固定資産の減損会計とは?兆候・認識・測定の4ステップと税務上の取扱いを解説

会計

固定資産の減損会計は、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産について、帳簿価額を回収可能な水準まで減額する会計処理です。土地や建物、機械などの固定資産は取得原価で計上し、減価償却によって費用配分していきますが、事業環境の悪化などで「その資産に投じたお金を将来のもうけで取り戻せない」状態になったときに、帳簿価額を実態に合わせて切り下げます。

減損の本質は、含み損をそのまま反映することではなく、将来生み出すキャッシュ・フローで投資を回収できるかを判定する点にあります。含み損があっても収益性があれば減損しません。そして実務上いちばん重要なのは、会計で計上した減損損失が法人税法では原則として損金にならず、別表で加算するという点です。この差は税効果会計にも直結します。本記事では、減損の4ステップ、回収可能価額の考え方、戻入れの扱い、税務との関係までを整理します。

この記事のポイント
  • 減損会計=収益性の低下で投資回収が見込めない固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額する処理
  • 手順は4ステップ。資産のグルーピング、減損の兆候、減損損失の認識、減損損失の測定
  • 認識の判定は「割引前」の将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回るかで行う
  • 回収可能価額=正味売却価額と使用価値のいずれか高い方。差額を減損損失(特別損失)とする
  • 日本基準は減損損失の戻入れを行わない(IFRSとの相違点)
  • 減損損失は税務上原則損金不算入で別表加算。将来減算一時差異として税効果会計の対象になる

減損会計とは(目的と考え方)

減損会計は、企業会計審議会「固定資産の減損に係る会計基準」および企業会計基準適用指針第6号に基づく処理です。固定資産が収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態を減損といい、その場合に一定の条件のもとで回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額するのが減損処理です。

重要なのは、単に時価が下がったから減損するのではなく、その資産が将来生み出すキャッシュ・フローで投資を回収できるかで判断するという点です。含み損を抱えていても、収益性があり回収が見込めるなら減損しません。減損の対象は固定資産ですが、金融商品会計の対象となる金融資産や、税効果会計の繰延税金資産など、他の基準に評価の定めがあるものは対象外です。固定資産の帳簿価額の基礎は固定資産の取得価額と付随費用で解説しています。

減損の4ステップ

減損会計は次の4段階を順に踏みます。すべての固定資産をいきなり評価し直すのではなく、兆候のある資産に絞って判定していく建付けです。

ステップ 内容
資産のグルーピング 他の資産からおおむね独立したキャッシュ・フローを生む最小の単位でグループ化する
減損の兆候 減損が生じている可能性を示す事象の有無を把握する。兆候がなければ次に進まない
減損損失の認識 割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回るかで、減損損失を計上すべきか判定する
減損損失の測定 帳簿価額を回収可能価額まで減額し、差額を減損損失として計上する

資産のグルーピング

減損を判定する単位を決める作業です。複数の資産が一体となってキャッシュ・フローを生む場合、個々の資産では回収可能性を判断できないため、他の資産グループのキャッシュ・フローからおおむね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位でグループ化します。小売業の店舗単位、製造業の工場や事業単位などが典型です。グルーピングの仕方によって減損の要否や金額が変わるため、判定の出発点として重要です。

減損の兆候

兆候 具体例
営業損益・キャッシュ・フローの継続マイナス 資産グループの営業活動から生じる損益や現金収支が継続してマイナス、またはその見込み
使用範囲・方法の著しい変化 遊休化、事業の廃止・再編成、当初の予定より著しく早い時期の処分など
経営環境の著しい悪化 市場の著しい縮小、法規制や技術革新による不利な変化など
市場価格の著しい下落 土地・建物などの時価が帳簿価額から著しく下落した場合
兆候は「減損しているかもしれない」というシグナルにすぎません。兆候があるからといって減損損失を計上するわけではなく、次の認識の判定に進む合図です。逆に、兆候がなければ認識の判定そのものを行いません。

