法人が納める税金は、すべてが経費になるわけではありません。法人税や住民税は所得の中から支払う税であり、これを損金にすると税負担が税額の計算に影響し循環してしまうため損金になりません。他方、固定資産税や事業税のように事業活動に伴って生じるコストとしての性格を持つ税は損金になります。延滞税や罰科金が損金にならないのは、制裁の効果を税負担の軽減で薄めさせないためです。租税公課の損金性は、この3つの理由づけで整理できます。
そのうえで実務がつまずくのは、損金になる税を「いつの事業年度の損金にするか」です。法人税法基本通達9-5-1は、税の課税方式ごとに損金算入時期を定めています。本記事では、損金性の区分と時期判定を条文・通達に即して整理します。
損金になる税・ならない税の区分
法人税法は、損金にならない租税公課を38条以下に列挙する形をとっています。したがって、列挙されていない税は原則として損金になります。まず損金不算入となるものを押さえるのが確実です。
| 区分 | 主な税目 | 趣旨 |
|---|---|---|
| 損金不算入 | 法人税、地方法人税、法人住民税(道府県民税・市町村民税) | 所得の処分としての性格を持つため |
| 損金不算入 | 延滞税、延滞金(納期限延長分を除く)、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税 | 制裁的効果を維持するため |
| 損金不算入 | 罰金、科料、過料、交通反則金、独占禁止法等の課徴金 | 違法行為の抑止効果を維持するため |
| 損金算入 | 法人事業税、特別法人事業税、固定資産税、都市計画税、償却資産税、事業所税 | 事業活動に伴うコストとしての性格を持つため |
| 損金算入 | 不動産取得税、自動車税、印紙税、登録免許税、軽油引取税、利子税 | 同上 |
なお、印紙税でも過怠税は損金不算入です。文書に印紙を貼付しなかった場合に課される過怠税は制裁的性格を持つため、通常の印紙税と扱いが異なります。加算税の種類ごとの割合は加算税の種類と割合で解説しています。
損金算入時期の原則(法基通9-5-1)
損金になる税をいつの事業年度の損金とするかは、その税の課税方式によって決まります。法人税法基本通達9-5-1は、申告納税方式・賦課課税方式・特別徴収方式の3類型に分けて損金算入時期を定めています。判定の出発点は、その税が誰の行為によって税額が確定するかです。
| 課税方式 | 原則 | 認められる例外 |
|---|---|---|
| 申告納税方式 | 納税申告書を提出した日の属する事業年度 | 更正・決定があったものはその日の属する事業年度 |
| 賦課課税方式 | 賦課決定のあった日の属する事業年度 | 納期の開始の日または実際に納付した日の属する事業年度に損金経理した場合はその事業年度 |
| 特別徴収方式 | 申告の日の属する事業年度 | 申告期限未到来分を収入金額に含めて未払金に損金経理した場合はその事業年度 |
| 利子税・延長分延滞金 | 納付の日の属する事業年度 | 当該期間に係る未納額を未払金に損金経理した場合はその事業年度 |
申告納税方式が「提出した日」を基準とする理由は明確です。納税者が申告書を出して初めて税額が確定するため、確定前の期に債務として計上する根拠がないからです。逆に賦課課税方式は課税庁の賦課決定によって税額が確定するので、その決定の日が基準になります。ただし賦課課税方式については、納期開始日や納付日での損金経理も選択できる幅が認められており、この選択が期をまたぐ節税判断に直結します。
税目別の損金算入時期
| 税目 | 課税方式 | 損金算入時期 |
|---|---|---|
| 法人事業税・特別法人事業税 | 申告納税 | 確定分は申告書を提出した翌期。直前年度分は申告前でも当期の損金算入が可能 |
| 消費税(税込経理の場合) | 申告納税 | 申告書を提出した日の属する事業年度。未払計上した場合はその期 |
| 事業所税 | 申告納税 | 申告書を提出した日の属する事業年度。原価算入分は未払計上した期 |
| 固定資産税・都市計画税 | 賦課課税 | 賦課決定日。納期開始日または納付日に損金経理も可 |
| 償却資産税 | 賦課課税 | 固定資産税と同様 |
| 不動産取得税・自動車税 | 賦課課税 | 賦課決定日。納期開始日または納付日に損金経理も可 |
| 印紙税 | 自主納付 | 印紙を貼付した日の属する事業年度 |
| 登録免許税 | 自主納付 | 納付した日の属する事業年度。資産の取得価額に算入しないことも可 |
