使用人兼務役員の判定と賞与を徹底解説|なれない人の範囲・使用人分賞与の損金算入

法人税

役員に対する賞与は、事前確定届出給与等に該当しない限り損金になりません。しかし、使用人兼務役員であれば、使用人部分の給与・賞与は使用人給与として損金算入できます。問題は、誰が使用人兼務役員になれるのかの判定が厳格で、肩書きだけでは判断できないことです。本記事では、使用人兼務役員になれない人の範囲、実態での判定、使用人分賞与の損金算入要件まで、否認パターンを交えて深掘りします。

目次
  1. 使用人兼務役員とは
  2. 使用人兼務役員になれない人の範囲
  3. 肩書きではなく「実態」で判断する
  4. 同族会社の特定株主は兼務役員になれない(3要件)
  5. みなし役員との関係
  6. 使用人分の給与・賞与の損金算入
  7. 使用人分賞与の最大の落とし穴(同時期支給)
  8. 否認パターンと実務の備え
  9. まとめ

1. 使用人兼務役員とは

使用人兼務役員とは、役員のうち、部長・課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいいます(法人税法34条6項)。役員でありながら、同時に使用人(従業員)としての地位と職務を持つ人です。

2つの要件
  • 使用人としての職制上の地位を有すること(部長・課長・支店長・工場長・営業所長・主任等、機構上定められた使用人たる地位)
  • 常時使用人としての職務に従事すること
使用人兼務役員になれると、使用人部分の給与・賞与を使用人給与として扱えるため、役員給与の損金不算入の枠から外せます。特に、役員には原則出せない賞与を、使用人部分について損金算入で支給できる点が実務上のメリットです。だからこそ、税務調査では「本当に使用人兼務役員か」が厳しく見られます。

2. 使用人兼務役員になれない人の範囲

次の役員は、たとえ使用人としての職務に従事していても、使用人兼務役員になれません(法人税法34条6項、施行令71条)。

なれない役員
① 代表取締役、代表執行役、代表理事、清算人
② 副社長、専務、常務、その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
③ 合名会社、合資会社、合同会社の業務執行社員
④ 指名委員会等設置会社の取締役、監査等委員である取締役、会計参与
⑤ 監査役、監事
⑥ 同族会社のみなし役員、同族会社の特定株主(次章で詳述)
社長・代表取締役は当然になれません。副社長・専務・常務といった役付役員も、経営の中枢にいるため、使用人としての職務に従事していても兼務役員にはなれません。監査役は、その性質上使用人を兼ねることが会社法上できないため除かれます。

3. 肩書きではなく「実態」で判断する

ここが実務で最も誤りやすいポイントです。使用人としての職制上の地位があるかは、肩書きの形式ではなく、使用人としての具体的な職務に従事している実態で判断されます。

肩書き 兼務役員になれるか
取締役営業部長 なれる(営業部長として使用人の職務に従事)
営業担当取締役 なれない(営業を統括する取締役で使用人でない)
取締役(肩書きなし・元ヒラ社員) なれない(使用人としての職制上の地位がない)
「取締役営業部長」は営業部長という使用人の地位で職務に従事するので兼務役員になれますが、「営業担当取締役」は特定部門を統括する取締役であって使用人ではないため、なれません。総務担当・経理担当といった「○○担当取締役」も、特定部門を統括する立場で、使用人としての職制上の地位ではないとされます。さらに、肩書きを持たないヒラ社員がそのまま取締役に就任した場合も、使用人としての職制上の地位がないため兼務役員になれません。税務署は肩書きと実態を見るため、形だけ「取締役部長」としても、実態が部門統括なら否認されます。

4. 同族会社の特定株主は兼務役員になれない(3要件)

同族会社では、一定の株式を保有する役員(特定株主)は、たとえ常時使用人として職務に従事していても、その実態にかかわらず使用人兼務役員になれません(施行令71条1項5号)。次の3要件をすべて満たす役員が該当します。

  • その会社の株主グループを所有割合の大きい順に並べたとき、第1順位(または上位を合計して初めて50%超となる)の株主グループに属していること
  • その役員の属する株主グループの所有割合が10%超であること
  • その役員(およびその配偶者、これらの者の所有割合が50%超の関係会社を含む)の所有割合が5%超であること
かみ砕くと、会社を支配する側の株主グループに属し、自身も一定以上の株式を持つ役員は、経営側の人間とみて兼務役員になれない、という趣旨です。オーナー一族の取締役が「取締役部長」として使用人分賞与を取ろうとしても、この特定株主に当たれば兼務役員になれず、賞与は損金不算入になります。同族会社で兼務役員を検討する際は、まず持株割合の判定が出発点です。

