個人から現金や不動産などの財産をもらうと、もらった人に贈与税がかかります。ただし、1年間にもらった財産の合計が110万円(基礎控除)以下なら贈与税はかからず、申告も不要です。これを超えると、超えた部分に税率を掛けて贈与税を計算し、翌年の決まった期間に申告・納税します。
贈与税の税率には、親子・祖父母孫など直系尊属からの贈与に使う「特例税率」と、それ以外の「一般税率」の2種類があり、同じ金額でも税額が変わります。本記事では、暦年課税の仕組み、基礎控除110万円、一般税率と特例税率の違い、具体的な計算例、申告・納税の期限と方法を、国税庁タックスアンサー(No.4402・No.4408)に沿って整理します。贈与税がかからないケースもあわせて押さえます。
- 贈与税は個人から財産をもらった人にかかる(法人からもらうと所得税)
- 暦年課税では、1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を引いた残額に課税
- 1年間の合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要
- 税率は特例税率(直系尊属から18歳以上へ)と一般税率(それ以外)の2種類
- 申告・納税は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで
贈与税とは・暦年課税の仕組み
贈与税は、個人から財産をもらったときに、もらった人(受贈者)にかかる税金です。あげた人(贈与者)ではなく、もらった人が納税します。なお、会社など法人から財産をもらった場合は贈与税ではなく所得税の対象になります。
贈与税の課税方法には暦年課税と相続時精算課税の2つがあり、一定の要件を満たせば相続時精算課税を選べます。本記事では、原則的な方法である暦年課税を説明します。暦年課税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額をもとに計算します。
「もらった人ごと・1年間の合計」で判定
基礎控除110万円
暦年課税では、1年間にもらった財産の合計額(課税価格)から、基礎控除額110万円を差し引きます。したがって、1年間にもらった財産の合計が110万円以下なら、贈与税はかからず、申告も不要です。
基礎控除後の課税価格 = 1年間にもらった財産の合計額 - 110万円
この基礎控除110万円は、毎年使えます。たとえば、毎年110万円ずつ10年間贈与すれば、贈与税をかけずに合計1,100万円を渡せる計算です。これが、暦年贈与を使った相続税対策の基本的な考え方です(ただし、相続開始前の一定期間の贈与は相続財産に加算される点に注意が必要です)。
一般税率と特例税率
基礎控除後の課税価格に掛ける税率は、贈与者と受贈者の関係・年齢によって一般税率と特例税率の2種類に分かれます(国税庁No.4408)。
| 区分 | 対象(財産の呼び方) |
|---|---|
| 特例税率 | 直系尊属(父母・祖父母など)から、贈与の年の1月1日に18歳以上の子・孫などへの贈与(特例贈与財産) |
| 一般税率 | 上記以外(直系尊属以外からの贈与、18歳未満への贈与、夫婦間・兄弟間の贈与など)(一般贈与財産) |
同じ課税価格なら、原則として特例税率の方が一般税率より税率が低く設定されています(基礎控除後の課税価格300万円以下の区分を除く)。親から成人の子への贈与などは特例税率が使えるため、有利です。以下が速算表です。
特例税率(特例贈与財産用)
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | - |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
一般税率(一般贈与財産用)
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | - |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与税の計算例
同じ500万円の贈与でも、特例税率と一般税率で税額が変わります。それぞれ計算してみます。
| ケース | 計算 | 贈与税額 |
|---|---|---|
| 父から成人の子へ500万円(特例税率) | (500万-110万)×15%-10万 | 48.5万円 |
| 知人から500万円(一般税率) | (500万-110万)×20%-25万 | 53万円 |