| 軽油引取税 | 特別徴収 | 申告の日の属する事業年度 |
事業税の期ずれと直前年度分の特例
実務で最も影響が大きいのが事業税です。事業税は申告納税方式なので、当期の所得に対する確定分の事業税は、翌期に申告書を提出した時点で翌期の損金になります。当期に未払計上しても、税務上は当期の損金になりません。これが事業税の期ずれです。
ただし例外があります。法基通9-5-2は、直前事業年度分の事業税および特別法人事業税について、当該事業年度終了の日までに申告・更正・決定がされていない場合であっても、当該事業年度の損金の額に算入できるとしています。事業税は所得を課税標準とするため法人税の更正・決定に連動して修正されるという事情を踏まえた特例です。実務上は、複数期の修正申告を同時に行う場合などにこの取扱いが機能します。
中間納付した事業税についても押さえておく必要があります。中間申告により納付した事業税は、その中間申告書を提出した事業年度の損金になります。確定申告により中間納付額の一部が還付される場合、その還付額は還付を受ける事業年度の益金として処理することが認められます。事業税と法人税・住民税の会計処理の関係は納税充当金とはで、別表への記載方法は別表四・別表五(一)の見方と書き方で解説しています。特別法人事業税の計算構造は特別法人事業税とはをご覧ください。
固定資産税の3つの選択肢
固定資産税は賦課課税方式のため、賦課決定日・納期開始日・納付日という3つのタイミングから選択できます。この選択によって損金算入額が期をまたいで変わるため、決算対策として意識される論点です。
| 基準 | 損金になる時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 賦課決定日 | 納税通知書を受けた日の属する事業年度に年税額全額 | 最も早く全額を損金にできる |
| 納期開始日 | 各納期の開始日が到来した分ずつ | 未払でも納期到来分は損金化できる |
| 納付日 | 実際に納付した日の属する事業年度 | 現金主義に近く管理は容易 |
たとえば3月決算法人が4月に納税通知書を受け、4期に分けて納付する場合、賦課決定日基準なら翌期に年税額全額が損金になります。納期開始日基準を採れば、納期が到来した分だけを順次損金にすることになります。いずれの基準を採るかは法人の選択ですが、継続適用が前提であり、期ごとに有利な基準へ変更することは認められません。固定資産税の計算構造は固定資産税の計算で解説しています。
混同しやすい隣接論点との使い分け
租税公課の損金算入時期は、納税充当金、未払費用の損金算入、資産の取得価額算入と混同されがちです。結論を先に言い切ると、納税充当金は法人税等の会計処理と別表調整の話であって損金算入時期の判定そのものではなく、未払費用の一般原則である債務確定基準は租税公課には適用されず通達の特則が優先し、不動産取得税や登録免許税は取得価額に算入しないことができるため損金算入時期の議論に乗ります。
| 論点 | 本記事の論点との関係 |
|---|---|
| 納税充当金 | 法人税・住民税・事業税の未払計上額の別表処理。損金性の判定は本記事、別表の記載は納税充当金の論点 |
| 債務確定基準 | 販売費一般管理費の一般原則だが、租税公課は法基通9-5-1の特則によって時期が決まる |
| 取得価額への算入 | 不動産取得税・登録免許税等は取得価額に算入しないことができ、その場合に損金算入時期の判定に乗る |
実務の落とし穴
1: 未払事業税を当期の損金にしてしまう
2: 利子税と延滞税を同じ扱いにする
3: 固定資産税の基準を期ごとに変える
4: 印紙税の過怠税を損金にする
5: 源泉所得税を法人の損金として処理する
判断フロー
| 手順 | 判定内容 |
|---|---|
| 1 | その税目が法人税法38条以下に列挙された損金不算入のものに該当するかを確認する |
| 2 | 損金算入となる場合、資産の取得価額に算入すべきものかどうかを確認する |
| 3 | 課税方式が申告納税方式か賦課課税方式か特別徴収方式かを判定する |
| 4 | 申告納税方式なら申告書提出日、賦課課税方式なら賦課決定日を原則として時期を決める |
| 5 | 賦課課税方式は納期開始日または納付日での損金経理を選択できるため、継続適用を前提に基準を決める |
| 6 | 会計上の計上時期と税務上の損金算入時期がずれる場合は別表四で加算または減算する |
想定Q&A
Q1 なぜ法人税と住民税は損金にならないのですか
