異動届出書の書き方と記載例|本店移転・代表者変更・事業年度変更のケース別と添付書類・税目区分を解説

法人税

本記事は、法人の異動届出書(異動事項に関する届出)の書き方を、記載事項の全体像とケース別の記載例で解説します。異動届出書は、法人設立時に届け出た内容に変更が生じたときに、その内容を税務署へ知らせる書類です。記入自体は難しくありませんが、異動前と異動後の書き分け、税目区分のチェック、添付書類の要否で迷いやすく、とくに添付書類は国税と地方税で扱いが異なります。どの税務署・自治体に出すかという提出先の詳細は、異動届出書の提出先で解説しているため、ここでは書き方に絞ります。

この記事のポイント
  • 異動届出書は、設立時に届け出た内容に変更が生じたときに税務署へ提出する書類
  • 本店移転・代表者変更など、異動前と異動後がある事項は両方を書き分ける
  • 異動年月日は、原則として登記上の異動日(登記した日)を書く
  • 消費税欄にレ印を付すと、インボイスの登載事項変更届出書も兼ねられる
  • 登記事項証明書は、国税では添付不要だが、地方税では原則必要

記載事項の全体像

異動届出書の様式は1枚で、上部に会社の基本情報、中ほどに異動の内容を書きます。各欄の記載内容は次のとおりです。異動事項等の欄が、この書類のいちばんの中心です。

記載内容
提出先・提出日 所轄税務署長と提出年月日
納税地 本店所在地の住所と電話番号
法人名・法人番号 フリガナ付きの法人名と13桁の法人番号
代表者氏名・住所 代表者の氏名(フリガナ付き)と住所
事業年度 現在の事業年度(決算期)
税目区分 法人税・消費税の該当欄にレ印
異動事項等 異動した事項と、異動前・異動後の内容
異動年月日 原則として登記上の異動日
異動の理由・添付書類 異動の理由と、添付する書類の有無

押印は原則として不要です。かつては代表者印を押していましたが、税制改正により多くの税務書類で押印が廃止されています。複数の異動事項が同時に生じた場合は、1枚の異動届出書にまとめて記載できます。

ケース別の記載例(異動事項等欄)

異動事項等の欄は、事項ごとに異動前と異動後を書き分けるのが基本です。主なケースの書き方を一覧にしました。

ケース 異動前 異動後
本店移転 移転前の所在地 移転後の所在地
代表者変更 前代表者の役職・氏名 新代表者の役職・氏名
商号・名称変更 変更前の商号 変更後の商号
事業年度変更 変更前の事業年度 変更後の事業年度
資本金の額の変更 変更前の資本金の額 変更後の資本金の額
支店・工場の異動 異動前の状況 新設・廃止した支店等の内容

代表取締役が複数いる法人で、税務上の代表者を変更する場合も、代表者変更として記載します。事業年度の変更は、定款変更を伴うことが多く、その手続きは事業年度(決算期)の変更手続きで解説しています。

税目区分欄の書き方

様式には法人税と消費税のチェック欄があります。法人税の異動なら法人税に、消費税にも関係するなら消費税にもレ印を付します。ここで見落としがちなのが消費税欄です。消費税にレ印を付して提出すると、消費税の異動届出書に加えて、インボイスの登載事項変更届出書(適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書)も兼ねられます。つまり、消費税欄にレ印を付しておけば、インボイス登録内容の変更届を別途出す必要がありません。法人税と消費税の両方にかかわる異動では、両方にレ印を付すのが安全です。

添付書類は国税と地方税で違う

添付書類は、提出先が国税(税務署)か地方税(都道府県税事務所・市区町村)かで扱いが分かれます。言い切ると、国税は登記事項証明書の添付が原則不要、地方税は登記を要する事項なら原則必要です。ここを取り違えると、地方税で書類不足になったり、国税で不要な書類を用意したりします。

提出先 登記事項証明書などの添付
国税(税務署) 平成29年4月以後、添付は原則不要(内容確認のため定款等の写しを求められる場合あり)
地方税(県税・市区町村) 登記を要する事項は登記事項証明書、定款変更を要するものは定款等の写し、登記不要の事項は変更を証する書類の写しを提出機関ごとに添付

国税で登記事項証明書の添付が原則不要になったのは、平成29年4月1日以後の手続簡素化によるものです。ただし、税務署から求められたときは提示・提出が必要です。地方税は、県税事務所と市区町村それぞれに、提出機関ごとに添付書類をそろえます。

提出方法と提出先

国税は、納税地の所轄税務署長に、窓口への持参・郵送・電子申告のいずれかで提出します。納税地の異動(本店移転)の場合、平成29年4月以後は異動前の所轄税務署へ1通提出すれば足り、異動後の税務署への提出は不要です。提出期限に日数の定めはなく、登記等の事務処理に通常要する期間内に速やかに提出します。どの税務署・自治体に何を出すかというケース別の提出先は、異動届出書の提出先で詳しく解説しています。

実務上の落とし穴

異動前と異動後を書き分けない

本店移転・代表者変更・商号変更などは、異動後だけでなく異動前も書きます。異動後しか書かないと、何がどう変わったのかが伝わりません。異動事項等の欄は、必ず異動前と異動後をセットで記載します。

異動年月日に実行日を書いてしまう

異動年月日は、原則として登記上の異動日を書きます。取締役会や株主総会で決めた日、実際に引っ越した日ではなく、登記した日を基準にします。登記日と実行日がずれるケースでは、取り違えに注意します。

