事業所税の床面積の求め方|壁芯・登記簿・契約書のどれで確認?実務の調べ方

地方税

事業所税の資産割は、事業所床面積に1㎡あたり600円を乗じて計算します。つまり床面積をいくらと把握するかが税額に直結します。条文や手引には「壁の中心線で囲まれた水平投影面積」と書かれていますが、実務で申告のたびに自分でメジャーを当てて測っている会社はほとんどありません。本記事では、事業所床面積の条文上の定義と、実務で実際にどの数値を使って求めているのかを、賃借・自社所有の別に整理します。

なお、課税標準の計算全体は「事業所税の課税標準の計算方法」で解説しています。

まず条文上の定義:壁芯の水平投影面積

事業所床面積とは、事業所用家屋の延べ面積をいい、その算定にあたっては、事業所用家屋の各階ごとに、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として計算します。1㎡の100分の1未満の端数は切り捨てます。

定義のポイント
  • 壁芯(へきしん):壁その他の区画の中心線で囲まれた部分で測る(壁の内側で測る「内法」ではない)
  • 水平投影面積:上から見た水平方向の投影面積
  • 各階ごとに算定し、延べ面積(共用部分を含む)を合計する
  • 端数:1㎡の100分の1未満(小数点以下第3位以降)は切り捨て
この「壁芯の水平投影面積」という定義は、あくまで床面積が争いになったときに何を正解とみなすかの基準です。「申告のたびにこの手順で実測しなさい」という意味ではありません。実務では、後述のとおり既にある床面積の数値を使うのが一般的です。

実務では「測る」のではなく「既存の数値を使う」

実務では、申告のたびに自分で測量することはまずありません。すでに存在する公的な数値や、貸主が把握している数値を拾ってくるのが通常です。自社所有か賃借かで、使う資料が変わります。

区分 実務で使う主な数値
自社所有 建物登記簿(登記事項証明書)の床面積、固定資産税の家屋評価資料・図面の数値
賃借 賃貸借契約書の面積、または貸主(オーナー・管理会社)から交付される事業所税用の床面積(共用部按分後の面積)

自社所有の場合:登記簿・固定資産税資料を使う

自社で建物を所有している場合は、建物登記簿(登記事項証明書)の床面積を基礎の数値として使うのが一般的です。建物登記簿の床面積は、もともと壁の中心線(壁芯)を基準に測られているため、事業所税の「壁芯の水平投影面積」という考え方と整合しやすいのが理由です。

固定資産税の課税明細書や家屋の評価図面に記載された床面積も、実務上の有力な手がかりになります。ただし、固定資産税の課税床面積と事業所税の床面積は常に一致するとは限らない点に注意が必要です(後述)。

賃借の場合:契約書面積か、貸主からの面積通知を使う

テナントとして賃借している場合は、賃貸借契約書に記載された面積を使うか、より確実なのは貸主(オーナー・管理会社)から交付される面積を使う方法です。

実は、事業所用家屋を貸し付けている貸主には「事業所用家屋の貸付等申告」の義務があり、その過程で建物全体の床面積・各テナントの専用面積・共用部分の按分を把握しています。そのため、テナント側は貸主から「事業所税の申告に使う床面積はこの数値です」と提示を受けて、それを使うことが多くあります。共用部分の按分計算も貸主側で済んでいることが多いため、自分で測ったり按分計算したりするより、貸主から数値をもらうのが実務上もっとも確実です。

賃借物件で床面積がはっきりしない場合は、まず貸主・管理会社に「事業所税の申告に使う共用部按分後の床面積」を確認するのが近道です。それでも不明な場合や、数値の正しさに疑義がある場合は、所管の課税団体(都税事務所・市役所等)に相談してください。

「契約書の面積をそのまま使う」ときの落とし穴

賃貸借契約書の面積をそのまま申告に使うのは実務でよくある対応ですが、契約書の面積には測り方の違いがあり、事業所税の床面積とずれることがあります。

面積の種類 測り方 事業所税との関係
壁芯(へきしん) 壁の中心線で測る 事業所税の考え方と整合しやすい
内法(うちのり) 壁の内側で測る 壁芯より小さくなり、ずれが生じうる
オフィスビルの契約面積は壁芯のことが多い一方、区分所有マンションの登記面積は内法で表示されるなど、物件によって測り方が異なります。また、契約面積に共用部分が含まれているか・いないかも物件ごとにまちまちです。契約書の面積をそのまま使うと、事業所税の床面積(壁芯・共用部按分込み)と一致しないことがあるため、「契約書の数値が何を指しているか」を確認することが大切です。

登記面積・固定資産税の床面積と現況がずれる場合

登記簿や固定資産税の床面積が、現況の床面積と一致しないこともあります。事業所税は現況の床面積で判定するため、増改築やリフォームで実際の床面積が変わっている場合は、登記・固定資産税の数値ではなく現況に合わせる必要があります。

具体例:登記簿上は900㎡だが、リフォームでベランダ部分を屋内化して現況は1,050㎡になっている場合、事業所床面積は1,050㎡で申告します。固定資産税の課税床面積が変更されていなくても、事業所税では現況で判定する点に注意してください。

床面積を求める実務フロー

ここまでを、実務の手順として整理します。

事業所床面積を求める手順
  1. 自社所有か賃借かを確認
  2. 自社所有:建物登記簿・固定資産税の家屋資料の床面積を基礎にする
  3. 賃借:貸主・管理会社から事業所税用の床面積(共用部按分後)をもらう。なければ契約書面積を使う
  4. 契約書面積を使う場合:それが壁芯か内法か、共用部分を含むかを確認する
  5. 増改築・リフォームがある場合:登記・固定資産税の数値ではなく現況に合わせる
  6. 不明・疑義がある場合は、貸主または所管の課税団体に確認する
実務では、自分で測量するのは「登記簿にも固定資産税資料にも貸主資料にも頼れる数値がなく、かつ実態と合っていない」という例外的な場面に限られます。まずは既存の数値を当たり、足りなければ確認する、という順序が基本です。

まとめ

この記事のポイント
  • 条文上の定義は壁の中心線(壁芯)で囲まれた水平投影面積(1㎡の1/100未満切捨)
  • この定義は「正解の基準」であり、毎回自分で実測する意味ではない
  • 実務では既存の数値を使う:自社所有は登記簿・固定資産税資料、賃借は貸主からの面積通知か契約書面積
  • 賃借では、貸主が共用部按分後の床面積を把握していることが多く、もらうのが最も確実
  • 契約書面積は壁芯か内法か・共用部を含むかを確認(そのまま使うとずれることがある)
  • 増改築・リフォームがある場合は現況の床面積で判定する

※本記事は作成時点の法令・公表資料(地方税法701条の31ほか、東京都主税局「事業所税の手引」等)に基づく一般的な解説です。床面積の判定や必要資料は事案・自治体により異なる場合があります。具体的な判断は、事業所が所在する自治体の最新情報の確認、または税理士へのご相談をおすすめします。

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