小口現金とは?インプレスト・システムの仕訳と小口現金出納帳の書き方をわかりやすく解説

会計

電車代や文房具代のような日々の少額の支払いに、そのつど小切手を切っていては手間がかかります。そこで、あらかじめ一定額の現金を担当者に前渡ししておき、使った分をあとでまとめて補給する仕組みが小口現金です。前渡しと補給を管理するのは会計係、実際の支払いを行うのは各部署の用度係で、この役割分担が処理のポイントになります。とくに、簿記で仕訳の対象になるのは会計係が行った取引だけで、用度係の支払いは仕訳せず小口現金出納帳に記録します。

この記事では、小口現金とインプレスト・システムの仕組み、前渡し・支払報告・補給の仕訳、小口現金出納帳の書き方までを整理します。

この記事のポイント
  • 小口現金は、日々の少額経費の支払いに備えて担当者に前渡ししておく現金
  • インプレスト・システム(定額資金前渡制度)は、使った額と同額を補給し、常に定額に戻す方法
  • 仕訳の対象は会計係の取引だけ。用度係の支払いは仕訳せず小口現金出納帳に記録する
  • 仕訳は、前渡し・支払報告・補給の3場面。報告と同時に補給するなら小口現金勘定を使わない
  • 前渡し・補給は資金の移動で消費税は不課税。支払った経費は各科目の課税区分による

小口現金とインプレスト・システムとは

小口現金は、交通費・通信費・消耗品費などの少額の支払いに使うため、社内に置いておく現金です。会計係が各部署の用度係(小口係・小払係とも呼びます)に一定額を前渡しし、用度係がそこから日々の支払いを行います。補給の方法には、使った額と同額を補給して残高を常に一定に戻す定額資金前渡制度(インプレスト・システム)と、必要に応じて随時補給する随時補給制度があります。多くの会社は、管理の手間が少ない定額資金前渡制度を採用しています。

方法 特徴
定額資金前渡制度 使った額と同額を補給し、補給後は常に定額に戻す(インプレスト・システム)
随時補給制度 前渡額を一定に決めず、必要に応じて随時補給する

会計処理の流れ(仕訳)

定額5万円のインプレスト・システムを例に、仕訳の流れを見ます。用度係が支払った時点では会計係は仕訳せず、後日まとめて支払報告を受けたときに各費用へ振り替えます。前渡しや補給で小切手を振り出すと当座預金が減ります。当座預金や小切手の扱いは手形・電子記録債権(でんさい)の仕訳もあわせてご覧ください。

場面 借方 金額 貸方 金額
前渡し(設定) 小口現金 50,000 当座預金 50,000
用度係の支払い 仕訳なし(用度係が小口現金出納帳に記録)
支払報告 旅費交通費 10,000 小口現金 25,000
通信費 8,000
消耗品費 5,000
雑費 2,000
補給 小口現金 25,000 当座預金 25,000

補給によって小口現金は再び5万円に戻ります。使った額と同額を補給して定額を保つのが、インプレスト・システムの特徴です。

報告と同時に補給する場合

支払報告を受けて、ただちに同額を補給する場合は、支払報告の仕訳と補給の仕訳が相殺されるため、小口現金勘定を使いません。貸方の相手は当座預金になります。

借方 金額 貸方 金額
旅費交通費 10,000 当座預金 25,000
通信費 8,000
消耗品費 5,000
雑費 2,000

小口現金出納帳の書き方

小口現金出納帳は、小口現金の受入れと支払いを記録する補助簿です。用度係が支払いのつど記入し、受入金額・日付・摘要・支払金額・支払内訳(勘定科目ごと)・残高を残します。一定期間ごとに内訳を集計して会計係に報告し、1日の終わりには帳簿残高と実際の現金が一致するかを確認します。次は受入5万円で始め、週内に25,000円を支払った例です。

受入 摘要 支払 交通費 通信費 残高
50,000 前渡し 50,000
電車代 10,000 10,000 40,000
切手代 15,000 15,000 25,000

上の例では内訳を交通費と通信費だけ示していますが、実際は消耗品費・雑費なども列を設けて記録します。旅費交通費の実務は出張旅費・日当はどこまで非課税もあわせてご覧ください。

消費税の取扱い

小口現金の前渡しや補給は、単なる資金の移動なので消費税の対象外(不課税)です。消費税を認識するのは、用度係が支払った経費を各費用へ計上する支払報告の段階で、その内容(旅費交通費・消耗品費など)ごとの課税区分に従います。切手や印紙のように、購入時ではなく使用時に課税仕入れとするものもあるため、内訳の科目に応じて判断します。

実務上の落とし穴

用度係の支払い時に仕訳してしまう

仕訳の対象になるのは会計係の取引だけです。用度係が支払った時点では会計係は仕訳せず、後日の支払報告を受けてまとめて各費用へ振り替えます。支払いのつど仕訳すると、報告時と二重計上になります。

報告と同時に補給したのに小口現金勘定を使う

支払報告と同時に補給する場合は、支払報告と補給の仕訳が相殺されるため、小口現金勘定は使いません。貸方は当座預金になります。ここで小口現金を経由させると、余計な動きが入ります。

