事業所税は、資産割(床面積)も従業者割(給与総額)も、すべて「事業所等」という単位を出発点に計算します。ある施設が事業所税でいう事業所等に当たるかどうかが、課税対象に含めるか・床面積に算入するか・免税点判定に乗せるかの入口になります。ただし、「そもそもその拠点が事務所等に当たるか」という該当性の三要件(物的設備・人的設備・継続性)は、法人住民税の均等割なども含む複数税目に共通する論点で、事業所とは|物的設備・人的設備・継続性の三要件で総論を扱っています。本記事はその先、事業所税で実際に課税対象になる施設(建設現場のプレハブ・倉庫・屋外設備・同一敷地の複数棟・休止施設)の判定に絞って整理します。
この記事のポイント
- 事業所等の該当性の三要件(物的設備・人的設備・継続性)の総論は別記事「事業所とは|物的設備・人的設備・継続性の三要件」で解説。本記事は事業所税固有の「課税対象になる施設」の判定に特化。
- 資産割は「事業所用家屋(床面積)」が前提。屋根・周壁のない屋外設備・資材置場は原則として床面積に含まれない。
- 継続性を欠く1年未満の現場プレハブは原則対象外。長期に及べば対象になり得る。
- 同一敷地・効用上一体の複数棟は1つの事業所等(増設は拡張とみて月割しない)。
- 6か月以上連続休止+明確な区画で資産割から除外できる(ただし免税点判定では床面積を含める)。
- 資産割はゼロでも従業者割は課税され得る(屋外で働く従業者の給与)。
事業所税における「事業所等」の位置づけ
事業所税でいう「事業所等」とは、おおむね事業を行うために設けられた人的・物的設備があり、継続して事業が行われる場所を指します。事務所・店舗・工場・倉庫などが典型例で、所有か賃借かは問いません。この該当性そのもの(物的設備・人的設備・継続性の三要件)は法人住民税の均等割などと共通の論点のため、事業所とは|物的設備・人的設備・継続性の三要件で解説しています。本記事では、その施設が事業所税で課税対象になるか・床面積に算入されるかという、事業所税固有の判定に絞ります。
資産割と従業者割で「効き方」が違う
事業所税は、事業所床面積を課税標準とする資産割と、従業者給与総額を課税標準とする従業者割から成ります。同じ「事業所等」でも、この2つで効き方が異なる点が最初の押さえどころです。資産割は、事業所等のうち「事業所用家屋」の床面積が対象で、屋根と周壁等を有する家屋であることが前提になります。
| 施設の性質 | 資産割の取扱い |
|---|---|
| 家屋に当たり、事業の用に供されている | 課税対象(床面積に算入) |
| 家屋に当たらない屋外設備・構築物 | 原則、床面積に含まれない |
一方、従業者割は家屋かどうかを問いません。屋外で作業する従業者であっても、その者がいずれかの事業所等に属して給与を支払われていれば、従業者割の計算上は給与総額に取り込まれます。つまり資産割の床面積はゼロでも、従業者割は課税されるという場面があり得ます(後述の屋外ヤード等のケース)。
ヒント:資産割は「家屋・床面積」、従業者割は「そこに属する従業者の給与」で効きます。この効き方の違いを意識すると、屋外中心の拠点でも従業者割の計上漏れを防げます。
迷いやすいケース別の判定
ケースA:建設現場の仮設事務所・プレハブ
建設業の現場事務所のように、臨時的かつ移動性を有する仮設建築物は、事業所税の性格に照らし、設置期間が1年未満のものは事業所等として扱わない取扱いが一般的です。短期間で撤去される現場プレハブは、継続性を欠くため課税対象外と整理されます。ただし設置が長期間(1年以上)に及ぶ場合は、継続性があるとみて事業所等に当たり得ます。「仮設だから当然に非課税」ではなく、設置期間と実態で判断される点に注意してください。
注意点:期間の取扱いは自治体差がある:具体的な期間の運用は課税団体(市区)により差があり得ます。長期の現場を抱える場合は、所在地の市区に確認するのが安全です。
ケースB:倉庫・資材置場
倉庫は、屋根と周壁を有する家屋であれば、事業の用に供されている限り事業所用家屋として資産割の課税対象になります。保管専用で常駐者がいなくても、事業のために継続使用されていれば対象です。一方、屋根や周壁のない屋外の資材置場・ストックヤードは、家屋に当たらないため原則として資産割の床面積には算入されません。ただし、そこに事務所棟やプレハブがあればその部分は家屋として対象になり得ますし、そこで働く従業者の給与は従業者割に取り込まれます。
