役員給与を損金にするには、定期同額給与や事前確定届出給与といった「支給の形態」の要件を満たす必要があります。ところが、この形態要件を満たしていても、金額そのものが高すぎれば、その高すぎる部分は損金になりません。これが法人税法34条2項の「不相当に高額な部分の金額」の損金不算入です。特にオーナーが自分の給与を自由に決められる同族会社では、この論点が税務調査の主戦場になります。
実務でやっかいなのは、「不相当に高額」が金額の明確な線を持たない不確定概念であることです。判定は実質基準と形式基準という2つの物差しで行われ、実質基準では「類似法人と比べてどうか」という比較が避けられません。本記事では、34条1項(支給形態)との切り分けから、実質基準・形式基準の中身、そして残波事件をはじめとする裁判例が実際にどう当てはめたかまでを、実務家向けに掘り下げます。役員給与を損金にするための支給形態の要件は「役員報酬の決め方と損金算入で整理しています。
- 役員給与は、支給形態(34条1項)を満たしても、金額が過大なら34条2項で別途否認される
- 判定は実質基準(施行令70条1号イ)と形式基準(同ロ)の2本立て
- 実質基準は、職務内容・収益状況・使用人給与・類似法人の支給状況で相当額を判断する
- 形式基準は、定款・株主総会の決議による限度額を超える部分
- 両基準で計算し、いずれか多い金額を超える部分が損金不算入になる
- 残波事件では、類似法人の役員給与の最高額を基準とする判断が示された
- 「不相当に高額」とは何か:34条2項の位置づけ
- 支給形態(34条1項)と金額の相当性(34条2項)の切り分け
- 実質基準(施行令70条1号イ):4つの要素で判断する
- 形式基準(施行令70条1号ロ):限度額を超える部分
- 実質基準と形式基準の関係:いずれか多い金額
- 判例で読む「不相当に高額」
- 立証と税務調査への備え
- 隣接論点との使い分け
- よくある落とし穴
- 想定Q&A
- Q1. 定期同額給与にしていれば、いくら払っても損金になりますか
- Q2. 実質基準と形式基準は、どちらで判定されますか
- Q3. 類似法人のデータは、こちらから見られますか
- Q4. 残波事件で「最高額基準」なら、平均額より有利では
- Q5. 比較法人より少し高いだけでも否認されますか
- Q6. 赤字の年に役員給与を増やすと危険ですか
- Q7. 過大とされた部分は、役員個人の給与所得はどうなりますか
- Q8. 非常勤の家族役員に報酬を払うのは問題ですか
- Q9. 役員報酬が過大とされそうなとき、配当に切り替えるべきですか
- Q10. 退職金の過大判定も、この記事の基準で考えますか
- Q11. 過大にならない金額を、あらかじめ計算できますか
- Q12. 類似法人のデータが見られないなら、何を目安にすればよいですか
- Q13. 株主総会で役員給与の限度額を決議していない場合はどうなりますか
- 判断フロー
- まとめ
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「不相当に高額」とは何か:34条2項の位置づけ
法人税法34条2項は、役員給与の額のうち「不相当に高額な部分の金額」を損金の額に算入しないと定めています。趣旨は明快で、オーナー社長が自分の給与を自由に決められる同族会社では、利益を役員給与の形で自分に付け替えて法人税を圧縮できてしまうため、職務の対価として相当な金額だけを損金と認め、それを超える”お手盛り”部分は損金から除くという点にあります。
ここで重要なのは、34条には性質の異なる2つの規制が併存していることです。34条1項が「どういう支給の仕方なら損金にできるか(支給形態)」を定めるのに対し、34条2項は「その金額は相当か(金額の水準)」を問います。両者は独立しており、片方をクリアしてももう片方で否認されうる関係にあります。
支給形態(34条1項)と金額の相当性(34条2項)の切り分け
実務で最も誤解が多いのが、この2つの混同です。「毎月同額で払っているから(定期同額だから)損金になる」と考えるのは誤りで、それは34条1項をクリアしているにすぎません。金額が過大なら、定期同額でも34条2項で否認されます。
| 比較軸 | 34条1項(支給形態) | 34条2項(金額の相当性) |
|---|---|---|
| 何を問うか | 支給の仕方が要件に合うか | 金額が職務の対価として相当か |
| 具体的な要件 | 定期同額給与 事前確定届出給与 業績連動給与 |
実質基準 形式基準 |
