受贈益・債務免除益とは|益金算入の範囲と完全支配関係・繰越欠損金の特例

法人税

会社が資産を無償や低額で譲り受けたり、借入金の免除を受けたりすると、お金の入金がなくても税務上は収益(益金)が生じます。これが受贈益債務免除益です。法人税は、現金の受け取りだけでなく、経済的な利益を受けたこと自体に課税するためです。もっとも、そのまま全額に課税するのが酷な場面もあり、完全支配関係がある法人間の受贈益の益金不算入や、再建局面での期限切れ欠損金との相殺といった特例が用意されています。この記事では、受贈益・債務免除益が益金算入される発生ケースと仕訳、2つの重要な特例、社長借入金の免除や個人事業主が受けた場合の扱いまでを、条文・通達に基づいて整理します。

この記事のポイント

  • 受贈益・債務免除益は、資産の無償・低額譲受けや債務免除などで生じる益金で、原則として時価と対価の差額や免除額が益金算入される(法人税法22条2項)
  • 法人による完全支配関係がある内国法人から受けた受贈益は益金不算入、対応する寄附金は支出側で損金不算入(法法25条の2・37条2項)。個人による完全支配関係は対象外
  • 会社更生・民事再生・解散等の局面では、債務免除益等を期限切れ欠損金と相殺でき、税負担が生じないことがある(法法59条)
  • 社長からの借入金の免除も債務免除益として益金算入。個人事業主が受けた場合は、法人からの免除は所得税、個人からの免除は贈与税が原則

受贈益・債務免除益とは(法人税法22条2項の益金)

法人税法22条2項は、益金の額に算入すべき金額として、資産の販売や役務の提供による収益だけでなく、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものによる収益を挙げています。つまり、対価を支払わずに経済的利益を受けた場合、その利益は益金になります。

受贈益は、資産を無償または時価より低い価額で譲り受けたときの、時価と対価との差額をいいます。債務免除益は、借入金などの債務の免除を受けたときの、その免除された金額をいいます。いずれも現金の入金を伴わないことが多いため見落とされがちですが、税務上は収益として認識し課税対象になる点に注意が必要です。

益金算入される発生ケースと仕訳

受贈益・債務免除益が生じる代表的なケースは次のとおりです。

ケース 益金になる金額
資産の無償譲受け 譲り受けた資産の時価相当額
資産の低額譲受け 時価と支払対価との差額
債務免除 免除を受けた債務の金額
役員等からの私財提供 提供を受けた金銭・資産の額
無償・低利での金銭の借受け等 通常受けるべき利息相当額など

仕訳のイメージは次のとおりです。いずれも貸方に受贈益・債務免除益(収益)を計上します。

取引 借方 貸方
土地の無償譲受け(時価1,000) 土地 1,000 受贈益 1,000
借入金の免除(500) 借入金 500 債務免除益 500

会計で受贈益・債務免除益を収益計上していれば、原則として税務でもそのまま益金になり、申告調整は不要です。問題になりやすいのは、低額譲受けで会計上は支払額でしか資産計上しておらず、時価との差額を収益に計上していないケースです。この場合は税務調査で受贈益の計上漏れを指摘されることがあります。

完全支配関係がある法人間の受贈益の益金不算入

グループ法人税制により、内国法人が法人による完全支配関係がある他の内国法人から受けた受贈益の額は、益金不算入となります(法人税法25条の2)。これと表裏の関係で、寄附をした側(支出法人)ではその寄附金の額が全額損金不算入となります(法人税法37条2項)。グループ内での資金移動に課税が生じないよう調整する仕組みです。

立場 取扱い
受けた側(受贈益) 受贈益の額は益金不算入(法法25条の2)
出した側(寄附金) 寄附金の額は全額損金不算入(法法37条2項)

落とし穴:個人による完全支配関係は対象外:この益金不算入・損金不算入は「法人による完全支配関係」に限られます。オーナー個人が100%持つ兄弟会社間のように個人による完全支配関係の場合は適用されず、受贈益は益金算入、寄附金は寄附金の損金算入限度額の範囲でのみ損金算入という通常の扱いになります。グループ内取引だから非課税とは限りません。

