外形標準課税とは、ひとことで言うと「資本金の大きい法人に対して、もうけ(所得)だけでなく、給与の支払額や事業規模などの外形的な基準でも法人事業税を課す仕組み」です。従来は「資本金1億円超」という分かりやすい基準だけで対象かどうかが決まっていましたが、令和6年度税制改正によってこの判定が大きく変わりました。減資をして資本金を1億円以下にすれば対象から外れる、という従来の対策が封じられ、資本金1億円以下でも一定の法人は新たに対象となります。
しかも、新しい基準は「減資への対応」と「100%子法人等への対応」の2つがあり、それぞれ適用が始まる時期が1年ずれています。さらに、いつ減資したかによって結論が変わる経過措置や、剰余金の配当を加算して判定する仕組み、令和8年2月に都Q&Aへ追加された分割型分割の取扱いなど、論点はかなり複雑です。この記事では、自社が外形標準課税の対象になるのかどうかという一点に絞り、改正後の判定方法を具体例とともに整理します。
- 従来の基準は「事業年度末日の資本金が1億円超」。資本金等の額ではなく、あくまで資本金で判定する
- 令和6年度改正で、資本金1億円以下でも対象になる2つの新基準が追加された
- 減資への対応は令和7年4月1日以後、100%子法人等への対応は令和8年4月1日以後の開始事業年度から適用と、時期が1年ずれる
- 経過措置により、減資のタイミング(令和6年3月29日以前か以後か)で結論が変わる
- 100%子法人等への対応では、公布日以後の剰余金の配当による払込資本の減少額を加算して判定する(配当加算措置)
- 分割型分割の剰余金の配当部分も配当加算措置の対象となる(令和8年2月の都Q&A追加)
- 前事業年度が外形対象なら、当期に対象外でも中間申告義務が生じる
- 東京都など8都府県では標準税率より高い超過税率が適用される
外形標準課税とは何か(まず制度の前提を確認)
外形標準課税は、平成16年4月に法人事業税へ導入された制度です。法人が利用する行政サービスの経費は、もうけの有無にかかわらず広く負担すべきだという応益課税の考え方や、税収の安定性などを背景に作られました。対象となる法人の法人事業税は、次の3つの課税標準を合算して計算します。
| 課税標準 | 課税のベース |
|---|---|
| 所得割 | 所得(もうけ)に応じて課税 |
| 付加価値割 | 報酬給与額・純支払利子・純支払賃借料・単年度損益の合計(付加価値額)に応じて課税 |
| 資本割 | 資本金等の額に応じて課税 |
このうち付加価値割と資本割が、外形標準課税ならではの部分です。所得が赤字でも、給与の支払いがあれば付加価値割が、資本金等の額があれば資本割が課されるため、赤字法人でも一定の税負担が生じる点が特徴です。なお、付加価値割や資本割の具体的な計算方法は論点が多いため、本記事では「対象になるかどうか」の判定に絞って解説します。計算方法は別途まとめる予定です。
従来の対象法人(資本金1億円超)の判定ルール
改正後の話に入る前に、まず従来からある基準を正確に押さえます。従来の基準は「事業年度終了の日において、資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人」です。この判定には、実務で間違えやすいポイントが2つあります。
ポイント1 判定に使うのは「資本金」であって「資本金等の額」ではない
外形標準課税の対象かどうかは、あくまで貸借対照表上の「資本金」のみで判定します。資本準備金やその他資本剰余金を含む「資本金等の額」では判定しません。たとえば資本金が9千万円で、資本金等の額が1億6千万円という法人の場合、資本金が1億円以下なので、従来の基準では外形標準課税の対象になりません。資本割の計算では資本金等の額を使うため混同しやすいのですが、対象判定は資本金のみで行う、という点に注意が必要です。
ポイント2 判定時点は「事業年度終了の日」
資本金が1億円を超えるかどうかは、事業年度終了の日(期末日)の現況で判定します。期中に増資や減資があっても、それ自体は勘案せず、期末日時点の資本金で結論が決まります。たとえば事業年度の開始時点では資本金が2億円あったものの、期中に減資をして期末日時点で6千万円になっていれば、その事業年度は外形標準課税の対象になりません。逆に言えば、この「期末で減資していれば対象外」という仕組みが、後述する改正で見直されることになりました。