| 否認される部分 | 要件を外れた支給の全額等 | 相当額を超える部分だけ |
結論として、損金算入には「支給形態(34条1項)を満たし、かつ金額が相当(34条2項)」の両方が必要です。どちらか一方でも欠ければ、その部分は損金になりません。支給形態の詳細は定期同額給与とはを参照してください。本記事はこの先、34条2項(金額の相当性)に絞って解説します。
実質基準(施行令70条1号イ):4つの要素で判断する
実質基準は、法人税法施行令70条1号イに定められています。次の要素等に照らして相当と認められる金額(適正役員給与額)を超える部分が、不相当に高額とされます。
| 判断要素 | 実務での見られ方 |
|---|---|
| 役員の職務の内容 | 常勤・非常勤、役位、担当職務、勤務実態 |
| その法人の収益の状況 | 売上高・利益の水準と推移。増収増益か減収減益か |
| 使用人に対する給与の支給状況 | 従業員給与とのバランス、賃上げの有無 |
| 類似法人の役員給与の支給状況 | 同業種・類似規模の法人の役員給与水準との比較 |
この中で決め手になりやすいのが類似法人との比較です。税務調査では、課税庁が同業種・類似規模の法人を抽出し、その役員給与の水準と比べて過大かどうかを判断します。類似法人の抽出には、対象法人の売上高の0.5倍から2倍の範囲にある同業法人を選ぶ「倍半基準」がよく用いられます。納税者側はこの抽出過程や比較の妥当性を検証することになりますが、課税庁が保有する類似法人データにはアクセスできないため、反証は容易ではありません。
もっとも、類似法人の抽出方法や比較方法について明確な法令の定めはなく、納税者が同業他社の役員給与を把握するのも容易ではありません。そこで自己チェックや反証の手がかりとして使えるのが、財務省・財務総合政策研究所の「法人企業統計年報」に基づく業種別・資本金階級別の平均役員給与・役員賞与のデータです。残波事件でも、企業側の「類似法人の支給状況を把握するのは不可能」との主張に対し、国側は法人企業統計や民間給与実態統計調査、税務関係の書籍・雑誌等から類似法人の平均役員給与を算定できると反論しています。あくまで平均値であり、これを超えたら即過大というものではありませんが、自社の支給額が業種・規模の水準から大きく上振れしていないかを確認する目安として有用です。
形式基準(施行令70条1号ロ):限度額を超える部分
形式基準は、定款の定めまたは株主総会・社員総会等の決議によって定めた役員給与の限度額を超える部分を、不相当に高額とするものです。実質基準のような比較を要しない、形式的・機械的な歯止めです。
実務では、株主総会で役員報酬の総額(限度額)を決議し、その枠内で各役員への配分を取締役会等で決めるのが通常です。この限度額を超えて支給すると、超過部分は形式基準により損金不算入となります。限度額の決議を行わずに支給していると、そもそも形式基準の枠がなく、否認リスクが高まります。株主総会議事録・取締役会議事録の作成と保管が、形式基準を満たすための実務上の生命線です。
ここで実務家が正確に押さえたいのは、形式基準は限度額を定めている法人にだけ適用されるという点です。施行令70条1号ロは「限度額または算定方法を定めている内国法人が…」という構造になっているため、そもそも定款や株主総会で限度額を定めていない法人には、形式基準の適用がありません。その場合、金額の相当性は実質基準だけで判定され、形式基準を相当額の下支えとして使う余地も失われます。中小企業では限度額の決議を欠く例が見受けられますが、これは形式基準による防御を自ら手放していることになります。
実質基準と形式基準の関係:いずれか多い金額
2つの基準は、どちらか一方だけを使うのではありません。施行令70条1号は、実質基準による金額と形式基準による金額のうち、いずれか多い金額を超える部分を不相当に高額と定めています。つまり、両方で相当額を計算し、納税者に有利な(金額の大きい)方を超えた部分だけが否認されます。
判例で読む「不相当に高額」
不確定概念である「不相当に高額」は、裁判例の積み重ねで輪郭が形づくられてきました。実務家として押さえるべき代表的な裁判例を見ていきます。
残波事件(東京地判平成28年4月22日・東京高判平成29年2月23日)
泡盛「残波」で知られる酒造メーカーの役員給与・役員退職給与の過大が争われた事件で、正常な勤務実績のある役員の報酬額が正面から争われた点で注目されました。裁判所は納税者の主張を退け、課税庁の更正処分を是認しています。実務上、次の判断が重要です。
