新リース会計基準とは?2027年適用でどう変わる|会計処理・税務との差異・中小企業の対応を解説

会計

リース会計は、「資産を持たずに使う権利だけを対価を払って一定期間手に入れる」という取引の実態を、財務諸表にどう映すかというルールです。2027年4月から強制適用される新リース会計基準は、これまで費用処理(オフバランス)が認められてきたオペレーティング・リースも含め、原則すべてのリースを借手が「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表に計上(オンバランス)することを求めます。企業の実質的な支払義務を数字に反映させ、国際基準(IFRS第16号)との比較可能性を高める改正です。

もっとも、実務でつまずくのは会計処理そのものよりも「会計は変わったのに、税務(法人税)は従来どおり」というズレです。法人税法53条の新設により税務上の取扱いはほぼ変わらないことが明文化されたため、会計でオンバランス化しても税務は賃貸借処理のまま残り、両者の差を別表で調整する必要が生じます。本記事では、制度の全体像・借手の会計処理・例外規定に加えて、この税務との差異と中小企業の対応を軸に整理します。

この記事のポイント
  • 新リース会計基準=企業会計基準第34号。2027年4月1日以後開始する事業年度から強制適用(2025年4月以後開始事業年度から早期適用可)
  • 借手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分を廃止し、原則すべてのリースを使用権資産・リース負債でオンバランス
  • 短期リース(12か月以内)・少額リース(1件300万円以下等)はオフバランスを選択できる
  • 法人税法53条の新設で税務は従来どおり賃貸借処理。会計(減価償却費+支払利息)と税務(支払賃借料)がズレ、別表4・5で申告調整が必要
  • 中小企業は強制適用の対象外。中小会計要領・指針により従来の処理を継続でき、原則として申告調整も不要
  • 税効果会計・外形標準課税への影響も要確認。契約の網羅的な洗い出しが対応の第一歩

新リース会計基準とは(概要と適用時期)

新リース会計基準は、企業会計基準委員会(ASBJ)が2024年9月13日に公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」および企業会計基準適用指針第33号を指します。従来のオペレーティング・リースについて賃貸借取引に準じた処理(オフバランス)を廃止し、借手のすべてのリースを原則オンバランスとする点が最大の改正です。

適用時期は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から強制適用です。準備が整った企業は、2025年4月1日以後に開始する事業年度から早期適用できます。たとえば3月決算の企業であれば、2028年3月期から新基準での財務諸表となります。

改正の背景
国際会計基準(IFRS第16号)では、借手はすべてのリースを使用権モデルでオンバランスします。日本基準との差が国際的な比較で問題になりやすかったため、その差を縮小する目的で新基準が整備されました。「持たざる経営」の実態を財務諸表に映す狙いです。

従来基準から何が変わるのか

借手側は、これまでの「ファイナンス・リース(売買に準じて資産計上)」と「オペレーティング・リース(賃貸借に準じて費用計上)」の区分が廃止され、契約の実態に着目した単一の使用権モデルに一本化されます。オフバランスだったオペレーティング・リースも、原則として使用権資産・リース負債で計上されることになります。

区分 従来基準(第13号) 新基準(第34号)
借手の区分 ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分 区分を廃止し、単一の使用権モデル
オペレーティング・リース 賃貸借処理(オフバランス、リース料を費用計上) 原則オンバランス(使用権資産・リース負債を計上)
損益計算書 支払リース料を一括で費用計上 減価償却費と支払利息に分けて計上
貸借対照表 計上されない契約が多い 資産・負債が増加(自己資本比率・ROAが低下)
貸手 区分に応じて処理 基本的に従来を踏襲(リースの定義・識別、収益認識基準との整合を除く)

借手の会計処理(使用権資産とリース負債)

開始時:現在価値で測定してオンバランス

リース開始日に、リース負債を「未払のリース料を一定の割引率で現在価値に割り引いた金額」で計上します。使用権資産は、そのリース負債の金額に、開始日までに支払ったリース料や付随費用などを加えて測定します。割引率は、リースの計算利子率が把握できればそれを、把握できなければ借手の追加借入利子率を用います。

期中・決算:減価償却と利息法

使用権資産は、原則としてリース期間(または耐用年数)にわたって減価償却します。リース料の支払いは、利息部分とリース負債の元本返済部分に区分し、利息部分は利息法でリース期間にわたって配分します。この結果、損益計算書には「減価償却費」と「支払利息」が計上され、従来のように支払リース料を一括費用計上する形とは損益の見え方が変わります。