なぜ改正されたのか(減資による対象外しへの対応)
外形標準課税の対象法人数は、制度導入時に比べて約3分の2まで減少していました。その主な要因が、資本金1億円以下への減資です。財務会計上、資本金を資本剰余金へ項目振替する形で減資すれば、会社の規模や事業の実態は変わらないのに、資本金だけを1億円以下にして外形標準課税の対象から外れることができたためです。企業グループにおいても、持株会社化や分社化の際に子会社の資本金を1億円以下に設定する動きが見られました。
こうした、事業実態が変わらないのに課税方式の選択を意図して資本金額を設定する動きに対応し、制度本来の目的を維持するため、令和6年度税制改正で対象法人の範囲が見直されました。資本金1億円超という従来の基準は残したうえで、これとは別に2つの新しい基準が追加された形です。
新基準1 減資への対応(令和7年4月1日以後開始事業年度から)
1つ目の新基準は「減資への対応」です。令和7年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。次の3つの要件をすべて満たす法人は、たとえ資本金が1億円以下であっても外形標準課税の対象となります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 前事業年度 | 前事業年度に外形標準課税の対象法人であったこと |
| 資本金 | 事業年度末日の資本金が1億円以下であること |
| 払込資本 | 事業年度末日の払込資本の額(会計上の資本金と資本剰余金の合計額)が10億円超であること |
ポイントは、判定に「払込資本の額(資本金と資本剰余金の合計額)」という新しいものさしが登場したことです。資本金を資本剰余金に振り替えるだけの減資(いわゆる項目振替型減資)では、資本金は減っても払込資本の合計は減りません。そのため、合計が10億円を超えていれば、減資をしても引き続き外形標準課税の対象となります。資本金だけを見て対象外と判断してしまうと誤るため、注意が必要です。
経過措置 減資のタイミングで結論が変わる
この改正には、駆け込み減資を意識した経過措置があります。判定の起点となるのが、改正法の公布日である令和6年3月30日です。施行日(令和7年4月1日)以後最初に開始する事業年度(最初事業年度)について、公布日を含む事業年度の前事業年度から最初事業年度の前事業年度までのいずれかで外形対象だった法人は、期末の資本金が1億円以下でも払込資本が10億円超なら対象となります。一方で、公布日の前日(令和6年3月29日)までに資本金を1億円以下に減資し、以後変動がなければ、経過措置の対象外となり外形標準課税の対象にはなりません。
言い換えると、改正の動きが表に出る前(公布日前日まで)に減資を済ませていたかどうかが分かれ目になります。3月決算で各事業年度末の払込資本が10億円超の法人を例に、減資のタイミング別に結論を整理すると次のとおりです。
| 減資のタイミング(3月決算の例) | 最初事業年度(令和8年3月期)の扱い |
|---|---|
| 令和6年3月期中(公布日以後)に1億円へ減資し、以後変動なし | 外形対象 |
| 令和7年3月期中に1億円へ減資し、以後変動なし | 外形対象 |
| 公布日の前日(令和6年3月29日)までに1億円へ減資し、以後変動なし | 対象外 |
| もともと資本金1億円以下で外形対象でなく、以後も変動なし | 対象外 |
このように、同じ「資本金1億円・払込資本10億円超」の状態でも、いつ減資したかで令和8年3月期の結論が変わります。自社が過去に減資をしている場合は、その実行時期が公布日前日より前か後かを必ず確認してください。
新基準2 100%子法人等への対応(令和8年4月1日以後開始事業年度から)
2つ目の新基準は「100%子法人等への対応」です。こちらは適用開始が1年遅く、令和8年4月1日以後に開始する事業年度からです。組織再編時に子法人の資本金を1億円以下に設定して外形標準課税の対象範囲が縮小する事例があったことから、一定の100%子法人等を新たに対象に加えるものです。次の要件をすべて満たす法人が対象となります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 資本金 | 所得等課税法人以外の法人で、事業年度末日の資本金が1億円以下であること |
