寄附金の損金不算入額の計算|4区分の意義・限度額の別表調整・寄附金認定まで解説

法人税

法人が支出した寄附金は、対価を伴わない支出のため、全額を損金にできるわけではありません。無制限に損金算入を認めると、利益を外部へ移転して法人税を不当に軽減できてしまうため、法人税法37条は寄附金の損金算入に上限を設けています。ただし、その上限は寄附先の性格によって大きく異なり、国や地方公共団体・指定寄附金は全額損金、特定公益増進法人は別枠の限度額まで、一般の寄附金は最も狭い限度額まで、100%グループ内や国外関連者への寄附金は全額損金不算入と、4つの区分に分かれます。この記事では、国税庁No.5281と法人税法37条を軸に、4区分の意義、一般・特別の損金算入限度額の計算式、所得基準を別表四で回し戻す実務、低額譲渡や無利息貸付の寄附金認定までを設例つきで整理します。

この記事のポイント

  • 寄附金は寄附先で4区分。指定寄附金等は全額損金、特定公益増進法人は別枠限度額、一般寄附金は狭い限度額、グループ内・国外関連者は全額不算入。
  • 一般寄附金の損金算入限度額は(資本金の額等×月数/12×2.5/1000+所得×2.5/100)×1/4。
  • 特定公益増進法人等への特別損金算入限度額は(資本金の額等×月数/12×3.75/1000+所得×6.25/100)×1/2で別枠。
  • 限度額計算の所得金額は、別表四の仮計に支出寄附金を足し戻した金額を使う(回し戻し)。
  • 低額譲渡・無利息貸付・債権放棄は経済的利益の供与として寄附金認定される場合がある。

寄附金の損金算入が制限される理由

法人税法上の寄附金とは、寄附金・拠出金・見舞金その他いずれの名義であるかを問わず、法人が行った金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与をいいます(法人税法37条7項)。ただし、広告宣伝費・見本品費・交際費・福利厚生費に該当するものは寄附金から除かれます。

寄附金は対価を伴わない支出で事業との関連性が明確でないため、全額の損金算入を認めると、法人が利益を外部に移転して課税所得を恣意的に圧縮できてしまいます。そこで、公益性の高いものを除いて損金算入に上限が設けられています。寄附金か交際費かの区分は寄附金と交際費の区分で解説しています。本記事は寄附金に区分された後の損金不算入額の計算を扱います。

寄附金の4区分とその意義

寄附金は、寄附先の性格によって次の4つに区分され、損金算入の扱いが大きく異なります。区分を誤ると損金不算入額の計算全体が狂うため、まず寄附先を正確に区分することが出発点です。

区分 意義・対象例 損金算入
国等への寄附金・指定寄附金 国・地方公共団体への寄附、財務大臣が指定した寄附金(共同募金・国宝修復・学校法人の教育研究等) 全額損金算入
特定公益増進法人等への寄附金 公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人、認定NPO法人等でその主たる目的業務に関連するもの 特別損金算入限度額まで(別枠)
一般の寄附金 上記以外の寄附金(神社の祭礼、政治団体への拠金、町内会等) 一般損金算入限度額まで
グループ内・国外関連者への寄附金 完全支配関係(100%)のある内国法人・国外関連者への寄附金 全額損金不算入

指定寄附金とは、公益法人等に対する寄附金のうち、公益性が高く緊急を要するなどの理由で財務大臣が個別に指定したものをいい、国等への寄附金と同様に全額が損金算入されます。特定公益増進法人とは、教育・科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など公益の増進に著しく寄与すると認められた法人で、これらへの寄附金は一般寄附金とは別枠の特別損金算入限度額まで損金算入できます。

ヒント:特定公益増進法人等への寄附金のうち、特別損金算入限度額を超えて損金にできなかった部分は、切り捨てるのではなく一般の寄附金の額に含めて、一般損金算入限度額の枠で再度判定します。二段構えで損金算入の可否を判断する点が実務のポイントです。