まず基礎控除110万円を引いて390万円とし、特例税率なら15%を掛けて控除額10万円を引くと48.5万円、一般税率なら20%を掛けて控除額25万円を引くと53万円です。同じ500万円でも、特例税率の方が4.5万円安くなります。親子・祖父母孫の間の贈与では、特例税率が使えるかを必ず確認しましょう。
一般と特例が混在する場合の計算
1年間に、一般贈与財産と特例贈与財産の両方をもらった場合は、少し複雑な按分計算になります。たとえば、成人が「配偶者(一般)」と「自分の父(特例)」の両方から贈与を受けた場合などです。次の手順で計算します(国税庁No.4408)。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | すべての財産(合計額)を一般税率で計算した税額のうち、一般贈与財産が占める割合に応じた金額を求める |
| ② | すべての財産(合計額)を特例税率で計算した税額のうち、特例贈与財産が占める割合に応じた金額を求める |
| ③ | ①と②を合計した額が、納付すべき贈与税額 |
ポイントは、いったん全体の合計額から基礎控除110万円を引いた金額で、一般税率・特例税率それぞれの税額を計算し、そのうえで財産の割合で按分することです。基礎控除は全体で1回だけ引く点に注意してください。計算が複雑なので、両方の贈与がある年は、国税庁の申告書作成コーナーや税理士の利用が安心です。
贈与税がかからないもの
財産をもらっても、その性質や目的によっては贈与税がかからないものがあります。主なものを押さえておきましょう。
| 贈与税がかからない主なもの |
|---|
| 夫婦・親子・兄弟姉妹などの扶養義務者から受け取る、生活費や教育費として通常必要な範囲のもの |
| 個人から受け取る、社会通念上相当と認められる香典・花輪代・お祝い・お見舞いなど |
| 年末年始の贈答、祝物、見舞いなどの金品で、社会通念上相当と認められるもの |
| 法人から個人への贈与(贈与税はかからないが、所得税の対象になる) |
申告と納税の期限・方法
1年間にもらった財産の合計が基礎控除110万円を超える場合は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告と納税をします。申告先は、もらった人(受贈者)の住所地を所轄する税務署です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告・納税期限 | 贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日 |
| 申告先 | 受贈者(もらった人)の住所地を所轄する税務署 |
| 納税義務者 | 財産をもらった人(あげた人ではない) |
| 特例税率の適用 | 一定の場合、続柄を明らかにする書類(戸籍謄本等)の添付が必要 |
落とし穴:申告を忘れると加算税・延滞税
想定Q&A
Q1. 110万円以下なら本当に申告不要ですか?
暦年課税では、1年間にもらった財産の合計が基礎控除110万円以下なら、贈与税はかからず申告も不要です。ただし、これは「もらった人が1年間に受け取った総額」で判定します。複数の人から少しずつもらって合計が110万円を超えれば、申告が必要です。また、相続時精算課税を選択している贈与者からの贈与は、別途の取扱いがあるので注意してください。
Q2. 贈与税は誰が払いますか?
財産をもらった人(受贈者)が払います。あげた人ではありません。申告・納税も、もらった人が、自分の住所地の税務署に対して行います。あげた人には贈与税の手続きはありません。ただし、あげた人が贈与税を代わりに払うと、その肩代わりした税額分がさらに贈与とみなされることがあるので注意が必要です。
Q3. 特例税率と一般税率はどちらが得ですか?
同じ課税価格なら、原則として特例税率の方が税率が低く、有利です(基礎控除後の課税価格300万円以下の区分を除く)。特例税率は、直系尊属(父母・祖父母)から、贈与の年の1月1日に18歳以上の子・孫への贈与に使えます。親から成人の子への贈与などはこの特例税率が使えるので、一般税率より税負担が軽くなります。どちらの税率になるかは、贈与者との続柄と受贈者の年齢で決まります。
Q4. 親からの生活費や学費にも贈与税がかかりますか?
扶養義務者(親など)から受け取る生活費や教育費で、通常必要と認められる範囲のものには、贈与税はかかりません。仕送りや学費は、必要な都度、必要な額を渡す限り非課税です。ただし、生活費・教育費の名目でも、使わずに預金したり投資に回したりすると、その分は贈与税の対象になりえます。「必要な都度」「必要な額」がポイントです。
Q5. ご祝儀やお年玉に贈与税はかかりますか?