設例(概算・イメージ)
月額リース料10万円・リース期間5年(総額600万円)、割引率年2%、決算3月・期首開始のオフィス機器(賃貸借に該当)を借りたとします。開始日に、リース料総額を現在価値に割り引いたリース負債(約571万円)と同額の使用権資産を計上します。以後、使用権資産は5年で毎期約114万円ずつ減価償却し、支払リース料120万円(年)は、支払利息(初年度は約11万円)とリース負債の元本返済に区分して処理します。金額は概算で、実際は割引率・支払スケジュールにより変動します。
初期ほど費用が大きくなる
利息法では、負債残高の大きいリース期間の前半に支払利息が多く出ます。そのため、減価償却費と支払利息の合計は前半に大きくなりやすく、従来の定額のリース料処理と比べて期間ごとの費用配分が変わる点に注意します。

仕訳イメージ(上記の設例に基づく)

リース開始日(オンバランス)

借方 金額 貸方 金額
使用権資産 571万円 リース負債 571万円

初年度のリース料支払い(年120万円、うち利息11万円)

借方 金額 貸方 金額
リース負債 109万円 現金預金 120万円
支払利息 11万円

初年度の決算(使用権資産の減価償却)

借方 金額 貸方 金額
減価償却費 114万円 減価償却累計額 114万円

従来のオペレーティング・リースなら「(借)支払リース料120万円/(貸)現金預金120万円」の1本で済んでいたところが、新基準では負債の返済・支払利息・減価償却の3要素に分かれます。初年度の費用は減価償却費114万円と支払利息11万円で合計125万円となり、従来の120万円より大きくなる点に注目してください。

初年度の税務調整(税務は支払賃借料120万円が損金)

別表四 処理
加算 会計上の減価償却費114万円と支払利息11万円(合計125万円)
減算 税務上の支払賃借料120万円

リースの識別と適用範囲(例外)

「リース」の判断は契約名ではなく実態

新基準では、契約書に「リース」と書かれているかではなく、特定された資産の使用を支配する権利を、一定期間にわたり対価と交換に移転する契約かという実態で判断します。そのため、これまで単純なサービス契約・業務委託契約として処理してきたものの中に、実質的にリースに該当するものが含まれる可能性があります。契約を網羅的に洗い出して再検討する作業が、実務上いちばん重い工程になります。

オフバランスを選べる例外

実務負担に配慮し、次のリースは従来どおりの費用処理(オフバランス)を選択できます。少額の判定は重要性の観点によるもので、下記の金額はその目安です。

例外 主な要件(目安)
短期リース リース開始日にリース期間が12か月以内(購入オプション付を除く)
少額リース 重要性が乏しいリース。1契約のリース料総額300万円以下、または原資産の新品価額がおおむね5,000米ドル相当額以下(パソコン・コピー機・オフィス家具など)

最重要論点:税務との差異と申告調整

新基準対応で会計担当者を悩ませるのが、会計は変わったのに税務(法人税)は変わらないという点です。令和7年度税制改正で法人税法53条が新設され、税務上のリース取引および賃貸借取引の取扱いは従来と大きく変わらないことが明文化されました。オペレーティング・リースは、税務上は引き続き賃貸借取引として、債務の確定した支払賃借料を損金算入します。会計と税務でリースの税務の考え方が異なる点は、所有権移転外リースの税務もあわせて押さえると理解が早くなります。

会計と税務のズレと別表調整

オペレーティング・リースについて会計でオンバランスすると、会計上は「減価償却費+支払利息」を費用計上する一方、税務上の損金は「支払賃借料」となります。両者は金額も期間配分も一致しないため、別表4で会計上の減価償却費・支払利息を加算し、税務上の支払賃借料を減算する調整が必要です。使用権資産・リース負債は税務上は資産・負債として認識しないため、別表5で残高を調整します。

項目 会計上 税務上(オペレーティング・リース)
資産・負債 使用権資産・リース負債を計上 資産・負債は認識しない
費用・損金 減価償却費+支払利息 支払賃借料(債務の確定した部分)
申告調整 別表4で減価償却費・支払利息を加算し、支払賃借料を減算。別表5で使用権資産・リース負債の残高を調整

