税効果会計とは?一時差異・法定実効税率・繰延税金資産の回収可能性をわかりやすく解説

会計

税効果会計は、会計上の利益と税金費用を期間的に対応させるための会計処理です。法人税等は課税所得に対して課されますが、会計の利益(税引前当期純利益)と税務の課税所得は、費用や収益を計上する時期のズレなどで一致しません。そのままでは、税引前利益と法人税等の金額が対応せず、財務諸表が業績の実態を映しにくくなります。このズレを調整するのが税効果会計です。

仕組みの核心は、いずれ解消する差(一時差異)にだけ着目し、将来の税負担の増減を「繰延税金資産・繰延税金負債」として今の財務諸表に映すことにあります。税理士の実務では、別表四・五で把握する加算・減算項目のうち、どれが一時差異でどれが永久差異かを見極めることが出発点になります。本記事では、一時差異と永久差異の区別、法定実効税率、回収可能性、仕訳と表示、そして中小企業での適用要否までを、税務との接点を意識して整理します。

この記事のポイント
  • 税効果会計の目的は、税引前当期純利益と法人税等を合理的に対応させること
  • 対象は「一時差異」だけ。交際費・寄附金の損金不算入や受取配当益金不算入などの永久差異は対象外
  • 将来減算一時差異は繰延税金資産、将来加算一時差異は繰延税金負債を生む
  • 繰延税金資産=将来減算一時差異等×解消見込年度の法定実効税率−評価性引当額
  • 繰延税金資産は回収可能性の検討が必須(企業分類1〜5・適用指針第26号)
  • 中小企業は強制ではなく、中小会計指針では重要性がある場合に適用。非上場の中小は適用しない例も多い

税効果会計とは(目的と全体像)

税効果会計は、企業会計基準の「税効果会計に係る会計基準」および企業会計基準適用指針第28号、繰延税金資産の回収可能性に関する企業会計基準適用指針第26号などに基づく処理です。会計と税務のズレのうち、将来解消して税負担を増減させる差を、繰延税金資産(将来の税金の前払い的な性格)または繰延税金負債(将来の税金の未払い的な性格)として計上し、その増減を損益計算書の法人税等調整額で調整します。これにより、税引前当期純利益と税金費用の関係が法定実効税率とおおむね整合するようになります。

一時差異と永久差異の区別(ここが出発点)

税効果会計の対象になるのは一時差異だけで、永久差異は対象になりません。別表四で加算・減算した項目が、いずれ反対の調整で戻る(解消する)なら一時差異、二度と戻らないなら永久差異、という見方が実務的です。

区分 内容 税効果 代表例
一時差異 会計と税務の資産・負債の差で、将来解消するもの 対象 貸倒引当金繰入超過額、賞与引当金、減価償却超過額、未払事業税、繰越欠損金(一時差異等)
永久差異 将来にわたって解消しない差 対象外 交際費の損金不算入額、受取配当等の益金不算入、寄附金の損金不算入、罰金・科料
見分け方のコツは「その加算・減算は、将来どこかの期で逆方向に戻るか」です。貸倒引当金繰入超過額は、翌期以降に洗替えや損金算入で戻るので一時差異です。交際費の損金不算入は戻らないので永久差異です。加算・減算項目の性質は別表四・別表五の見方と書き方とあわせて確認すると整理できます。

将来減算一時差異と将来加算一時差異

一時差異は、解消したときに課税所得を減らすか増やすかで2つに分かれます。

種類 解消時の効果 計上するもの
将来減算一時差異 解消時に課税所得を減らす(例:引当金繰入超過額、減価償却超過額) 繰延税金資産
将来加算一時差異 解消時に課税所得を増やす(例:特別償却準備金、圧縮積立金) 繰延税金負債

税務上の繰越欠損金は、それ自体は資産負債の差ではありませんが、将来の課税所得と相殺して税負担を減らす点で将来減算一時差異と同様の効果を持つため、「一時差異等」として税効果の対象になります。繰越欠損金の仕組みは繰越欠損金とはで解説しています。

法定実効税率の算式と使い方

繰延税金資産・負債は、一時差異等に法定実効税率を乗じて計算します。法定実効税率は、企業が利益に対して実質的に負担する税率で、事業税が損金算入されることを織り込んだ次の算式で求めます。

法定実効税率 = {法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率(特別法人事業税を含む)} ÷ (1+事業税率)