5. みなし役員との関係

同族会社の使用人のうち、税務上のみなし役員に該当する人も、使用人兼務役員になれません。みなし役員は、法人の使用人以外の者で経営に従事しているもの(相談役・顧問等)や、同族会社の特定の株主要件を満たし経営に従事している使用人を指します(施行令7条)。

みなし役員は「経営に従事している」ことが要件で、これは使用人兼務役員の「常時使用人としての職務に従事する」と相容れません。したがって、みなし役員に当たる人は、その時点で兼務役員にはなれない、という関係になります。役員でない肩書きでも、経営に従事していればみなし役員として役員給与のルールが適用される点に注意が必要です。

6. 使用人分の給与・賞与の損金算入

使用人兼務役員に当たる場合、給与は役員分と使用人分に分かれ、それぞれ次のように扱われます。

  • 役員分の給与:定期同額給与・事前確定届出給与等のルールに従う(不相当に高額な部分は損金不算入)
  • 使用人分の給与・賞与:適正額である限り、使用人給与と同様に損金算入(賞与も損金算入できる)。不相当に高額な部分は損金不算入
使用人分の給与・賞与が適正額かは、同じ職務に従事する他の使用人の給与水準(比準)などを参考に判断します。役員分と使用人分の区分を合理的に行い、使用人分が過大でないことを説明できるようにしておくことが大切です。

7. 使用人分賞与の最大の落とし穴(同時期支給)

使用人分賞与には、見落とすと否認される重要な要件があります。

他の使用人と同じ時期に支給すること

使用人兼務役員の使用人分賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものは、損金不算入とされます(法人税法34条2項の趣旨・関連通達)。つまり、一般従業員には夏冬の賞与を出しているのに、兼務役員にだけ別の時期に使用人分賞与を出すと、その賞与は損金になりません。

対策はシンプルで、使用人分賞与は、他の使用人と同じ支給日に支給することです。決算期末に兼務役員にだけ賞与を出して損金にしよう、といった処理は、この同時期支給の要件に引っかかります。なお、未払計上で損金算入する場合は、決算賞与の3要件(全使用人への通知・1か月以内支払・損金経理)も別途満たす必要があります(詳細は「決算賞与の損金算入要件」の記事をご覧ください)。

8. 否認パターンと実務の備え

  • 実態が部門統括:「取締役部長」でも、実態が特定部門の統括なら兼務役員と認められず、使用人分が役員給与扱いになる
  • 同族の特定株主:持株要件を満たす役員は、職務の実態にかかわらず兼務役員になれない
  • 賞与の支給時期がズレている:他の使用人と異なる時期の使用人分賞与は損金不算入
  • 使用人分が過大:同職務の他の使用人と比べ不相当に高額な部分は損金不算入
  • 役員分と使用人分の区分が不明確:区分の根拠(職務分掌・給与規程・比準資料)を残していない
備えとしては、使用人としての職制上の地位(部長等)を組織図・辞令で明確にし、使用人としての職務に実際に従事している実態を残し、使用人分賞与は他の使用人と同時期・適正額で支給し、役員分と使用人分の区分根拠を給与規程・比準資料で説明できるようにしておくことです。

9. まとめ

この記事のポイント
  • 使用人兼務役員=部長等の使用人の地位を有し、常時使用人の職務に従事する役員(法法34⑥)
  • 代表取締役・副社長専務常務・監査役・同族のみなし役員/特定株主等はなれない
  • 判定は肩書きでなく実態。取締役営業部長は○、営業担当取締役・元ヒラ社員の取締役は×
  • 同族会社は特定株主の3要件(50%超グループ・株主G10%超・本人等5%超)でなれないことがある
  • 使用人分の給与・賞与は適正額なら損金算入(賞与も可)。役員分は役員給与のルール
  • 使用人分賞与は他の使用人と同時期に支給しないと損金不算入
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出典・参考

※本記事は作成時点の法令・通達・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。使用人兼務役員の判定・給与の区分は個別の事実関係により異なります。具体的な判断は税理士へのご相談をおすすめします。

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