不動産取得税は不動産を取得したら必ず課税されるわけではありません。相続で引き継いだ場合や、価格が一定額に満たない場合など、そもそも不動産取得税がかからないケースがあります。一方で、相続は非課税でも贈与や特定遺贈は課税されるなど、線引きを間違えやすい論点でもあります。
不動産取得税は、不動産を取得したという事実に担税力を見て課す税ですが、実質的な移転を伴わない形式的な取得や、ごく少額の取得には課さない仕組みになっています。本記事では、非課税となるケース、免税点、課税標準の特例で結果的にゼロになる場合を、令和8年度改正の免税点引き上げも踏まえて整理します。税額を軽くする軽減措置そのものは「不動産取得税の軽減措置」で解説しています。
- 相続による取得や共有物の分割、国・地方公共団体の取得などは非課税です(地方税法73条の7)。
- 課税標準額が免税点未満なら課税されません。令和8年4月1日以後の取得は土地16万円・家屋の建築66万円・その他34万円が基準です。
- 相続は非課税でも、相続人以外への特定遺贈や贈与による取得は課税されます。
- 新築住宅の1200万円控除などで課税標準が下がり、結果的にゼロになる場合もあります。
- 非課税や軽減は、都道府県税事務所への申告が必要なことがあります。
かからないケースの全体像
不動産取得税は、有償か無償か、登記をしたかどうかを問わず、不動産を取得した事実に対して都道府県が課す税です。原則は課税で、かからないのは例外です。その例外は大きく次の3つに整理できます。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 非課税 | 相続・共有物分割・公共用など課税されない取得 |
| 免税点未満 | 課税標準額が免税点に満たず、税を課せない少額の取得 |
| 特例で結果ゼロ | 課税標準の特例で控除した結果、税額が生じない取得 |
形式的な所有権移転による非課税
地方税法73条の7は、実質的に新たな取得とはいえない形式的な所有権の移転を非課税としています。代表的なものは次のとおりです。
| 取得の態様 | 取扱い |
|---|---|
| 相続(包括遺贈・相続人への遺贈) | 非課税 |
| 法人の合併・一定の分割による取得 | 非課税 |
| 共有物の分割(持分の範囲内) | 非課税 |
| 一定の信託財産の移転 | 非課税 |
相続は非課税、贈与や特定遺贈は課税
最も間違えやすいのが、取得原因による違いです。同じように無償で不動産を得ても、相続なら非課税、贈与なら課税です。遺贈も、相続人が受けるものや包括遺贈は非課税ですが、相続人以外の人が特定の不動産を受ける特定遺贈は課税されます。
| 取得の原因 | 課税・非課税 |
|---|---|
| 相続・包括遺贈・相続人への遺贈 | 非課税 |
| 相続人以外への特定遺贈 | 課税 |
| 贈与による取得 | 課税 |
また、共有物の分割は、分割前の持分割合に応じた部分までは非課税ですが、その持分を超えて取得した部分は課税されます。相続で取得した不動産の相続税については「相続税の基礎控除」もあわせて確認してください。
用途などによる非課税
取得する主体や用途による非課税もあります。国・都道府県・市区町村などが取得する場合は非課税です。また、宗教法人が本来の用途に使う境内建物・境内地、学校法人が直接教育に使う不動産、社会福祉法人の一定の施設なども、その用途に供する限りで非課税とされています。ただし用途非課税は、実際にその用途に使うことが前提で、目的外に使えば課税されることがあります。
免税点未満なら課税されない
課税標準となるべき額が免税点に満たない場合、不動産取得税は課税されません(地方税法73条の15の2)。この免税点は、令和8年度税制改正で昭和48年以来はじめて引き上げられ、令和8年4月1日以後に取得したものから新しい金額が適用されます。
| 取得の区分 | 現行 | 改正前 |
|---|---|---|
| 土地 | 16万円未満 | 10万円未満 |
| 家屋(建築による取得) | 66万円未満 | 23万円未満 |
| 家屋(売買などその他) | 34万円未満 | 12万円未満 |
課税標準の特例で結果的にゼロになる場合
非課税や免税点に当たらなくても、課税標準の特例で課税標準額が下がり、結果的に税額が生じないことがあります。新築住宅は課税標準から1戸につき1200万円(認定長期優良住宅は1300万円)を控除でき、宅地評価の土地は価格の2分の1が課税標準になります。控除後の額が免税点未満になれば、やはり課税されません。これらの軽減の詳しい計算は「不動産取得税の軽減措置」を参照してください。
混同しやすい4つの違い
かからない・軽くなる仕組みは似ていますが、効き方が違います。言い切ると、非課税と免税点は「そもそも課税されない」、課税標準の特例と軽減税率は「課税はされるが税額が小さくなる」制度です。
| 区分 | 効き方 |
|---|---|
| 非課税 | 課税対象から外れ、税額は生じない |
| 免税点 | 課税標準が基準未満で課税されない |
| 課税標準の特例 | 課税標準を控除・圧縮して税額を下げる |
| 軽減税率 | 税率そのものを下げる(住宅・土地は3%) |
非課税や軽減を受けるための手続
非課税や課税標準の特例は、放っておいて自動で適用されるとは限りません。取得後、都道府県の定める期間内に、都道府県税事務所へ申告や申請をすることで適用を受けられる場合があります。要件を満たすのに手続をせず、通知どおり納めてしまうこともあるため、取得したら早めに確認します。
| 用意する主な書類 | 目的 |
|---|---|
| 売買契約書・登記事項証明書 | 取得の原因・時期・不動産を特定する |
| 戸籍・遺産分割協議書など | 相続による取得であることを示す |
| 住民票・建築確認済証など | 住宅の特例要件(用途・床面積)を示す |
実務でありがちな落とし穴
非課税なのは相続・包括遺贈・相続人への遺贈です。相続人以外への特定遺贈や、生前の贈与による取得は課税されます。同じ無償でも原因で扱いが変わる点に注意が必要です。
財産分与による取得は、婚姻中に築いた財産の清算か、慰謝料や扶養が目的かなどにより扱いが分かれ、都道府県の運用にもよります。課税されることもあるため、内容がわかる書類を持って都道府県税事務所に確認します。
免税点は令和8年4月1日以後の取得から引き上げられました。取得日が令和8年3月31日以前か4月1日以後かで基準額が違うため、取得日を確認して当てはめる必要があります。
非課税や特例でも、都道府県によっては申告書や申請書の提出を求められます。手続をしないと軽減が反映されず、本来より高い通知が届くことがあります。取得後は早めに都道府県税事務所に確認します。
課税されるかの判断フロー
| 順 | 確認する内容 |
|---|---|
| 1 | 相続や共有物分割など、非課税の取得か。該当すれば課税されない |
| 2 | 国・公共団体や、宗教・学校法人の用途非課税に当たるか |
| 3 | 課税標準額が免税点未満か。未満なら課税されない |
| 4 | 課税標準の特例で控除後の税額が生じるか。生じなければゼロ |
| 判定 | 1から4のいずれにも当たらなければ課税。手続の要否も確認 |
想定問答
問1 相続した不動産に不動産取得税はかかりますか
結論として、かかりません。理由は、相続による取得が地方税法73条の7で非課税とされているためです。包括遺贈や、相続人が受ける遺贈も同じく非課税です。ただし、相続人でない人が遺言で特定の不動産を受ける特定遺贈は課税対象になるため、遺贈の形に注意してください。
問2 生前贈与でもらった不動産は非課税ですか
結論として、贈与による取得は課税されます。理由は、非課税とされるのは相続などの形式的な移転であり、贈与はこれに含まれないためです。親子間や夫婦間の贈与でも不動産取得税はかかります。相続なら非課税、贈与なら課税という違いは、生前対策を考えるうえで押さえておきたい点です。
問3 免税点はいくらですか
結論として、令和8年4月1日以後の取得では、土地16万円、家屋の建築による取得66万円、その他の家屋34万円が免税点です。理由は、令和8年度税制改正でこの金額に引き上げられたためです。課税標準額がこれらの金額に満たなければ課税されません。令和8年3月31日以前の取得は、土地10万円・建築23万円・その他12万円で判定します。
