みなし配当とは|発生する5つのケース・計算方法・源泉徴収と益金不算入を解説

法人税

みなし配当とは、会社法上は配当ではない金銭等の交付であっても、その経済的実質が利益の分配と変わらない場合に、税務上は配当があったものとみなして課税する仕組みです。会社が株主に払い戻す金額のうち、株主が出資した元本(資本金等の額)を超える部分は、実質的に会社が稼いだ利益の払戻しにほかなりません。この超過部分だけを配当と同じように扱わなければ、利益の払戻しを「資本の払戻し」や「株式の買取り」という形式に置き換えるだけで配当課税を免れられてしまうため、法人税法24条と所得税法25条がこれを防いでいます。

本記事では、みなし配当が発生する5つの事由、計算方法、源泉徴収の要否、受取配当等の益金不算入の適用可否までを条文に即して整理します。

この記事のポイント
・みなし配当は交付金銭等のうち「資本金等の額に対応する部分」を超える金額に生じる(法人税法24条1項、所得税法25条1項)
・発生事由は自己株式の取得・資本の払戻し・残余財産の分配・合併・分割型分割等の5類型
・みなし配当には20.42%(上場等は所得税15.315%+住民税5%)の源泉徴収が必要
・法人株主が受けるみなし配当は受取配当等の益金不算入の対象になる(一定の除外あり)

みなし配当が発生する5つのケース

法人税法24条1項は、内国法人が次の事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合に、その価額のうち資本金等の額に対応する部分を超える金額をみなし配当とすると定めています。所得税法25条1項も個人株主について同様の事由を列挙しています。実務で頻出するのは自己株式の取得と資本の払戻しです。

番号 事由 概要
1 自己株式の取得 発行法人が自社株を買い取り、対価が資本金等対応額を超える場合(市場購入等は除く)
2 資本の払戻し 資本剰余金の額の減少に伴う剰余金の配当(利益部分の払戻しに相当する部分)
3 残余財産の分配 解散した会社が清算により株主へ残余財産を分配する場合
4 非適格合併 適格合併に該当しない合併で、交付を受けた対価が資本金等対応額を超える場合
5 非適格分割型分割等 適格に該当しない分割型分割・株式分配・組織変更等で対価が資本金等対応額を超える場合
合併・分割型分割が適格に該当する場合は、資産が帳簿価額で引き継がれ課税が繰り延べられるため、みなし配当は生じません。みなし配当が問題になるのは非適格の組織再編です。

みなし配当の計算方法

みなし配当の額は、交付を受けた金銭等の合計額から、その交付の基因となった株式に対応する資本金等の額を差し引いて計算します。基本算式は次のとおりです。

みなし配当の基本算式
みなし配当の額 = 交付を受けた金銭等の額 -(1株当たり資本金等の額 × 取得等をした株式数)
1株当たり資本金等の額 = 直前の資本金等の額 ÷ 発行済株式総数(自己株式を除く)

設例:自己株式取得のケース

資本金等の額2,000万円、発行済株式1,000株の会社が、株主Aから100株を1株5万円(合計500万円)で買い取ったとします。1株当たり資本金等の額は2,000万円÷1,000株=2万円。100株分の資本金等対応額は200万円です。したがってみなし配当は500万円-200万円=300万円となります。株主A側では、残りの200万円が株式の譲渡対価となり、取得価額との差額が譲渡損益として認識されます。

項目 金額
交付を受けた金銭等 500万円
資本金等対応額(2万円×100株) 200万円
みなし配当 300万円
株式譲渡対価(譲渡損益の計算対象) 200万円

みなし配当の源泉徴収

みなし配当は配当所得として源泉徴収の対象になります。交付を行う発行法人が源泉徴収義務者となり、みなし配当の額に対して所定の税率で徴収し、翌月10日までに納付します。非上場株式(一般株式等)のみなし配当は20.42%(所得税及び復興特別所得税)、上場株式等のみなし配当は15.315%の所得税等に加え5%の住民税が徴収されます。

