減価償却の定額法と定率法の違いは?計算方法・償却率・法定償却方法を徹底解説

法人税

建物や機械、車、パソコンといった固定資産は、買った年に全額を費用にするのではなく、使える期間(耐用年数)にわたって少しずつ費用にしていきます。この「取得価額を各年に配分する手続」が減価償却で、その配分の仕方が定額法と定率法です。定額法は毎年同じ額を、定率法は初めに多く後になるほど少なく費用にする方法で、どちらを使うかで各年の利益と税額の出方が変わります。

重要なのは、償却方法は会計ソフト上で自由に選べても、税務上は資産の種類ごとに「法定償却方法」が決まっており、勝手に選べるわけではないという点です。法人は原則として定率法、個人事業主は定額法が基本で、建物などは定額法しか使えません。この記事では、定額法と定率法の計算方法と具体例、法人と個人の法定償却方法、届出や変更の手続、取得時期による償却率の違い、そして間違えやすい落とし穴までを、国税庁タックスアンサー(No.2100・No.2106・No.5410)に沿って整理します。

この記事のポイント
  • 定額法は毎年同額、定率法は初めに多く後で少なく費用化する。総額はどちらも同じ取得価額
  • 定額法=取得価額×定額法償却率。定率法=期首未償却残高×定率法償却率(平成24年4月1日以後取得は200%定率法)
  • 定率法は、償却費が償却保証額を下回った年から改定取得価額×改定償却率に切り替わる
  • 法定償却方法は、法人が原則定率法(建物・建物附属設備・構築物・無形は定額法)、個人が定額法
  • 法定と違う方法にするには届出が必要。すでに選んだ方法を変えるには事前の変更承認申請が必要

減価償却と2つの償却方法

減価償却とは、固定資産の取得価額を、その使用可能期間である法定耐用年数にわたって各年の費用(法人では損金、個人では必要経費)に配分していく手続です。取得価額が10万円未満のものや使用可能期間が1年未満のものは、その年に全額費用にできます。取得価額10万円以上のものは、原則として定額法か定率法などで償却します。少額な資産の即時費用化については少額減価償却資産の特例で詳しく解説しています。

定額法と定率法は、費用にする総額(取得価額から備忘価額1円を引いた額)は同じですが、各年への配分のカーブが異なります。定額法は毎年フラット、定率法は前半に厚く後半に薄い右肩下がりのカーブになります。

定額法の計算方法

定額法は、取得価額に定額法償却率を掛けて、毎年同額の償却費を計算する方法です。定額法償却率は「1÷耐用年数」に相当し、実務では国税庁「減価償却資産の償却率等表」の率を使います。

定額法の計算(平成19年4月1日以後取得)

各年の償却費 = 取得価額 × 定額法償却率
例:取得価額100万円・耐用年数5年(償却率0.200)。毎年 100万円×0.200=20万円。5年目は備忘価額1円を残すため19万9,999円。

年の途中で取得した資産は、初年度を月割で計算します(取得価額×償却率×使用月数÷12)。計算が単純で見通しが立てやすいのが定額法の長所です。

定率法の計算方法(200%定率法)

定率法は、期首の未償却残高(取得価額から前年までの償却費を引いた残り)に定率法償却率を掛けて計算します。残高が年々減るため償却費も逓減します。平成24年4月1日以後に取得した資産は、定額法償却率の2倍の率を使う200%定率法です。

定率法には、そのままだと償却費が小さくなりすぎて完了しないため、途中で計算を切り替える仕組みがあります。通常の計算による償却費(調整前償却額)が「償却保証額」を下回った年から、改定取得価額に改定償却率を掛ける計算(以後は毎年同額)に切り替えます。

定率法の計算(200%定率法)

・通常:各年の償却費 = 期首未償却残高 × 定率法償却率
・切替後(調整前償却額<償却保証額):各年の償却費 = 改定取得価額 × 改定償却率
・償却保証額 = 取得価額 × 保証率
・改定取得価額 = 初めて調整前償却額が償却保証額に満たなくなる年の期首未償却残高

取得価額100万円・耐用年数5年(償却率0.400、改定償却率0.500、保証率0.108)で計算すると次のようになります。償却保証額は100万円×0.108=10万8,000円です。

計算 償却費
1年目 100万円×0.400 40万円
2年目 60万円×0.400 24万円
3年目 36万円×0.400 14万4,000円
4年目 21万6,000円×0.400=8万6,400円は保証額未満のため切替。21万6,000円×0.500 10万8,000円
5年目 残高10万8,000円-備忘価額1円 10万7,999円
改定取得価額(切替年の期首残高)は、いったん確定したら以後は変えません。切替後は毎年同額になり、最終年に備忘価額1円を残して終了します。切替の判定を毎年行う点が定率法の難所です。

定額法と定率法の比較(使い分け)

総額は同じでも、費用化のタイミングが違うため、利益計画や資金繰りへの影響が変わります。利益が出ていて早期に費用化したいなら定率法、利益を平準化したい・計算を簡単にしたいなら定額法が向く、という整理が基本です。