消費税欄のレ印を付け忘れる

消費税にもかかわる異動なのに消費税欄にレ印を付け忘れると、インボイスの登載事項変更届出書を別途出す必要が生じます。消費税欄にレ印を付しておけば、その届出を兼ねられます。インボイス登録している法人は、消費税欄の付け忘れに注意します。

地方税の添付書類を国税と同じと思い込む

国税で登記事項証明書が不要だからと、地方税でも不要と思い込むと書類不足になります。地方税は登記を要する事項について登記事項証明書の添付を求めるのが原則です。国税と地方税で添付の要否が違うことを前提に準備します。

給与支払事務所の届出を出し忘れる

事務所を移転・開設したときは、異動届出書だけでなく、給与を支払う事務所についての届出も必要になることがあります。詳しくは給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書をご覧ください。こちらは提出期限が1か月以内と短いので注意します。

記入の判断フロー

手順 確認すること
1 上部に納税地・法人名・法人番号・代表者・事業年度を記入する
2 税目区分で、法人税・消費税の該当欄にレ印を付ける
3 異動事項等に、事項ごとの異動前・異動後を書き分ける
4 異動年月日に登記上の異動日を書く
5 提出先ごとに添付書類を確認(国税は原則不要、地方税は原則必要)
6 給与支払事務所の異動があれば、その届出(1か月以内)も準備する

想定Q&A集

Q1. 異動届出書はどんなときに出しますか

設立時に届け出た内容に変更が生じたときに出します。具体的には、本店移転、代表者変更、商号変更、事業年度変更、資本金の額の変更、事業目的の変更、合併・分割、解散・清算結了、支店・工場等の異動などです。登記や定款の内容を変えたら必要になる、と考えると分かりやすいです。

Q2. 異動年月日には何の日を書きますか

原則として登記上の異動日を書きます。株主総会や取締役会で決めた日や、実際に移転した日ではなく、登記した日が基準です。登記を要しない事項の場合は、変更の効力が生じた日を書きます。

Q3. 複数の異動が同時にあったら何枚出しますか

1枚にまとめて記載できます。たとえば本店移転と代表者変更が同時にあった場合、それぞれの異動前・異動後を1枚の異動届出書に書けば足ります。事項ごとに書き分ければ、複数枚に分ける必要はありません。

Q4. 登記事項証明書の添付は必要ですか

国税(税務署)は、平成29年4月以後、添付は原則不要です。ただし税務署から求められたときは提示・提出します。地方税(県税事務所・市区町村)は、登記を要する事項について登記事項証明書の添付を求めるのが原則です。国税と地方税で扱いが違う点に注意します。

Q5. 消費税欄のレ印は付けたほうがよいですか

消費税にもかかわる異動なら付けます。消費税欄にレ印を付して提出すると、消費税の異動届出書に加え、インボイスの登載事項変更届出書も兼ねられ、別途の届出が不要になります。インボイス登録をしている法人は、付け忘れないようにします。

Q6. 押印は必要ですか

原則として不要です。税制改正により、多くの税務書類で押印が廃止されました。かつては代表者印を押していましたが、現在は押印欄がない様式が使われています。心配な場合は、提出先の最新様式で確認します。

Q7. 本店を別の税務署の管轄へ移転しました。どちらに出しますか

国税は、平成29年4月以後、異動前の所轄税務署へ1通提出すれば足ります。異動後の税務署への提出は不要です。一方、地方税は異動前・異動後の両方の自治体に届出が必要な点が国税と異なります。詳しい提出先は提出先の記事で解説しています。

Q8. 代表取締役が2人いて税務上の代表者を変えるだけでも必要ですか

必要です。代表取締役が複数いる法人で、税務上の代表者を変更する場合も、代表者変更として異動届出書を提出します。異動前と異動後の代表者の役職・氏名を記載します。

Q9. 提出期限はいつまでですか

異動届出書には日数の期限はなく、登記等の事務処理に通常要する期間内に速やかに提出します。ただし、事務所の移転などで給与支払事務所等の届出も必要な場合、そちらは1か月以内と定められているため、あわせて早めに対応します。

Q10. 電子申告でも提出できますか

できます。国税は窓口への持参・郵送のほか、電子申告でも提出できます。地方税は地方税のポータルシステムを利用します。電子で提出する場合も、記載内容の考え方は同じで、異動前・異動後を書き分け、税目区分を選び、必要な書類を添えます。

まとめ

異動届出書の書き方は、上部に会社の基本情報を書き、税目区分にレ印を付け、異動事項等の欄で事項ごとの異動前・異動後を書き分けるのが基本です。異動年月日は原則として登記上の異動日を書き、消費税にかかわるならレ印でインボイスの登載事項変更届も兼ねます。いちばん間違えやすいのが添付書類で、国税は登記事項証明書の添付が原則不要、地方税は原則必要という違いを押さえておけば、書類不足や二度手間を防げます。記入自体は難しくないので、ポイントを押さえて落ち着いて仕上げましょう。

この記事のまとめ
  • 異動事項等の欄は、事項ごとに異動前・異動後を書き分ける
  • 異動年月日は原則として登記上の異動日を書く
  • 消費税欄のレ印で、インボイスの登載事項変更届出書も兼ねられる
  • 登記事項証明書は国税では添付不要、地方税では原則必要
  • 押印は原則不要。給与支払事務所の届出(1か月以内)も忘れない

※本記事は作成時点の法令・国税庁の記載要領等に基づく一般的な解説です。様式や添付書類の要否は改正や自治体により異なるため、実際の提出にあたっては提出先の最新の様式・案内をご確認ください。

出典
国税庁「異動事項に関する届出(C1-8)」および同記載要領、国税庁「法人設立届出書等について、手続が簡素化されました(平成29年)」、東京都主税局「異動届出書の記載要領」
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