区分 源泉徴収税率
非上場株式(一般株式等) 20.42%(所得税及び復興特別所得税)
上場株式等 15.315%(所得税等)+5%(住民税)

株主側の課税(法人株主と個人株主)

みなし配当は受け取る株主が法人か個人かで扱いが分かれます。法人株主は受取配当等の益金不算入の対象となり、持株比率に応じて全部又は一部が益金不算入となります。個人株主は配当所得として総合課税(上場株式等は申告分離課税や申告不要も選択可)の対象です。いずれも同時に生じる株式譲渡損益とは別枠で認識する点に注意が必要です。

株主区分 みなし配当の課税
法人株主 受取配当等の益金不算入の対象。持株比率で不算入割合が変わる(完全子法人株式等100%等)
個人株主 配当所得として課税。総合課税なら配当控除の対象、上場株式等は申告分離・申告不要も選択可

益金不算入が適用できない場合

発行法人が自己株式として取得することを予定している株式(公開買付け等により取得されることが予定されている株式)を取得し、予定どおり自己株式として取得された場合に生じるみなし配当については、受取配当等の益金不算入制度は適用されません(法人税法23条3項等)。ただし、完全支配関係グループ内の法人間での自己株式取得については益金不算入の適用が認められています。

混同しやすい隣接論点との使い分け

みなし配当は、通常の剰余金の配当、株式の譲渡益、資本剰余金からの配当と混同されがちです。結論を先に言い切ると、通常配当は利益剰余金からの分配でみなし配当ではなく、株式譲渡益はみなし配当を控除した後の金額で計算し、資本剰余金からの配当は資本部分と利益部分に按分してその利益部分がみなし配当になります。

論点 みなし配当との関係
通常の剰余金の配当 利益剰余金からの配当で本来の配当。みなし配当ではない
株式の譲渡益 交付金銭等からみなし配当を控除した後の金額で譲渡損益を計算する
資本剰余金からの配当 資本部分と利益部分に按分し、資本金等対応額を超える部分がみなし配当になる

実務の落とし穴

1:源泉徴収を失念する

自己株式の取得を単なる株式の買取りと捉え、みなし配当への源泉徴収を失念する誤りが典型です。非上場株式では20.42%の源泉徴収と翌月10日までの納付が必要で、失念すると発行法人が納付義務と不納付加算税を負います。

2:市場購入による自己株式取得を含めてしまう

金融商品取引所の市場における購入による自己株式取得等は、みなし配当の発生事由から除かれています。相対取引と市場取引を区別せずに一律みなし配当として処理すると誤りになります。

3:譲渡益をみなし配当控除前で計算する

株式譲渡損益は交付金銭等からみなし配当を控除した後の金額で計算します。控除前の全額を譲渡対価として計算すると二重課税や損益の過大計上を招きます。

4:予定株式の益金不算入を適用してしまう

自己株式として取得されることが予定されている株式の取得により生じるみなし配当は、受取配当等の益金不算入の対象外です。完全支配関係グループ内の取得を除き、機械的に益金不算入を適用すると誤りになります。

みなし配当の判定フロー

手順 判定内容
1 交付が5類型(自己株式取得・資本の払戻し・残余財産分配・非適格合併・非適格分割型分割等)のいずれかに該当するかを確認する
2 市場購入等の除外事由や適格組織再編に該当しないかを確認する
3 1株当たり資本金等の額を計算し、交付金銭等から資本金等対応額を控除してみなし配当を算出する
4 発行法人はみなし配当に源泉徴収を行い翌月10日までに納付する
5 株主側で法人か個人かに応じて益金不算入又は配当所得として課税し、残額で株式譲渡損益を計算する

想定Q&A

Q1 みなし配当と通常の配当は何が違いますか

通常の配当は利益剰余金を原資とする会社法上の配当です。みなし配当は会社法上の配当ではない自己株式取得や清算等による金銭交付のうち、資本金等の額を超える利益相当部分を税務上配当とみなすものです。課税上の扱い(配当所得・源泉徴収・益金不算入)は通常配当と同じですが、発生の場面が異なります。

