事業所用家屋の貸付等申告|ビルの貸主に必要な申告を解説

地方税

事業所税は、事業所用家屋を使って事業を行う人(テナントなど)が納める税金です。そのため、ビルを貸しているだけのオーナーは、自分は事業所税を納めない、と考えがちです。しかし、ここに見落とされやすい義務があります。テナントに事業所用家屋を貸し付けている所有者は、自分が納税義務者でなくても、「事業所用家屋の貸付等申告書」を提出しなければならないのです。

この記事では、事業所用家屋の貸付等申告について、地方税法701条の52や各自治体の公表資料をもとに、誰が・いつ・何を申告するのか、なぜ貸主に申告義務があるのかを、わかりやすく解説します。事業所税の納税義務者そのものについては、当サイトの関連記事もあわせてご覧ください。

この記事のポイント
  • 事業所用家屋(貸ビル等)の所有者には、貸付等申告の義務がある
  • 所有者自身が事業所税の納税義務者でなくても、申告は必要
  • 申告するのは、貸付先・貸付面積・入居者などの貸付状況
  • 根拠は地方税法701条の52第2項。提出期限は自治体により異なる
  • 新たな貸付け・異動・廃止のたびに申告が必要(期限内に提出)

貸主にも申告義務がある

事業所税の納税義務者は、事業所用家屋で事業を行う法人または個人です。貸ビルの場合、その家屋を借りて事業を行うテナントが納税義務者になり、所有者(オーナー)自身は、貸しているだけであれば納税義務者にはなりません。しかし、その所有者には、納税義務とは別に「貸付状況を申告する義務」が課されています。

これが、事業所用家屋の貸付等申告です。事業所用家屋(貸ビル等)を貸し付けている所有者は、貸付先や貸付面積などの状況を申告しなければならないと、地方税法701条の52第2項に定められています。自分は税金を納めないからといって、何もしなくてよいわけではない点に注意が必要です。

「テナントが事業所税を申告するのだから、オーナーは関係ない」という思い込みが、最も多い見落としです。貸主には、納税とは別に貸付状況の申告義務があります。貸しビルやテナントビルを所有している方は、この申告が必要かどうかを必ず確認してください。

なぜ貸主に申告義務があるのか

貸主に申告義務がある理由は、テナントの事業所税を正しく計算するために、建物全体の情報が必要だからです。テナントが事業所税を申告するには、自分の専用部分の床面積だけでなく、廊下やエレベーターなどの共用部分を按分した床面積も計算する必要があります。この共用部分の按分には、建物全体の床面積や各テナントの専用面積といった、所有者しか把握していない情報が欠かせません。

そこで、所有者が貸付状況を申告することで、貸している部分が所有者の事業所税の対象にならないことを示すとともに、入居者(テナント)が正しく事業所税を申告できるようにする、という役割を担っています。貸主の申告は、建物全体の課税関係を整理するための土台になっているのです。

何を申告するのか

貸付等申告では、貸し付けている事業所用家屋について、おおむね次のような事項を申告します。様式は自治体ごとに用意されています。

申告する主な内容
所有者(申告者)の情報、貸し付けている事業所用家屋の概要
建物全体の床面積、専用部分・共用部分の床面積
入居者(使用者)の名称、各入居者の使用面積
貸付けの開始・異動・廃止の別

建物の概要を記入する様式と、入居者ごとの使用面積等を記入する明細書を組み合わせて提出する形が一般的です。これらの情報により、各テナントの課税床面積や、所有者が使用している部分の有無が明らかになります。

いつまでに申告するのか

貸付等申告の提出期限は、新たに事業所用家屋を貸し付けたときや、貸付状況に異動・廃止があったときに生じます。期限は自治体によって異なるため、注意が必要です。代表的な例を挙げます。

自治体の例 提出期限
四日市市・船橋市など 貸し付けた日(異動の日)から1か月以内
大阪市など その事実があった日の属する月の翌月末日まで

このように、貸付日から1か月以内とする自治体もあれば、事実があった月の翌月末日までとする自治体もあります。提出期限は、必ず事業所が所在する自治体の案内で確認してください。なお、すでに申告した内容に変更があった場合や、貸付けをやめた場合(廃止)にも、その異動があった日から所定の期間内に申告書を提出する必要があります。

貸付等申告は、毎年決まった時期に行う申告ではなく、貸付けの開始・異動・廃止という出来事が起きたときに、その都度行う申告です。新しいテナントが入った、テナントが退去した、貸付面積が変わった、といった変化があったら、期限内に申告することを忘れないようにしましょう。

テナントの申告との関係

貸主の貸付等申告と、テナントの事業所税の申告は、車の両輪のような関係にあります。所有者が貸付状況を申告することで、各テナントの専用面積や、按分すべき共用部分の床面積が明らかになり、テナントが正しく事業所税を計算できるようになります。

実務では、テナントから「事業所税の申告に必要なので、専用面積と共用部分の按分後の床面積を教えてほしい」と問い合わせを受けることがあります。所有者が貸付状況を正しく把握・申告していれば、こうした問い合わせにもスムーズに対応できます。共用部分の床面積に変動があった場合なども、貸付等申告を通じて整理しておくことが大切です。

貸し付けている部分は、所有者の事業所税(資産割)の対象にはなりません。貸付等申告は、その貸付部分が所有者の課税対象から外れることを示す意味も持っています。所有者が自ら使用している部分があれば、その部分については所有者自身が納税義務者になります。自社ビルの一部を自社で使い、一部を貸している場合は、使用部分と貸付部分を分けて整理しましょう。

自治体ごとの違いに注意

事業所税は、指定都市等ごとに課される地方税です。貸付等申告の様式・提出期限・提出方法は、事業所用家屋が所在する自治体によって異なります。根拠となる地方税法701条の52第2項は共通ですが、具体的な運用は各自治体の条例・規則で定められています。複数の自治体に貸ビルを所有している場合は、それぞれの自治体ごとに申告が必要です。手続きの前に、必ず所在地の自治体の案内を確認してください。多くの自治体では、eLTAX(エルタックス)による電子申告にも対応しています。

まとめ

事業所用家屋(貸ビル等)を貸し付けている所有者は、自分が事業所税の納税義務者でなくても、貸付状況を申告する「事業所用家屋の貸付等申告」の義務があります(地方税法701条の52第2項)。申告するのは、貸付先・貸付面積・入居者などの情報で、これによりテナントが正しく事業所税を計算できるようになります。提出期限は、貸付日から1か月以内や、事実があった月の翌月末日までなど自治体により異なり、新たな貸付け・異動・廃止のたびに必要です。「貸しているだけだから関係ない」は誤解です。貸ビルを所有している方は、この申告義務を確認しておきましょう。事業所税の納税義務者や共用部分の計算については、当サイトの関連記事もあわせてご確認ください。

この記事のまとめ
  • 貸ビル等の所有者には、納税義務とは別に貸付状況の申告義務がある
  • 根拠は地方税法701条の52第2項。所有者が納税義務者でなくても必要
  • 申告内容は貸付先・貸付面積・入居者など。テナントの正しい申告の土台になる
  • 提出期限は自治体により異なる(貸付日から1か月以内、翌月末日までなど)
  • 新たな貸付け・異動・廃止のたびに申告が必要。様式・期限は所在地で要確認

※本記事は作成時点の法令・公表資料(地方税法701条の52、東京都主税局・大阪市・福岡市・四日市市等の公表資料)に基づいています。貸付等申告の様式・提出期限・方法は自治体により異なります。具体的な判断は、事業所用家屋が所在する自治体の最新の情報の確認、または税理士へのご相談をおすすめします。

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