を満たす特定譲渡制限付暗号資産は時価評価の対象から除外されています。売買目的有価証券・暗号資産とも、時価評価損益は翌期に洗替処理する点で、33条2項の評価損(切放し・洗替不要)と扱いが異なります。

会計の減損・低価法との違いと別表調整

「評価損」と聞いて会計の減損損失や強制評価減を思い浮かべる方も多いはずです。しかし会計上の評価減と税務上の評価損は要件がまったく別で、会計で計上した損失がそのまま損金になるわけではありません。混同しやすい制度を比較します。

項目 会計(減損・強制評価減) 税務(33条の評価損)
目的 財務諸表の適正表示 課税の公平・恣意性排除
判定基準 収益性の低下・回収可能性 限定列挙の物損等の事実
損金算入 計上しても原則不算入 要件充足時のみ算入
申告調整 別表四で加算(留保) 調整不要(損金経理で完結)

言い切ると、会計の減損は「収益性」で判定し、税務の評価損は「資産自体の毀損」で判定する別物です。減損損失を計上しても税務要件を満たさなければ別表四で全額加算し、将来その資産を売却・除却した時点で認容(減算)します。この加算・認容の流れは減価償却の償却超過額の認容と同じ構造で、減損した減価償却資産では減損損失が償却超過額として扱われ、以後の償却限度額の範囲で自動的に認容されていきます。減損会計そのものの仕組みは減損会計の記事で解説しています。また、この加算は将来減算一時差異として繰延税金資産の検討対象になります(税効果会計の記事参照)。

ヒント:低価法(棚卸資産)との関係にも注意してください。低価法は評価方法として届け出て毎期継続的に適用するもので、33条の評価損とは別制度です。低価法を選定していれば、物損等の事実がなくても期末時価(正味売却価額)まで評価減できますが、翌期首に洗替が必要です。33条2項の評価損は、事実が生じた期に切放しで計上でき、洗替は不要です(タックスアンサーNo.5574)。

手続と立証(損金経理・証拠資料)

評価損は「事実」の立証がすべてです。要件を満たしていても、証拠がなければ税務調査で維持できません。手続と、資産区分別に揃えるべき客観資料を整理します。

場面 立証に使う客観資料の例
災害損傷 被災状況の写真・罹災証明・修理見積・廃棄記録
棚卸資産の陳腐化 値下販売の実績・新製品発売資料・滞留在庫一覧
上場株式の下落 株価推移・発行法人の業績資料・回復可能性の検討書
非上場株式の悪化 発行法人の決算書・純資産の取得時比較・破産等の決定書
固定資産の遊休 稼働記録・遊休期間の証憑・転用の稟議書・現況写真
期末時価の算定 不動産鑑定・市場価格資料・処分可能価額の見積根拠

落とし穴:損金経理を忘れると救済がない:評価損の損金算入は損金経理が法律上の要件です(33条2項)。決算で費用計上せず、申告書の別表四で減算だけする処理や、申告後に更正の請求で評価損を追加する処理は認められません。事実が生じた事業年度の決算に確実に織り込むこと、逆に事実が生じていない年度に先取り計上しないことが重要です。

仕訳と別表の記載例

評価損を認識する場面の仕訳と申告調整をセットで押さえます。まず、税務要件も満たす棚卸資産の評価損(災害損傷、簿価500万円・期末時価200万円)の仕訳です。

借方 金額 貸方 金額
棚卸資産評価損 300万円 商品 300万円

この損金経理により税務上も損金算入され、申告調整は不要です。一方、会計の減損損失(建物1,000万円)を計上したが税務の評価損要件を満たさない場合の仕訳と調整は次のとおりです。

借方 金額 貸方 金額
減損損失 1000万円 建物 1000万円

この場合、別表四で「減損損失否認 1,000万円(加算・留保)」とし、別表五(一)に資産の否認額として残します。以後は償却超過額と同様に、償却限度額の範囲での認容や売却・除却時の認容減算で解消していきます。別表の書き方は別表四・別表五(一)の記事を参照してください。

想定Q&A(資産の評価損益)

Q1. 保有する土地の時価が大きく上がりました。課税されますか

課税されません。評価益は益金不算入(法人税法25条1項)で、含み益は売却して実現した時点で初めて譲渡益として課税されます。逆に、会計上任意に評価益を計上した場合でも税務上は益金にならず、別表四で減算します。含み益の大きい資産の売却タイミングは、繰越欠損金の期限などと合わせて計画的に検討する論点になります。

Q2. 上場株式が取得時から40%下落しています。評価損を計上できますか

原則できません。通達9-1-7の基準は「期末時価が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ること」かつ「近い将来回復の見込みがないこと」で、40%程度の下落では著しい低下に当たらないと判断されるのが通例です。過去の裁決でも下落率40%程度の銘柄の評価損は否認されています。50%基準に達した場合も、回復可能性の検討記録を残すことが必要です。

Q3. 会計監査で減損損失を計上しました。損金になりますか

原則なりません。会計の減損は収益性の低下で判定するのに対し、税務の評価損は施行令68条の限定列挙の事実(災害損傷・1年以上の遊休・転用等)が必要です。両者の要件は別物なので、減損損失は別表四で加算し、災害損傷など税務要件も同時に満たす部分があれば、その部分に限り損金算入を検討します。

Q4. 売掛金の回収が危ぶまれます。評価損を計上できますか

できません。金銭債権は評価換えの対象外です(通達9-1-3の2)。回収不能への対応は、法律上・事実上・形式上の貸倒れによる貸倒損失か、貸倒引当金(中小法人等)の制度で行います。債務者に民事再生等の法的整理の事実が生じて損金経理で減額した場合は、貸倒引当金の繰入として扱われます。

