納税充当金とは?法人税・住民税・事業税の損金算入・不算入と別表調整をわかりやすく解説

法人税

法人は決算で、その期の法人税・住民税・事業税の見積額を「法人税、住民税及び事業税」として費用計上し、同額を未払法人税等という負債に計上します。この未払法人税等を、税務ではとくに納税充当金と呼びます。ここで多くの人がつまずくのが、これらの税金が課税所得の計算で「損金になるか、ならないか」です。法人税と住民税は損金にならず、事業税だけは損金になります。しかも事業税は、見積計上した期ではなく、原則として申告・納付した翌期に損金となります。この非対称が、納税充当金まわりを難しく見せている正体です。

この記事では、納税充当金の意味と仕訳、法人税・住民税・事業税の損金算入・不算入、そして別表四・別表五(二)での調整の流れを整理します。

この記事のポイント
  • 納税充当金は、会計上の未払法人税等と同じもの。税務上の呼び方
  • 法人税・地方法人税・住民税は損金不算入、事業税・特別法人事業税は損金算入
  • 事業税が損金になるのは、原則として申告書を提出した事業年度(多くは翌期)
  • 決算で納税充当金に繰り入れた額は、別表四で全額を加算する
  • 翌期に充当金を取り崩して納付した事業税は、別表四で減算して損金にする

納税充当金とは

納税充当金とは、決算で見積計上する法人税・住民税・事業税の未払額のことで、会計上の未払法人税等と同じものを指す税務用語です。金額は未払法人税等と一致しますが、性質は異なります。会計上は負債として表示されるのに対し、税務上の納税充当金は債務が確定した負債ではなく、その繰入額は損金不算入となるため、利益積立金を構成します。法人税の申告書では、別表四・別表五(一)・別表五(二)にこの納税充当金が登場します。

決算で計上するとき

借方 金額 貸方 金額
法人税、住民税及び事業税 520 未払法人税等(納税充当金) 520

翌期に納付するとき(充当金を取り崩す)

借方 金額 貸方 金額
未払法人税等(納税充当金) 520 現金預金 520

法人税・住民税・事業税の損金算入・不算入

結論から言い切ると、法人税・地方法人税・住民税は損金不算入、事業税・特別法人事業税は損金算入です。会計では3つをまとめて「法人税、住民税及び事業税」として費用計上しますが、税務ではこのうち事業税だけが損金になります。

税目 損金 備考
法人税・地方法人税 不算入 別表四で加算
住民税(道府県民税・市町村民税) 不算入 別表四で加算
事業税・特別法人事業税 算入 原則、申告年度に損金

法人税や住民税まで損金にできてしまうと、税額が所得を減らし、その分また税額が変わるという循環が起きます。これを避けるため、所得に対して課される法人税・住民税は損金不算入とされています(法人税法38条)。一方、事業税は所得等を課税標準としつつも、事業を行うことに対する経費的な性格をもつため、損金算入が認められています。

事業税の損金算入時期

事業税は申告納税方式の税金です。国税庁の取扱いでは、申告納税方式による租税は、原則として申告書を提出した事業年度の損金になります。つまり、当期分の事業税を決算で未払計上(納税充当金に繰入)しても、その期にはまだ損金にならず、申告・納付する翌期に損金となるのが原則です。ただし、中間申告で当期中に納付した事業税は、当期の損金になります。この「見積計上の期」と「損金になる期」のズレを、別表四で調整します。

事業税の区分 損金になる時期
確定申告分(決算で未払計上) 申告書を提出した事業年度(原則、翌期)
中間申告分(当期中に納付) 当期

納税充当金の別表調整の流れ

決算で納税充当金に繰り入れた法人税・住民税・事業税は、会計上は費用ですが、税務ではいったん全額を別表四で加算します(損金経理をした納税充当金)。そのうえで、翌期に充当金を取り崩して事業税を納付したときに、その事業税額を別表四で減算し、はじめて損金にします。法人税・住民税はもともと損金不算入なので、減算はしません。納付状況の明細は、別表五(二)の「納税充当金の計算」欄に記載し、期末の納税充当金が貸借対照表の未払法人税等と一致することを確認します。別表全体の位置づけは別表四・別表五(一)もあわせてご覧ください。

