所有権移転外リースの税務を徹底解説|売買扱い・リース期間定額法・消費税

法人税

コピー機や社用車、機械などをリースで導入すると、契約上は「借りている」形ですが、税務では中身を見て扱いが決まります。実質的に分割払いで買ったのと変わらないリース(ファイナンス・リース)は、税務上は売買があったものとして扱われ、借り手がその資産を取得して減価償却する、という考え方になります。形式は賃貸借でも、実質は売買・金融取引に近いという実態に合わせた課税です。

その中でも実務で圧倒的に多いのが「所有権移転外リース取引」です。リース期間が終わっても資産が自分のものにならないタイプで、税務では売買として扱いつつ、償却方法はリース期間定額法に限定されます。さらに中小企業などは会計上そのまま賃貸借(費用処理)にできる特例があり、消費税では一括控除と分割控除の選択が絡みます。この記事では、所有権移転外リースの判定から償却・消費税・他制度の可否・会計とのズレまでを、国税庁タックスアンサー(No.5704・No.6163)に沿って整理します。

この記事のポイント
  • ファイナンス・リースは税務上「売買」として扱う。所有権移転外リースは償却方法がリース期間定額法に限定される
  • 中小企業等は会計上そのまま賃貸借処理(費用処理)できる。費用処理した支払リース料は償却費とみなされ、均等払いなら税務調整は不要
  • 消費税は引渡し時にリース料総額を一括控除が原則。賃貸借処理なら支払日ごとの分割控除も認められる
  • 所有権移転外リース資産は、圧縮記帳・10万円未満/20万円未満の少額償却の対象外。30万円未満の少額特例は対象
  • 会計では新リース会計基準でオンバランス化が進むが、税務上の売買・賃貸借の枠組みは変わらない

リース取引の税務上の分類

法人税法上の「リース取引」とは、資産の賃貸借のうち、中途解約が実質できない(中途解約不能)こと、借り手がその資産からの経済的利益を実質的に受け、費用を実質的に負担する(フルペイアウト)こと、の両方に当てはまるものをいいます(法法64の2)。会計でいうファイナンス・リースにほぼ対応します。これに当てはまらない賃貸借は「リース取引以外の賃貸借取引」(会計のオペレーティング・リース)で、通常の賃貸借として支払リース料を費用にします。

区分 税務上の扱い 借り手の償却方法
所有権移転リース取引 売買として扱う 自己所有資産と同じ償却方法(定額法・定率法等)・法定耐用年数
所有権移転外リース取引 売買として扱う リース期間定額法のみ(他の償却方法は不可)
リース取引以外の賃貸借(オペレーティング) 賃貸借として扱う 資産計上せず、支払リース料を費用処理
現在の売買扱いのルールは、平成20年4月1日以後に契約したリース取引に適用されます。それ以前に契約したものは、リース期間が終わるまで従来どおりの賃貸借処理が続きます。

所有権移転外リースの判定

法人税法上のリース取引のうち、次のいずれかに当てはまるものが「所有権移転リース取引」で、いずれにも当てはまらないものが「所有権移転外リース取引」です(No.5704)。実務では、契約に所有権移転や割安購入の条項がなく、特別仕様でもなく、期間も短すぎない標準的なリースが所有権移転外に該当します。

これに当てはまると所有権移転 内容
譲渡条項 リース期間の終了時・中途に、資産が無償または名目的な対価で借り手に譲渡される
名目的再リース 期間終了後、無償に近い名目的な再リース料で再リースすることが定められている
割安購入選択権 著しく有利な価額で資産を買い取る権利が与えられている
特別仕様 その借り手だけが使える特別仕様で、他への転用が困難なもの
期間が相当短い リース期間が法定耐用年数に比べ相当短い(耐用年数の70%、10年以上の資産は60%を下回る期間で、税負担を著しく軽減するもの)

原則は売買扱い(リース期間定額法)

