建物や機械、車両などの固定資産は、使ううちに少しずつ価値が減っていきます。その価値の減少分を、耐用年数にわたって費用として配分するのが減価償却です。ここで問われるのが「毎年の減価償却費を、帳簿にどう記録するか」という記帳方法です。同じ減価償却でも、固定資産から直接差し引くか、別勘定を使って間接的に控除するかで、仕訳も貸借対照表の見え方も変わります。
記帳方法には直接法と間接法の2つがあり、間接法では減価償却累計額という勘定を使います。どちらを選んでも利益や税額は変わりませんが、貸借対照表から取得価額が読めるか、現在の帳簿価額が読めるかが違ってきます。この記事では、直接法と間接法の仕訳の違い、減価償却累計額の意味、貸借対照表での表示方法、それぞれのメリット・デメリットまでを、具体例で整理します。なお、毎年の減価償却費をいくらにするかという計算方法(定額法・定率法)とは別の論点である点も、あわせて押さえます。
- 減価償却の記帳方法には直接法と間接法があり、どちらを選んでも利益や税額は変わらない
- 直接法は固定資産から減価償却費を直接減らす。貸借対照表に帳簿価額(現在価値)が表示される
- 間接法は減価償却累計額(評価勘定)を使い、固定資産は取得価額のまま。累計額をマイナス表示する
- 減価償却費は損益計算書の費用、減価償却累計額は貸借対照表の資産の控除項目で、別物
- 記帳方法(直接法・間接法)と計算方法(定額法・定率法)は別の論点。混同しない
記帳方法と計算方法は別の話
はじめに、混同しやすい2つの論点を切り分けます。「毎年の減価償却費をいくらにするか」を決めるのが計算方法(定額法・定率法など)、「その減価償却費を帳簿にどう記録するか」を決めるのが記帳方法(直接法・間接法)です。この記事は後者の記帳方法を扱います。計算方法で求めた同じ減価償却費を、直接法で記帳することも間接法で記帳することもできます。
直接法と間接法の仕訳
取得価額250万円の車両について、当期の減価償却費30万円を計上するケースで、2つの記帳方法を比べます。借方が減価償却費(費用)である点は共通で、貸方が異なります。
| 記帳方法 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 直接法 | 減価償却費 300,000 | 車両 300,000 |
| 間接法 | 減価償却費 300,000 | 減価償却累計額 300,000 |
直接法は、固定資産(車両)の勘定を直接減らします。これにより車両の帳簿残高は220万円(250万円−30万円)になり、現在の価値がそのまま帳簿に表れます。間接法は、車両の勘定はそのままに、減価償却累計額という別勘定を貸方に積み上げます。車両は取得価額250万円のまま残り、価値の減少分は減価償却累計額30万円として別に管理されます。
減価償却累計額とは(評価勘定)
減価償却累計額は、固定資産を取得してから現在までに計上した減価償却費の合計額を表す勘定です。資産から差し引く性格を持つため評価勘定(資産の控除項目)と呼ばれ、仕訳では貸方に計上されますが、貸借対照表では資産の部にマイナス表示します。取得価額から減価償却累計額を差し引いた金額が、その資産の帳簿価額(未償却残高)になります。
減価償却費は「その年の価値の減少額」で損益計算書の費用、減価償却累計額は「取得から現在までの減少額の合計」で貸借対照表の資産の控除項目です。名前は似ていますが、当期分か累計かという中身も、載る決算書も異なります。毎年の減価償却費を足し合わせたものが減価償却累計額になります。
貸借対照表での表示
先ほどの車両(取得価額250万円・減価償却累計額30万円)は、記帳方法によって貸借対照表の見え方が変わります。
| 記帳方法 | 貸借対照表(資産の部)の表示 |
|---|---|
| 直接法 | 車両 2,200,000(帳簿価額をそのまま表示。取得価額は表示されず、減価償却累計額を注記する) |
| 間接法 | 車両 2,500,000/減価償却累計額 ▲300,000(取得価額と累計額の両方を表示し、差引で帳簿価額がわかる) |
間接法の表示には、さらに2つの方法があります。固定資産の科目ごとに取得価額・減価償却累計額・帳簿価額を示す科目別間接控除法と、減価償却累計額をまとめて1つに表示する一括間接控除法です。科目別は資産ごとの状況を細かく把握でき、一括は表示がすっきりする代わりに内訳が見えません。
