株式・投資信託の税金とは|譲渡益・配当の税率20.315%と特定口座・NISA・損益通算

所得税

株式や投資信託で得た利益には「譲渡益(売却益)」と「配当・分配金」の2種類があり、どちらも原則として20.315%の税金がかかります。ところが実際の手取りは、どの口座を使うか、どの課税方式を選ぶか、確定申告をするかどうかで大きく変わります。とくに「特定口座の源泉徴収あり」なら申告しなくても完結しますが、あえて申告したほうが得になる場面もあれば、逆に申告すると別の負担が増える場面もあります。

つまり株式投資の税金は、税率そのものよりも「申告する・しない」「どの方式を選ぶか」の選択で有利不利が決まるのが特徴です。本記事では、譲渡益と配当それぞれの課税、口座の種類、損益通算と繰越控除、NISAの非課税までを、国税庁タックスアンサー(No.1463・1476・1331・1250等)に沿って実務目線で整理します。

この記事のポイント
  • 株式の利益は譲渡益と配当の2種類。どちらも原則20.315%(所得税15%+復興0.315%+住民税5%)
  • 譲渡益は申告分離課税。配当は総合課税・申告分離・申告不要の3方式から選べる
  • 特定口座(源泉徴収あり)なら申告不要。ただし損益通算・繰越・配当控除を使うなら申告する
  • 上場株式等の譲渡損失は配当と損益通算でき、使い切れない分は3年繰越できる
  • NISAは非課税。ただし損失もないものとされ、損益通算・繰越はできない

株式の利益は「譲渡益」と「配当」の2種類

株式・投資信託の税金を理解する第一歩は、利益を2種類に分けて考えることです。売って得た利益が譲渡益(譲渡所得等)、保有中に受け取る配当金・分配金が配当所得です。この2つは課税の仕組みも選べる方式も異なるため、まず切り分けて押さえます。

利益の種類 内容 課税方式
譲渡益 株式・投資信託を売って得た利益(売却益) 申告分離課税(20.315%)
配当・分配金 保有中に受け取る配当金・株式投資信託の普通分配金 総合課税・申告分離課税・申告不要から選択
本記事は、証券取引所に上場している株式や公募株式投資信託などの「上場株式等」を前提に解説します。非上場株式(一般株式等)は税率は同じですが、上場株式等とは損益通算できず、配当の課税方式も一部異なるため、扱いを分けて考える必要があります。

譲渡益への課税(申告分離課税20.315%)

株式・投資信託を売って得た譲渡益は、給与など他の所得と合算せずに税額を計算する「申告分離課税」です。税率は所有期間にかかわらず一律で、次のとおりです。

譲渡所得等 = 譲渡価額 -(取得費 + 委託手数料等)
税額 = 譲渡所得等 × 20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

不動産の譲渡所得のような長期・短期の区分はなく、保有期間が何年でも税率は20.315%で一定です。ただし、株式等は「上場株式等」と「一般株式等(非上場株式など)」の2つのグループに厳格に区分され、原則として一方の損失をもう一方の利益から差し引くことはできません。上場株式の損失は上場株式等のグループ内でのみ通算します。

配当への課税:3つの方式から選ぶ

上場株式等の配当は、支払時に20.315%が源泉徴収されます。そのうえで、確定申告のときに次の3つの方式から選べます。どれを選ぶかで税額が変わるため、配当課税はこの選択が肝になります。

課税方式 税率・特徴 向いている人
申告不要 源泉徴収の20.315%で完結。確定申告しない 手間を避けたい人。合計所得を増やしたくない人
申告分離課税 20.315%。上場株式等の譲渡損失と損益通算できる 売却損があり、配当と相殺したい人
総合課税 他の所得と合算して累進税率。配当控除が使える 課税所得が低く、総合課税のほうが有利な人

総合課税を選ぶと配当控除が使えます。配当控除は、課税総所得金額1,000万円以下の部分は配当所得の10%、1,000万円を超える部分は5%を所得税額から差し引ける制度です(住民税の配当控除は別途)。所得税の累進税率が低い人ほど、総合課税+配当控除が有利になりやすく、逆に高所得の人は申告分離課税(20.315%)や申告不要が有利になりやすい、というのが大まかな目安です。なお、申告する配当は全額について総合課税か申告分離課税のいずれかに統一する必要があります。

配当を確定申告すると、その配当所得が合計所得金額に加わります。その結果、配偶者控除・扶養控除の判定、社会保険の扶養、国民健康保険料、各種手当などに影響することがあります。「税額だけ見れば申告が得」でも、これらの負担増を合わせると不利になる場合があるため、総合的に判断してください。合計所得が関係する制度は、扶養に係る税金と社会保険の違いふるさと納税の限度額の記事もあわせて確認してください。

口座の種類と申告の要否

株式取引に使う口座には主に4種類あり、どれを使うかで申告の手間が大きく変わります。とくに「特定口座(源泉徴収あり)」は、証券会社が損益計算から源泉徴収・納付まで行うため、原則として確定申告が不要になります。

