消費税簡易課税制度選択届出書とは?提出期限・2年縛り・不適用届と5,000万円要件をわかりやすく解説

消費税

簡易課税制度は、みなし仕入率を使って消費税の納付額を簡便に計算できる中小事業者向けの制度です。これを使うには、消費税簡易課税制度選択届出書を事前に提出する必要があります。提出のタイミングを1日でも逃すと、その課税期間は使えません。また、いったん選ぶと原則2年は一般課税に戻れず、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える年は選んでいても簡易課税を使えないなど、届出をめぐる注意点がいくつもあります。この記事では、提出期限、5,000万円という要件、2年縛り、やめるときの不適用届、高額特定資産を取得した場合の提出制限、2割特例からの移行までを整理します。制度の中身や計算方法は消費税の簡易課税制度をご覧ください。

この記事のポイント
  • 簡易課税を使うために事前に出す届出(消費税法37条)
  • 提出期限は、適用を受けたい課税期間の初日の前日まで(原則、前期の末日まで)
  • 基準期間の課税売上高が5,000万円以下でなければ、その課税期間は使えない
  • いったん選ぶと、原則2年間は一般課税に戻れない(2年縛り)
  • 高額特定資産を取得すると、一定期間はこの届出書を提出できない

簡易課税制度選択届出書とは

簡易課税制度は、実際に支払った消費税を集計する代わりに、売上に係る消費税額に業種ごとのみなし仕入率を乗じて仕入税額控除を計算する制度です。中小事業者の事務負担を軽くするための仕組みで、これを選ぶために提出するのが消費税簡易課税制度選択届出書です(消費税法37条)。適用できるのは、基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者です。届出書を出して簡易課税を選ぶと、以後は届出の効力が続く限り、簡易課税で申告します。

提出期限と効力の発生時期

提出期限は、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までです。つまり、前の課税期間の末日までに出せば、翌課税期間から簡易課税になります。個人事業者が翌年から適用したいなら前年の12月31日まで、3月決算法人が翌期の4月1日から適用したいなら当期の3月31日までです。新規開業した個人や新設法人が最初の課税期間から適用したい場合は、その課税期間中に提出すれば、その課税期間から簡易課税になります。

区分 提出期限と効力
原則 適用したい課税期間の初日の前日までに提出
翌課税期間から簡易課税
新規開業・新設法人 その課税期間中に提出すれば
その課税期間から簡易課税
やむを得ない事情 災害等で間に合わない場合は
特例承認の申請ができる

期限を1日でも過ぎると、その課税期間は簡易課税を使えず、原則の一般課税(本則課税)で申告することになります。翌課税期間からの適用になるため、提出時期には特に注意します。

基準期間の課税売上高5,000万円の要件

簡易課税は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間だけ使えます。言い切ると、届出書を出していても、ある課税期間の基準期間の課税売上高が5,000万円を超えていれば、その課税期間は簡易課税を使えず、一般課税で申告します。このとき届出書の効力そのものは消えないため、その後の課税期間で基準期間の課税売上高が再び5,000万円以下になれば、あらためて届出書を出さなくても簡易課税に戻ります(不適用届を出していない場合)。売上が5,000万円前後を行き来する事業者は、年ごとに適用の有無が変わる点に注意します。

2年縛り(原則2年は戻れない)

簡易課税を選ぶと、事業を廃止した場合を除き、届出書の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、やめるための不適用届を提出できません(消費税法37条)。つまり、原則として最低2年間は簡易課税を続ける必要があります。翌年に大きな設備投資を予定していて一般課税のほうが有利になりそうな場合でも、簡易課税を選んだ直後は一般課税に戻れない、という関係です。選ぶ前に、少なくとも2年先までの売上と仕入の見込みで、簡易課税と一般課税のどちらが有利かを検討します。

高額特定資産を取得した場合の提出制限

高額特定資産や調整対象固定資産を取得すると、簡易課税制度選択届出書を提出できない期間が生じます。高額特定資産(税抜1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産)を取得して一般課税で申告した場合、その取得した課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までは、この届出書を提出できません。大きな設備投資をして一般課税で還付を受けた事業者が、すぐに簡易課税へ切り替えることを防ぐための制限です。設備投資を予定しているなら、簡易課税へ移れる時期を先に確認します。詳しくは消費税の3年縛りをご覧ください。