リース取引は、資産の引渡し時に売買があったものとして扱われます(法法64の2)。借り手はリース資産を取得したものとして資産・未払金に計上し、所有権移転外リースの場合はリース期間定額法で償却します。リース期間定額法は、リース期間を耐用年数とみなし、残存価額をゼロとする定額法です。通常の定額法・定率法の全体像は少額減価償却資産の特例とあわせて償却制度の記事も参考にしてください。

リース期間定額法の計算

各事業年度の償却限度額 = リース資産の取得価額 ÷ リース期間の月数 × その事業年度のリース期間の月数
※取得価額は原則リース料総額。残価保証額がある場合はその額を控除する。取得価額にはリース資産を事業に使うための付随費用も含む。

利息相当額は、契約書に各期の利息の記載があればその金額を、なければ利息定額法により支払利息として費用化します。所有権移転外リースでは、リース資産の取得価額に利息相当額を含める方法も認められます。

中小企業などの賃貸借処理の特例

会計上、中小企業(中小企業の会計指針・要領を適用する会社)は、所有権移転外リースを従来どおり賃貸借処理でき、支払リース料を賃借料として費用にできます。リース料総額が一定額以下など重要性が乏しい場合も同様です。この場合でも法人税法上は売買扱いのままですが、費用処理した支払リース料は「償却費として損金経理した金額」に含めて扱われます(法令131の2)。

リース料を毎月均等に支払う一般的な契約では、支払リース料の額とリース期間定額法の償却限度額が一致するため、別表による税務調整は不要です。賃貸借処理をしている場合、減価償却に関する明細書(別表十六)の添付も不要とされています。つまり、中小企業は実務上、これまでどおり支払リース料を費用計上するだけで問題ないケースが多くなります。

消費税の取扱い(一括控除と分割控除)

消費税でもリース取引は売買として扱われるため、原則はリース資産の引渡しを受けた課税期間に、リース料総額に係る消費税をまとめて仕入税額控除します(一括控除)。ただし、借り手が会計上賃貸借処理をしている場合は、リース料を支払うべき日ごとに分割して控除する分割控除も認められます(No.6163、消基通11-3-2)。

方法 控除のタイミング 主な留意点
一括控除(原則) 引渡しを受けた課税期間にリース料総額分を控除 初年度に控除が集中する。売買処理と整合
分割控除(賃貸借処理時) リース料を支払うべき日の属する課税期間ごとに控除 帳簿にリース料総額を明らかにする対応が必要。会計と消費税の処理を一致させると分かりやすい

分割控除をしていたリース契約を中途解約した場合、解約後は賃貸借処理ができなくなるため、残っている残存リース料は解約した日の属する課税期間の仕入税額控除の対象になります。リース資産の返還で残存リース料が減額される場合は代物弁済、保険金で減額される場合は仕入対価の返還として扱われます。

使える制度・使えない制度

所有権移転外リース資産は、取得の態様が特殊なため、一般の固定資産で使える一部の制度が使えません。逆に使える制度もあり、整理しておくと判断を誤りません。

制度 所有権移転外リース資産
圧縮記帳(買換え等) 対象外
少額減価償却資産(10万円未満)の損金算入 対象外
一括償却資産(20万円未満)の3年償却 対象外
中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の特例 対象
特別償却・税額控除(一定の要件を満たす場合) 対象になり得る

会計とのズレと新リース会計基準

リースは、会計と税務で扱いがずれることがあります。中小企業が賃貸借処理をしていても税務は売買扱い、という点はその典型です。均等払いのリースなら結果の金額は一致しますが、利息法で処理する場合などは、費用計上のカーブが償却限度額とずれ、税務調整が必要になることがあります。

なお、会計の世界では新しいリース会計基準により、借り手はオペレーティング・リースも含めて原則すべてを資産・負債として計上(オンバランス)する方向に見直されています。ただしこれは上場企業等が対象で、中小企業に強制適用されるものではありません。そして重要なのは、会計基準が変わっても、法人税法上の売買扱い・賃貸借処理という税務の枠組みは変わらないという点です。会計処理の変更に引きずられて税務処理を誤らないよう注意します。