| 支配関係 | 特定法人(払込資本50億円超の法人や相互会社)による完全支配関係がある法人、または100%グループ内の複数の特定法人に発行済株式の全部を保有される法人であること |
| 払込資本 | 事業年度末日の払込資本の額(資本金と資本剰余金の合計額)が2億円超であること(後述の配当加算措置の調整を含む) |
注意したいのは、減資への対応では払込資本の閾値が10億円超だったのに対し、この100%子法人等への対応では2億円超とぐっと低く設定されている点です。親会社(特定法人)の払込資本が50億円を超え、その完全支配下にある子会社の払込資本が2億円を超えていれば、子会社の資本金が1億円以下でも対象となります。グループ内の小さめの子会社まで広く捕捉される設計です。
配当加算措置 剰余金の配当で減らした分を足し戻す
100%子法人等への対応では、払込資本2億円超の判定にあたって配当加算措置が設けられています。公布日(令和6年3月30日)以後にその法人が行う一定の配当等により減少した払込資本の額を加算した上で、2億円超かどうかを判定するものです。資本剰余金の配当によって払込資本を減らし、判定をすり抜けようとする動きへの対応です。
一方で、すべての払込資本の減少が加算対象になるわけではありません。次のように、加算されるケースとされないケースがあります。
| 払込資本が減少する事由 | 配当加算の対象か |
|---|---|
| 資本剰余金からの配当(剰余金の配当のうち資本剰余金を原資とするもの) | 対象(加算する) |
| 自己株式の消却によるその他資本剰余金の減少 | 対象外 |
| 利益剰余金がマイナスの法人で、その他資本剰余金を欠損填補に充当して払込資本が減少した場合 | 対象外 |
自己株式消却や欠損填補で払込資本が2億円以下になった場合は、対象外となります。一方、資本剰余金の配当で2億円以下にしても、加算後の額で再判定されるため、対象から外れることはできません。
分割型分割の取扱い(令和8年2月の都Q&Aで追加)
配当加算措置に関連して、令和8年2月に東京都主税局のQ&Aに追加された新しい論点があります。100%子法人等が分割型分割を行ったことにより減少した払込資本の額は、配当加算措置の対象となるかという問題です。
結論としては、配当加算措置の対象となります。会社法上、分割型分割は分社型分割と剰余金の配当を組み合わせたものと位置づけられており、その「剰余金の配当」が資本剰余金の配当として払込資本の額を減少させる場合は、配当加算措置の対象となります。グループ内で分割型分割を行って子法人の払込資本を2億円以下に圧縮しても、減少分は加算して判定されるため、こちらも対象から外れることはできません。
負担変動軽減措置(急な負担増を和らげる)
この基準で新たに対象となった法人には、税負担が急増しないよう軽減措置が設けられています。外形標準課税の対象とした場合の税額が、対象外とみなした場合の税額を超える部分について、次のように控除されます。
| 対象事業年度 | 控除額 |
|---|---|
| 令和8年4月1日から令和9年3月31日までに開始する各事業年度 | 超える額の3分の2 |
| 令和9年4月1日から令和10年3月31日までに開始する各事業年度 | 超える額の3分の1 |
2つの新基準の比較(時期と閾値の違いに注意)
2つの新基準は混同しやすいので、適用時期と払込資本の閾値の違いを表で整理します。
| 項目 | 減資への対応 | 100%子法人等への対応 |
|---|---|---|
| 適用開始 | 令和7年4月1日以後開始事業年度 | 令和8年4月1日以後開始事業年度 |
| 資本金 | 1億円以下 | 1億円以下 |
| 払込資本の閾値 | 10億円超 | 2億円超(配当加算後) |
| 前提 | 前事業年度が外形対象 | 特定法人による完全支配関係等 |
| 軽減措置 | 最初事業年度の経過措置あり | 負担変動軽減措置(3分の2・3分の1)あり |
| 主な抜け道封じ | 公布日以後の駆け込み減資 | 公布日以後の資本剰余金の配当・分割型分割 |
あわせて確認したい中間申告義務の改正
対象判定とあわせて見落とせないのが、中間申告義務の判定に関する改正です。外形標準課税の対象法人は、法人税で中間申告義務がない場合でも、事業年度が6か月を超えるときは法人事業税と特別法人事業税の中間申告義務があります。
従来は、当該事業年度開始日以後6か月を経過した日の前日に外形対象であるかどうかで中間申告義務を判定していました。しかし令和7年4月1日以後に開始する事業年度からは、前事業年度が外形対象法人であれば中間申告義務がある、という判定に変わります。
対象となった場合の影響(超過税率に注意)
外形標準課税の対象となった場合、所得割の税率が低くなる代わりに、付加価値割と資本割の負担が新たに加わります。さらに留意すべきは、都道府県によっては標準税率より高い「超過税率」が適用される点です。令和8年時点で超過税率を採用しているのは、宮城県・東京都・神奈川県・静岡県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県の8都府県です。事業所がこれらの団体にある場合、税負担は標準税率を前提とした試算よりも重くなります。
超過税率の適用基準は団体ごとに異なります。たとえば東京都は外形標準課税対象法人全般に超過税率を適用しますが、神奈川県は資本金2億円超または所得1億5,000万円超など、より高い基準を設けています。自社が新基準で外形対象となった場合、本店所在地・事業所所在地の都道府県の超過税率の有無と適用基準を必ず確認してください。
資本金1億円の基準は中小企業優遇の分かれ目でもある
外形標準課税の判定で登場する「資本金1億円」という基準は、法人税のさまざまな中小企業向け優遇制度の適用ラインとも共通しています。資本金が1億円を超えると外形標準課税の対象になるだけでなく、次のような優遇も使えなくなります。自社の資本政策を考える際は、外形標準課税とあわせて全体像を把握しておくとよいでしょう。
| 制度 | 資本金1億円超になると |
|---|---|
| 法人税の軽減税率 | 所得800万円以下への軽減税率が使えない |
| 交際費の損金算入 | 中小法人向けの年800万円定額控除が使えない |
| 少額減価償却資産 | 中小企業者等の少額減価償却資産の特例が使えない |
これらの制度の詳細は、当サイトの法人税に関する各記事で解説しています。あわせて、同じ地方税である事業所税の判定とも考え方が異なる点を押さえておくと、地方税全体の理解が深まります。
まとめ
外形標準課税の対象判定は、令和6年度税制改正によって「資本金1億円超」という単純なものから、払込資本の額・支配関係・剰余金の配当による減少額まで見る複雑なものに変わりました。減資への対応は令和7年4月以後、100%子法人等への対応は令和8年4月以後と適用時期が1年ずれており、それぞれ閾値も異なります。さらに減資のタイミングで結論が変わる経過措置、資本剰余金の配当を加算して判定する配当加算措置、令和8年2月に追加された分割型分割の取扱い、前事業年度を基準とする中間申告義務の改正もあり、従来の感覚で「資本金を1億円以下にしたから対象外」と判断すると誤るおそれがあります。自社の資本金・資本剰余金の状況、過去の減資や剰余金の配当・組織再編の有無を確認したうえで、最新の要件にあてはめて判定することが重要です。
- 従来基準は事業年度末日の資本金1億円超。資本金等の額ではなく資本金で判定する
- 減資への対応(令和7年4月以後)は、前期が外形対象・資本金1億円以下・払込資本10億円超の3要件
- 100%子法人等への対応(令和8年4月以後)は、特定法人の完全支配下で払込資本2億円超が目安
- 経過措置により、公布日前日までの減資か否かで結論が変わる
- 100%子法人等への対応では、資本剰余金の配当や分割型分割で減らした払込資本を加算して判定する
- 前事業年度が外形対象なら、当期に対象外でも中間申告義務が生じる
本記事は令和8年時点の情報をもとに、地方税法および総務省・地方税共同機構(eLTAX)・東京都主税局の公表資料を参照して作成しています。具体的な判定にあたっては、最新の法令および各都道府県の取扱いをご確認のうえ、必要に応じて税理士等の専門家にご相談ください。(参照:地方税法第72条の2ほか、改正法附則、総務省「法人事業税における外形標準課税」、東京都主税局「外形標準課税の対象法人の見直し及び中間申告義務判定に関する改正について」「外形標準課税に関するQ&A」(令和8年2月追加分を含む))


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