法人の青色申告承認申請書とは?提出期限・みなし承認・2期連続期限後申告による取消を解説

法人税

法人の青色申告は、正確な帳簿を備え付けることと引き換えに、税務上の各種特典を認める制度です。欠損金の繰越控除、欠損金の繰戻し還付、少額減価償却資産の特例、各種の税額控除。中小法人がよく使う制度の多くが、青色申告であることを前提にしています。裏を返せば、青色申告でなくなった瞬間、これらがまとめて使えなくなります。

この制度の怖さは2点あります。1つは、申請期限を1日でも過ぎるとその事業年度は青色申告にできないこと。もう1つは、法人税の確定申告書を2期連続で期限内に提出しないと承認が取り消され、しかも取消通知から1年間は再申請すらできないことです(中間申告書ではなく確定申告書が対象です)。結果として、最短でも3期分は白色申告を強いられます。本記事では、申請の期限と手続き、そして取消しの実務を、条文と事務運営指針に沿って整理します。会社設立時の届出全体は会社設立後にやるべき税務手続きをご覧ください。

この記事のポイント
  • 青色申告は税務署長の承認を受ける制度。申請書は税務署のみに提出する(地方税は不要)
  • 既存法人は、適用したい事業年度開始の日の前日までに提出する
  • 設立第1期は、設立の日以後3か月を経過した日と第1期末のいずれか早い日の前日まで
  • 承認の通知は届かない。事業年度終了の日までに処分がなければ、その日に承認があったものとみなされる
  • 法人税の確定申告書を2期連続で期限内に提出しないと承認が取り消される。取消対象は2期目以後で、1期目は青色のまま
  • 取消通知の日から1年間は再申請できず、最短でも3期分は白色申告になる

青色申告の特典(何を失うのか)

法人の青色申告には、個人事業主のような65万円の特別控除はありません。しかし、それより実質的な効果の大きい特典が並びます。

特典 内容
欠損金の繰越控除 赤字を10年間繰り越して将来の黒字と相殺できる。創業期の損失が大きいほど効果が大きい
欠損金の繰戻し還付 当期の赤字を前期の黒字にさかのぼって相殺し、納めた法人税の還付を受けられる
少額減価償却資産の特例 中小企業者等が取得した少額の減価償却資産を、一定の限度額まで取得時に損金算入できる
各種の特別償却・税額控除 賃上げ促進税制、中小企業投資促進税制、研究開発税制など、青色申告法人に限定される制度が多い
更正の制限・理由付記 帳簿書類を調査した結果によらなければ更正されないなど、手続的な保護がある
繰越欠損金の仕組みは繰越欠損金とは、繰戻し還付は欠損金の繰戻し還付、少額減価償却資産の特例は少額減価償却資産の改正で解説しています。いずれも青色申告が前提です。

承認申請書の提出期限

提出先は納税地の所轄税務署のみです。法人設立届出書と異なり、都道府県や市区町村には提出しません。期限は状況で分かれます。

ケース 提出期限
既存法人(白色から切替え) 青色申告をしようとする事業年度開始の日の前日まで
設立第1期から青色申告する場合 設立の日以後3か月を経過した日と、設立第1期の事業年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日まで
設立第1期が3か月未満の場合の第2期 設立の日以後3か月を経過した日と、第2期の事業年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日まで
設例(設立第1期)
3月決算法人が3月1日に設立されました。設立第1期は3月1日から3月31日までの1か月です。設立の日以後3か月を経過した日は6月1日で、その前日は5月31日。第2期の事業年度終了の日は翌年3月31日で、その前日は3月30日。いずれか早い日の前日である5月31日が提出期限となります。第1期が3か月に満たないため、第2期についてもこの期限で判断します。
1日でも遅れれば白色申告
期限を過ぎた場合、その事業年度は青色申告にできません。設立初年度に多額の赤字が出る事業ほど、繰越控除を使えない損失は大きくなります。実務では、法人設立届出書と同時に提出してしまうのが確実です。

承認の通知は届かない(みなし承認)

申請書を出しても、税務署から「承認しました」という通知は届きません。法人税法125条2項により、青色申告書によって申告しようとする事業年度終了の日(中間申告書を提出すべき法人については、その事業年度開始の日以後6か月を経過する日)までに承認または却下の処分がなかったときは、その日において承認があったものとみなされます

したがって、却下の通知が来なければ承認されたと判断して差し支えありません。ただし、提出した事実そのものを後日に証明できるよう、控えに受付印をもらうか、電子申告の受信通知を保存しておいてください。