損金算入限度額の計算式(一般・特別)

資本または出資を有する普通法人の損金算入限度額は、資本基準額と所得基準額を組み合わせて計算します。一般寄附金と特定公益増進法人等とで係数が異なります。

区分 損金算入限度額の計算式
一般寄附金の限度額 (資本金の額等×当期の月数/12×2.5/1000+所得の金額×2.5/100)×1/4
特定公益増進法人等の特別限度額 (資本金の額等×当期の月数/12×3.75/1000+所得の金額×6.25/100)×1/2
資本又は出資を有しない法人(一般) 所得の金額×1.25/100

計算式の「資本金の額等」は、期末の資本金の額および資本準備金の額の合計額です。令和4年度改正により、従来の「資本金等の額」から現在の基準に変わっている点に注意します。「当期の月数」は事業年度の月数で、1年決算法人なら12です。

注意点:所得の金額を確定所得と取り違える:限度額計算に使う「所得の金額」は、確定した課税所得ではありません。別表四の仮計の金額に、支出した寄附金の額を足し戻した金額を用います。寄附金を損金に落とす前の所得で限度額を計算する趣旨で、この足し戻し(回し戻し)を忘れると限度額が過小になり、損金不算入額を誤ります。

損金不算入額の計算と別表調整(設例)

損金不算入額は、支出した寄附金の総額から、全額損金算入できる寄附金・特別損金算入限度額・一般損金算入限度額を差し引いて求めます。次の設例で計算します。

前提(1年決算の普通法人) 金額
期末の資本金の額及び資本準備金の額 2,000万円
別表四の仮計の金額 1,000万円
特定公益増進法人への寄附金 30万円
一般の寄附金 50万円

まず限度額計算に使う所得の金額を求めます。仮計1,000万円に支出寄附金80万円(30万円+50万円)を足し戻し、所得の金額は1,080万円となります。これを各限度額の式に当てはめます。

項目 計算
一般限度額 (2,000万×2.5/1000+1,080万×2.5/100)×1/4=8万円
特別限度額 (2,000万×3.75/1000+1,080万×6.25/100)×1/2=37.5万円
特定公益増進法人分の判定 寄附30万円≦特別限度額37.5万円 なので全額損金
一般寄附金分の判定 寄附50万円>一般限度額8万円 なので42万円が不算入
損金不算入額 42万円

この設例では、特定公益増進法人への30万円は特別限度額の枠内で全額損金、一般寄附金50万円のうち限度超過42万円が損金不算入となります。損金不算入額42万円は、確定申告書の別表十四(二)で計算し、別表四で加算(社外流出)します。別表四・別表五の関係は別表四・別表五(一)の見方と書き方を参照してください。

ヒント:寄附金は現実に支払った日の属する事業年度で認識することから、未払計上した寄附金は実際に支払うまで認識できません。

この未払寄附金は、当期に切り捨てられて終わりではなく、実際に支払った翌期以降に、その支払った事業年度の寄附金として取り扱われます。したがって、当期に会計上費用計上して未払計上した寄附金は、当期の別表四で加算(留保)しておき、翌期以降に実際に支払った時点で別表四で減算(留保)して戻し、その金額をその支払った期の支出寄附金に含めて損金算入限度額を計算します。会計と税務で認識時期がずれるため、留保の申告調整で期をまたいで管理する必要があります。

時期 会計処理 税務調整(別表四)
当期(未払計上) 寄附金を費用計上し未払金を計上 未払寄附金を加算(留保)。当期の寄附金には含めない
翌期以降(実際に支払) 未払金を取り崩し(費用計上なし) 前期加算分を減算(留保)し、その額を当期の支出寄附金として限度額計算に算入。超過分は加算(社外流出)