口座の種類 損益計算・源泉徴収 確定申告
特定口座(源泉徴収あり) 証券会社が計算・源泉徴収・納付まで行う 原則不要(選択して申告も可)
特定口座(源泉徴収なし) 証券会社が年間取引報告書を作成(源泉徴収なし) 必要(報告書で簡易に申告)
一般口座 自分で損益を計算する 必要(自分で計算して申告)
NISA口座 非課税(源泉徴収なし) 不要(非課税のため)
「源泉徴収あり」の特定口座は、申告するかしないかを口座ごとに選べます。申告不要のままでも問題ありませんが、他の口座の損失と通算したい、損失を繰り越したい、配当控除を使いたい、といった場合には、あえて申告することで税金を取り戻せることがあります。

損益通算と3年間の繰越控除

上場株式等で売却損が出た年は、確定申告をすることで税負担を軽くできます。ポイントは「損益通算」と「繰越控除」の2つです。

損益通算:譲渡損失を配当と相殺する

上場株式等の譲渡損失は、まず同じ上場株式等の譲渡益と相殺します。それでも損失が残る場合は、申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等と損益通算できます。複数の証券会社に口座があり、一方が利益・他方が損失というときも、確定申告で合算すれば通算できます(源泉徴収ありの口座でも、通算するには申告が必要)。

繰越控除:使い切れない損失を3年繰り越す

損益通算してもなお控除しきれない上場株式等の譲渡損失は、翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年の譲渡益や申告分離の配当所得等から差し引けます。繰越控除を使うには、損失が出た年に確定申告をするだけでなく、その後も損失を使い切るまで連続して確定申告を続ける必要があります。取引がなかった年でも、繰越を続けるための申告が必要な点に注意してください。

繰越控除は「連続して申告」が要件です。損失を出した年に申告しても、翌年に申告を忘れると、その時点で繰越が打ち切られます。損失を使い切るまでは、毎年必ず確定申告を続けてください。

NISA:非課税だが損益通算できない

NISA口座で得た譲渡益や配当は非課税で、確定申告も不要です。2024年からの新しいNISAは、非課税枠が大きく拡大しています。

項目 内容
年間投資枠 つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=年間最大360万円
非課税保有限度額 生涯1,800万円(簿価ベース。うち成長投資枠は1,200万円まで)
非課税保有期間 無期限。売却すると翌年に売却分(簿価)の枠が復活する
NISAは利益が非課税な代わりに、損失が出てもその損失はないものとされます。課税口座の利益と損益通算したり、翌年に繰り越したりすることはできません。値下がりした商品をNISAで売っても、税務上は救済されない点に注意してください。

計算例で確認する

計算例:譲渡益と配当がある場合
前提:A証券(特定口座源泉あり)で譲渡益50万円、B証券(特定口座源泉あり)で譲渡損失30万円、上場株式の配当20万円

(1) 申告しない場合:A社の譲渡益50万円に源泉20.315%、配当20万円にも源泉20.315%が課され、B社の損失30万円は使われないまま
(2) 確定申告する場合:A社益50万円-B社損30万円=20万円に圧縮。さらに配当20万円と相殺すると課税対象は0円に近づき、源泉徴収された税金の還付を受けられる

このケースでは、申告することで損失を活かせて有利になります。

よくある落とし穴

落とし穴1:源泉ありだからと損失を申告せず放置する
複数口座で利益と損失があるのに申告しないと、損失が使われず税金を払いすぎになります。損失がある年は、通算・繰越のために申告を検討してください。
落とし穴2:配当を申告して合計所得が増え、扶養や社保で不利になる
税額だけ見れば申告が得でも、合計所得が増えることで配偶者控除・社会保険の扶養・国民健康保険料などに跳ね返り、トータルで不利になることがあります。申告する・しないは全体で判断します。
落とし穴3:NISAの損失を課税口座の利益と相殺しようとする
NISAの損失はないものとされ、損益通算も繰越もできません。含み損のある商品をNISAで売っても税務上の救済はない点を理解しておきましょう。
落とし穴4:繰越の途中で申告を止めてしまう
譲渡損失の繰越控除は、使い切るまで連続して確定申告を続けることが要件です。途中で1年でも申告を忘れると繰越が打ち切られます。

申告するかどうかの判断フロー

手順 やること
1 どの口座か確認する(特定口座 源泉あり/なし・一般・NISA)
2 NISAは非課税・申告不要。それ以外の口座について次へ進む
3 その年に譲渡損失があるか、複数口座で通算できる損益があるかを確認する
4 損失がある、または前年からの繰越がある場合は、申告分離で損益通算・繰越を使う
5 配当は総合課税(配当控除)と申告分離を試算し、有利な方を選ぶ
6 申告で合計所得が増えることによる扶養・社保・保険料への影響を確認する
7 通算・繰越・配当控除が不要で源泉ありなら、申告不要のままでよい
8 申告する場合は翌年2月16日から3月15日に確定申告・納付(または還付)