所得の処分としての性格を持つためです。所得に課される税を損金にすると、税額が所得を減らし、減った所得に対する税額がまた変わるという循環が生じます。これを避けるため法人税法38条で損金不算入とされています。一方、事業税は所得を課税標準としますが、事業活動に対する応益的な性格を持つ地方税であるため損金算入とされています。
Q2 事業税を当期に未払計上した場合はどう処理しますか
会計上は費用として計上しますが、税務上は当期の損金にならないため別表四で加算します。翌期に申告書を提出した時点で損金になるので、翌期の別表四で減算して認容します。この加減算は納税充当金の処理と一体で管理するのが実務的です。
Q3 決算前に固定資産税を前納すると損金が増えますか
納付日基準を継続適用している法人であれば、期末までに納付した分は当期の損金になります。ただし、これは基準の選択の結果であって、期ごとに有利な方へ切り替えることはできません。既に賦課決定日基準を採用しているなら、そもそも年税額全額が賦課決定日の属する期の損金になっているため前納しても効果はありません。
Q4 消費税はいつの損金になりますか
税込経理を採用している場合、納付すべき消費税は申告納税方式の税として申告書を提出した日の属する事業年度の損金になります。ただし、当期の課税期間に係る納付税額を当期に未払金として損金経理した場合は当期の損金として認められます。税抜経理の場合は仮受消費税と仮払消費税の差額を未払消費税として処理するため、そもそも損益に影響しません。
Q5 不動産取得税は取得価額に含めますか
含めないことができます。不動産取得税、登録免許税その他登記登録のために要する費用、自動車取得に係る税などは、法人が固定資産の取得価額に算入しないことができるとされています。損金として処理する場合は賦課課税方式の税として賦課決定日等の基準で損金算入時期を判定します。取得価額に算入すれば減価償却を通じて費用化されるため、早期に損金化したい場合は算入しない選択が有利です。
Q6 修正申告で追加納付した事業税はいつの損金ですか
修正申告書を提出した日の属する事業年度の損金になります。更正または決定によるものは、その更正または決定があった日の属する事業年度です。同時に課される延滞税・過少申告加算税は損金不算入なので、追加納付額を一括して租税公課で処理せず、損金算入部分と不算入部分を区分して計上する必要があります。
Q7 直前年度分の事業税の特例とは具体的にどういう場面ですか
法人税について複数期の同時更正を行うような場面です。原則どおりなら事業税は申告等があるまで損金になりませんが、法基通9-5-2により直前年度分については申告等がなくても当該事業年度の損金にできます。この場合の事業税額は直前年度の所得または収入金額に標準税率を乗じて計算し、その後の申告等で過不足が生じたときは、その申告等または納付のあった日の属する事業年度の益金または損金とします。
Q8 事業所税はいつの損金になりますか
申告納税方式の税なので、原則は申告書を提出した日の属する事業年度です。ただし、製造原価や工事原価に含めた申告期限未到来の事業に係る事業所税を損金経理により未払金に計上したときは、その損金経理をした事業年度の損金になります。製造業や建設業で原価算入している場合は、この取扱いにより期間対応が図れます。
Q9 印紙税はいつの損金ですか
課税文書に印紙を貼付した日の属する事業年度の損金になります。まとめ買いした未使用の収入印紙は貯蔵品として資産計上し、実際に使用した時点で損金になるのが原則です。ただし、毎期おおむね一定量を購入し継続して費用処理している場合には、購入時の損金処理も実務上認められています。
Q10 交通反則金を会社が負担した場合はどうなりますか
業務中の違反について会社が負担した交通反則金は損金不算入です。業務外の私的な違反について会社が負担した場合は、その役員または従業員に対する給与として取り扱われ、役員に対するものであれば損金不算入の役員給与となる可能性があります。同じ支出でも業務性の有無で処理が分かれる点に注意してください。
あわせて読みたい(法人税 申告実務シリーズ)
本記事は令和8年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。出典:法人税法22条3項・38条・39条・40条・41条・55条、法人税法施行令54条、法人税基本通達9-5-1・9-5-2・7-3-3の2、国税庁タックスアンサーNo.5300(損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期)。個別の適用に当たっては顧問税理士等にご確認ください。

