事業所税とは?仕組み・課税都市・資産割と従業者割をわかりやすく解説

地方税

一定規模以上の事業を行う事業者にかかる地方税の一つに「事業所税」があります。この税金はすべての都市で課税されるわけではなく、政令指定都市など特定の都市でのみ課税される目的税です。本記事では、事業所税の仕組み・課税団体・基本的な計算方法など、事業所税の全体像をわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 事業所税は都市環境の整備に充てる目的税で、政令指定都市等でのみ課税される(全国77団体)
  • 東京都23区内では特例として都税として課税される
  • 「資産割」(床面積×600円)と「従業者割」(給与総額×0.25%)の2つの仕組み
  • 免税点は床面積1,000㎡超または従業者数100人超で課税対象
  • 申告納付は法人が事業年度終了後2か月以内、個人は翌年3月15日まで(延長制度なし)

事業所税とは

事業所税とは、都市環境の整備および改善に関する事業に要する費用に充てるための目的税です。昭和50年(1975年)に創設された地方税で、政令指定都市等が提供する行政サービスと、そこに所在する事業所等で行う企業活動との間に受益関係があることに着目し、事業活動の規模に応じて課税する仕組みになっています。

事業所税の特徴

  • 目的税:都市環境の整備・改善に使途が限定された税金
  • 市町村税:地方税法で定められた特定の都市だけで課税される
  • 事業規模に応じた課税:床面積や従業者の給与総額に応じて税額が決まる
  • 免税点制度あり:一定規模以下の事業者には課税されない

ヒント:東京都では、23区内において特例で都税として課税されるほか、武蔵野市・三鷹市・八王子市・町田市の4市でも市税として課税されます。

事業所税の課税団体(全国77団体)

事業所税は地方税法で定められた特定の都市(指定都市等)でのみ課税されます。区分で整理すると、次のようになります。

区分 主な該当都市
東京都23区(特別区) 特例として東京都が都税として課税
政令指定都市 大阪市、名古屋市、横浜市、京都市、神戸市、福岡市、札幌市、仙台市など20市
人口30万以上の都市 首都圏整備法の既成市街地・近郊整備地帯、または近畿圏整備法の既成都市区域・近郊整備区域を有する人口30万以上の市
東京都内の特定市 武蔵野市、三鷹市、八王子市、町田市

事業所税の課税団体は、現在全国で77団体です(令和8年4月1日現在)。具体的な団体名は次のとおりです。

事業所税の課税団体は全国77団体(令和8年4月1日現在)

東京都(23区) 特別区
政令指定都市(20市) 札幌、仙台、新潟、千葉、さいたま、横浜、川崎、相模原、静岡、浜松、名古屋、京都、大阪、堺、神戸、岡山、広島、北九州、福岡、熊本
首都圏整備法の既成市街地(3市) 川口、武蔵野、三鷹
近畿圏整備法の既成都市区域(5市) 守口、東大阪、尼崎、西宮、芦屋
人口30万以上の指定市(48市) 旭川、秋田、郡山、いわき、宇都宮、前橋、高崎、川越、所沢、越谷、市川、船橋、松戸、柏、八王子、町田、横須賀、藤沢、富山、金沢、長野、岐阜、豊橋、岡崎、一宮、春日井、豊田、四日市、大津、豊中、吹田、高槻、枚方、姫路、明石、奈良、和歌山、倉敷、福山、高松、松山、高知、久留米、長崎、大分、宮崎、鹿児島、那覇

ヒント:事業所税の課税団体は地方税法で定められており、これら以外の都市では事業所税は課税されません。課税団体は人口要件などにより変動することがあるため、最新の状況は総務省や各自治体の公表資料でご確認ください。本記事では特に東京都23区内での事業所税について解説します。

事業所税の仕組み(資産割と従業者割)

事業所税は「資産割」「従業者割」という2つの課税区分で構成されています。両方の合計が事業所税の税額となります。

課税区分 資産割 従業者割
課税対象 事業所等で行われる事業
納税義務者 事業を行う法人または個人
課税標準 事業所床面積 従業者給与総額
税率 1㎡につき600円 給与総額の0.25%
免税点 合計床面積1,000㎡以下なら課税なし 合計従業者数100人以下なら課税なし
申告納付期限 法人:事業年度終了後2か月以内(延長制度なし)/個人:翌年3月15日まで

事業所税の計算式(東京都23区の場合)

資産割:事業所床面積(㎡)× 600円

従業者割:従業者給与総額 × 0.25%

事業所税 = 資産割 + 従業者割

ヒント:課税標準(事業所床面積・従業者給与総額)の詳しい計算方法は事業所税の課税標準の計算方法で、免税点の判定は事業所税の免税点判定で詳しく解説しています。

事業所税の判定フロー

事業所税の納税義務があるかどうかは、次の2段階で判定します。資産割と従業者割は、それぞれ別々に免税点を判定します。

段階 確認する内容
1 課税団体(77団体)内に事業所等があるか。なければ事業所税は課税されない。
2 免税点を超えるか。資産割は同一団体内の合計床面積が1,000㎡超なら課税。従業者割は同一団体内の合計従業者数が100人超なら課税。それぞれ別々に判定する。
区分 免税点(これ以下なら課税なし) 超えた場合の税額
資産割 合計床面積 1,000㎡以下 床面積(㎡)× 600円
従業者割 合計従業者数 100人以下 従業者給与総額 × 0.25%