直接法と間接法の比較
どちらを採用するかは会社が自由に選べ、利益や税額に違いは出ません。貸借対照表から何を読み取りやすくしたいかで選びます。
| 観点 | 直接法 | 間接法 |
|---|---|---|
| 帳簿価額(現在価値) | 一目でわかる | 取得価額から累計額を引いて計算 |
| 取得価額 | わからない(台帳等で確認) | そのまま表示される |
| これまでの償却額 | わからない(注記が必要) | 累計額でわかる |
| 主な採用 | 無形固定資産で用いられる | 有形固定資産で広く用いられる |
結論として、取得価額とこれまでの償却額、現在の帳簿価額のすべてを貸借対照表で把握できるため、有形固定資産では間接法が広く使われます。一方、ソフトウェアなどの無形固定資産は、慣行として直接法で記帳するのが一般的です。少額の資産をまとめて処理する一括償却資産や少額減価償却資産の特例とは、記帳の考え方が異なります。
売却・除却時の記帳
間接法で記帳している資産を売却・除却するときは、その資産に対応する減価償却累計額も同時に取り崩します。取得価額を貸方から落とすと同時に、減価償却累計額を借方で消し込み、帳簿価額と処分価額の差を売却損益や除却損とします。直接法では固定資産の帳簿残高がすでに現在価値になっているため、累計額の取崩しは不要です。固定資産の処分の詳しい仕訳は固定資産の除却と売却で解説しています。
見落としやすい落とし穴
記帳方法と計算方法を混同する
直接法・間接法は帳簿への記録の仕方(記帳方法)、定額法・定率法は減価償却費の求め方(計算方法)です。両者は別の論点で、どの計算方法で求めた減価償却費でも、直接法・間接法のどちらでも記帳できます。混同すると、選ぶべき項目を取り違えます。
減価償却累計額を負債と考える
減価償却累計額は仕訳では貸方に計上されますが、負債ではなく資産の控除項目(評価勘定)です。貸借対照表では資産の部にマイナス表示します。貸方に立つからといって負債の部に記載すると誤りです。資産から差し引く性格の勘定だと理解します。
直接法で累計額の注記を忘れる
直接法では固定資産が帳簿価額で表示され、取得価額やこれまでの償却額が貸借対照表からは読めません。そのため、減価償却累計額を注記する扱いになっています。直接法を採用しながら注記を省くと、情報開示として不十分になります。注記で取得価額の情報を補います。
売却時に累計額を取り崩さない
間接法の資産を売却・除却するときは、対応する減価償却累計額も取り崩します。累計額を残したまま取得価額だけを落とすと、帳簿価額がずれ、売却損益や除却損を誤ります。取得価額と累計額を同時に消し込み、処分価額との差額を損益にします。
記帳方法を選ぶ手順
| 手順 | 確認内容 |
|---|---|
| 1 | 計算方法(定額法・定率法など)で当期の減価償却費を求める |
| 2 | 取得価額と償却履歴を貸借対照表で見せたいなら間接法、現在価値を優先するなら直接法を選ぶ |
| 3 | 間接法なら貸方に減価償却累計額、直接法なら貸方に固定資産を計上して記帳する |
| 4 | 間接法は科目別か一括かの表示方法を決める。直接法は累計額を注記する |
| 5 | 選んだ記帳方法は継続して適用する。売却・除却時は間接法なら累計額も取り崩す |
想定Q&A(減価償却の記帳)
Q1. 直接法と間接法はどちらを選ぶべきですか
目的で選びます。貸借対照表で取得価額と償却履歴まで見せたいなら間接法、現在の帳簿価額を優先するなら直接法が向くからです。反対に、どちらを選んでも利益や税額は変わりません。有形固定資産では情報量の多い間接法が広く使われ、無形固定資産では直接法が一般的です。一度選んだら継続適用します。
Q2. 記帳方法で税額は変わりますか
変わりません。直接法でも間接法でも、計上する減価償却費の金額は同じで、費用として損益に与える影響も同じだからです。反対に、変わるのは貸借対照表の見せ方だけです。記帳方法は表示上の選択であり、税負担に影響しないため、管理のしやすさで選んで差し支えありません。
Q3. 減価償却累計額はどこに表示しますか
貸借対照表の資産の部にマイナス表示します。減価償却累計額は資産の控除項目(評価勘定)で、固定資産から差し引く性格を持つからです。反対に、仕訳では貸方に計上されますが、負債ではありません。取得価額から累計額を差し引いた金額が、その資産の帳簿価額になります。