場面 別表四 対象
決算で納税充当金に繰入 加算 法人税・住民税・事業税の全額
翌期に充当金取崩しで事業税を納付 減算 納付した事業税・特別法人事業税

中間申告と納付の全体像は法人税の中間申告で確認できます。

数値設例で追う別表四・別表五(二)

言葉だけでは流れがつかみにくいので、金額を追って確認します。前期末に納税充当金520(法人税350・住民税70・事業税100)を繰り入れ、当期にこれを全額取り崩して納付したとします。さらに当期末には、新たに納税充当金600(法人税400・住民税80・事業税120)を繰り入れたとします。この場合、当期の別表四と別表五(二)の主な動きは次のとおりです。

当期の別表四(申告調整)

区分 項目 金額
加算 損金経理をした納税充当金(当期繰入額) 600
減算 納税充当金から支出した事業税等(前期分の納付) 100

当期の別表五(二)納税充当金の計算

項目 金額
期首納税充当金 520
繰入額(損金経理をした納税充当金) 600
取崩額(法人税・住民税420+事業税等100) 520
期末納税充当金 600

期末の納税充当金600は、貸借対照表の未払法人税等600と一致します。別表四では、当期繰入額600を全額加算し、前期繰入分のうち当期に納付した事業税100だけを減算する。この加算と減算の組み合わせで、事業税だけが納付した期に損金算入される仕組みが数字で確認できます。

その他の租税公課の損金算入・不算入

法人税・住民税・事業税以外にも、会社はさまざまな税金を負担します。損金になるものとならないものを整理しておくと、別表調整の漏れを防げます。

区分 主なもの
損金算入 事業税
固定資産税
都市計画税
不動産取得税
自動車税
印紙税
登録免許税
事業所税
損金不算入 法人税・地方法人税
住民税
加算税・加算金
延滞税・延滞金
過怠税
罰金・科料・過料

損金不算入の税金には、ペナルティの性格をもつものが多く含まれます。加算税・延滞税・罰金などを損金にできてしまうと制裁の効果が薄れるため、損金不算入とされています。

附帯税の損金区分と例外(延滞税と利子税)

本税とは別に課される附帯税は、原則として損金不算入ですが、例外があります。言い切ると、ペナルティ性の延滞税・加算税・過怠税は損金不算入、利息的な性格の利子税や納期限延長に係る延滞金は損金算入です。名前が似ている延滞税と利子税で扱いが分かれる点が、もっとも間違えやすいところです。

区分 主なもの
損金不算入 延滞税
過少申告・無申告・不納付・重加算税
地方税の延滞金(納期限延長分を除く)
過怠税
罰金・科料・過料
損金算入 利子税(国税の納期限延長に係るもの)
納期限延長に係る延滞金(地方税)

延滞税は、納付が遅れたことに対するペナルティなので損金不算入です。これに対し利子税は、納期限の延長を認めてもらう代わりに支払う利息の性格をもつため損金算入されます。同様に、地方税の延滞金も、通常は損金不算入ですが、納期限の延長に係るものは損金算入です。

還付を受けた場合の申告調整

ここまでは税金を「納付する」側の話でしたが、払い過ぎた税金が還付されることもあります。還付金の申告調整は、納付時の損金区分の裏返しで考えます。納付時に損金不算入だった税金の還付金は、益金に算入すると二重課税になるため益金不算入(別表四で減算)です。逆に、納付時に損金算入だった税金の還付金は益金算入で、減算しません(法人税法26条)。

還付金の取扱い 主なもの
益金不算入(減算) 法人税・地方法人税の還付
住民税の還付
損金不算入の附帯税の還付
控除しきれない所得税額の還付
益金算入(減算しない) 事業税の還付
利子税・納期限延長に係る延滞金の還付
固定資産税等の還付
還付加算金