ケースC:屋外設備・構築物(タンク・プラント・駐車場など)
屋外の機械設備・タンク・構築物などは、家屋でない限り資産割の床面積には含まれないのが原則です。もっとも、立体駐車場のうち建築物に当たる部分など、家屋性の判断が分かれるものもあります。駐車場の課税関係は事業所税と駐車場で個別に解説しています。
ケースD:同一敷地内の複数の建物(効用上一体か)
同じ敷地に複数の建物がある場合、「全部で1つの事業所等」と数えるのか「別々の事業所等」と数えるのかが問題になります。実務では、経営主体が同一で、同一敷地内にあり、効用上一体として使われている場合は、1つの事業所等とみなす取扱いがされます。
注意点:月割計算への影響:効用上一体の判定は月割計算(事業所等の新設・廃止時の月数按分)にも影響します。同一敷地内の既存事業所に隣接して建物を増設した場合は、「新たな事業所等の新設」ではなく「1つの事業所等の床面積の増加(拡張)」とみて、月割計算をせず期末床面積で課税します。一方、支店・営業所のようにそこで一単位の事業が行われる施設の新設・廃止は、月割計算の対象になります。
ケースE:休止している施設
事業所床面積のうち、算定期間の末日以前6か月以上連続して休止していたと認められ、かつ休止部分が明確に区画されている施設は、資産割の課税標準に含めない取扱いがあります。ただし、維持補修が行われいつでも使える状態にある施設や、都合で一時的に使っていないだけの遊休施設は対象外です。詳細は事業所税と休止施設を参照してください。
ヒント:休止部分を資産割から除いても、免税点の判定では休止部分の床面積も基礎に含める点に注意が必要です。免税点判定の詳細は事業所税の免税点判定で解説しています。
自社所有か賃借かは問わない
「事業所等」に当たるかどうかに、所有・賃借の別は関係ありません。借りて使っていても、自社の事業所等として課税対象になります。貸ビルの一室を借りて事業を行っている場合、その借主が納税義務者です。一方、ビルを貸している貸主は、貸付部分(空室を含む)については原則として納税義務を負いませんが、ビルの管理室など貸主自身が事業に使っている部分は貸主の事業所等として課税対象になります。なお、事業所用家屋を貸し付ける貸主には、別途事業所用家屋の貸付等申告が必要です。
実務上のチェックポイント
事業所等の判定チェックリスト
- その施設は屋根・周壁を有する家屋か(資産割の対象になるか)
- 設置・使用は継続的か、それとも1年未満の仮設か(現場事務所など)
- 同一敷地内の複数建物は効用上一体か(1つの事業所等か、別々か)
- 休止施設は6か月以上連続休止+明確な区画の要件を満たすか
- 屋外で働く従業者がいる場合、その給与は従業者割に取り込まれているか
- 借りて使っている施設を計上漏れしていないか(賃借でも課税対象)
注意点:資産割ゼロでも従業者割を忘れない:「屋外中心で家屋がないから事業所税はかからない」と早合点しやすいのが最も見落としやすい点です。屋外ヤードでも、そこに属する従業者の給与は従業者割に取り込まれます。資産割・従業者割の両面から確認してください。
判断フロー(事業所税で課税対象になるか)
| 手順 | 判断内容 |
|---|---|
| 1 | その施設は屋根・周壁のある「家屋」か。家屋なら資産割(床面積算入)を検討 |
| 2 | 継続性があるか。1年未満の現場プレハブは原則対象外、長期なら対象になり得る |
| 3 | 同一敷地・効用上一体の複数棟は1つの事業所等(増設は拡張とみて月割しない) |
| 4 | 6か月以上連続休止+明確な区画なら資産割から除外(ただし免税点判定には含める) |
| 5 | 屋外で働く従業者の給与は従業者割に取り込む(資産割ゼロでも従業者割は課税され得る) |
| 6 | 合計床面積・従業者数が免税点(例:23区は床面積1,000平方メートル・従業者100人)を超えれば課税。以下なら課税なし |
想定Q&A(事業所税の事業所等)