注意点:翌期の減算漏れと限度額算入漏れ:未払寄附金を当期に加算(留保)したまま、翌期の支払時に別表四での減算(留保)を忘れると、同じ寄附金が二重に課税所得へ算入されてしまいます。逆に、減算だけ行って翌期の支出寄附金に含めずに限度額計算をすると、本来損金にできる部分まで落とせません。翌期は「前期加算分の減算」と「支出寄附金への算入・限度計算」をセットで行い、限度超過分のみを社外流出で加算します。

寄附金認定(低額譲渡・無利息貸付・債権放棄)

寄附金は、金銭を贈与した場合だけでなく、経済的利益を無償または低額で供与した場合にも認定されます。「寄附したつもりがない」取引でも、税務上は寄附金として損金算入が制限されることがあり、実務で特に問題になります。

取引 寄附金とされる額
資産の低額・無償譲渡 時価と譲渡対価との差額
無利息・低利の金銭貸付 通常収受すべき利息と実際の利息との差額
債権放棄・債務免除 放棄・免除した金額(相当な理由がある場合を除く)

注意点:関係会社支援を安易に行うと寄附金認定:子会社や関係会社への無利息貸付、低額での資産譲渡、債権放棄などは、経済的利益の供与として寄附金認定され、損金算入が制限されるおそれがあります。ただし、子会社の倒産を防ぐための合理的な再建支援など、相当な理由がある場合は寄附金に当たらないとされることもあります。支援の前に理由と証拠を整えることが重要です。

100%グループ内・国外関連者への寄附金

完全支配関係(100%の資本関係)のある内国法人間の寄附金は、支出した側で全額が損金不算入となり、受け取った側では全額が益金不算入となります。グループ全体での利益移転を課税上中立にする、グループ法人税制の一環です。この対応関係により、グループ内で寄附金を出しても法人税は減りません。

立場 取扱い
寄附金を支出した法人 支出額の全額が損金不算入
寄附金を受けた法人 受贈益の全額が益金不算入

この全額損金不算入・全額益金不算入の対応は、法人による完全支配関係がある場合に適用されます(個人による完全支配関係の場合は適用が異なります)。受け取った側の受贈益・債務免除益の扱いは受贈益・債務免除益とはで解説しています。また、国外関連者(50%以上の資本関係等がある国外の法人)への寄附金も、移転価格税制により全額が損金不算入とされます。

判断フロー(寄附金の損金算入)

順序 判断内容
1 その支出は寄附金か(交際費・広告宣伝費・福利厚生費でないか)
2 100%グループ内・国外関連者への寄附金か(該当なら全額不算入)
3 国等への寄附金・指定寄附金か(該当なら全額損金)
4 特定公益増進法人等か(該当なら特別限度額まで損金・超過は一般枠へ)
5 残りは一般寄附金として一般限度額まで損金・超過を別表四で加算

想定Q&A(寄附金の損金不算入)

Q1. 寄附金は全額損金になりますか

なりません。全額損金になるのは国・地方公共団体への寄附金と財務大臣指定の指定寄附金だけです。特定公益増進法人等は別枠の限度額まで、一般寄附金は狭い限度額までで、100%グループ内や国外関連者への寄附金は全額が損金不算入です。寄附先の区分で扱いが変わります。

Q2. 指定寄附金とは何ですか

公益法人等への寄附金のうち、公益性が高く緊急を要するなどの理由で財務大臣が個別に指定したものです。国宝の修復、赤い羽根共同募金、学校法人の教育研究などが対象で、国等への寄附金と同様に全額が損金算入されます。指定されているかは寄附先や告示で確認します。

Q3. 特定公益増進法人への寄附金はどう扱いますか

一般寄附金とは別枠の特別損金算入限度額まで損金算入できます。限度額は(資本金の額等×月数/12×3.75/1000+所得×6.25/100)×1/2です。この枠を超えた部分は切り捨てず、一般の寄附金に含めて一般限度額で再判定します。