たとえば法定実効税率を約30%とすると、将来減算一時差異が1,000万円あるとき、繰延税金資産は「1,000万円×30%=300万円」です。重要なのは、乗じる税率が「その一時差異が解消すると見込まれる事業年度」の法定実効税率である点です。税制改正で将来の税率が変わる場合は、改正後の税率で計算し直します。

繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産は「将来の税負担を減らせる」ことを前提に計上する資産です。そのため、将来に十分な課税所得が見込めるか(回収可能性)を検討し、回収が見込めない部分は評価性引当額として控除します。適用指針第26号は、過去の課税所得や欠損金の発生状況などから企業を分類1〜5に区分し、計上できる繰延税金資産の範囲を判断する枠組みを示しています。

分類 おおまかなイメージ 回収可能性の目安
分類1 安定して高い課税所得が続く 原則、全額を回収可能とする
分類2 課税所得は安定だが業績変動の余地 スケジューリング可能な差異は回収可能
分類3 業績が不安定 おおむね5年内に解消見込みの分
分類4 欠損の計上や課税所得の減少傾向 原則、翌期1年分に限定
分類5 継続的に重要な欠損 原則、計上できない

実際の分類要件は過去数年の課税所得・欠損金の状況で細かく定められており、上表はイメージです。回収可能性の判断は税効果会計でもっとも見積りの要素が大きく、監査でも重点的に検討される部分です。

仕訳と表示(法人税等調整額)

繰延税金資産を計上するときの相手科目は「法人税等調整額」です。将来減算一時差異が新たに生じた期は、次のように処理します。

設例(賞与引当金)
決算で賞与引当金1,000万円を計上したが、税務上は損金不算入で翌期に損金算入される見込み。法定実効税率30%とすると、将来減算一時差異1,000万円に対し繰延税金資産300万円を計上します。仕訳は「(借)繰延税金資産 300万円/(貸)法人税等調整額 300万円」です。損益計算書では、法人税等の下に法人税等調整額をマイナス表示し、当期の税金費用を実質的に減らして税引前利益と対応させます。翌期に賞与引当金が損金算入されて差異が解消したときは、逆仕訳で繰延税金資産を取り崩します。

表示上は、繰延税金資産は投資その他の資産、繰延税金負債は固定負債に計上します。同一の納税主体に係る繰延税金資産と繰延税金負債は、相殺して純額で表示します。

中小企業は適用すべきか

税効果会計は、上場企業や会社法上の大会社では実質的に必須ですが、中小企業では一律に強制されるものではありません。中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)では、一時差異に重要性がある場合に税効果会計を適用するとされ、中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)では税効果会計を必ずしも求めていません。実務上、非上場の中小企業では税効果会計を適用しない例も多くみられます。

とはいえ、金融機関に提出する決算書の見え方を整えたい場合や、賞与引当金・貸倒引当金などの一時差異が大きい場合は、中小でも税効果会計を適用する意義があります。ただし繰延税金資産の回収可能性は、業績が不安定な中小ほど慎重な検討が必要で、安易な計上は避けるべきです。

実務上の落とし穴

永久差異に税効果を計上してしまう
交際費の損金不算入額や寄附金の損金不算入額は永久差異で、税効果の対象になりません。別表の加算項目をすべて一時差異として拾うと誤りになります。
回収可能性を検討せず過大計上
赤字が続く会社で将来減算一時差異に機械的に税率を掛けて繰延税金資産を計上すると、回収可能性のない資産を計上することになります。評価性引当額の検討は毎期必要です。
解消見込年度の税率を使っていない
乗じる税率は「差異が解消する期」の法定実効税率です。税制改正で税率が変わる場合、改正後の税率で計算し直す必要があります。

想定Q&A集

Q1. 税効果会計を一言でいうと

会計の利益と税金費用のズレのうち、将来解消する差だけを繰延税金資産・負債として計上し、税引前当期純利益と法人税等を対応させる処理です。

Q2. 一時差異と永久差異はどう違いますか

一時差異は将来どこかの期で反対方向に解消する差で、税効果の対象です。永久差異は将来にわたって解消しない差で、対象外です。別表の加算・減算が将来戻るかどうかで見分けます。