認識の判定は「割引前」で行う

減損損失を認識するかどうかは、割引前の将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比べて判定します。ここで割引前を用いるのは、認識の段階では見積りの不確実性を踏まえ、減損の計上に一定の慎重さを持たせるためです。総額が帳簿価額を下回るときにはじめて、次の測定に進みます。

回収可能価額(正味売却価額と使用価値)

測定では、帳簿価額を回収可能価額まで減額します。回収可能価額は「売って回収する額」と「使い続けて回収する額」のうち高い方です。企業はその資産を売るか使い続けるかを選べるため、有利な方で回収できると考えるからです。

用語 意味
回収可能価額 正味売却価額と使用価値のいずれか高い方
正味売却価額 資産の時価から処分費用見込額を控除した額。不動産では、重要性が乏しい場合を除き不動産鑑定評価に基づく価額を用いるのが一般的
使用価値 資産を使い続けることで得られる将来キャッシュ・フローの割引現在価値
設例
帳簿価額1億円の店舗設備一式について、営業キャッシュ・フローが継続してマイナスという兆候がありました。割引前将来キャッシュ・フローの総額は8,000万円と見込まれ、帳簿価額1億円を下回るため減損損失を認識します。次に測定です。正味売却価額が6,000万円、使用価値が7,000万円であれば、回収可能価額は高い方の7,000万円です。帳簿価額1億円を7,000万円まで減額し、差額3,000万円を減損損失(特別損失)として計上します。

仕訳イメージ(上記の設例に基づく)

減損損失の計上(直接控除方式)

借方 金額 貸方 金額
減損損失 3,000万円 建物・器具備品など 3,000万円

減損損失は特別損失に計上し、貸方は原則として資産の帳簿価額から直接減額します。減損損失は資産グループ全体で算定したうえで、各資産の帳簿価額等を基礎とした合理的な方法で各資産に配分します。

税務上の申告調整(法定の評価損の事由に該当しない場合)

別表 処理
別表四 減損損失否認として3,000万円を加算(留保)
別表五(一) 減損損失否認額3,000万円を残高として管理し、売却・除却時などに認容(減算)
仕訳としては1本ですが、税務では損金にならないため加算し、その後の減価償却費の差や売却・除却の局面で徐々に、あるいは一括で解消していきます。この加算額を別表五で追い続けることが実務の肝になります。

減損後の会計処理と戻入れ

減損損失は損益計算書に原則として特別損失として表示します。貸借対照表では、原則として帳簿価額から直接減額します。減損後は、減額した帳簿価額を基礎として、残りの耐用年数にわたり減価償却を続けます。減損は減価償却をやめる処理ではありません。減価償却の記帳方法は減価償却の記帳を参照してください。

日本基準は戻入れを行わない
いったん計上した減損損失は、その後に資産の価値が回復しても戻し入れません。これは日本基準の特徴で、一定の場合に戻入れを認める国際会計基準(IFRS)とは異なります。減損は慎重に判断すべきものであり、頻繁な戻入れは財務諸表の信頼性を損なう、という考え方の表れです。

税務との関係(実務の要)

会計で計上した減損損失は、法人税法上は原則として損金になりません。法人税法は資産の評価損の計上を厳しく制限しており、法人税法33条により、災害による著しい損傷、1年以上にわたる遊休、著しい陳腐化など、政令に定める限定的な事実が生じた場合にだけ、損金経理を要件として評価損の損金算入を認めています。

会計上の減損は「収益性の低下による回収不能」という判断で行うため、これらの法定の事実に必ずしも当てはまりません。したがって多くの場合は損金不算入となり、別表四で加算します(いわゆる有税処理)。別表四・別表五の書き方は別表四・別表五の見方と書き方で解説しています。