Q5. 機械が旧式になり生産効率が悪いです。評価損の対象になりますか

なりません。機械が旧式化しただけの状態や、過度の使用による損耗、償却不足は、評価損が認められる事実に該当しません(通達9-1-16・9-1-17)。これらは本来、減価償却で費用化していくべきものだからです。対象になり得るのは、災害損傷や1年以上の遊休、転用など資産の使用状況そのものが変わった場合です。使わなくなった資産は、評価損ではなく除却(有姿除却を含む)の検討が現実的です。

Q6. 評価損の計上は申告書の減算だけで対応できますか

できません。33条2項の評価損は損金経理(決算での費用計上)が要件です。決算で計上しなかった評価損を申告調整で減算したり、後から更正の請求で追加したりすることは認められません。決算作業の段階で、事実の発生と時価を確認して織り込む必要があります。

Q7. 法人で保有するビットコインに含み益があります。期末に課税されますか

課税されます。活発な市場が存在する暗号資産を自己の計算で保有する場合、期末に時価法で評価し、評価損益を益金・損金に算入します(法人税法61条)。売却していなくても含み益に課税される点が、売却等の時点で課税される個人と異なります。なお発行者が保有する譲渡制限付きの自己発行分や、一定の要件を満たす特定譲渡制限付暗号資産は時価評価の対象外です。翌期には洗替処理を行います。

Q8. 評価損を計上した翌期に時価が回復しました。戻し入れが必要ですか

33条2項の評価損は切放し方式で、翌期の洗替(戻入れ)は不要です(タックスアンサーNo.5574)。評価損計上後の帳簿価額が新たな税務上の簿価となり、その後の売却時に売却益として実現します。一方、売買目的有価証券や暗号資産の時価評価損益は毎期洗替で、翌期首に反対仕訳を行う点が異なります。

Q9. 100%子会社の株式に多額の含み損があります。評価損を計上できますか

制限があります。完全支配関係がある清算中の子会社等の株式や、グループ通算制度の他の通算法人の株式への評価損は損金算入できません(33条5項)。該当しない完全支配関係の子会社株式であれば、発行法人の資産状態の著しい悪化(通達9-1-9、純資産価額の50%程度以上の下落等)の要件を満たすかを検討します。グループ内の損失利用は規制が厳しいため、実行前に要件を精査してください。

Q10. 民事再生の認可決定を受けました。資産の評価はどうなりますか

一定の資産評定を行った場合、評価益は益金に(25条3項)、評価損は損金に(33条4項)算入され、資産の含み損益を一括して洗い替えられます。期限切れ欠損金の利用と組み合わせて再建計画の税負担を設計するのが通常です。なお評価差額が資本金等の額の2分の1と1,000万円のいずれか少ない金額に満たない資産は対象外です。適用には資産評定に関する書類の添付など手続要件があるため、再生局面では専門家と連携して進めてください。

Q11. 低価法を採用していれば評価損の要件は不要ですか

棚卸資産に限り、そのとおりです。低価法を評価方法として届け出て継続適用していれば、物損等の事実がなくても期末の正味売却価額まで評価減できます。ただし低価法は翌期首に洗替が必要で、時価が回復すればその分利益が戻ります。事実要件を満たす場合の33条2項の評価損(切放し)とは、要件も効果も別制度として区別してください。

Q12. 評価損の「時価」はどうやって算定しますか

損金算入できるのは、評価換え直前の帳簿価額と事業年度終了時の時価との差額までです。上場有価証券は期末の市場価格(通達9-1-8)、棚卸資産・固定資産はその資産の現況に応じた処分可能価額等によります。時価の算定根拠(市場価格資料・鑑定評価・見積書等)は評価損の金額を直接左右するため、必ず書面で残してください。

判断フロー(評価損を検討するとき)

手順 判断内容
1 時価評価が強制される資産(売買目的有価証券・暗号資産等)かを確認
2 金銭債権なら評価損は不可。貸倒損失・貸倒引当金を検討
3 資産区分ごとの物損等の事実(施行令68条)に当てはまるか確認
4 完全支配子会社株式・通算法人株式など損金算入制限がないか確認
5 期末時価を客観資料で算定し、証拠書類を整備
6 事実が生じた期の決算で損金経理。要件を満たさない会計上の減損は別表四で加算

まとめ

  • 評価益は益金不算入・評価損は損金不算入が原則(法25条1項・33条1項)。損益は実現した時に課税される。
  • 評価損の例外は物損等の事実(施行令68条)+損金経理。単なる時価下落や旧式化では計上できない。
  • 上場株式はおおむね50%超の下落+回復見込みなし(通達9-1-7)。金銭債権は対象外で貸倒側の制度で対応。
  • 会社更生・民事再生では評価益・評価損とも計上される(25条2項3項・33条3項4項)。
  • 売買目的有価証券・活発な市場が存在する暗号資産・デリバティブ等は期末時価評価が強制され、毎期洗替。
  • 会計の減損と税務の評価損は別要件。満たさない減損は別表四で加算し、以後認容で解消する。

出典・参考

※本記事は令和8年8月時点の法令および国税庁公表資料(法人税法25条・33条・61条、法人税法施行令68条、法人税基本通達9-1-1以下、タックスアンサーNo.5574)に基づく一般的な解説です。評価損益の判定は個々の事実関係により結論が異なります。適用にあたっては所轄税務署または税理士にご確認ください。

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