Q3. 交際費の損金不算入は税効果の対象ですか

対象外です。交際費の損金不算入額は永久差異で、将来解消しないため繰延税金資産・負債を生みません。同様に寄附金の損金不算入や受取配当等の益金不算入も永久差異です。

Q4. 繰延税金資産はどう計算しますか

将来減算一時差異等の金額に、解消見込年度の法定実効税率を乗じ、回収可能性のない部分(評価性引当額)を控除して求めます。たとえば実効税率30%で将来減算一時差異1,000万円なら、繰延税金資産は原則300万円です。

Q5. 法定実効税率とは何ですか

企業が利益に対して実質的に負担する税率です。事業税が損金算入されることを織り込み、法人税・地方法人税・住民税・事業税(特別法人事業税を含む)を組み合わせた算式で求めます。表面の税率を単純合計したものとは異なります。

Q6. 回収可能性では何を見ますか

将来に十分な課税所得が見込めるかを見ます。過去の課税所得や欠損金の発生状況から企業を分類1〜5に区分し、計上できる繰延税金資産の範囲を判断します。回収が見込めない部分は評価性引当額として控除します。

Q7. 繰越欠損金も税効果の対象ですか

対象です。税務上の繰越欠損金は、将来の課税所得と相殺して税負担を減らす効果があるため「一時差異等」として繰延税金資産の対象になります。ただし、こちらも回収可能性の検討が前提です。

Q8. 中小企業も適用が必要ですか

一律には必要ありません。中小会計指針では一時差異に重要性がある場合に適用するとされ、中小会計要領では必ずしも求めていません。非上場の中小では適用しない例も多いですが、引当金など一時差異が大きい場合や決算書の見え方を整えたい場合は適用する意義があります。

Q9. 法人税等調整額とは何ですか

繰延税金資産・負債の増減を損益計算書に反映するための科目です。法人税等の下に表示し、税引前当期純利益と税金費用が対応するように調整します。繰延税金資産が増える期は税金費用を減らす方向に働きます。

Q10. 税率が変わったらどうしますか

改正後の税率で繰延税金資産・負債を計算し直します。乗じるのは差異が解消する期の法定実効税率のため、税制改正で将来の税率が変わる場合は、その改正後の税率を用います。

Q11. 繰延税金資産と繰延税金負債は相殺しますか

同一の納税主体に係るものは相殺し、純額で表示します。異なる納税主体のものは相殺しません。

Q12. 赤字の会社でも繰延税金資産を計上できますか

計上できる場合もありますが、限定的です。継続的に重要な欠損がある会社(分類5に近い状況)は、原則として繰延税金資産を計上できません。将来の課税所得が見込める根拠があるかを慎重に検討します。

税効果会計の判断フロー

手順 確認すること
1 会計と税務の差異を洗い出し、一時差異か永久差異かを区分する
2 一時差異を将来減算・将来加算に分類し、繰越欠損金等も加える
3 解消見込年度の法定実効税率を確定する
4 一時差異等に税率を乗じ、繰延税金資産・負債を算定する
5 繰延税金資産の回収可能性(企業分類)を検討し、評価性引当額を控除する
6 法人税等調整額で損益を調整し、相殺表示・注記を行う

まとめ

税効果会計は、会計と税務のズレのうち将来解消する一時差異だけを取り出し、繰延税金資産・負債と法人税等調整額を使って税引前利益と税金費用を対応させる処理です。実務では、別表の加算・減算を一時差異と永久差異に正しく仕分けること、解消見込年度の法定実効税率を使うこと、そして繰延税金資産の回収可能性を毎期慎重に検討することが要になります。

この記事のまとめ
  • 目的は税引前当期純利益と法人税等の合理的な対応
  • 対象は一時差異のみ。交際費・寄附金などの永久差異は対象外
  • 将来減算一時差異は繰延税金資産、将来加算一時差異は繰延税金負債。繰越欠損金も対象
  • 繰延税金資産=一時差異等×解消見込年度の法定実効税率−評価性引当額
  • 回収可能性は企業分類1〜5で判断(適用指針第26号)
  • 中小企業は強制ではない。重要性や決算書の見え方を踏まえて適用を判断

※本記事は作成時点の会計基準・適用指針・公表資料(税効果会計に係る会計基準、企業会計基準適用指針第28号、繰延税金資産の回収可能性に関する企業会計基準適用指針第26号、企業会計基準第27号、中小企業の会計に関する指針・基本要領等)に基づく一般的な解説です。個別の判断は事実関係により異なるため、具体的な取扱いは最新の基準・適用指針の確認、または税理士・公認会計士へのご相談をおすすめします。

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