社会通念上相当と認められる範囲のご祝儀・お年玉・香典・お見舞いなどには、贈与税はかかりません。国税庁も、年末年始の贈答や祝物などで社会通念上相当なものは課税対象にならないとしています。常識的な金額であれば申告も納税も不要です。ただし、通常の範囲を大きく超える高額なものは、贈与税の対象になる可能性があります。
Q6. 父と母の両方から110万円ずつもらったら非課税ですか?
非課税にはなりません。基礎控除110万円は「もらった人」を基準にした枠なので、父から110万円・母から110万円をもらうと合計220万円となり、220万円-110万円=110万円が課税価格になります。もらった人が1年間に受け取った総額で判定する点に注意してください。あげる人ごとに110万円の枠があるわけではありません。
Q7. 贈与税の申告期限はいつですか?
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。所得税の確定申告(2月16日〜3月15日)と終わりは同じですが、贈与税は2月1日から受け付ける点が異なります。申告先は、もらった人の住所地の税務署です。期限を過ぎると無申告加算税や延滞税がかかるので、110万円を超える贈与を受けた年は、忘れずに申告しましょう。
Q8. 不動産をもらった場合の贈与税はどう計算しますか?
不動産の贈与でも、計算の流れは同じです。ただし、課税価格は購入価格や時価ではなく、相続税評価額(土地は原則として路線価方式、建物は固定資産税評価額)で評価します。一般に時価より低くなる傾向があります。この評価額から基礎控除110万円を引き、税率を掛けて贈与税を計算します。不動産は評価が専門的なので、税理士に相談すると確実です。なお、贈与では別途、不動産取得税や登録免許税もかかります。
Q9. 暦年課税と相続時精算課税はどちらを選ぶべきですか?
目的によります。暦年課税は毎年110万円の基礎控除を使え、長期でコツコツ贈与する相続税対策に向きます。相続時精算課税は、累計2,500万円までの特別控除があり、まとまった財産を早く移したい場合に有利ですが、いったん選ぶと同じ贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません。令和6年からは相続時精算課税にも年110万円の基礎控除ができ、使い勝手が変わりました。どちらが有利かは財産状況や年齢で異なるため、専門家への相談をおすすめします。
Q10. 毎年110万円ずつ贈与すれば相続税対策になりますか?
基本的には有効ですが、注意点があります。毎年110万円以内なら贈与税はかからず、その分だけ将来の相続財産を減らせます。ただし、相続開始前の一定期間(改正により段階的に3年から7年へ延長)の贈与は、相続財産に加算されるため、相続直前の贈与は節税効果が薄れます。また、毎年同じ額を同じ時期に贈与すると、定期贈与とみなされるリスクも指摘されます。早めに始め、贈与の証拠を残すことが大切です。
まとめ
贈与税は、個人から財産をもらった人にかかる税金で、暦年課税では1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を引いた残額に課税されます。110万円以下なら申告も納税も不要です。税率は特例税率(直系尊属から18歳以上へ)と一般税率(それ以外)の2種類で、特例税率の方が原則として低くなります。申告・納税は翌年2月1日から3月15日まで、もらった人が行います。生活費・教育費や社会通念上相当な贈答は非課税です。相続税対策で活用する際は、生前贈与加算などの注意点も踏まえ、計画的に進めましょう。
- 贈与税は個人から財産をもらった人にかかる(法人からは所得税)
- 暦年課税は1年間の贈与合計から基礎控除110万円を引いた残額に課税。110万円以下は申告不要
- 税率は特例税率(直系尊属から18歳以上へ)と一般税率(それ以外)。特例税率が原則低い
- 両方の財産がある年は按分計算。基礎控除は全体で1回だけ差し引く
- 申告・納税は翌年2月1日〜3月15日、もらった人の住所地の税務署へ
※本記事は作成時点の法令・公表資料(相続税法21条〜21条の8、租税特別措置法70条の2の5、国税庁タックスアンサーNo.4402・No.4408・No.4161等)に基づく一般的な解説です。税率・基礎控除・加算対象期間等は改正により変わる場合があるため、具体的な判断は最新の国税庁公表情報の確認、または相続・贈与に詳しい税理士へのご相談をおすすめします。

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