Q2 適格合併ではみなし配当は生じませんか

生じません。適格合併では資産・負債が帳簿価額で引き継がれ課税が繰り延べられるため、株主段階でもみなし配当は認識しません。みなし配当が問題になるのは非適格合併・非適格分割型分割等です。

Q3 上場株式を市場で売却したらみなし配当になりますか

なりません。金融商品取引所の市場における購入による自己株式取得等は発生事由から除かれています。市場での通常の売却は株式の譲渡であり、譲渡所得の対象です。みなし配当が問題になるのは発行法人による相対の自己株式取得等です。

Q4 みなし配当が生じると株式譲渡損が出ることがありますか

あります。交付金銭等からみなし配当を控除した残額が株式の譲渡対価となり、これが取得価額を下回れば譲渡損が生じます。みなし配当は配当所得として課税される一方、譲渡損は譲渡所得の計算に用いるため、両者は別枠で認識されます。この組み合わせは自己株式取得による株主の資金回収でよく生じます。

Q5 源泉徴収はいつまでに納付しますか

みなし配当を交付した日の属する月の翌月10日までです。配当等に係る源泉徴収の一般ルールと同じで、納期特例の対象にはならないため、支払月ごとに納付します。

Q6 法人株主のみなし配当はどこまで益金不算入になりますか

持株比率に応じて決まります。完全子法人株式等(100%)は全額、関連法人株式等は原則全額(負債利子控除あり)、その他の株式等は50%、非支配目的株式等は20%が益金不算入です。ただし、自己株式として取得されることが予定された株式に係るみなし配当は益金不算入の対象外である点に注意が必要です。

Q7 資本剰余金を原資とする配当は全額みなし配当ですか

全額ではありません。資本剰余金の額の減少に伴う剰余金の配当(資本の払戻し)は、払戻し額を資本部分と利益部分に按分し、資本金等の額に対応する部分を超える利益部分だけがみなし配当になります。按分計算には払戻し直前の資本金等の額と簿価純資産価額等を用います。

Q8 非上場株式の評価でみなし配当は年配当金額に含めますか

含めません。取引相場のない株式を類似業種比準方式で評価する際、自己株式取得により生じたみなし配当は「1株当たりの配当金額」の計算上、剰余金の配当金額に含める必要はないとされています(国税庁質疑応答事例)。評価明細書ではみなし配当控除後の金額で記載します。

Q9 個人株主のみなし配当は確定申告が必要ですか

原則として配当所得として申告が必要です。非上場株式のみなし配当は総合課税の対象で、少額配当の申告不要制度の要件を満たせば所得税では申告不要とすることもできますが、住民税では申告が必要です。上場株式等のみなし配当は申告分離課税や申告不要も選択できます。

Q10 会社を清算するとみなし配当が生じますか

生じることがあります。解散した会社が清算により株主へ残余財産を分配する場合、その分配額のうち資本金等の額に対応する部分を超える金額がみなし配当になります。長年利益を内部留保してきた会社ほど、清算時のみなし配当が大きくなり源泉徴収と株主の申告に影響します。

まとめ
・みなし配当は交付金銭等のうち資本金等の額に対応する部分を超える利益相当部分に生じる
・発生事由は自己株式取得・資本の払戻し・残余財産分配・非適格合併・非適格分割型分割等の5類型
・発行法人は源泉徴収(非上場20.42%等)を行い、翌月10日までに納付する
・法人株主は益金不算入(予定株式等の除外あり)、個人株主は配当所得。株式譲渡損益はみなし配当控除後で計算する

あわせて読みたい(配当・株式シリーズ)

本記事は令和8年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。出典:法人税法23条・24条、所得税法25条、法人税法施行令23条・119条の3ほか、租税特別措置法9条の3の2(上場株式等の配当等の源泉徴収)、国税庁質疑応答事例(1株当たりの配当金額B)。個別の適用に当たっては顧問税理士等にご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました