M&A・組織再編時の事業所税|合併・分割・事業譲渡・株式譲渡の取扱いを解説

地方税

合併や会社分割、事業譲渡、株式譲渡といったM&A・組織再編を行うと、事業所税の取扱いはどうなるのか――。法人税では「適格・非適格」が大きな分かれ目になりますが、事業所税は判断の軸が異なります。事業所税はあくまで「事業所等」という単位と「納税義務者が誰か」で判断するため、組織再編の形態ごとに、事業所等の新設・廃止と納税義務者の交代を押さえることが重要です。本記事では、再編形態別に事業所税の取扱いを整理します。

※本記事は東京都(23区内)を前提とした一般的な解説です。組織再編に伴う届出様式・月割の細部は課税団体ごとに異なる場合があります。具体的な取扱いは所在地の課税団体にご確認ください。なお、月割計算や免税点判定の基礎は「課税標準の計算方法」「免税点判定」の記事をご覧ください。

大原則:事業所税は「事業所等」と「納税義務者」で考える

事業所税は、特定の課税団体内の事業所等で事業を行う法人・個人に課される税です。組織再編で何が変わるかを考えるときは、次の2点に着目します。

  • ① その事業所等が「新設」または「廃止」に当たるか(=月割計算の要否)
  • ② 納税義務者(その事業所等で事業を行う者)が誰になるか(=どの法人が申告するか)
法人税の適格・非適格は直接関係しません。事業所税には、法人税のような適格組織再編成の特例(簿価引継ぎ等)はなく、再編が適格か非適格かで事業所税の課税標準が変わるわけではありません。あくまで事業所等の物理的な存続と、納税義務者の交代で判断します。

合併の場合

合併では、消滅会社が消滅し、その事業所等は存続会社(吸収合併の場合)または新設会社(新設合併の場合)に引き継がれます。事業所税では、納税義務者が交代する点を捉えます。

当事者 事業所税の取扱い
消滅会社 合併の日に消滅。合併の日の前日を区切りとして、その事業年度開始日から合併までの期間について申告納付が必要(事業所等の廃止に準じた取扱い)
存続会社・新設会社 合併により引き継いだ事業所等について、合併の日以後の期間を自社の事業所等として申告。新たに課税団体内に事業所等を持つことになる場合は新設として月割計算
合併では、消滅会社の最後の事業年度(みなし事業年度)について事業所税の申告義務が生じます。消滅会社側の申告を失念しやすいので注意してください。存続会社側では、引き継いだ事業所等と従来の事業所等を合算して免税点判定・課税標準計算を行います。

会社分割の場合

会社分割では、分割した事業(に係る事業所等)が、分割承継法人(吸収分割の承継会社・新設分割の新設会社)に移ります。事業所等の使用者(納税義務者)が分割会社から承継法人に変わるため、次のように整理します。

当事者 事業所税の取扱い
分割会社 移転した事業所等は、分割の日以後は自社の事業所等でなくなる(廃止に準じて月割計算)
承継法人 引き継いだ事業所等は、分割の日以後の期間を自社の事業所等として申告(新設に準じて月割計算)
同じ事業所等でも、分割会社側では「廃止」、承継法人側では「新設」として、それぞれ月割計算します。両社が同一課税団体内であれば、その課税団体に対して、分割会社・承継法人それぞれが自社の期間分を申告することになります。

事業譲渡の場合

事業譲渡は、組織再編(包括承継)ではなく個別の取引(売買)ですが、事業所税の考え方は分割と同様です。譲渡した事業所等の使用者が、譲渡会社から譲受会社に変わります。

  • 譲渡会社:譲渡した事業所等は、譲渡日以後は自社の事業所等でなくなる(廃止に準じて月割)
  • 譲受会社:引き継いだ事業所等を、譲渡日以後の期間について自社の事業所等として申告(新設に準じて月割)

株式譲渡の場合

株式譲渡(オーナーが保有株式を売却して支配権が移るM&A)では、会社(法人)そのものは存続し、事業所等の使用者も変わりません。変わるのは株主だけです。

株式譲渡では、法人格は同一で、事業所等の新設・廃止も生じないため、事業所税の課税標準・申告義務に直接の影響はありません。これまでどおり、その法人が自社の事業所等について申告納付を続けます。子会社化されても、事業所税の申告主体・計算方法は変わらないのが原則です。
ただし、株式譲渡後にグループ内で合併・分割・事業移管などの再編を行えば、その時点で上記の合併・分割のルールが適用されます。また、親会社グループの連結決算スケジュールに合わせ、事業所税を含む申告・納税の実務スケジュールが前倒しになることはあります(法定申告期限自体は事業年度終了後2か月以内で変わりません)。

再編後の「同一家屋・特殊関係者」に注意

再編によってグループ会社が同じ建物に入居することになった場合、みなし共同事業の論点が生じることがあります。特殊関係者(同族会社等)が同一家屋で事業を行うと、免税点判定で床面積・従業者数を合算するため、各社単独では免税点以下でも課税対象になることがあります。

再編でグループ会社を同じビルに集約するようなケースでは、みなし共同事業に該当しないか確認が必要です。詳しくは「事業所税のみなし共同事業を完全解説」をご覧ください。

申告・届出の実務

組織再編に伴い、事業所等の新設・廃止が生じる場合は、課税団体への届出(事業所等の新設・廃止の申告等)が必要になることがあります。

再編時に確認すべきこと
  • 消滅会社・分割会社・譲渡会社の廃止に伴う申告(みなし事業年度や期間按分)
  • 存続・承継・譲受会社の新設に伴う月割計算
  • 課税団体への事業所等の新設・廃止等の届出の要否・期限
  • 再編後の免税点判定(合算後の床面積・従業者数)
  • グループ会社が同一家屋に入る場合のみなし共同事業の検討

まとめ

この記事のポイント
  • 事業所税は事業所等の新設・廃止と納税義務者の交代で判断(法人税の適格・非適格は無関係)
  • 合併:消滅会社は合併までの期間を申告、存続・新設会社は引き継いだ事業所等を以後申告
  • 分割・事業譲渡:移転側は廃止・承継側は新設として、それぞれ月割計算
  • 株式譲渡:法人格・事業所等は不変のため、事業所税に直接の影響なし(実務スケジュールは前倒しになり得る)
  • 再編後にグループ会社が同一家屋に入るとみなし共同事業の検討が必要
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※本記事は作成時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。組織再編に伴う事業所税の月割・届出・申告の細部は、再編形態や課税団体により異なります。具体的な判断は、所在地の課税団体への確認、または税理士へのご相談をおすすめします。

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