| 論点 | 裁判所の判断 |
|---|---|
| 比較の基準値 | 類似法人の役員給与の平均額ではなく、 最高額を基準とする判断が示された |
| 類似法人の抽出 | 売上高と役員給与に相関があり、 倍半基準による抽出も合理的とした |
| 役員の能力の考慮 | 能力を比較要素に加えると 恣意的になるとして採用しなかった |
| 収益悪化の主張 | 収益悪化を理由に過大認定を争う主張は 条文の趣旨に沿わないとして退けた |
「最高額を基準にする」という判断は、一見すると納税者に有利に見えます。しかし裏を返せば、類似法人の最高額すら超える水準の役員給与は、過大と認定されやすいということです。同時に、売上や利益が右肩上がりで、従業員給与も同程度に増えている状況であれば、それに沿って役員給与を増やしても過大とされにくい、という実務的な示唆も読み取れます。
近時の事例(東京地判令和5年3月23日・東京高判令和6年1月18日)
近時も、過大役員給与をめぐって国側が勝訴した事例があります。ポイントは残波事件と共通で、(1)売上高や粗利益が減少しているにもかかわらず役員給与を大幅に増額していたこと、(2)倍半基準等で抽出した類似法人と比べて役員給与額に大幅な乖離があったこと、が過大認定の決め手になりました。「業績が下がっているのに役員給与だけ上げる」動きは、実質基準の観点から特に危険だという点が、繰り返し確認されています。
この事件では、役員3名に支給した役員給与の合計約22億7,800万円のうち、約19億2,700万円が「不相当に高額な部分」に該当すると判断されました。役員への支給額は、類似法人の役員給与の最高額と比べても、ある期間は12.5倍から18倍、別の期においては実に64倍に達しており、職務内容や職責を踏まえても合理的な範囲を超えるとされています。納税者が「自社は卸売業ではなく製造業や専門・技術サービス業として類似法人を抽出すべき」と争った点も、裁判所は国の卸売業としての抽出に合理性ありとして退けました。
実務家として注目すべきは、国が採用し裁判所も合理的と認めた「適正額の算定方法」です。収益状況に偏差があったため、類似法人の役員給与最高額の平均額を基礎に、売上高・改定営業利益・個人換算所得の3つの要素の比率で偏差を調整するという方法がとられました。
適正額 = 類似法人の役員給与最高額の平均額 × [ (自社の売上高/類似法人の平均売上高) + (自社の改定営業利益/類似法人の平均改定営業利益) + (自社の個人換算所得/類似法人の平均個人換算所得) ] × 1/3
※改定営業利益=営業利益+役員給与支給額。個人換算所得=法人税の申告所得(繰越欠損金控除前)+役員給与+役員に対する賃借料等+役員借入金の利子。
この算定式は、税務調査で過大と指摘された際に、課税庁がどのように相当額を組み立ててくるかを示す実務上の指針になります。単純な平均額比較ではなく、自社の売上・利益・所得の水準を類似法人平均との比率で織り込む点を理解しておくと、指摘への備えと反論の精度が上がります。
「過大ではない」とされた事例もある
一方で、常にお手盛りが疑われるわけではありません。ある裁判例では、経営責任の明確化のためにいったん引き下げていた報酬を業績回復に伴って元の水準へ戻したケースについて、業績の推移からみて不合理とはいえず、しかもその金額が課税庁の抽出した比較法人の比準額から1割程度高いにとどまることなどを考慮して、不相当に高額とはいえないと判断しました。比較法人の水準からわずかに高い程度では、直ちに過大とはされないという、程度問題としての感覚を示す事例です。
立証と税務調査への備え
過大役員給与は、課税庁が「相当額はこれだ」と主張し、それを超える部分を否認してきます。納税者側は、支給額が職務の対価として合理的であることを裏づける資料を、平時から整えておくことが防御になります。
| 備えるべき資料 | 役割 |
|---|---|
| 株主総会・取締役会議事録 | 形式基準の限度額と決定手続を証明 |
| 職務分掌・担当業務の記録 | 職務の内容と勤務実態(実質基準)を裏づけ |
| 業績推移・報酬改定の経緯資料 | 増額の合理性(収益との連動)を説明 |
| 同業他社の報酬水準の参考資料 | 類似法人比較への反証材料 |
とりわけ、報酬を増額するときは「なぜこの金額なのか」を説明できる状態にしておくことが重要です。業績の伸び、職責の拡大、従業員給与の引き上げなど、増額を裏づける事実とセットで議事録に残しておくと、調査での説明力が大きく変わります。