想定Q&A

Q1. 特定口座(源泉あり)なら確定申告は不要ですか

原則として不要です。証券会社が損益計算から源泉徴収・納付まで行うため、申告しなくても課税は完結します。ただし、複数口座の損益通算、譲渡損失の繰越、配当控除を使いたいときは、あえて申告することで得になる場合があります。

Q2. 源泉ありでも申告したほうが得なのはどんなときですか

別の口座の損失と通算したいとき、前年からの繰越損失があるとき、課税所得が低く総合課税+配当控除が有利なときです。ただし申告すると合計所得が増え、扶養・社会保険・保険料などに影響することがあるため、税額だけでなく全体で判断してください。

Q3. NISAで損が出たら他の利益と相殺できますか

できません。NISA口座の損失は税務上ないものとされ、課税口座の利益との損益通算も、翌年への繰越もできません。NISAは利益が非課税である反面、損失は救済されない仕組みです。

Q4. 上場株式の損失と非上場株式の利益は相殺できますか

できません。上場株式等と一般株式等(非上場株式など)は別々のグループとして計算し、原則として一方の損失を他方の利益から差し引くことはできません。損益通算はそれぞれのグループ内でのみ行います。

Q5. 配当は総合課税と申告分離のどちらが得ですか

課税所得が低い人は、総合課税を選んで配当控除を使うほうが有利になりやすく、課税所得が高い人は申告分離課税(20.315%)や申告不要が有利になりやすい、というのが目安です。譲渡損失と相殺したい場合は申告分離を選びます。実際には両方を試算して有利な方を選ぶのが確実です。

Q6. 譲渡損失の繰越はどうやって行いますか

損失が出た年に確定申告をし、翌年以後は損失を使い切るまで連続して確定申告を続けます。繰越できるのは翌年から3年間です。取引がなかった年でも、繰越を維持するために申告が必要です。

Q7. 投資信託の分配金も株式の配当と同じ課税ですか

株式投資信託の普通分配金は、運用益からの分配なので配当所得として同様に課税されます。一方、元本の払い戻しにあたる元本払戻金(特別分配金)は利益ではないため非課税です。同じ分配金でも中身によって扱いが分かれます。

Q8. 2つの証券会社で片方が利益、片方が損失です。相殺できますか

確定申告で両方の口座を合算すれば損益通算できます。源泉徴収ありの特定口座であっても、口座をまたいで通算するには申告が必要です。申告により、払いすぎた源泉税の還付を受けられることがあります。

Q9. 配当控除はいくら受けられますか

総合課税を選んだ場合、課税総所得金額1,000万円以下の部分は配当所得の10%、1,000万円を超える部分は5%を所得税額から控除できます(住民税の配当控除は別に定められています)。外国株式の配当や一部の投資法人からの配当などは、配当控除の対象外です。

Q10. 特定口座は源泉ありとなし、どちらを選べばよいですか

手間を避けたい、申告したくないなら源泉徴収ありが便利です。一方、取引が少なく自分で申告できる人や、他の所得と合わせて基礎控除の範囲に収まり源泉徴収を避けたい人は、源泉徴収なしを選ぶ余地があります。多くの個人投資家は、申告不要にできる源泉徴収ありを選んでいます。

Q11. NISAの非課税枠はどれくらいですか

年間の投資枠はつみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円の合計360万円、生涯の非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)です。保有期間は無期限で、売却すると翌年にその簿価分の枠が復活します。年間枠の未使用分を翌年に繰り越すことはできません。

まとめ

株式・投資信託の税金は、譲渡益と配当の2つに分かれ、どちらも原則20.315%で課税されます。譲渡益は申告分離課税、配当は総合課税・申告分離・申告不要の3方式から選べます。特定口座(源泉徴収あり)なら申告不要ですが、譲渡損失の損益通算や3年間の繰越控除、配当控除を使いたいときはあえて申告することで得になることがあります。ただし申告で合計所得が増えると、扶養や社会保険、保険料などに影響することがあるため、税額だけでなく全体で判断してください。NISAは非課税で申告不要ですが、損失は救済されない点に注意が必要です。

この記事のまとめ
  • 株式の利益は譲渡益と配当。どちらも原則20.315%
  • 譲渡益は申告分離課税。配当は総合・申告分離・申告不要から選択
  • 特定口座(源泉あり)は申告不要。通算・繰越・配当控除を使うなら申告
  • 上場株式等の譲渡損失は配当と損益通算、使い切れない分は3年繰越
  • NISAは非課税だが、損失はないものとされ通算・繰越はできない
  • 申告で合計所得が増えると扶養・社保・保険料に影響することがある

あわせて読みたい(所得税・資産形成)

※本記事は作成時点の法令・公表資料(所得税法、租税特別措置法、国税庁タックスアンサーNo.1250・No.1331・No.1463・No.1476等、金融庁NISA関連資料)に基づく一般的な解説です。有利判定や適用要件は個別の事情により異なります。具体的な判断は、最新の条文・国税庁資料の確認、または税理士へのご相談をおすすめします。

タイトルとURLをコピーしました