Q1. 建設現場のプレハブ事務所は事業所税の対象ですか
臨時的・移動性のある仮設建築物で、設置期間が1年未満のものは事業所等として扱わない取扱いが一般的です。長期(1年以上)に及ぶ場合は対象になり得ます。期間の運用は課税団体により差があるため、所在地の市区に確認してください。
Q2. 屋外の資材置場しかない事業所は、事業所税がかかりませんか
屋根・周壁のない屋外置場は家屋でないため、資産割の床面積には原則含まれません。ただし現場のプレハブ等があればその部分は対象になり、そこで働く従業者の給与は従業者割に取り込まれます。資産割ゼロでも従業者割が課されることがあります。
Q3. 同じ敷地に工場と隣接して倉庫を建てました。事業所等は2つと数えますか
経営主体が同一で、同一敷地内にあり効用上一体として使われている場合は、1つの事業所等とみなされるのが一般的です。この場合、増設は「拡張」とみて月割計算を行わず、期末の床面積で課税されます。
Q4. 借りているオフィスも事業所税の対象ですか
はい。所有・賃借は問わず、借りて使っている事業所も課税対象です。納税義務者は、借りて事業を行っている側です。
Q5. 倉庫は無人ですが、それでも事業所等になりますか
常駐者がいなくても、事業のために継続して使用されている家屋であれば、資産割の事業所用家屋として課税対象になり得ます。なお、そもそも事務所等の三要件のうち人的設備を全く欠く完全な無人施設の該当性は、別記事「事業所とは|物的設備・人的設備・継続性の三要件」の解説もあわせてご確認ください。
Q6. 立体駐車場は資産割の床面積に入りますか
機械式の屋外設備は原則含まれませんが、立体駐車場のうち建築物(家屋)に当たる部分は床面積に算入され得ます。家屋性の判断が分かれるため、迷う場合は個別確認が必要です。駐車場全般の課税関係は関連記事で解説しています。
Q7. 屋外のタンクやプラントは床面積に含めますか
屋外の機械設備・タンク・構築物は、家屋でない限り資産割の床面積には含まれないのが原則です。ただし、それらに付属する制御室・事務棟などの家屋部分は対象になります。
Q8. 期の途中で建物を増築したら、月割計算しますか
同一敷地・効用上一体の既存事業所に対する増築は「拡張」とみて月割せず、期末床面積で課税するのが一般的です。一方、別の場所に支店・営業所などを新設した場合は、その新設・廃止に応じて月割計算の対象になります。
Q9. 半年以上使っていない棟は床面積から外せますか
算定期間の末日以前6か月以上連続して休止し、休止部分が明確に区画されていれば、資産割の課税標準から除ける取扱いがあります。ただし、いつでも使える遊休状態は対象外で、免税点の判定では休止部分の床面積も含めて判断します。
Q10. 資産割はかからないのに従業者割だけ課税されることはありますか
あります。屋外ヤードのように家屋の床面積がなく資産割がゼロでも、そこに属する従業者の給与は従業者割に取り込まれます。資産割・従業者割は別々に判定される点に注意してください。
まとめ
- 該当性の三要件(物的設備・人的設備・継続性)の総論は別記事「事業所とは|物的設備・人的設備・継続性の三要件」へ。本記事は事業所税で課税対象になる施設の判定に特化。
- 資産割は「家屋・床面積」が前提。屋外設備・資材置場は原則床面積に含まれない。1年未満の現場プレハブは原則対象外。
- 同一敷地・効用上一体の複数棟は1つの事業所等(増設は拡張とみて月割しない)。
- 6か月以上連続休止+明確な区画で資産割から除外(免税点判定では含める)。
- 所有・賃借は問わない。そして資産割ゼロでも従業者割は課税され得るのが最大の見落としポイント。
あわせて読みたい(事業所税シリーズ)
出典・参考
- 地方税法701条の30から701条の74(事業所税)
- 東京都主税局「事業所税(仕事と税金)」
- 東京都主税局「事業所税の手引」
※本記事は令和8年8月時点の一般的な情報提供であり、特定の事案の取扱いを保証するものではありません。事業所税は課税団体(市区)ごとに手引き・運用に差があり得ます。具体的な床面積の算定方法や免税点・税率の数値は、各自治体の最新の手引き等でご確認ください。個別の判断は所在地の市区または税理士へのご相談をおすすめします。

