マンション相続税評価の新ルール|令和6年改正の区分所有補正率・タワマン節税規制を解説

相続税・贈与税

令和6年(2024年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した分譲マンション(居住用の区分所有財産)は、相続税評価額の計算方法が大きく変わりました。従来、タワーマンションなどでは相続税評価額が市場価格の3〜4割程度にとどまり、戸建てとの不公平が問題視されていました。新ルールでは「区分所有補正率」により、評価額が市場価格のおおむね6割相当まで引き上げられます。

本記事では、評価乖離率・評価水準・区分所有補正率という3段階の計算を全体像から噛み砕き、対象となる物件・対象外、最低評価水準0.6の意味、そして新ルール後も残る総則6項(財産評価基本通達6項)のリスクと最高裁判決まで、計算例つきで専門的に整理します。

目次
  1. 改正の背景(タワマン節税の規制)
  2. 新しい評価方法の全体像
  3. 評価乖離率の4つの要素
  4. 評価水準と区分所有補正率の3区分
  5. 計算例(従来評価との比較)
  6. 新ルールの対象となる物件・対象外
  7. 最低評価水準0.6の意味
  8. 新ルール後も残る総則6項のリスク
  9. 最高裁判決(令和4年)と6項
  10. まとめ

改正の背景(タワマン節税の規制)

マンションの相続税評価額は「土地(路線価)+建物(固定資産税評価額)」で計算されますが、この方式では市場価格との乖離が大きく、特にタワーマンションで顕著でした。

物件 相続税評価額/市場価格
戸建て 市場価格の約6割
タワーマンション(高層階) 市場価格の3〜4割程度(乖離が大きい)

この乖離を利用し、市場価格より大幅に低い評価額で申告する「タワマン節税」が広がりました。課税の公平性を欠くことから、令和5年9月に国税庁が個別通達を定め、令和6年1月1日以後の相続・贈与から新評価方法が適用されています。

新しい評価方法の全体像

まず全体像です。新ルールでは、従来の評価額に区分所有補正率を掛けて評価額を補正します。

新しい評価額 =(建物の評価額 + 土地の評価額)× 区分所有補正率

この「区分所有補正率」を求めるために、次の3ステップで計算します。複雑に見えますが、流れを押さえれば理解できます。

ステップ 内容
①評価乖離率 市場価格と従来評価の乖離の割合を4要素から計算
②評価水準 1 ÷ 評価乖離率
③区分所有補正率 評価水準に応じて補正率を決定

評価乖離率の4つの要素

評価乖離率は、次の4要素を計算して合算し、最後に3.220を加えて求めます。算式自体は複雑ですが、「どの要素が評価額を上げるか」の方向性を押さえれば十分です。

評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220
要素 内容 係数
A 築年数 × △0.033
B 総階数指数(総階数÷33、上限1) × 0.239
C 専有部分の所在階 × 0.018
D 敷地持分狭小度(敷地利用権面積÷専有面積) × △1.195
評価額が上がりやすいマンションの特徴

細かい算式を覚える必要はありません。次の傾向だけ押さえれば十分です。
・築年数が新しいほど評価額が上がる
・総階数が高いほど評価額が上がる
・所在階が高いほど評価額が上がる
・敷地持分が小さい(戸数が多い)ほど評価額が上がる
つまり築浅・高層・高層階・戸数の多いタワマンほど影響が大きいということです。

評価水準と区分所有補正率の3区分

評価水準(=1÷評価乖離率)を計算し、その値に応じて区分所有補正率を決めます。補正は主に評価額を引き上げる方向に働きます。

評価水準 区分所有補正率 効果
1超 評価乖離率 評価額を引き下げ
0.6以上1以下 補正なし 従来どおり
0.6未満 評価乖離率 × 0.6 評価額を引き上げ(多くのタワマン)
多くのタワーマンションは評価水準が0.6未満となり、評価額が引き上げられます。一方、まれに従来評価が市場価格を上回っているケース(評価水準1超)では、逆に評価額が下がる補正も働きます。