見落としやすい落とし穴

オペレーティングと思い込んで賃貸借処理する

中途解約不能でフルペイアウトのリースは、名前がリースでも税務上は売買扱いのファイナンス・リースです。オペレーティング・リースと思い込んで安易に賃貸借処理すると、本来の売買処理・リース期間定額法との整合が取れず、調整漏れにつながります。契約内容で判定することが必要です。

定率法など他の償却方法で計算する

所有権移転外リース資産は、リース期間定額法しか使えません。自己所有資産と同じ感覚で定率法などを選ぶと誤りになります。所有権移転リースであれば自己所有資産と同じ償却方法ですが、両者を取り違えないよう契約で確認します。

少額・一括償却の対象と勘違いする

所有権移転外リース資産は、10万円未満の少額減価償却資産や20万円未満の一括償却資産の対象になりません。一方で、中小企業者等の30万円未満の少額特例は対象です。金額の水準だけで即時費用化できると考えると誤ります。

消費税を毎回の支払で控除しているのに帳簿が不十分

賃貸借処理で分割控除する場合でも、消費税の原則は引渡し時の一括控除です。会計処理と消費税の計算方法が異なるときは、帳簿にリース料総額を明らかにするなどの対応が求められます。帳簿要件を満たさないと仕入税額控除に支障が出るおそれがあります。

会計基準の変更で税務も変わると誤解する

新リース会計基準でオンバランス化が進んでも、法人税法上の売買・賃貸借の枠組みは変わりません。会計の変更に合わせて税務処理まで変えてしまうと誤りになります。会計と税務は別物として整理する必要があります。

リースの税務処理を決める判定フロー

手順 確認内容
1 中途解約不能かつフルペイアウトか。満たさなければオペレーティングで賃貸借処理
2 譲渡条項・割安購入選択権・特別仕様・期間が相当短い等に当たるか。当たれば所有権移転リース
3 いずれにも当たらなければ所有権移転外リース。売買扱いでリース期間定額法により償却
4 中小企業等は賃貸借処理を選択可。均等払いなら支払リース料=償却限度額で税務調整不要
5 消費税は原則一括控除。賃貸借処理なら分割控除も可。帳簿にリース料総額を明らかにする

想定Q&A(所有権移転外リースの税務)

Q1. リースなのに売買扱いとはどういうことですか

実質が分割払いの購入に近いからです。中途解約不能でフルペイアウトのファイナンス・リースは、経済的には資産を買って分割で払うのと変わらないため、税務上は売買として扱われるからです。反対に、中途解約でき費用も実質負担しないオペレーティング・リースは、通常の賃貸借として支払リース料を費用にします。

Q2. 中小企業はリースをどう処理すればよいですか

賃貸借処理で支払リース料を費用計上して差し支えありません。中小企業は会計上、所有権移転外リースを賃貸借処理でき、費用処理額は税務上も償却費として扱われるからです。反対に、均等払いでない契約や利息法で処理する場合は、費用計上額と償却限度額がずれ、税務調整が必要になることがあります。

Q3. 賃貸借処理なら別表の添付は必要ですか

不要とされています。賃貸借処理で費用計上した支払リース料は償却費として扱われますが、この場合は減価償却に関する明細書(別表十六)の添付は要しないとされているからです。反対に、売買処理で資産計上して償却する場合は、通常の減価償却と同様に明細の管理が必要になります。

Q4. 消費税は毎月の支払ごとに控除できますか

賃貸借処理をしていれば分割控除できます。消費税は原則として引渡し時にリース料総額を一括控除しますが、賃貸借処理をしている場合は支払うべき日ごとの分割控除も認められるからです。反対に、売買処理をしている場合や帳簿要件を満たさない場合は、原則の一括控除によることになります。

Q5. リース資産に圧縮記帳は使えますか

所有権移転外リース資産は圧縮記帳の対象外です。買換え等の圧縮記帳の代替資産に該当しないとされているからです。反対に、自己資金で購入した固定資産であれば、要件を満たせば圧縮記帳の対象になり得ます。リースで導入した資産は圧縮記帳を前提にしないよう注意してください。