損金不算入となった減損損失の分だけ、会計上の帳簿価額が税務上の帳簿価額より小さくなり、将来減算一時差異が生じます。将来その資産を売却・除却したときや、減価償却の差を通じて損金化されるため、税効果会計では繰延税金資産の対象になります。減損は、会計・税務・税効果の3つがつながる典型論点です。

実際に資産を手放したときの処理は固定資産の除却と売却で整理しています。

中小企業の減損

本格的な減損会計は主に上場企業や会社法上の大会社で適用されます。中小企業では、中小企業の会計に関する指針・基本要領において、資産の使用価値がなく回収の見込みが立たない場合などに相当の減額を行うという簡便な考え方が示されており、上場企業のような詳細な減損判定までは求められていません。

とはいえ、遊休設備や明らかに回収不能な資産を帳簿にそのまま残しておくと、決算書が実態を映さなくなります。金融機関に提出する決算書の説明責任という観点でも、必要な減額の検討は有用です。ただし、減額しても税務上は原則損金にならないため、税負担が減るわけではない点は経営者に丁寧に説明しておくべきです。

実務上の落とし穴

含み損があれば減損、と誤解する
時価が帳簿価額を下回っていても、その資産が将来キャッシュ・フローで投資を回収できるなら減損しません。減損は収益性の判定であって、単純な時価評価ではありません。
認識と測定で使う数値を取り違える
認識の判定は割引前の将来キャッシュ・フローの総額で行い、測定は回収可能価額(使用価値は割引後)で行います。割引の有無を混同すると結論を誤ります。
グルーピングを恣意的に広げる
赤字店舗を黒字店舗と一体にすれば減損を回避できる、という発想はできません。グルーピングはおおむね独立したキャッシュ・フローを生む最小単位で行う必要があります。
税務調整と税効果を忘れる
会計で減損損失を計上したまま別表加算を失念すると、所得金額が過少になります。原則損金不算入であること、将来減算一時差異として税効果の検討が必要であることをセットで押さえます。

想定Q&A集

Q1. 減損会計を一言でいうと何ですか

収益性が下がって投資額を回収できなくなった固定資産の帳簿価額を、回収可能な水準まで切り下げる会計処理です。将来のキャッシュ・フローで回収できるかが判断の軸になります。

Q2. 時価が下がっただけで減損しますか

しません。市場価格の著しい下落は兆候の1つですが、減損の要否は将来キャッシュ・フローで投資を回収できるかで判定します。回収が見込めれば、含み損があっても減損しません。逆に、時価が下がっていなくても営業損益の継続マイナスがあれば減損することがあります。

Q3. 認識と測定はどう違いますか

認識は「減損損失を計上すべきか」の判定で、割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比べます。測定は「いくら計上するか」の計算で、帳簿価額を回収可能価額(正味売却価額と使用価値の高い方)まで減額します。割引前で判定し、割引後を含む金額で測る、という順序です。

Q4. なぜ認識では割引前を使うのですか

将来キャッシュ・フローの見積りには不確実性があるため、認識の段階で割引後の小さい金額と比べると減損の計上が増えすぎるおそれがあります。割引前の大きい金額で判定することで、減損の計上に一定の慎重さを持たせています。

Q5. 回収可能価額はどう決めますか

正味売却価額(時価から処分費用見込額を引いた額)と使用価値(将来キャッシュ・フローの割引現在価値)のいずれか高い方です。売るか使い続けるかを企業が選べる以上、有利な方で回収できると考えるためです。不動産の時価は、重要性が乏しい場合を除き不動産鑑定評価に基づく価額を用いるのが一般的です。

Q6. いったん減損したら、価値が回復すれば戻せますか

日本基準では戻入れを行いません。価値が回復しても、計上した減損損失を戻し入れることはできません。一定の場合に戻入れを認めるIFRSとは扱いが異なります。

Q7. 減損損失は税務で損金になりますか

原則として損金になりません。法人税法は評価損の計上を厳しく制限しており、災害による著しい損傷や1年以上の遊休などの法定の事実に該当し、損金経理をした場合に限って損金算入が認められます。会計上の減損は多くの場合これに当たらず、別表四で加算します。