問4 免税点は購入価格で判定しますか
結論として、実際の購入価格ではなく、課税標準となるべき額で判定します。理由は、不動産取得税の課税標準が原則として固定資産税評価額だからです。宅地の2分の1特例や住宅の控除を適用した後の額で見るため、購入価格が免税点を超えていても、評価額や特例適用後の額が免税点未満なら課税されないことがあります。
問5 共有名義の解消でも課税されますか
結論として、分割前の持分の範囲内なら非課税、それを超える部分は課税されます。理由は、共有物の分割が持分に応じた清算にすぎない範囲では、新たな取得とはみなされないためです。持分3分の1の人が2分の1相当を取得するなど、従来の持分を超えて取得した部分は、その超過分に不動産取得税がかかります。
問6 会社の合併で引き継いだ不動産はどうなりますか
結論として、法人の合併による取得は非課税です。理由は、合併が権利義務の包括承継であり、実質的に新たな取得とはいえないためです。分割による取得も、一定の要件を満たすものは非課税とされます。ただし、要件を満たさない分割や、通常の売買による法人間の移転は課税されるため、取引の形態ごとに確認が必要です。
問7 登記をしなければ不動産取得税はかかりませんか
結論として、登記の有無にかかわらず、取得の事実があれば課税されます。理由は、不動産取得税が所有権の移転登記ではなく、不動産を取得したという事実に着目して課される税だからです。未登記のままでも取得は取得です。登記のときに納める登録免許税とは別の税である点も、あわせて理解しておくとよいでしょう。
問8 非課税なら何も手続はいりませんか
結論として、都道府県によっては申告や申請が必要です。理由は、非課税や特例の適用を受けるために、要件を満たすことを示す書類の提出を求める運用があるためです。手続をしないと軽減が反映されず、本来より高い通知が届くことがあります。取得後、都道府県の定める期間内に、都道府県税事務所へ確認・申告するのが安全です。
問9 新築住宅を建てたら不動産取得税はかかりませんか
結論として、一律に非課税ではなく、課税標準の控除で結果的にゼロになる場合があります。理由は、一定の要件を満たす新築住宅は課税標準から1200万円(認定長期優良住宅は1300万円)を控除できるためです。控除後の額が免税点未満になれば課税されません。要件や計算は軽減措置の記事で確認してください。
問10 なぜ相続は非課税で贈与は課税なのですか
結論として、相続が形式的・包括的な承継であり、新たな取得と評価しにくいためです。理由は、不動産取得税が取得という積極的な行為に担税力を見る税であり、被相続人の地位をそのまま引き継ぐ相続は、通常の取得とは性質が異なると整理されているからです。これに対し贈与は当事者の意思による移転であり、通常の取得と同様に課税されます。
- 相続・共有物分割(持分の範囲)・法人の合併などは非課税です。
- 相続は非課税でも、相続人以外への特定遺贈や贈与は課税されます。
- 課税標準額が免税点未満なら課税されません。令和8年4月1日以後は土地16万円・建築66万円・その他34万円です。
- 新築住宅の1200万円控除などで、結果的に税額が生じないこともあります。
- 非課税や特例は申告が必要な場合があるため、取得後に都道府県税事務所で確認します。
- 東京都主税局 不動産取得税
- 地方税法73条の7(形式的な所有権移転等の非課税)、73条の14(課税標準の特例)、73条の15の2(免税点)
- 令和8年度税制改正大綱(不動産取得税の免税点の引上げ)
※本記事は令和8年8月時点の法令および公表資料(地方税法73条の7・73条の14・73条の15の2、令和8年度税制改正大綱、東京都主税局公表資料等)に基づく一般的な解説です。非課税や特例の要件、免税点の適用時期、必要な手続は取得した不動産の所在する都道府県により運用が異なる場合があります。具体的な判断は、所在地の都道府県税事務所または顧問税理士にご確認ください。