実務でとくに注意したいのが還付加算金です。還付金に付されて支払われる利息にあたる還付加算金は、還付金本体が益金不算入であっても、それとは別に益金算入されます。会計上で雑収入に計上した還付法人税等は別表四で減算し、還付加算金は減算しない、という区別を忘れないようにします。

実務上の落とし穴

事業税を見積計上した期に損金にしてしまう

当期分の事業税を決算で未払計上しても、その期には損金になりません。原則として申告・納付する翌期の損金です。見積計上した期に損金として所得を減らすと、過少申告になります。別表四で当期はいったん加算し、翌期の納付時に減算します。

住民税を損金算入と誤る

道府県民税・市町村民税は損金不算入です。事業税と同じ地方税だからと損金にすると誤りになります。損金になる地方税は事業税・特別法人事業税で、住民税は含まれません。

延滞税・加算税を損金にしてしまう

延滞税・加算税・過怠税・罰金などは損金不算入です。租税公課として費用計上していても、別表四で加算します。同じ「税金」でも、ペナルティ性のものは損金にならない点に注意します。

別表五(二)の納税充当金が貸借対照表と合わない

別表五(二)の期末納税充当金は、貸借対照表の未払法人税等と一致します。合わないときは、繰入額や取崩額の記載漏れ、あるいは会計処理の科目誤りが疑われます。金額の一致を必ず確認します。

中間分と確定分の取扱いを混同する

同じ事業税でも、当期中に納付した中間分は当期の損金、決算で未払計上した確定分は翌期の損金です。中間分まで翌期扱いにしたり、確定分を当期損金にしたりすると、損金算入の時期を誤ります。

延滞税と利子税を同じ扱いにする

名前は似ていますが扱いは逆です。延滞税は納付遅延のペナルティで損金不算入、利子税は納期限延長の利息的性格で損金算入です。どちらも附帯税だからと一律に損金不算入とすると、利子税で誤ります。

還付法人税等を雑収入のままにする

還付された法人税・住民税を会計上で雑収入に計上したまま別表四で減算しないと、益金不算入とすべきものを課税してしまいます。一方で、同時に受け取った還付加算金は益金算入なので減算しません。減算する還付金本体と、減算しない還付加算金を区別します。

判断フロー

手順 確認すること
1 対象の税金が法人税・住民税か、事業税か、その他かを分ける
2 法人税・住民税は損金不算入、事業税・特別法人事業税は損金算入と判定する
3 事業税は中間納付分(当期損金)か確定分(翌期損金)かを区別する
4 決算で納税充当金に繰り入れた額を別表四で加算する
5 翌期に充当金取崩しで納付した事業税を別表四で減算し、別表五(二)と残高を照合する

想定Q&A集

Q1. 納税充当金と未払法人税等は違うものですか

同じものを指します。会計上は未払法人税等、税務上は納税充当金と呼びます。金額は一致します。ただし税務上は債務確定した負債とはみなされず、繰入額が損金不算入となるため利益積立金を構成する点が、会計上の負債とは性質が異なります。

Q2. なぜ法人税や住民税は損金にならないのですか

所得に対して課される税金を損金にできると、税額が所得を減らし、その分また税額が変わるという循環が生じます。これを避けるため、法人税・地方法人税・住民税は損金不算入とされています(法人税法38条)。

Q3. 事業税だけ損金になるのはなぜですか

事業税は、事業を行うことに対して課される経費的な性格の税金と位置づけられているためです。所得等を課税標準としつつも、事業活動に伴うコストとみなされ、損金算入が認められています。特別法人事業税も同様に損金算入です。

Q4. 事業税はいつの損金になりますか

申告納税方式のため、原則として申告書を提出した事業年度の損金です。当期分を決算で未払計上しても、その期には損金にならず、申告・納付する翌期の損金になります。ただし当期中に納付した中間申告分は、当期の損金です。

Q5. 決算で計上した事業税は当期の所得から引けますか

原則として引けません。決算で納税充当金に繰り入れた事業税は、いったん別表四で加算し、当期の損金にはしません。翌期に充当金を取り崩して納付したときに別表四で減算し、そこで損金になります。