Q8. 損金不算入なら、その差はその後どうなりますか

将来減算一時差異になります。会計上の帳簿価額が税務上より小さくなるため、将来その資産を売却・除却したときや償却差を通じて損金化されます。税効果会計では繰延税金資産の対象となり、回収可能性の検討が必要です。永久差異ではない点がポイントです。

Q9. 減損すれば節税になりますか

なりません。減損損失は原則損金不算入のため、計上しても課税所得は減りません。会計上の利益は減りますが税負担は変わらない、というのが基本の構図です。節税目的で減損を検討するのは筋違いで、あくまで会計上の実態反映のための処理です。

Q10. 資産のグルーピングとは何ですか

減損を判定する単位のことです。他の資産グループからおおむね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位でグループ化します。店舗単位や事業単位が典型です。単位の取り方で減損の要否や金額が変わるため、恣意的な設定はできません。

Q11. 減損した資産は減価償却を続けますか

続けます。減損後の帳簿価額を基礎として、残りの耐用年数にわたって減価償却を行います。ただし税務上は減損前の帳簿価額を基礎に償却限度額を計算するため、会計と税務で償却費に差が生じます。

Q12. 中小企業も減損会計が必要ですか

上場企業のような詳細な減損判定までは求められていません。中小会計指針・基本要領では、使用価値がなく回収の見込みが立たない場合に相当の減額を行うという簡便な考え方が示されています。ただし、遊休化した設備など明らかに回収不能な資産は減額を検討すべきです。

Q13. 減損損失は損益計算書のどこに表示しますか

原則として特別損失に計上します。臨時的で多額になりやすいためです。貸借対照表では、原則として当該資産の帳簿価額から直接減額します。

減損会計の判断フロー

手順 確認すること
1 資産をグルーピングする(おおむね独立したキャッシュ・フローを生む最小単位)
2 減損の兆候の有無を把握する(兆候がなければ判定は不要)
3 割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比べ、下回れば減損損失を認識する
4 正味売却価額と使用価値を算定し、高い方を回収可能価額とする
5 帳簿価額を回収可能価額まで減額し、差額を減損損失(特別損失)として計上する
6 別表四で加算し、将来減算一時差異として税効果会計を検討する

まとめ

減損会計は、収益性の低下により投資を回収できなくなった固定資産の帳簿価額を、回収可能価額まで切り下げる処理です。判定はグルーピングから兆候、認識、測定へと段階的に進み、認識は割引前、測定は回収可能価額という数値の使い分けが要になります。そして税務では原則損金不算入となり、将来減算一時差異として税効果会計につながります。会計上の判断と税務上の調整を必ずセットで押さえてください。

この記事のまとめ
  • 減損は収益性の判定であり、単なる時価評価ではない。含み損があっても回収できれば減損しない
  • 手順はグルーピング、兆候、認識、測定の4ステップ
  • 認識は割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額の比較で判定
  • 測定は回収可能価額(正味売却価額と使用価値の高い方)まで減額し、差額を特別損失に計上
  • 日本基準は戻入れを行わない。減損後も残存耐用年数で減価償却を継続
  • 税務は原則損金不算入で別表加算。将来減算一時差異として繰延税金資産の対象になる

※本記事は作成時点の会計基準・法令・通達および公表資料(企業会計審議会「固定資産の減損に係る会計基準」および同意見書、企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」、法人税法33条および同施行令68条、中小企業の会計に関する指針・基本要領等)に基づく一般的な解説です。個別の判断は事実関係により異なるため、具体的な取扱いは最新の基準・条文の確認、または税理士・公認会計士へのご相談をおすすめします。

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