出納帳の残高と実際有高を照合しない

1日の終わりに、小口現金出納帳の残高と手元の実際の現金が一致するかを確認します。合わないまま次の出し入れをすると、原因の特定が難しくなります。ズレは現金過不足として処理し、原因を追います。

支払内訳(勘定科目)を記録しない

出納帳に金額だけを書いて内訳の科目を残さないと、報告時に会計係が何の費用か分からず処理できません。交通費・通信費・消耗品費・雑費などの内訳ごとに記録し、領収書も保管します。

管理の手間とリスクを軽視する

現金を社内に置くため、盗難・紛失・横領のリスクや、日々の実査・記帳の負担があります。近年はキャッシュレス決済や経費精算システムで小口現金そのものを廃止する会社も増えています。運用コストとリスクを踏まえて管理方法を見直します。

判断フロー

手順 確認すること
1 会計係が用度係へ一定額を前渡しする(小口現金/当座預金)
2 用度係は支払いのつど小口現金出納帳に記録する(会計係は仕訳しない)
3 一定期間ごとに支払報告を受け、内訳を各費用へ振り替える
4 使った額と同額を補給し、定額に戻す(同時補給なら小口現金勘定は使わない)
5 帳簿残高と実際有高を照合し、ズレは現金過不足で処理する

想定Q&A集

Q1. 小口現金と現金は何が違いますか

実態はどちらも紙幣・硬貨ですが、簿記上は別の勘定で管理します。小口現金は、少額経費の支払い用に用度係へ前渡しした現金で、部署ごとに小口現金出納帳で管理します。会社全体の現金は現金勘定・現金出納帳で管理します。

Q2. インプレスト・システムとはどんな仕組みですか

定額資金前渡制度のことで、一定期間に使った額と同額を補給して、補給後の残高を常に一定に保つ方法です。たとえば定額5万円で、週内に2万5千円使えば2万5千円を補給し、また5万円に戻します。

Q3. 用度係が支払ったとき、会計係は仕訳しますか

しません。仕訳の対象になるのは会計係の取引だけです。用度係の支払いは小口現金出納帳に記録し、後日まとめて支払報告を受けたときに、会計係が各費用へ振り替える仕訳を行います。

Q4. 前渡しのときの仕訳は

借方に小口現金、貸方に当座預金(小切手を振り出した場合)を記入します。普通預金や現金から渡した場合は、貸方がそれぞれ普通預金・現金になります。小口現金という資産が増え、その分の当座預金などが減ります。

Q5. 支払報告を受けたときの仕訳は

報告された内訳ごとに、借方へ旅費交通費・通信費・消耗品費・雑費などの費用を計上し、貸方に小口現金をその合計額だけ記入します。これで使った分の小口現金が減り、各費用が計上されます。

Q6. 報告と同時に補給したときはどうなりますか

支払報告の仕訳と補給の仕訳が相殺されるため、小口現金勘定を使いません。借方に各費用、貸方に当座預金を記入します。小口現金の残高は動かず、定額のまま保たれます。

Q7. 小口現金出納帳には何を書きますか

受入金額・日付・摘要・支払金額・支払内訳(勘定科目ごと)・残高を記入します。補助簿にあたり、一定期間ごとに内訳を集計して会計係に報告します。1日の終わりに、帳簿残高と実際の現金が一致するかを確認します。

Q8. 小口現金の前渡しや補給に消費税はかかりますか

かかりません。前渡しや補給は資金の移動にすぎず、消費税の対象外(不課税)です。消費税を認識するのは、支払報告で各費用へ計上する段階で、その科目の課税区分に従います。

Q9. 帳簿と実際の小口現金が合わないときは

まず原因を調べます。原因がすぐに分からない場合は、いったん現金過不足として処理し、判明したら正しい科目へ、決算まで不明なら雑損・雑益へ振り替えます。合わないまま新たな出し入れをしないことが大切です。

Q10. 小口現金は廃止できますか

できます。近年は、盗難・紛失リスクや管理の手間を減らすため、法人カードやキャッシュレス決済、経費精算システムへ切り替えて小口現金を廃止する会社が増えています。運用コストと管理負担を踏まえて検討するとよいでしょう。

まとめ

小口現金は、日々の少額経費の支払いに備えて用度係へ前渡ししておく現金です。使った額と同額を補給して定額に戻すのがインプレスト・システムで、仕訳の対象になるのは会計係の取引だけです。前渡し・支払報告・補給の3場面で処理し、報告と同時に補給するなら小口現金勘定を使いません。前渡し・補給は消費税不課税で、経費は支払報告時に各科目の区分で認識します。出納帳の残高と実際有高を毎日照合し、内訳の科目をきちんと残すことが、正確な処理の勘どころです。

この記事のまとめ
  • 小口現金=少額経費の支払い用に用度係へ前渡しする現金
  • インプレスト・システムは使った額と同額を補給し、常に定額に戻す
  • 仕訳は会計係の取引だけ。用度係の支払いは出納帳に記録
  • 前渡し・支払報告・補給の3場面。同時補給なら小口現金勘定を使わない
  • 前渡し・補給は消費税不課税。経費は支払報告時に各科目の区分で処理

※本記事は作成時点の会計慣行・簿記の一般的な処理に基づく解説です。個別の事案によって取扱いが異なる場合があるため、具体的な判断は最新の基準の確認や、顧問税理士への相談をおすすめします。

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