観点 定額法 定率法
費用の配分 毎年同額(フラット) 初めに多く、後で少ない(逓減)
初年度の費用 小さい(利益を残しやすい) 大きい(早期に費用化)
計算の手間 簡単 やや複雑(保証額・改定償却率の判定)
向くケース 利益を平準化したい・見通しを重視 利益が出ていて早期費用化・投資回収を重視

法定償却方法(法人・個人・資産別)

償却方法は自由に選べるわけではなく、資産の種類ごとに法定償却方法が決まっています。届出をしなければこの法定償却方法が適用されます。とくに建物・建物附属設備・構築物・無形固定資産(ソフトウェア等)は、法人・個人を問わず定額法に限られる点に注意します。

資産の区分 法人の法定 個人の法定
機械装置・車両・器具備品など 定率法(届出で定額法も可) 定額法(届出で定率法も可)
建物(平成10年4月1日以後取得) 定額法のみ 定額法のみ
建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後取得) 定額法のみ 定額法のみ
無形固定資産(ソフトウェア等) 定額法のみ 定額法のみ
法人は原則定率法、個人は原則定額法、という点は法人成りのときにとくに間違えやすいところです。会計ソフトでは自由に選べてしまうため、法定償却方法を意識せずに設定すると誤った償却になります。

償却方法の選定と変更の手続

法定償却方法と違う方法にしたいときは「減価償却資産の償却方法の届出書」を、すでに選んだ方法を変えたいときは「変更承認申請書」を提出します。届出は期限までに出せば選定できますが、変更は承認が必要で、原則として採用後3年を経過していないと認められにくい点に注意します。

手続 法人 個人
選定の届出 設立第1期(新たな資産の取得はその事業年度)の確定申告書の提出期限まで 業務開始等をした年の翌年3月15日まで
届出をしない場合 法定償却方法(有形は定率法)を適用 法定償却方法(定額法)を適用
変更の承認申請 変更しようとする事業年度開始の日の前日まで(承認が必要) 変更しようとする年の3月15日まで(承認が必要)

取得時期で償却率が変わる

同じ定率法でも、資産を取得した時期によって使う償却率が異なります。取得時期を取り違えると償却額を誤るため、まず取得日を確認します。

取得時期 償却方法・特徴
平成19年3月31日以前 旧定額法・旧定率法。残存価額があり、取得価額の5%まで償却後、5年で1円まで償却
平成19年4月1日〜平成24年3月31日 残存価額廃止で1円まで償却可。定率法は250%定率法
平成24年4月1日以後 定率法は200%定率法(改定償却率・保証率も改正)。現在の新規取得はこれ

見落としやすい落とし穴

法人なのに全部定額法で計算してしまう

法人の機械・車・備品などの法定償却方法は定率法です。個人事業の感覚のまま、あるいは会計ソフトの初期設定のまま全部を定額法で計算すると、届出をしていない限り誤りになります。法人成りの初年度にとくに起こりやすいミスです。

建物などを定率法で償却してしまう

建物(平成10年4月1日以後取得)、建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後取得)、ソフトウェア等の無形固定資産は定額法しか使えません。届出があっても定率法は選べないため、これらを定率法で計算すると誤りです。

償却率の取得時期・改定償却率を取り違える

200%定率法と250%定率法は取得時期で分かれます。また、定率法では償却保証額を下回った年から改定取得価額×改定償却率に切り替え、改定取得価額はその後固定します。切替判定を忘れる、改定取得価額を毎年変えてしまう、といった誤りが典型です。

法人は任意、個人は強制という違いを忘れる

法人の減価償却は任意償却で、償却限度額の範囲内なら計上額を調整でき、計上しない選択もできます。一方、個人事業主は強制償却で、赤字の年でも毎年必ず償却費を計上します。赤字だから今年は償却を見送る、という調整は個人ではできません。

方法を変えたつもりが承認を受けていない

償却方法の変更は届出ではなく承認申請で、事前の申請と承認が必要です。しかも原則として採用後3年を経過していないと認められにくいため、決算のたびに有利な方へ変える、といったことはできません。

償却方法を決めるまでの判定フロー

手順 確認内容
1 取得価額10万円未満か、少額特例等の対象か。該当すれば償却せず費用化を検討する
2 資産の種類を確認する。建物・建物附属設備・構築物・無形は定額法のみ
3 選べる資産(機械・車・備品等)は、法人=定率法・個人=定額法が法定。異なる方法にするなら届出を出す
4 耐用年数と取得時期を確認し、償却率等表で償却率・改定償却率・保証率を確定する
5 定率法は毎年、調整前償却額と償却保証額を比較し、下回った年から改定計算へ切り替える

想定Q&A(定額法と定率法)

Q1. 定額法と定率法はどちらが得ですか

費用化できる総額は同じで、タイミングが違うだけです。定率法は初年度に多く費用化できるため、利益が出ている会社では早期の負担軽減になります。反対に、利益を平準化したい場合や計算を簡単にしたい場合は定額法が向きます。将来にわたる利益計画で判断してください。