Q4. 減価償却費と減価償却累計額はどう違いますか
当期分か累計かが違います。減価償却費はその年の価値の減少額で損益計算書の費用、減価償却累計額は取得から現在までの減少額の合計で貸借対照表の資産の控除項目だからです。反対に、両者は密接に関係し、毎年の減価償却費を足し合わせたものが減価償却累計額になります。載る決算書も役割も異なります。
Q5. 直接法と間接法は途中で変えられますか
むやみには変えません。記帳方法を期ごとに変えると、貸借対照表の期間比較がしにくくなるため、継続して適用するのが原則だからです。反対に、合理的な理由があれば変更できますが、その場合も影響を明らかにします。安定した比較のため、いったん選んだ方法を続けるのが基本です。
Q6. 定額法・定率法と直接法・間接法の関係は
別々に選ぶ独立した論点です。定額法・定率法は減価償却費をいくらにするかの計算方法、直接法・間接法はそれを帳簿にどう記録するかの記帳方法だからです。反対に、たとえば定率法で求めた減価償却費を間接法で記帳する、といった組み合わせが自由にできます。金額の決め方と記録の仕方は分けて考えます。
Q7. 科目別と一括の間接控除法はどう違いますか
累計額を科目ごとに示すか、まとめて示すかが違います。科目別間接控除法は固定資産の科目ごとに減価償却累計額を表示し、一括間接控除法は累計額の合計だけを表示するからです。反対に、科目別は資産ごとの状況を細かく把握できますが表示が増え、一括はすっきりする代わりに内訳が見えません。開示の詳しさで選びます。
Q8. 無形固定資産はどちらで記帳しますか
直接法が一般的です。ソフトウェアや特許権などの無形固定資産は、慣行として取得価額から直接減額する直接法で記帳することが多いからです。反対に、有形固定資産では取得価額と累計額を残す間接法が広く使われます。資産の種類によって、実務で用いられる記帳方法の傾向が異なります。
Q9. 売却時の間接法の仕訳はどうなりますか
取得価額と累計額を同時に消し込みます。間接法では固定資産が取得価額のまま、対応する減価償却累計額が別に積み上がっているため、売却時は両方を落とし、帳簿価額と売却額の差を損益にするからです。反対に、累計額の取崩しを忘れると帳簿価額がずれます。取得価額を貸方から、累計額を借方から落とすのが基本です。
Q10. 会計ソフトでも記帳方法を選べますか
選べることが多いです。会計ソフトや固定資産管理機能では、直接法・間接法のいずれで記帳するかを設定できるのが一般的だからです。反対に、いったん設定した方法を継続適用する点は手作業と同じです。ソフトが自動で仕訳や累計額の管理を行うため、実務では間接法での自動処理が広く使われています。
Q11. 帳簿価額はどうやって求めますか
取得価額から減価償却累計額を差し引きます。帳簿価額(未償却残高)は、その資産にまだ費用化していない部分で、取得価額から累計額を引いて求まるからです。反対に、直接法では固定資産の帳簿残高そのものが帳簿価額なので計算不要です。間接法では取得価額と累計額の差、直接法では固定資産残高がそのまま帳簿価額です。
まとめ
減価償却の記帳方法には直接法と間接法があります。直接法は固定資産から減価償却費を直接減らし、貸借対照表に現在の帳簿価額が表れます。間接法は減価償却累計額(評価勘定)を使い、固定資産は取得価額のまま、累計額をマイナス表示します。どちらを選んでも利益や税額は変わらず、貸借対照表で何を読み取りやすくしたいかで選びます。有形固定資産では間接法が広く使われます。記帳方法(直接法・間接法)と計算方法(定額法・定率法)は別の論点である点を、しっかり切り分けて理解しましょう。
- 記帳方法は直接法と間接法。どちらでも利益・税額は変わらず、貸借対照表の見せ方が違う
- 直接法は固定資産を直接減額し帳簿価額を表示。取得価額は注記で補う
- 間接法は減価償却累計額(評価勘定)を使い、取得価額と累計額の両方を表示する
- 減価償却費は損益計算書の費用、減価償却累計額は貸借対照表の資産の控除項目
- 記帳方法(直接法・間接法)と計算方法(定額法・定率法)は別の論点として切り分ける
※本記事は作成時点の会計実務・簿記の一般的な取扱いに基づく解説です。仕訳例は簡略な設例であり、勘定科目名や表示方法は会計方針・会計ソフトにより異なる場合があります。個別の判断は、最新の情報の確認、または顧問税理士・公認会計士へのご相談をおすすめします。