承認の取消事由(法人税法127条)

承認は一度受ければ無期限に続きますが、次のいずれかに該当すると取り消されます。

取消事由
1号 帳簿書類の備付け、記録または保存が法令に従って行われていない
2号 帳簿書類について税務署長の指示に従わない
3号 帳簿書類に取引の全部または一部を隠蔽し、または仮装して記載した
4号 法人税の確定申告書(法人税法74条1項)をその提出期限までに提出しなかった
帳簿の提示拒否も取消事由になる
事務運営指針は、1号の「備付け等」には帳簿書類を税務職員に提示することが含まれるとしています。税務調査で帳簿の提示を拒否すれば、提示がされなかった事業年度のうち最も古い事業年度以後について承認が取り消されます。物理的に存在していれば足りる、という理解は誤りです。

確定申告書の2期連続の期限後提出(4号)

実務でもっとも多い取消事由です。事務運営指針は、4号による取消しは2事業年度連続して、法人税法74条1項の確定申告書の提出が提出期限内にない場合に行うとし、この場合2事業年度目の事業年度以後について承認を取り消すとしています。

対象はあくまで法人税の確定申告書です。中間申告書を期限内に出さなかったことや、消費税の申告が遅れたことは、この4号の取消事由にはあたりません。そのうえで重要なのは、取消しの対象になるのが2期目(直前期)以後だという点です。1期目(直前々期)は青色申告のまま取り扱われます。したがって、1期目に生じた欠損金は青色欠損金として繰り越せます。この線引きを誤ると、繰越欠損金の計算を間違えます。

取消し後の再申請までのタイムライン

取り消されると、法人税法123条3号により、取消しの通知を受けた日から1年以内に提出された承認申請書は却下されます。つまり1年間は再申請そのものができません。3月決算法人を例に、実際の流れを追います。

時期 状況
X1年3月期 確定申告書を期限後に提出(1期目)。青色申告のまま
X2年3月期 確定申告書を期限後に提出(2期目)。この期以後が取消対象
X2年8月ごろ 取消しの通知が届く。X2年3月期は白色申告として修正申告
X3年3月期 白色申告
X3年8月以降 通知の日から1年経過。X4年3月期の開始前日までに再申請可能
X4年3月期 白色申告(再申請が間に合わないため)
X5年3月期 ようやく青色申告に復帰
この例では、X2年3月期からX4年3月期までの3期分が白色申告になります。その間、欠損金の繰越控除も繰戻し還付も少額減価償却資産の特例も使えません。期限内申告を守ることの価値は、加算税や延滞税だけでは測れないということです。加算税の仕組みは加算税の種類と割合をご覧ください。

実務上の落とし穴

「設立から3か月以内」とだけ覚える
正確には、設立の日以後3か月を経過した日と事業年度終了の日のいずれか早い日の前日です。決算期が設立日から3か月以内に来る会社では、期限が前倒しになります。
承認通知が来ないので提出できたか分からない
承認の通知は届きません。却下の通知がなければ承認とみなされます。提出の証拠として、控えの受付印か電子申告の受信通知を必ず保存してください。
1期目の欠損金まで白色扱いにする
確定申告書を2期連続で期限後に提出した場合、取り消されるのは2期目以後です。1期目は青色申告のままなので、その期の欠損金は繰り越せます。
取消し後すぐ再申請できると考える
取消しの通知を受けた日から1年以内の申請は却下されます。決算期との兼ね合いで、実際には3期分ほど白色申告が続きます。

想定Q&A集

Q1. 申請書はどこに提出しますか

納税地の所轄税務署のみです。法人設立届出書と違い、都道府県税事務所や市区町村への提出は不要です。書面のほか、e-Taxでも提出できます。

Q2. 設立第1期の提出期限を正確に教えてください

設立の日以後3か月を経過した日と、設立第1期の事業年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日までです。「設立から3か月以内」は近似にすぎず、決算期が早く来る会社では期限も前倒しになります。

Q3. 設立第1期が3か月より短い場合はどうなりますか

その翌事業年度についても、設立の日以後3か月を経過した日と翌事業年度終了の日のいずれか早い日の前日が期限になります。設立から3か月以内であれば、2期目に入っていても2期目から青色申告にできる、という理解です。

Q4. 期限を過ぎたらどうなりますか

その事業年度は白色申告になります。1日でも遅れれば救済はありません。翌事業年度から青色申告にするため、直ちに申請書を提出してください。翌事業年度開始の日の前日までが期限です。