Q2. 法人は必ず定率法ですか

機械・車・備品などは定率法が法定ですが、届出をすれば定額法も選べます。法定償却方法と異なる方法にするには「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出が必要だからです。反対に、建物・建物附属設備・構築物・無形固定資産は定額法のみで、届出があっても定率法は選べません。

Q3. 届出を出さなかったらどうなりますか

法定償却方法が適用されます。法人の有形減価償却資産は定率法、個人は定額法が法定だからです。反対に、法定と違う方法にしたい場合は期限までに届出が必要です。届出の期限は、法人が設立第1期等の確定申告期限、個人が業務開始の翌年3月15日です。

Q4. 途中で定率法から定額法に変えられますか

変更承認申請をして承認を受ければ変えられます。償却方法の変更は承認事項で、事前の申請が必要だからです。反対に、原則として採用後3年を経過していないと認められにくく、決算のたびに有利な方へ変えることはできません。申請期限は法人が事業年度開始の日の前日、個人が3月15日です。

Q5. 償却保証額と改定償却率とは何ですか

定率法で最後まで償却しきるための仕組みです。定率法は残高が減ると償却費が小さくなりすぎるため、「取得価額×保証率」で求めた償却保証額を下回った年から、改定取得価額×改定償却率で毎年同額を償却する計算に切り替えます。反対に、この切替を行わないと備忘価額1円まで到達しません。保証率・改定償却率は償却率等表に定められています。

Q6. 期の途中で買った資産はどう計算しますか

初年度は月割で計算します。減価償却は業務に使った期間に応じて費用配分するため、初年度は「通常の償却費×使用月数÷12」となるからです。反対に、2年目以降は通常どおり満額(定率法は期首残高ベース)で計算します。使用開始月を正しく把握することが重要です。

Q7. 最後は帳簿価額をゼロにしますか

1円(備忘価額)を残します。平成19年4月1日以後取得の資産は残存価額が廃止され、耐用年数経過時に1円まで償却できますが、資産が現存することを示すため帳簿価額として1円を残すからです。反対に、平成19年3月31日以前取得の資産は、取得価額の5%まで償却後、5年で1円まで償却する旧制度が適用されます。

Q8. 中古資産の耐用年数はどうなりますか

簡便法で見積もれます。中古資産は残りの使用可能期間が短いため、法定耐用年数をそのまま使わず短い年数で償却できるからです。法定耐用年数を全部経過していれば法定耐用年数の20%、一部経過なら「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」で計算し、2年未満は2年とします。反対に、見積りをしなければ法定耐用年数で償却します。

Q9. 個人事業主は償却しない年を作れますか

作れません。個人事業主の減価償却は強制償却で、毎年必ず償却費を計上するからです。赤字の年に翌年の黒字へ回すために償却を見送る、といった調整はできません。反対に、法人は任意償却のため、償却限度額の範囲内で計上額を調整でき、計上しないことも可能です。

Q10. 償却率はどこで確認しますか

国税庁の「減価償却資産の償却率等表」で確認します。定率法の償却率・改定償却率・保証率は取得時期と耐用年数ごとに定められているからです。反対に、定額法償却率は「1÷耐用年数」に相当しますが、端数処理の関係で実務は等表の率を使います。取得時期(200%か250%か)を必ず確認してください。

Q11. 相続で引き継いだ資産の償却方法は選び直せますか

取得したものとして償却方法を選定できます。相続・遺贈・贈与による取得も減価償却の「取得」に含まれ、取得した日に取得したものとして扱われるからです。反対に、被相続人が使っていた帳簿価額や償却方法をそのまま引き継ぐわけではなく、相続人側で耐用年数・償却方法を判断します。個別の取扱いは資産の種類ごとに確認してください。

まとめ

定額法は取得価額×償却率で毎年同額、定率法は期首未償却残高×償却率で逓減し、償却保証額を下回った年から改定計算に切り替わります。費用化の総額は同じで、タイミングだけが違います。償却方法は自由に選べるわけではなく、法人は原則定率法、個人は定額法、建物などは定額法のみが法定です。法定と違う方法にするには届出、変更には事前の承認申請が必要で、取得時期による償却率の違いにも注意が必要です。

この記事のまとめ
  • 定額法=取得価額×定額法償却率(毎年同額)。定率法=期首未償却残高×定率法償却率(逓減)
  • 定率法は償却費が償却保証額を下回った年から、改定取得価額×改定償却率に切り替える
  • 法定償却方法は法人が原則定率法、個人が定額法。建物・建物附属設備・構築物・無形は定額法のみ
  • 法定と異なる方法は届出、変更は事前の承認申請が必要。変更は原則3年経過後
  • 取得時期で償却率が異なる(平成24年4月1日以後は200%定率法)。備忘価額1円を残す

※本記事は作成時点の法令および公表資料(法人税法施行令48条の2〜53条、所得税法施行令120条・120条の2・123条・124条、減価償却資産の耐用年数等に関する省令、国税庁タックスアンサーNo.2100・No.2105・No.2106・No.5409・No.5410、減価償却資産の償却率等表等)に基づく一般的な解説です。制度・償却率は改正により変わる場合があるため、個別の判断は最新の法令・国税庁公表情報の確認、または顧問税理士へのご相談をおすすめします。

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