計算例(従来評価との比較)

例:築3年・19階建の19階・敷地持分狭小度8.98÷66.81

A:3年 × △0.033 = △0.099
B:(19÷33)× 0.239 = 0.137
C:19階 × 0.018 = 0.342
D:(8.98÷66.81)× △1.195 = △0.160
評価乖離率 = △0.099+0.137+0.342△0.160+3.220 = 3.440

評価水準 = 1 ÷ 3.440 = 0.291(0.6未満)
区分所有補正率 = 3.440 × 0.6 = 2.064

従来評価3,200万円 × 2.064 = 約6,600万円(約2倍に増加)

この補正は建物・土地の両方に掛けます。築浅・高層階のタワマンほど補正率が大きくなり、評価額が1.5〜2倍程度になるケースが目立ちます。

新ルールの対象となる物件・対象外

新ルールは「居住用の区分所有財産」が対象で、すべてのマンションに適用されるわけではありません。

対象外となるもの
区分登記されていない一棟所有の賃貸マンション
地階を除く総階数が2以下の低層集合住宅
事業用テナント(居住用以外)
専有部分3室以下を区分所有者・親族が居住に使う二世帯住宅など
借地権付分譲マンションの底地(貸宅地)の評価
新ルール適用後の評価額をもとに、貸家・貸家建付地の評価減や小規模宅地等の特例を適用できます。補正後の価額が起点になる点に注意してください。

最低評価水準0.6の意味

補正後の評価額は市場価格のおおむね6割が下限です。これは、戸建ての平均的な乖離率(市場価格の約6割)に合わせ、戸建てとマンションの不公平を是正する狙いがあります。

新ルールでも評価額は市場価格の6割相当までしか引き上げられないため、依然として市場価格との乖離は残ります。現金で持つより不動産で持つほうが相続税は軽くなる傾向は変わりません。

新ルール後も残る総則6項のリスク

新ルールが適用される場合でも、評価額は市場価格の6割相当にとどまります。そのため、相続直前に借入金で著しく乖離の大きいタワマンを取得するような行き過ぎた節税には、依然として財産評価基本通達6項(総則6項)が適用される可能性があります。

総則6項とは

財産評価基本通達6項は、「通達による評価が著しく不適当と認められる財産は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という規定です。新ルールの対象外の物件や、新ルールでもなお著しく不適当とされる場合には、鑑定評価額などで評価し直されることがあります。

最高裁判決(令和4年)と6項

新ルール導入のきっかけの一つが、令和4年の最高裁判決です。借入金でマンション2棟を購入し、通達評価額で申告して相続税を大幅に圧縮した事案で、国税当局が鑑定評価額に基づき更正処分を行い、国側が勝訴しました。

項目 概要
購入 借入金でマンション2棟を購入(市場価格と評価額が約3.8倍乖離)
申告 通達評価額で申告し、借入と相殺して相続税を大幅圧縮
結果 国税が鑑定評価で更正、最高裁で国側勝訴・追徴課税が確定
この判決は、購入目的が「相続対策」と認められる書類の存在などを総合考慮したものです。新ルール導入後も、予見可能性の確保と課税の公平の観点から、極端な節税には注意が必要です。
この記事のポイント
  • 令和6年1月以後の相続・贈与から分譲マンションの評価に区分所有補正率を適用
  • 計算は①評価乖離率②評価水準③区分所有補正率の3ステップ
  • 築浅・高層・高層階・戸数の多いタワマンほど評価額が上がる
  • 評価水準0.6未満は「評価乖離率×0.6」で増額補正、多くのタワマンが該当
  • 対象は居住用の区分所有財産。一棟賃貸・総階数2以下・事業用は対象外
  • 評価額は市場価格の6割相当が下限。行き過ぎた節税には総則6項のリスク

※本記事は作成時点の法令・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。区分所有補正率の計算は複雑で、個別の物件により取扱いが異なります。具体的な評価は国税庁の最新情報の確認および税理士へのご相談をおすすめします。

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