やめるとき:簡易課税制度選択不適用届出書

簡易課税をやめて一般課税に戻すには、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出します。やめようとする課税期間の初日の前日までに出せば、翌課税期間から一般課税に戻ります。ただし、前述の2年縛りの期間を過ぎていることが条件で、期間中は提出できません。なお、基準期間の課税売上高が5,000万円を超えて一時的に一般課税になった場合は、届出書の効力が残っているため、5,000万円以下に戻ると自動的に簡易課税に戻ります。完全に一般課税へ切り替えたいときは、この不適用届を出します。

項目 内容
提出期限 一般課税に戻したい課税期間の初日の前日まで
提出できる時期 2年縛りの期間を過ぎてから
効力 提出した課税期間の翌課税期間から一般課税

2割特例からの移行(提出期限の特例)

インボイスを機に課税事業者になった人が使える2割特例には、簡易課税への移行をスムーズにする特例があります。2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出すれば、通常の「前期の末日まで」という期限にかかわらず、その提出した課税期間から簡易課税を適用できます。2割特例が使えるのは経過措置の期間に限られるため、その後の課税期間で簡易課税に切り替えたい場合に役立つ特例です。2割特例の対象や期間はインボイスの2割特例をご覧ください。

届出書の書き方

様式は国税庁のホームページからダウンロードでき、記載事項は多くありません。適用開始課税期間と、その基準期間・課税売上高、事業内容と事業区分を正確に書くのがポイントです。

記載内容
提出先・提出日 納税地の所轄税務署長と提出年月日
納税地・氏名等 住所・電話番号、氏名または名称、法人番号または個人番号
適用開始課税期間 簡易課税を適用する課税期間の初日と末日
基準期間・課税売上高 その基準期間と、基準期間の課税売上高
事業内容・事業区分 主な事業の内容と、みなし仕入率の事業区分

提出先は納税地の所轄税務署長で、窓口への持参・郵送・電子申告のいずれかで提出します。押印は原則不要です。

実務上の落とし穴

提出期限を1日でも過ぎる

簡易課税を使いたい課税期間の初日の前日までに出さないと、その期は使えず、適用は翌期からになります。決算間際に検討して間に合わない、という失敗が起こりがちです。有利判定は事業年度の終わりまでに済ませ、期限内に提出します。

売上5,000万円超で一般課税になるのを見落とす

届出書を出していても、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間は簡易課税を使えず、一般課税で申告します。売上が伸びている事業者は、その課税期間が簡易課税か一般課税かを毎年確認します。

2年縛りの間に大きな設備投資をする

簡易課税では、支払った消費税を実額で控除できないため、大きな設備投資をしても還付は受けられません。2年縛りで一般課税に戻れない間に高額な投資をすると不利になります。近い将来の投資予定を織り込んで選びます。

高額特定資産の取得で届出書が出せない

高額特定資産を取得して一般課税で申告すると、一定期間はこの届出書を提出できません。還付を受けた直後に簡易課税へ切り替えようとしても、提出制限にかかって選べないことがあります。取得の前に、簡易課税へ移れる時期を確認します。

みなし仕入率が実際の仕入率より低い

みなし仕入率が実際の仕入率より低い事業者は、簡易課税だと控除できる消費税が実際より少なくなり、かえって納税が増えることがあります。事業区分ごとのみなし仕入率と実際の仕入率を比べ、有利かどうかを見極めてから選びます。

判断フロー

手順 確認すること
1 基準期間の課税売上高が5,000万円以下かを確認する
2 みなし仕入率と実際の仕入率を比べ、簡易課税が有利かを判断する
3 2年縛りと、近い将来の設備投資の予定を織り込む
4 適用したい課税期間の初日の前日までに選択届出書を提出する
5 やめるときは2年縛りが明けてから、前期の末日までに不適用届を提出する

想定Q&A集

Q1. いつまでに出せばいつから簡易課税ですか

原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに出せば、その課税期間(提出した期の翌期)から簡易課税になります。個人は前年の12月31日まで、3月決算法人は当期の3月31日までが目安です。新規開業や新設法人は、その課税期間中に出せばその期から適用できます。

