生命保険料控除と地震保険料控除は、支払った保険料に応じて所得から一定額を差し引ける物的控除です。国が民間の保険加入を後押しし、万一の備えや災害リスクへの自助努力を税制面から支援する趣旨で設けられています。いずれも年末調整または確定申告で適用しますが、契約時期による新旧制度の違い、区分ごとの上限、そして2026年(令和8年)分に限って一般生命保険料控除の上限が拡大される時限措置など、実務では取り違えやすい論点が多くあります。本記事では、国税庁タックスアンサーNo.1140とNo.1145をもとに、対象・上限・計算方法・手続を整理します。
この記事のポイント
- 生命保険料控除は新制度で3区分(一般・介護医療・個人年金)、各上限4万円・合計12万円(所得税)
- 旧制度(平成23年以前の契約)は2区分で各上限5万円・合計10万円(所得税)
- 2026年分に限り、23歳未満の扶養親族がいる世帯は一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に拡大
- 地震保険料控除は地震保険料が全額(上限5万円)、住民税は2分の1(上限2.5万円)
- 給与所得者は年末調整、自営業者等は確定申告で適用。控除証明書が必要
目次
保険料控除の全体像と制度趣旨
生命保険料控除と地震保険料控除は、いずれも所得から差し引く物的控除で、税額から直接差し引く税額控除とは仕組みが異なります。控除額に自分の税率を乗じた分だけ税負担が軽くなるイメージです。両者は年末調整または確定申告で適用でき、給与所得者は勤務先へ控除証明書を提出することで完結します。まず契約の種類と時期を確認し、どの区分に当たるかを判定することが出発点です。
| 項目 | 生命保険料控除 | 地震保険料控除 |
|---|---|---|
| 性質 | 所得控除 | 所得控除 |
| 根拠 | No.1140 | No.1145 |
| 所得税の上限 | 合計12万円(新制度) | 5万円 |
| 住民税の上限 | 合計7万円 | 2.5万円 |
生命保険料控除の新制度と旧制度
生命保険料控除は、契約の締結日が平成24年(2012年)1月1日以後か以前かで、適用される制度が分かれます。新制度では介護医療保険料控除が新設され、区分が3つに増えた一方、区分ごとの上限は旧制度より下がっています。
| 項目 | 新制度(平成24年以後契約) | 旧制度(平成23年以前契約) |
|---|---|---|
| 区分 | 一般・介護医療・個人年金の3区分 | 一般・個人年金の2区分 |
| 各区分の上限(所得税) | 4万円 | 5万円 |
| 合計上限(所得税) | 12万円 | 10万円 |
| 各区分の上限(住民税) | 2.8万円 | 3.5万円 |
| 合計上限(住民税) | 7万円 | 7万円 |
生命保険料控除の計算方法
新制度の所得税の控除額は、区分ごとに年間払込保険料に応じて次のように計算します。払込額が2万円以下ならその全額、8万円を超えると一律4万円です。3区分それぞれで計算し、合計12万円を上限とします。
| 年間払込保険料(新制度) | 控除額(所得税) |
|---|---|
| 2万円以下 | 全額 |
| 2万円超4万円以下 | 払込額×2分の1+1万円 |
| 4万円超8万円以下 | 払込額×4分の1+2万円 |
| 8万円超 | 一律4万円 |
2026年の一般生命保険料控除の上限拡大
令和7年度税制改正により、2026年(令和8年)分の所得税に限り、子育て世帯を支援する時限措置が設けられました。23歳未満の扶養親族がいる世帯に限り、新制度の一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に引き上げられます。介護医療と個人年金の区分は変わらず、生命保険料控除全体の合計上限12万円も据え置かれます。
たとえば一般生命保険料を年間6万円支払っている場合、通常の計算では控除額は3.5万円ですが、この措置の対象となる世帯では上限拡大により控除額が大きくなります。年末調整で適用を受けるには、扶養親族の要件を満たすことの確認が必要です。年末調整の全体像は年末調整で確認できます。
地震保険料控除の上限と計算
地震保険料控除は、その年に支払った地震保険料に応じた金額を所得から差し引く制度です。所得税では支払った地震保険料の全額(上限5万円)、住民税では2分の1(上限2.5万円)が控除されます。平成18年末までに契約した一定の長期損害保険については、経過措置として旧長期損害保険料の控除が受けられます。
| 区分 | 所得税の控除 | 住民税の控除 |
|---|---|---|
| 地震保険料 | 全額(上限5万円) | 2分の1(上限2.5万円) |
| 旧長期損害保険料 | 上限1.5万円 | 上限1万円 |
| 両方がある場合 | 合算して上限5万円 | 合算して上限2.5万円 |
新旧併用と有利判定
同じ一般生命保険料控除や個人年金保険料控除で、新契約と旧契約の両方がある場合は、新制度のみ・旧制度のみ・新旧併用の3つから、控除額が最も大きくなる組み合わせを選べます。ただし新旧を併用する場合、その区分の上限は所得税4万円・住民税2.8万円に抑えられます。
| 選び方 | 区分ごとの上限(所得税) |
|---|---|
| 新制度のみ | 4万円 |
| 旧制度のみ | 5万円 |
| 新旧併用 | 合算して4万円 |