Q5. 承認の通知は届きますか

届きません。青色申告書で申告しようとする事業年度終了の日(中間申告書を提出すべき法人は事業年度開始の日以後6か月を経過する日)までに承認または却下の処分がなければ、その日に承認があったものとみなされます。却下の通知が来なければ承認されたと判断します。

Q6. 毎年申請する必要はありますか

ありません。一度承認されれば、取りやめの届出や取消しがない限り継続します。

Q7. どんなときに取り消されますか

法人税法127条により、帳簿書類の備付け等が法令に従っていない、税務署長の指示に従わない、隠蔽仮装の記載がある、法人税の確定申告書(法人税法74条1項)を提出期限までに提出しなかった、のいずれかです。実務上は最後の確定申告書の期限後提出が最多です。

Q8. 確定申告書を1回期限後に出しただけで取り消されますか

事務運営指針上、4号による取消しは、2事業年度連続して法人税法74条1項の確定申告書の提出が期限内にない場合に行うとされています。1回であれば直ちに取り消されるわけではありませんが、無申告加算税や延滞税は課されます。なお、中間申告書の期限後提出や消費税の申告の遅れは、この取消事由にはあたりません。連続させないことが決定的に重要です。

Q9. 確定申告書を2期連続で期限後に提出した場合、どの期から白色ですか

2事業年度目の事業年度以後です。1期目(直前々期)は青色申告のまま取り扱われるため、その期の欠損金は青色欠損金として繰り越せます。

Q10. 取り消されたらいつ再申請できますか

取消しの通知を受けた日から1年以内に提出された申請書は却下されます。1年経過後に再申請でき、その後の事業年度から青色申告に戻れます。決算期との関係で、実務上は最短でも3期分が白色申告になります。

Q11. 税務調査で帳簿を見せなかった場合はどうなりますか

取消事由に該当します。事務運営指針は、帳簿書類の備付け等には税務職員への提示が含まれるとし、提示を拒否した場合は、提示がされなかった事業年度のうち最も古い事業年度以後について承認を取り消すとしています。

Q12. 法人にも65万円控除はありますか

ありません。65万円の特別控除は個人事業主の制度です。法人の青色申告のメリットは、欠損金の繰越控除・繰戻し還付、少額減価償却資産の特例、各種の特別償却や税額控除にあります。実質的な効果は特別控除より大きい場合が多いといえます。

青色申告の判断フロー

手順 確認すること
1 設立第1期か既存法人かを確認し、提出期限を日付で特定する
2 法人設立届出書と同時に、所轄税務署へ承認申請書を提出する
3 控えの受付印または電子申告の受信通知を保存する(承認通知は届かない)
4 複式簿記による帳簿を備え付け、保存要件を満たす体制を整える
5 毎期、法人税の確定申告書の提出期限を厳守する(2期連続の期限後提出は取消事由)
6 取り消された場合は、通知から1年経過後に再申請のスケジュールを組む

まとめ

法人の青色申告は、欠損金の繰越控除をはじめとする多くの特典の入口です。申請の期限は設立第1期でとくに厳格で、1日の遅れが初年度の赤字を無駄にします。承認後も、法人税の確定申告書を2期連続で期限後に提出すると取り消され、通知から1年間は再申請できないため、実質3期分の特典を失います。設立時に法人設立届出書と同時に提出すること、そして毎期の期限内申告を絶対に崩さないこと。この2つが青色申告を守る要点です。

この記事のまとめ
  • 提出先は所轄税務署のみ。地方税への提出は不要
  • 設立第1期は、設立の日以後3か月を経過した日と第1期末のいずれか早い日の前日まで
  • 承認の通知は届かず、処分がなければみなし承認となる
  • 取消事由は法人税法127条の4つ。帳簿の提示拒否も1号に該当する
  • 確定申告書の2期連続の期限後提出では、2期目以後が取消対象。1期目は青色のまま
  • 取消通知から1年は再申請できず、実務上は最短3期分が白色申告になる

※本記事は作成時点の法令・公表資料(法人税法121条・122条・123条・125条・126条・127条・146条、法人税法施行規則52条・62条、国税庁「C1-19 青色申告書の承認の申請」、国税庁事務運営指針「法人の青色申告の承認の取消しについて」等)に基づく一般的な解説です。個別の判断は事実関係により異なるため、具体的な取扱いは最新の法令・指針の確認、所轄税務署への照会、または税理士へのご相談をおすすめします。

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