Q2. 売上が5,000万円を超えたらどうなりますか

基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間は、届出書を出していても簡易課税を使えず、一般課税で申告します。届出書の効力は残るので、その後に基準期間の課税売上高が5,000万円以下に戻れば、あらためて出さなくても簡易課税に戻ります。

Q3. 一度選ぶと何年やめられないのですか

原則として2年です。事業を廃止した場合を除き、届出の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、やめるための不適用届を出せません。2年縛りが明けてから、やめる課税期間の前期末日までに不適用届を出します。

Q4. やめて一般課税に戻すにはどうしますか

消費税簡易課税制度選択不適用届出書を、一般課税に戻したい課税期間の初日の前日までに提出します。2年縛りが過ぎていることが条件で、提出すれば翌課税期間から一般課税に戻ります。

Q5. 大きな設備投資をする予定でも簡易課税でよいですか

慎重に判断します。簡易課税では支払った消費税を実額で控除できないため、大きな設備投資をしても還付は受けられません。2年縛りで一般課税に戻れない間に高額な投資をすると不利になりがちです。投資の時期と金額を織り込んで選びます。

Q6. 高額特定資産を買うと届出に影響しますか

影響します。高額特定資産を取得して一般課税で申告した場合、その取得した課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までは、簡易課税制度選択届出書を提出できません。還付を受けた直後に簡易課税へ切り替えることはできない、と考えておきます。

Q7. 2割特例を使っていました。簡易課税へはいつ移れますか

特例があります。2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に選択届出書を出せば、その課税期間から簡易課税を適用できます。通常の「前期の末日まで」という期限にかかわらず、翌課税期間中の提出で間に合う点が特徴です。

Q8. 提出を忘れたら救済はありますか

原則としてありません。期限までに出さなければ、その課税期間は一般課税になります。災害などやむを得ない事情がある場合に限り、届出期限の特例が認められることがありますが、失念は対象外です。なお、課税期間を短縮する届出を使って影響を抑える方法が検討されることもあります。

Q9. 5,000万円は税抜と税込のどちらで判定しますか

原則として税抜金額で判定します。ただし、その基準期間が免税事業者だった場合は、税込金額で判定します。判定を誤ると適用の可否が変わるため、基準期間の課税事業者・免税事業者の別を確認します。

Q10. 提出先と提出方法を教えてください

提出先は納税地の所轄税務署長です。様式は国税庁のホームページからダウンロードでき、窓口への持参・郵送・電子申告のいずれかで提出します。控えを保管し、適用開始課税期間と基準期間の課税売上高、事業区分に誤りがないか確認しておきます。

まとめ

簡易課税制度選択届出書は、みなし仕入率で計算する簡易課税を使うために事前に出す届出です。提出期限は適用したい課税期間の初日の前日までで、1日でも遅れると翌期からになります。基準期間の課税売上高が5,000万円以下でなければその期は使えず、いったん選ぶと原則2年は一般課税に戻れません。高額特定資産を取得すると一定期間は提出できず、やめるときは2年縛りが明けてから不適用届を出します。みなし仕入率と実際の仕入率、2年先までの見通しを踏まえ、有利かどうかを確かめてから提出しましょう。

この記事のまとめ
  • 簡易課税を使うための事前届出(提出期限は適用課税期間の初日の前日まで)
  • 基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間は簡易課税を使えない
  • いったん選ぶと原則2年は一般課税に戻れない(2年縛り)
  • 高額特定資産を取得すると、一定期間はこの届出書を提出できない
  • やめるときは2年縛りが明けてから、前期末日までに不適用届を提出

※本記事は作成時点の消費税法・国税庁の資料に基づく一般的な解説です。高額特定資産の判定やインボイスの経過措置との関係は個別事情で異なるため、具体的な判断は最新の情報の確認や、顧問税理士への相談をおすすめします。

出典
消費税法37条、国税庁タックスアンサーNo.6505「簡易課税制度」、No.6629「消費税の各種届出書」、国税庁「D1-22 消費税簡易課税制度選択届出手続」、「D1-23 消費税簡易課税制度選択不適用届出手続」
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