結論として、旧契約だけで所得税の控除額が4万円を超える場合は、旧制度のみで申告した方が有利です。反対に、旧契約の払込が少ない場合は、新契約と合算した方が控除額が大きくなります。区分ごとに3通りを計算し、大きい方を選ぶのが基本です。他の物的控除としてはiDeCoの所得控除も合わせて検討すると効果的です。
適用を受けるための手続と必要書類
給与所得者は年末調整で、自営業者等は確定申告で適用します。いずれも保険会社が発行する控除証明書が必要で、これを申告書に添付または提示します。証明書の区分(新旧の別)を正しく転記することが、控除の取りこぼしを防ぐ要になります。
| 対象者 | 手続 | 主な書類 |
|---|---|---|
| 給与所得者 | 年末調整 | 保険料控除申告書・控除証明書 |
| 自営業者等 | 確定申告 | 確定申告書・控除証明書 |
| 年末調整で漏れた人 | 確定申告で追加 | 確定申告書・控除証明書 |
実務で陥りやすい落とし穴
想定Q&A(11問)
Q1 生命保険料控除は最大でいくらですか
所得税で最大12万円、住民税で最大7万円です。新制度の3区分がそれぞれ上限4万円で合計12万円となるためです。反対に、旧制度のみの場合は2区分で合計10万円が上限となり、区分構成によって最大額が変わります。
Q2 新制度か旧制度かはどこで分かりますか
保険会社が発行する控除証明書に区分が記載されています。契約日が平成24年1月1日以後なら新制度、以前なら旧制度です。反対に、旧契約でも主契約や特約の更新・中途付加を行うと、その時点から新制度扱いになる場合があります。
Q3 2026年の上限拡大は誰でも使えますか
使えるのは、23歳未満の扶養親族がいる世帯に限られます。子育て世帯を支援する趣旨の時限措置だからです。反対に、扶養親族の要件を満たさない人や、介護医療・個人年金の区分には拡大が適用されません。
Q4 共働きで夫婦それぞれ控除を受けられますか
それぞれ受けられます。保険料を実際に負担した人が、その負担分について控除を受けられるためです。反対に、契約者が妻でも実際の保険料を夫が負担している場合など、負担者と契約者が異なると申告に影響することがあります。
Q5 地震保険料控除はいくらまでですか
所得税で最大5万円、住民税で最大2.5万円です。所得税は支払った地震保険料の全額が対象で、上限が5万円だからです。反対に、旧長期損害保険料は上限が1.5万円と低く、地震保険料と合わせても所得税5万円が上限になります。
Q6 火災保険料も控除できますか
火災保険料単独では控除できません。地震保険料控除の対象は地震等損害部分の保険料に限られるためです。反対に、火災保険に付帯した地震保険部分の保険料は控除の対象で、証明書に地震保険料相当額が区分表示されます。
Q7 保険料を8万円払えば全額控除されますか
全額は控除されません。新制度では8万円超の払込は一律4万円が上限で、8万円ちょうどでも控除額は4万円だからです。反対に、払込が2万円以下であれば、その全額がそのまま控除額になります。
Q8 個人年金保険ならどれでも個人年金保険料控除ですか
どれでもではありません。税制適格特約が付いた契約でなければ、個人年金保険料控除ではなく一般生命保険料控除の対象になるためです。反対に、要件を満たして特約が付いていれば、個人年金保険料控除として別枠で控除できます。
Q9 年末調整で出し忘れたら取り戻せますか
取り戻せます。年末調整で控除しそびれても、確定申告(還付申告)で適用できるためです。反対に、確定申告もせず放置すると控除は受けられず、還付申告ができる期間にも期限があります。
Q10 少額短期保険や海外契約も対象ですか
対象外となることがあります。保険期間5年未満の貯蓄性の保険や、国外で契約した保険などは控除の対象外とされる場合があるためです。反対に、国内の生命保険会社等と結んだ一定の要件を満たす契約であれば、区分に応じて控除の対象になります。
Q11 賃貸住宅でも地震保険料控除は使えますか
使えます。控除の対象は自己や生計を一にする親族が所有し常時居住する家屋・生活用動産にかかる地震保険料で、持ち家か賃貸かは問わないためです。反対に、事業用の建物や別荘など生活用でない資産にかかる地震保険料は対象外です。
適用の判断フロー
| 手順 | 判断 |
|---|---|
| 1 | 控除証明書で契約区分(新旧・種類)を確認 |
| 2 | 生命保険料は区分ごとに計算式で控除額を算定 |
| 3 | 新旧併用がある区分は3通りを比較し有利な方を選択 |
| 4 | 2026年分は扶養親族要件を満たすか確認し上限を判定 |
| 5 | 地震保険料は全額と旧長期の別で控除額を算定 |
| 6 | 年末調整または確定申告で証明書を添付し適用 |
まとめ
- 生命保険料控除は新制度3区分・各4万円・合計12万円、旧制度2区分・各5万円・合計10万円(所得税)
- 2026年分に限り、23歳未満の扶養親族がいる世帯は一般生命保険料控除の上限が6万円に拡大
- 地震保険料控除は地震保険料が全額(上限5万円)、住民税は2分の1(上限2.5万円)
- 新旧併用は区分ごとに3通りを比較し有利な方を選ぶ。旧単独で4万円超なら旧が有利
- 給与所得者は年末調整、漏れた場合や自営業者は確定申告。控除証明書の区分の確認が要
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