隣接論点との使い分け
「不相当に高額」は役員報酬(毎月の給与)だけの論点ではありません。役員退職給与や使用人兼務役員の使用人分給与にも、それぞれ別の判定基準があります。混同しないよう整理します。
| 対象 | 過大判定の物差し |
|---|---|
| 役員報酬(本記事) | 実質基準・形式基準(施行令70条1号) |
| 役員退職給与 | 功績倍率法など(施行令70条2号) |
| 使用人兼務役員の使用人分 | 他の使用人との比較で過大な部分 |
役員退職給与の過大は、最終月額報酬・勤続年数・功績倍率で相当額を求める功績倍率法による役員退職金の損金算入限度額で詳しく解説しています。また、使用人兼務役員に支払う使用人分の給与についても過大判定があり、使用人分の賞与は、他の使用人と同じ時期に、売上貢献度など合理的な算定基準に基づいて支給されているかが損金性のポイントになります。その前提となる兼務役員の判定は使用人兼務役員の判定と賞与を参照してください。
よくある落とし穴
支給形態(34条1項)を満たしても、金額が過大なら34条2項で否認されます。定期同額のクリアと金額の相当性は別問題です。
減収減益下での役員給与の増額は、実質基準の観点で最も過大認定されやすいパターンです。残波事件・近時の事例でも決め手になっています。
形式基準の枠がないと、超過部分の歯止めが効かず、否認の入口が広がります。限度額の決議と議事録の保管は必須です。
非常勤や名目だけの家族役員に高額報酬を出すと、職務の内容(実質基準)に照らして過大とされやすく、同族会社では特に狙われます。
退職金の計算基礎(最終報酬月額)を大きくする目的などで、直前に過去分の役員報酬を遡及的に増額する例がありますが、増額に合理的な理由を主張・立証できないと、その増額部分は過大として否認されます。裁判例でも、遡及増額の合理的理由の主張も証拠もないとして否認されたものがあり、報酬・退職金の双方で危険な行為です。
想定Q&A
Q1. 定期同額給与にしていれば、いくら払っても損金になりますか
なりません。定期同額は34条1項(支給形態)の要件で、金額の相当性は別途34条2項で判定されます。定期同額でも、職務の対価として不相当に高額な部分は損金不算入です。
Q2. 実質基準と形式基準は、どちらで判定されますか
両方で相当額を計算し、いずれか多い金額を超える部分が損金不算入になります。どちらか一方だけで決まるのではなく、納税者に有利な(金額の大きい)方が相当額の基準になります。
Q3. 類似法人のデータは、こちらから見られますか
課税庁が保有する個別の類似法人データは、守秘の関係で納税者は直接見られません。そのため、反証は「抽出方法が不合理」「自社の個別事情が考慮されていない」といった観点から行うことになります。平時から自社の職務内容・業績・増額理由を記録しておくことが実質的な備えになります。
Q4. 残波事件で「最高額基準」なら、平均額より有利では
最高額を基準とする判断は、確かに平均額より枠は広くなります。しかし裏を返せば、類似法人の最高額すら超える水準の役員給与は過大とされやすいということです。最高額基準だから安心なのではなく、「最高額を超えたら危ない」という警告として受け止めるべきです。
Q5. 比較法人より少し高いだけでも否認されますか
程度問題です。裁判例には、比較法人の比準額から1割程度高いにとどまり、業績の推移からも不合理でないとして、不相当に高額とはいえないと判断したものがあります。わずかに高い程度で直ちに否認されるわけではありませんが、大幅な乖離は危険です。
Q6. 赤字の年に役員給与を増やすと危険ですか
実質基準の「収益の状況」に照らして過大と認定されやすくなります。減収減益下の役員給与増額は、残波事件でも近時の事例でも過大認定の決め手になっており、最も注意すべきパターンです。増額するなら、業績の裏づけとセットにすることが重要です。
Q7. 過大とされた部分は、役員個人の給与所得はどうなりますか
法人段階では損金不算入(法人税が増える)となる一方、役員個人が受け取った金額はそのまま給与所得として所得税・住民税の対象です。つまり、過大部分は法人でも個人でも課税される二重の負担になりやすく、追徴額が大きくなりがちです。
Q8. 非常勤の家族役員に報酬を払うのは問題ですか
勤務実態に見合った金額であれば問題ありませんが、実態のない名目だけの役員に高額な報酬を出すと、職務の内容(実質基準)に照らして過大とされやすくなります。担当業務や勤務の記録を残し、金額を実態に見合わせることが大切です。