Q4. 一般寄附金の損金算入限度額の計算式は

資本または出資を有する普通法人の場合、(資本金の額等×月数/12×2.5/1000+所得の金額×2.5/100)×1/4です。資本金の額等は期末の資本金の額と資本準備金の額の合計額です。資本または出資を有しない法人は、所得の金額×1.25/100で計算します。

Q5. 限度額計算の所得の金額は確定所得ですか

違います。別表四の仮計の金額に、支出した寄附金の額を足し戻した金額を使います。寄附金を損金に落とす前の所得で限度額を計算する趣旨です。この足し戻し(回し戻し)を忘れると所得基準が過小になり、限度額と損金不算入額を誤ります。

Q6. 損金不算入額はどう申告書に反映しますか

別表十四(二)で寄附金の区分ごとに限度額と損金不算入額を計算し、その不算入額を別表四で加算します。加算は社外流出として処理し、留保にはしません。会計上は費用でも税務上は損金にならないため、別表四での申告調整が必要です。

Q7. 子会社への無利息貸付は寄附金になりますか

原則として、通常収受すべき利息と実際の利息との差額が寄附金として認定され得ます。低額譲渡や債権放棄も同様に経済的利益の供与として寄附金認定の対象です。ただし、子会社の倒産を防ぐ合理的な再建支援など相当な理由がある場合は、寄附金に当たらないとされることもあります。

Q8. 100%子会社への寄附金はどうなりますか

法人による完全支配関係がある内国法人への寄附金は、支出側で全額損金不算入、受取側で全額益金不算入となります。グループ全体で見ると課税は中立で、寄附金を出しても法人税は減りません。グループ法人税制の一環です。

Q9. 未払計上した寄附金は損金になりますか

当期は損金になりません。寄附金は現実に支払った日の属する事業年度で認識するため、未払のままでは支出がなかったものとして当期の寄附金に含められず、当期の別表四で加算(留保)します。ただし切り捨てられるわけではなく、翌期以降に実際に支払った時点で別表四で減算(留保)して戻し、その金額を支払った期の支出寄附金に含めて損金算入限度額を計算します。限度内なら損金算入され、超過分はその期に社外流出で加算します。当期に確実に損金化したい寄附金は期末までに支払うのが基本です。

Q10. 企業版ふるさと納税も寄附金ですか

地方公共団体への寄附金として全額損金算入できるうえ、まち・ひと・しごと創生寄附活用事業に係るものは、損金算入に加えて別途の税額控除も受けられます。返礼品はありませんが、実質的な負担を抑えて地域貢献ができる制度で、通常の寄附金より有利な扱いです。

Q11. 政治団体や神社への寄附はどの区分ですか

原則として一般の寄附金です。政治団体への拠金や神社の祭礼への寄贈金は、指定寄附金や特定公益増進法人への寄附金に該当しない限り一般寄附金となり、一般損金算入限度額までしか損金になりません。金銭の贈与は交際費でなく寄附金とされる点も押さえます。

まとめ

  • 寄附金は4区分。指定寄附金等は全額損金、特定公益増進法人は別枠限度額、一般は狭い限度額、グループ内・国外関連者は全額不算入。
  • 一般限度額は(資本金の額等×月数/12×2.5/1000+所得×2.5/100)×1/4、特別限度額は係数3.75/1000・6.25/100で×1/2。
  • 限度額の所得は別表四仮計+支出寄附金の回し戻しで計算する。忘れると不算入額を誤る。
  • 損金不算入額は別表十四(二)で計算し、別表四で社外流出として加算する。
  • 低額譲渡・無利息貸付・債権放棄は寄附金認定され得る。未払寄附金は当期加算(留保)し、翌期の支払時に減算してその期の寄附金に算入する。

出典・参考(2026年8月時点)

※本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令等に基づく一般的な解説です。設例は説明用に簡略化しており、実際の計算では月数・資本の状況・寄附先の証明書類の確認が必要です。個別の判断にあたっては、必ず国税庁ホームページや税務署、顧問税理士にご確認ください。

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