落とし穴:免税点以下でも申告が必要な場合がある

免税点以下であっても、前事業年度に納税義務があった場合や、床面積800㎡超・従業者数80人超(東京都の場合。この申告を要する基準は自治体により異なります)の場合は申告が必要です。「税額が出ない=申告不要」とは限らない点に注意が必要です。詳しくは事業所税の免税点判定と税額の算出方法をご覧ください。

申告期限・納付期限(延長制度なし)

事業所税の申告期限・納付期限は、法人と個人で異なります。

区分 申告期限・納付期限
法人 事業年度終了の日から2か月以内
個人 翌年の3月15日まで

落とし穴:事業所税には申告期限の延長制度がない

法人税・法人事業税・消費税のような申告期限延長を適用していても、事業所税には延長制度がありません。決算後2か月以内という期限を、他の税目の延長感覚で見落とすと、期限後申告となり加算金・延滞金の対象になります。申告と納付の詳細は事業所税の申告と納付で解説しています。

なぜ事業所税が課されるのか

事業所税は、都市部における都市環境の整備および改善に必要な費用を確保するための目的税です。具体的には次のような事業の財源として使われます。

事業所税の使途(都市環境の整備改善事業)

  • 道路・橋・公園などの都市施設の整備
  • 河川・下水道・水路などの整備
  • 住宅・住環境の整備
  • 清掃施設・環境保全施設の整備
  • 消防・防災施設の整備
  • 都市交通施設の整備

都市部に集中する事業者は、これらの行政サービスから受益を得ているため、その規模に応じて費用を負担すべきという考え方が事業所税の根底にあります。

想定Q&A

Q1. 自社が事業所税の対象かどうかはどう確認しますか

まず事業所等が課税団体(全国77団体)内にあるかを確認します。課税団体内にある場合、次に免税点(資産割は合計床面積1,000㎡、従業者割は合計従業者数100人)を超えるかを資産割・従業者割それぞれで判定します。いずれかを超えていれば、その区分について課税対象になります。

Q2. 借りているオフィスでも事業所税はかかりますか

かかります。事業所税は床面積を使って事業を行う者に課されるため、所有・賃借を問いません。貸ビルに入居しているテナント(借主)が納税義務者になります。建物の所有者ではなく、その床を使って事業をしている事業者が対象です。なお、課税対象となる「事業所等」の範囲(物的設備・人的設備・継続性)は事業所税の「事業所等」とはで解説しています。

Q3. 複数の市に事業所がある場合はどう判定しますか

免税点の判定は課税団体ごとに行います。たとえば大阪市と神戸市にそれぞれ事業所がある場合、大阪市分と神戸市分を別々に合計して、それぞれの市で免税点を超えるかを判定します。複数団体の床面積や従業者数を全部合算するわけではありません。

Q4. 申告期限の延長はできますか

できません。事業所税には申告期限の延長制度がありません。法人税や消費税で申告期限の延長を受けていても、事業所税は事業年度終了後2か月以内という期限が動かないため、別途スケジュール管理が必要です。

Q5. 税額が出ないなら申告は不要ですか

免税点以下で税額が出ない場合でも、前事業年度に納税義務があった場合や、床面積800㎡超・従業者数80人超(この基準は自治体により異なります)の場合は申告が必要です。税額ゼロでも申告義務が残るケースがあるため、自社が申告対象かどうかを免税点判定の記事で確認することをおすすめします。

まとめと事業所税シリーズ一覧

この記事のポイント

  • 事業所税は都市環境の整備に充てる目的税で、政令指定都市等でのみ課税される(全国77団体)。
  • 東京都23区内では特例として都税として課税される。
  • 「資産割」(床面積×600円)と「従業者割」(給与総額×0.25%)の2つの仕組み。
  • 免税点:床面積1,000㎡超または従業者数100人超で課税対象。
  • 申告納付期限:法人は事業年度終了後2か月以内、個人は翌年3月15日まで(延長制度なし)。
  • 免税点以下でも、前年に納税義務があった場合や床面積800㎡超・従業者数80人超の場合は申告が必要。

事業所税シリーズ 記事一覧

  1. 【今ここ】事業所税とは?仕組みと概要
  2. 事業所税の納税義務者と課税対象を完全解説|貸ビル・共同事業の取扱いなど
  3. 事業所税の課税標準の計算方法を完全解説|資産割・従業者割の計算方法
  4. 事業所税の免税点判定を徹底解説|従業者割のパート・出向者・役員等の特殊な取扱いも含む
  5. 事業所税の非課税・課税標準の特例・減免を完全解説|申請手続きも紹介
  6. 事業所税のみなし共同事業を完全解説|兄弟会社などの特殊関係者の判定と免税点
  7. 事業所税の申告と納付を完全解説|申告期限・期限後申告・加算金・延滞金
  8. 事業所税の仕訳・会計処理・税務処理を完全解説|勘定科目・損金算入時期・税効果会計など

※本記事は2026年6月時点の法令・公表資料(総務省・各自治体の手引き等)に基づく一般的な解説です。課税団体や取扱いは指定都市等により異なる場合があります。実際の申告にあたっては、事業所等の所在する団体の最新の取扱いの確認と、必要に応じて顧問税理士へのご相談をおすすめします。

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