Q9. 役員報酬が過大とされそうなとき、配当に切り替えるべきですか
過大とされた役員給与は損金にならず配当と同様の扱いに近づくため、そもそも損金にならない部分を無理に報酬で出す意味は乏しくなります。相当額を超える利益還元は、はじめから配当で行うことも選択肢です。報酬と配当のバランスは、法人税・所得税・社会保険料まで含めて総合的に検討します。
Q10. 退職金の過大判定も、この記事の基準で考えますか
いいえ。役員退職給与の過大は、実質基準・形式基準ではなく、最終月額報酬・勤続年数・功績倍率で相当額を求める功績倍率法が中心です(施行令70条2号)。報酬(毎月の給与)とは別の物差しなので、退職金は退職金の基準で考えてください。
Q11. 過大にならない金額を、あらかじめ計算できますか
課税庁の類似法人データにアクセスできないため、事前に「ここまでなら絶対安全」という金額を確定するのは困難です。現実的には、業績・職責・従業員給与とのバランスから合理的に説明できる水準にとどめ、増額時は理由を議事録に残す、という積み重ねでリスクを下げるのが実務対応です。
Q12. 類似法人のデータが見られないなら、何を目安にすればよいですか
財務省・財務総合政策研究所の「法人企業統計年報」に基づく、業種別・資本金階級別の平均役員給与・役員賞与のデータが参考になります。あくまで平均値であり、これを超えたら即過大というものではありませんが、自社の支給額がその水準から大きく上振れしていないかの自己チェックに使えます。残波事件でも、国側は統計資料や書籍等から類似法人の平均役員給与を算定できると主張しました。
Q13. 株主総会で役員給与の限度額を決議していない場合はどうなりますか
形式基準の適用がなくなり、金額の相当性は実質基準だけで判定されます。形式基準を相当額の下支えとして使えないため、かえって不利になり得ます。また、配分を代表取締役に一任し、その代表取締役が作成した「決定書」に金額を記載しただけでは限度額を定めたことにならないとした裁決例もあります。総額の限度額そのものを株主総会で決議し、議事録に残しておくことが重要です。
判断フロー
| 手順 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 支給形態(定期同額・事前確定等)を満たすか(34条1項) |
| 2 | 株主総会等で役員給与の限度額を決議しているか(形式基準) |
| 3 | 職務内容・収益状況・使用人給与・類似法人と照らして相当か(実質基準) |
| 4 | 実質基準額と形式基準額の、いずれか多い金額を相当額とする |
| 5 | 相当額を超える部分が損金不算入(過大役員給与) |
| 6 | 増額時は理由(業績・職責等)を議事録に残し、立証資料を整える |
まとめ
役員給与は、定期同額などの支給形態(34条1項)を満たしても、金額が不相当に高額なら34条2項でその部分が損金不算入になります。判定は実質基準(職務内容・収益状況・使用人給与・類似法人の支給状況)と形式基準(株主総会等の限度額)の2本立てで、両者のいずれか多い金額を超える部分が過大とされます。残波事件では類似法人の最高額を基準とする判断が示され、近時の事例でも「減収減益下での役員給与の大幅増額」が過大認定の決め手になっています。防御の鍵は、限度額の決議と議事録、そして増額理由を裏づける資料を平時から整えておくことです。
- 支給形態(34条1項)と金額の相当性(34条2項)は別問題。両方を満たして初めて損金
- 実質基準(施行令70条1号イ)=職務内容・収益・使用人給与・類似法人で相当額を判断
- 形式基準(同ロ)=株主総会等の限度額超過。議事録の保管が生命線
- 実質基準額と形式基準額の、いずれか多い金額を超える部分が損金不算入
- 残波事件は類似法人の最高額基準。減収減益下の増額が最も危険
- 増額理由を議事録・資料で残すことが最大の防御
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※本記事は作成時点の法令・裁判例(法人税法34条2項、法人税法施行令70条、東京地判平成28年4月22日・東京高判平成29年2月23日〔残波事件〕、東京地判令和5年3月23日・東京高判令和6年1月18日ほか)、および参考資料として財務省・財務総合政策研究所「法人企業統計年報」に基づく一般的な解説です。「不相当に高額」の判定は個別の事実関係により結論が異なります。具体的な判断は、最新の条文・裁判例の確認、または税理士へのご相談をおすすめします。