債務免除益と期限切れ欠損金の相殺

経営再建の局面では、多額の債務免除益が生じても、欠損金と相殺することで税負担が抑えられる場合があります。通常の青色欠損金(繰越欠損金)は最大10年間繰り越せますが、これを使い切っても、会社更生・民事再生・解散などの一定の場合には、繰越期限を過ぎて切り捨てられた期限切れ欠損金を損金算入して債務免除益等と相殺できる特例があります(法人税法59条)。

これにより、債務免除益が生じても課税所得がゼロとなり、実質的に法人税が発生しないケースもあります。通常の繰越欠損金の基本は繰越欠損金とはを参照してください。ただし、期限切れ欠損金を使えるのは会社更生や民事再生など法令で定められた場面に限られ、単に赤字が続いているというだけでは使えません。

社長借入金の債務免除

中小企業では、社長が会社に資金を貸し付けている(会社側では役員借入金)ことがよくあります。この社長借入金を社長が免除すると、会社側では債務免除益として益金算入されます。相続対策などで安易に債務免除を行うと、会社に想定外の法人税が生じることがあるため注意が必要です。

実務では、繰越欠損金がある事業年度に合わせて債務免除を行い、債務免除益を欠損金で吸収する、といった検討がされます。役員借入金・役員貸付金そのものの税務は役員貸付金・役員借入金の税務を参照してください。

落とし穴:債務免除益で法人税、さらに株式の贈与税も:社長借入金の免除で会社の純資産が増えると、他の株主(たとえば後継者)が持つ株式の価値が上がり、免除をした社長からその株主へのみなし贈与として贈与税が問題になることがあります。法人税(債務免除益)と贈与税の両面を検討する必要があります。

子会社支援と寄附金(合理的な再建計画)

親会社が業績不振の子会社に対して債権放棄や無利息貸付けを行う場合、原則としてその経済的利益は寄附金に該当します。しかし、業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われ、合理的な再建計画に基づくものであるなど相当な理由があると認められるときは、その経済的利益は寄附金に該当しないとされています(法人税基本通達9-4-2)。

この場合は寄附金ではないため、完全支配関係の寄附金・受贈益の規定(法法25条の2・37条2項)の適用もありません。逆に、合理的な再建計画といった相当の理由がない支援は寄附金に該当し、完全支配関係があれば支出側で全額損金不算入・受領側で受贈益益金不算入となります。寄附金の基本的な取扱いは寄附金と交際費の区分を参照してください。

個人事業主が債務免除を受けた場合

受贈益・債務免除益は法人税の概念ですが、個人事業主が債務免除を受けた場合は、免除をした主体によって課税区分が変わります。事業に関する債務であれば、法人からの免除は所得税(事業所得等)の総収入金額に算入され、個人(親族・知人など)からの免除は原則として贈与税の対象になります。

免除をした主体 個人事業主側の課税(原則)
法人 所得税(事業所得等の収入)
個人(親族・知人等) 贈与税

ただし、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難と認められる部分については、課税対象外となる取扱いがあります。個人の債務免除は法人と課税の枠組みが異なるため、区別して判断する必要があります。

想定Q&A(受贈益・債務免除益)

Q1. 現金が入っていないのに課税されるのですか

課税されます。法人税法22条2項は無償による資産の譲受けなど経済的利益を受けたこと自体を益金としています。現金の入金がなくても、資産や債務免除という形で利益を受けていれば益金算入されます。

Q2. 時価より安く資産を買った場合も課税されますか

低額譲受けの場合、時価と支払対価との差額が受贈益として益金算入されます。会計上、支払額でしか資産計上していないと差額の計上漏れになりやすいため、時価での受贈益認識が必要です。

Q3. 100%子会社への贈与はグループ法人税制で非課税ですか

法人による完全支配関係がある内国法人間であれば、受けた側の受贈益は益金不算入、出した側の寄附金は全額損金不算入となります。ただし個人による完全支配関係の場合はこの特例は適用されません。

