申告した税額が過大だったとき、納めすぎた税金を取り戻す手続きが更正の請求です。一見シンプルですが、実務では「期限はいつまでか」「後から事情が変わった場合はどうか」「有利な処理に変更したいだけでも請求できるのか」で判断に迷います。本記事では、通常の更正の請求と後発的事由による更正の請求の違いを軸に、できる場合とできない場合、嘆願との関係まで深掘りします。
- 更正の請求とは
- 通常の更正の請求(国税通則法23条1項)
- 後発的事由による更正の請求(同23条2項)
- 当初申告要件の廃止と、なお残る制限
- 「嘆願(更正の申出)」との違い
- できる場合・できない場合(事例)
- 馴れ合い・納税回避目的は認められない
- 手続きの流れ
- まとめ
1. 更正の請求とは
更正の請求は、提出した納税申告書の税額が過大だった(または還付金が過少だった、純損失等の金額が過少だった)場合に、税務署長に対して正しい額への更正を求める手続きです。納税者側から「税金を返してほしい」と求める、数少ない救済手段です。
2. 通常の更正の請求(国税通則法23条1項)
原則的な更正の請求です。申告書の計算が法令の規定に従っていなかった、または計算に誤りがあったことにより税額が過大だった場合に行えます。
- 原則:法定申告期限から5年以内(平成23年12月改正で、従来の1年から5年に延長)
- 法人税の純損失等(欠損金)の金額に係るもの:10年以内(平成30年4月1日以後開始事業年度は10年。それ以前は9年)
3. 後発的事由による更正の請求(同23条2項)
申告時点では正しかったのに、後から事情が変わって税額が過大になった場合の特則です。通常の5年の期限を過ぎていても、一定の後発的事由が生じたときは、例外的に救済されます。
- 申告の基礎となった事実について、判決・和解等により異なることが確定したとき
- 契約の解除権の行使や、やむを得ない事情による解除・取消しがあったとき
- 官公署の処分が取り消されたとき
- その他、国税庁長官の通達等で定める一定の事由
その事由が生じた日の翌日から2か月以内(通常の5年の期限とは別枠。5年経過後でも、事由発生から2か月以内なら請求可)
4. 当初申告要件の廃止と、なお残る制限
かつては、多くの特例について「当初申告で適用していなければ後から更正の請求で適用できない」という当初申告要件がありました。平成23年度改正で、この当初申告要件は多くの項目で廃止され、適用漏れを更正の請求で救済できる範囲が広がりました。
5. 「嘆願(更正の申出)」との違い
かつて、更正の請求の期限(改正前は1年)を過ぎてしまった場合に、税務署長の職権による減額更正を促す嘆願という実務上の慣行がありました。これは法律上の権利ではなく、あくまでお願いベースの手続きでした。
- 更正の請求:法律上の権利。認められなければ不服申立て(再調査の請求・審査請求)ができる
- 嘆願(更正の申出):法律上の権利ではなく、職権発動を促すお願い。応じてもらえなくても不服申立てはできない
6. できる場合・できない場合(事例)
| ケース | 可否 |
|---|---|
| 計算誤り・二重計上で税額を過大に申告していた | 可(5年内) |
| 適用できる非課税・控除(当初申告要件のないもの)の適用漏れ | 可(5年内) |
| 申告後、取引が判決で無効・解除と確定し代金を返還 | 可(後発的事由・2か月内) |
| 当初申告要件が残る税額控除を、当初申告で適用していなかった | 不可 |
| 「もっと有利な処理(選択)に変えたい」という事後的な選択替え | 原則不可 |
| 納税回避目的で当事者が合意解除・馴れ合い判決を得た | 不可 |
7. 馴れ合い・納税回避目的は認められない
後発的事由の「判決」や「契約の解除」は、納税者の救済のための制度であり、税負担を減らすこと自体を目的とした馴れ合いの判決や合意解除は、後発的事由に当たらないとされています。
8. 手続きの流れ
- 更正の請求書を作成(請求の理由、過大となった事情、正しい税額の計算等を記載)
- 事実を証明する書類を添付(更正の請求では、請求の基礎となる事実を証明する書類の添付が求められます)
- 税務署長へ提出。税務署側で内容を調査
- 認められれば減額更正・還付(還付加算金が付く場合あり)。認められない場合は更正をすべき理由がない旨の通知
- 通知に不服があれば再調査の請求・審査請求(不服申立て)が可能
9. まとめ
- 更正の請求は払い過ぎた税金を取り戻す手続き(減額専用。納め足りない場合は修正申告)
- 通常は法定申告期限から5年以内(法人税の純損失等は10年)
- 5年経過後でも、判決・契約解除等の後発的事由があれば、その事由から2か月以内に請求可
- 当初申告要件は多くが廃止されたが、一部の特例には制限が残る
- 有利な処理への事後的な選択替えは原則できない。馴れ合い判決・納税回避目的の解除も不可
- 嘆願(更正の申出)は権利ではなく、不服申立てもできない
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- 国税庁「更正の請求手続」
- 国税通則法23条(更正の請求)、同条2項・国税通則法施行令6条(後発的事由)
※本記事は作成時点の法令・通達・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。更正の請求が認められるかは個別の事実関係により異なります。具体的な判断は税理士へのご相談をおすすめします。


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