Q6. リース資産は30万円未満なら全額費用にできますか

中小企業者等であれば、30万円未満の少額特例の対象になります。所有権移転外リース資産は、10万円未満の少額償却や20万円未満の一括償却の対象外ですが、30万円未満の少額特例は対象とされているからです。反対に、その要件(取得価額の合計300万円の年間上限など)を満たさない場合はリース期間定額法で償却します。

Q7. リース期間の途中で解約したらどうなりますか

残存リース料は解約した課税期間の仕入税額控除の対象になります。分割控除をしていた場合、解約後は賃貸借処理ができなくなるため、残りの譲受け対価に相当する残存リース料を解約日の属する課税期間で控除するからです。反対に、リース資産の返還で減額されるときは代物弁済、保険金で減額されるときは仕入対価の返還として扱われます。

Q8. 所有権移転リースと移転外リースはどう違いますか

償却方法が違います。所有権移転リースは自己所有資産と同じ償却方法(定額法・定率法等)・法定耐用年数で償却しますが、所有権移転外リースはリース期間定額法に限られるからです。反対に、いずれも税務上は売買扱いである点は共通します。譲渡条項や割安購入選択権などの有無で区分します。

Q9. 新リース会計基準が始まると税務も変わりますか

税務の枠組みは変わりません。新リース会計基準は借り手のオンバランス化を進めるものですが、法人税法上の売買・賃貸借の取扱いは従来どおりだからです。反対に、上場企業等では会計処理が変わるため、会計と税務のズレが生じ、税務調整が必要になる場面が増える可能性があります。中小企業には基準が強制適用されません。

Q10. リース資産の固定資産税(償却資産税)は誰が払いますか

原則としてリース会社(貸し手)が資産の所有者として申告・納付します。所有権移転外リースでは資産の所有権が貸し手にあるためです。反対に、実務では契約によりリース料に固定資産税相当額が織り込まれていることが多く、実質的な負担は借り手に及ぶこともあります。契約内容で負担関係を確認してください。

Q11. 平成20年3月以前に契約したリースはどうなりますか

契約時のルール(賃貸借処理)がリース終了まで続きます。現在の売買扱いは平成20年4月1日以後に契約したリース取引に適用されるため、それ以前の契約には遡及しないからです。反対に、平成20年4月1日以後の契約は、原則として売買扱い・リース期間定額法によることになります。契約日で適用ルールが変わる点に注意してください。

まとめ

所有権移転外リースは、税務上は売買として扱われ、借り手はリース期間定額法で償却します。ただし中小企業等は会計上の賃貸借処理が認められ、均等払いなら支払リース料の費用計上だけで税務調整は不要です。消費税は引渡し時の一括控除が原則で、賃貸借処理なら分割控除も選べます。圧縮記帳や10万円・20万円の少額償却は対象外ですが、30万円未満の少額特例は対象です。会計の新リース基準でオンバランス化が進んでも、税務の枠組みは変わらない点を押さえておきましょう。

この記事のまとめ
  • ファイナンス・リースは税務上売買扱い。所有権移転外リースはリース期間定額法で償却
  • 中小企業等は賃貸借処理が可能。費用処理額は償却費とみなされ、均等払いなら税務調整不要
  • 消費税は引渡し時の一括控除が原則。賃貸借処理なら支払日ごとの分割控除も可
  • 圧縮記帳・10万円未満/20万円未満の少額償却は対象外。30万円未満の少額特例は対象
  • 新リース会計基準でオンバランス化しても、法人税法上の枠組みは不変。契約日(平成20年4月1日)で適用ルールが分かれる

※本記事は作成時点の法令・通達および公表資料(法人税法64条の2、法人税法施行令48条の2・131条の2、所得税法施行令120条の2、消費税法30条、消費税法基本通達5-1-9・11-3-2、法人税基本通達7-6の2-1ほか、国税庁タックスアンサーNo.5702・No.5704・No.6163、国税庁質疑応答事例等)に基づく一般的な解説です。制度・取扱いは改正により変わる場合があるため、個別の判断は最新の法令・国税庁公表情報の確認、または顧問税理士へのご相談をおすすめします。

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