Q4. 兄弟会社(オーナー個人が両社を100%保有)の間の贈与はどうなりますか

これは個人による完全支配関係であり、法人による完全支配関係ではないため、受贈益の益金不算入・寄附金の全額損金不算入の特例は適用されません。受贈益は益金算入、寄附金は限度額の範囲でのみ損金算入という通常の扱いになります。

Q5. 債務免除益が出ても税金が発生しないことはありますか

あります。通常の繰越欠損金と相殺できるほか、会社更生・民事再生・解散などの局面では期限切れ欠損金を損金算入して債務免除益と相殺でき、課税所得がゼロになることがあります(法法59条)。単なる赤字継続だけでは期限切れ欠損金は使えません。

Q6. 社長が会社への貸付金を免除したら会社に課税されますか

会社側では役員借入金の免除額が債務免除益として益金算入されます。繰越欠損金がなければ法人税が生じるため、免除の時期や金額は欠損金の状況を見て検討する必要があります。

Q7. 社長借入金の免除で贈与税がかかることがあると聞きました

債務免除で会社の純資産が増えると、他の株主の持つ株式の価値が上がり、免除をした社長から他の株主へのみなし贈与として贈与税が問題になることがあります。法人税と贈与税の両面の検討が必要です。

Q8. 親会社が赤字子会社の債権を放棄したら寄附金ですか

原則は寄附金ですが、業績不振の子会社の倒産防止のためにやむを得ず行われ、合理的な再建計画に基づくなど相当な理由があれば寄附金に該当しません(基通9-4-2)。この場合は完全支配関係の寄附金・受贈益の規定も適用されません。

Q9. 個人事業主が取引先(法人)から債務免除を受けたら課税は

事業に関する債務であれば、法人からの免除は所得税(事業所得等の総収入金額)として課税されるのが原則です。個人からの免除は贈与税の対象になります。資力喪失で弁済が著しく困難な部分は課税対象外となる取扱いがあります。

Q10. 無利息で親会社からお金を借りたら受贈益ですか

通常受けるべき利息相当額の経済的利益を受けたことになり、原則として受贈益が生じます。ただし法人による完全支配関係があれば、その受贈益は益金不算入、貸付側の利息相当の寄附金は全額損金不算入となります。

判断フロー(受贈益・債務免除益の課税)

手順 判断内容
1 無償・低額の譲受けや債務免除など、経済的利益を受けたか(受贈益・債務免除益の有無)
2 相手方との間に法人による完全支配関係があるか(あれば受贈益は益金不算入)
3 子会社支援なら合理的な再建計画等により寄附金に該当しないか(基通9-4-2)
4 益金算入の場合、繰越欠損金や(再建局面なら)期限切れ欠損金と相殺できるか
5 社長借入金の免除など、株式評価を通じた贈与税の問題がないか

まとめ

  • 受贈益・債務免除益は、資産の無償・低額譲受けや債務免除などで生じる益金で、原則として時価との差額や免除額が益金算入される(法法22条2項)。
  • 法人による完全支配関係がある内国法人間の受贈益は益金不算入、対応寄附金は全額損金不算入(法法25の2・37②)。個人による完全支配関係は対象外。
  • 会社更生・民事再生・解散等では期限切れ欠損金で債務免除益と相殺でき、課税が生じないことがある(法法59)。
  • 社長借入金の免除は債務免除益になり、株式評価を通じた贈与税も要検討。個人事業主が受けた場合は法人からは所得税・個人からは贈与税が原則。

出典・参考(条文・通達)

  • 法人税法22条2項(各事業年度の所得の金額の計算・益金)
  • 法人税法25条の2(完全支配関係がある法人間の受贈益の益金不算入)、37条2項(寄附金の損金不算入)
  • 法人税法59条(会社更生等の場合の欠損金の損金算入)
  • 法人税基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)

※本記事は令和8年8月時点の法令・通達(法人税法22条・25条の2・37条・59条、法人税基本通達9-4-2等)に基づく一般的な解説です。個別の判定は事実関係により異なるため、具体的な適用は顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。

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