Q6. 別表四では何を加算・減算しますか

決算で納税充当金に繰り入れた法人税・住民税・事業税の全額を、損金経理をした納税充当金として加算します。そして翌期、充当金を取り崩して納付した事業税を減算します。法人税・住民税は損金不算入のままなので、減算しません。

Q7. 別表五(二)は何を記載する表ですか

租税公課の納付状況等を示す明細書です。法人税・住民税・事業税などについて、期首の未納額・当期発生額・当期の納付額・期末の未納額を記載し、納税充当金の繰入・取崩も整理します。期末の納税充当金は貸借対照表の未払法人税等と一致します。

Q8. 固定資産税や印紙税は損金になりますか

なります。固定資産税・都市計画税・不動産取得税・自動車税・印紙税・登録免許税・事業所税などは損金算入です。ただし固定資産税などの賦課課税方式の税金は、原則として賦課決定のあった事業年度の損金になるなど、損金算入の時期に個別のルールがあります。

Q9. 延滞税や加算税は損金になりますか

なりません。延滞税・加算税・過怠税・罰金・科料・過料などは損金不算入です。ペナルティの性格をもつため、費用計上していても別表四で加算します。同じ税金でも本税と附帯税で扱いが分かれる点に注意します。

Q10. 中間納付を仮払法人税等で処理した場合はどうなりますか

中間分を仮払法人税等(仮払金)で処理した場合は、決算で未払法人税等と相殺します。別表五(二)では仮払経理による納付として記載します。損金不算入・損金算入の判定自体は、納税充当金で処理した場合と変わりません。処理方法によって別表の記載欄が変わる点に注意します。

Q11. 法人税や事業税の還付を受けたら課税されますか

納付時の損金区分の裏返しで考えます。納付時に損金不算入だった法人税・住民税の還付は益金不算入で、別表四で減算します。一方、納付時に損金算入だった事業税の還付は益金算入で、減算しません。あわせて受け取る還付加算金は、いずれの場合も益金算入です。

Q12. 延滞税と利子税は損金になりますか

延滞税は損金不算入、利子税は損金算入です。延滞税は納付が遅れたことへのペナルティ、利子税は納期限の延長に対する利息の性格をもつためです。加算税・過怠税・罰金なども損金不算入ですが、納期限延長に係る地方税の延滞金は利子税と同様に損金算入となります。

まとめ

納税充当金は、会計上の未払法人税等と同じもので、決算で見積計上する法人税・住民税・事業税の未払額です。このうち損金になるのは事業税・特別法人事業税だけで、法人税・地方法人税・住民税は損金不算入です。さらに事業税は、見積計上した期ではなく、原則として申告・納付する翌期に損金となります。そのため、決算で繰り入れた額はいったん別表四で全額加算し、翌期に納付した事業税を減算して損金にします。法人税・住民税と事業税で扱いが分かれること、事業税は損金になる時期がずれること。この2点を押さえれば、納税充当金まわりは迷いません。

この記事のまとめ
  • 納税充当金=会計上の未払法人税等(税務上の呼称)
  • 法人税・地方法人税・住民税は損金不算入、事業税・特別法人事業税は損金算入
  • 事業税が損金になるのは原則、申告書を提出した事業年度(多くは翌期)
  • 決算で繰り入れた額は別表四で全額加算、翌期の事業税納付分を減算
  • 別表五(二)の期末納税充当金は、貸借対照表の未払法人税等と一致
  • 還付金は納付時の裏返し。法人税・住民税の還付は益金不算入、事業税の還付・還付加算金は益金算入
  • 附帯税は原則損金不算入だが、利子税・納期限延長の延滞金は損金算入

※本記事は作成時点の法令・国税庁の取扱いに基づく解説です。個別の事案や経理処理の方法によって別表の記載や損金算入時期が異なる場合があるため、具体的な判断は最新の情報の確認や、顧問税理士への相談をおすすめします。

出典
国税庁タックスアンサーNo.5300「損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期」、法人税法38条(法人税額等の損金不算入)・55条(不正行為等に係る費用等・附帯税の損金不算入)・26条(還付金等の益金不算入)、国税庁「別表五(二)記載要領」
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