別表4・別表5の基本的な見方は、別表四・別表五の見方と書き方で解説しています。

あわせて押さえる税務の改正点

新基準の公表を受けた税制改正では、次のような整理も行われました。第一に、フリーレント(一定期間賃料が発生しない賃貸借)について、法人税基本通達12の5-3-2の改正により、令和7年4月1日以後開始事業年度から、課税上弊害がある場合を除き、賃料総額を賃借期間で按分した金額を各期の損金に算入できるようになりました。第二に、2027年4月1日以後に締結する所有権移転外リース取引のリース資産の減価償却(リース期間定額法)について、残価保証額を取得価額から控除せず、リース期間経過時に1円(備忘価額)まで償却できるよう見直されました。第三に、貸手側では、割賦基準(リース譲渡の延払基準の特例)が廃止されました。

中小企業はどう対応するか

結論から言うと、中小企業は新リース会計基準の強制適用の対象外です。中小企業は「中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)」または「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」に基づいて会計処理を行っており、これらが改訂されない限り、従来どおりの賃貸借処理を継続できます。所有権移転外ファイナンス・リースを賃貸借処理し、支払リース料がリース期間定額法の償却限度額と同額である限り、申告調整も不要です。

中小でも無関係ではない場面
親会社が上場・大会社で連結対象となる子会社は、連結上は新基準の情報が必要になります。また、フリーレントの損金算入時期に関する新しい取扱いは、新基準の強制適用対象でない中小企業でも、同基準に準じた会計処理を行っている場合には適用され得ます。取引先や金融機関から財務情報の説明を求められる場面も含め、内容の把握は中小でも有用です。

税効果会計・外形標準課税への影響

会計上の費用(減価償却費+支払利息)と税務上の損金(支払賃借料)の各期の金額がずれると、一時差異が生じ、税効果会計上の繰延税金資産・負債の検討が必要になります。また、外形標準課税の対象法人では、使用権資産・リース負債の計上や費用区分の変化が付加価値割・資本割の計算に影響し得るため、外形標準課税の対象法人に該当する場合は影響額の確認が欠かせません。

実務上の落とし穴

サービス契約に埋もれたリースの見落とし
契約名がリースでなくても、特定の資産の使用を支配していればリースに該当します。業務委託・保守・レンタルなどの契約を洗い出さないと、計上漏れが生じます。
リース期間・割引率の見積り誤り
延長オプションや解約オプションの行使可能性を踏まえてリース期間を見積もる必要があり、割引率の設定と合わせてリース負債の金額を左右します。前提が変われば再計算が必要です。
税務調整の失念
会計だけをオンバランス化して別表調整を失念すると、所得金額が過大または過少になります。会計上どの契約をオンバランスし、税務上いくらを支払賃借料として損金にするかを、契約ごとに継続管理する仕組みが要ります。
例外適用を方針として決めていない
短期リース・少額リースのオフバランスは選択適用です。どの範囲に適用するかの会計方針をあらかじめ決めておかないと、処理がばらつき、実務負担も増えます。

想定Q&A集

Q1. いつから適用ですか。早期適用はできますか

強制適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度からです。準備が整った企業は2025年4月1日以後に開始する事業年度から早期適用できます。強制適用までは従来基準を継続できますが、早期適用を選んだ企業は新基準での処理が必要です。

Q2. 中小企業も対象ですか

中小企業は強制適用の対象外です。中小会計指針・中小会計要領に基づき、従来どおりの処理を継続できます。ただし、上場会社の連結子会社である場合や、同基準に準じた処理を選ぶ場合は、新基準や関連する税務の取扱いを把握しておく必要があります。

Q3. オペレーティング・リースも資産計上が必要ですか

必要です。借手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分が廃止され、原則すべてのリースを使用権資産・リース負債として計上します。ただし、短期リース・少額リースはオフバランス(賃貸借処理)を選択できます。

Q4. 会計が変わると法人税の計算も変わりますか

税務上の取扱いは基本的に変わりません。法人税法53条の新設により、税務上のリース取引・賃貸借取引の取扱いは従来どおりであることが明文化されています。オペレーティング・リースは引き続き支払賃借料を損金算入するため、会計でオンバランスした分は別表で調整します。

Q5. 申告調整では具体的に何をしますか

オペレーティング・リースについて、別表4で会計上の減価償却費と支払利息を加算し、税務上の支払賃借料(債務の確定した部分)を減算します。使用権資産・リース負債は税務上は認識しないため、別表5でその残高を調整します。契約単位で金額を管理しておくことが前提になります。

Q6. 短期リース・少額リースの基準を教えてください

短期リースはリース開始日にリース期間が12か月以内(購入オプション付を除く)のものです。少額リースは重要性が乏しいもので、1契約のリース料総額が300万円以下、または原資産の新品価額がおおむね5,000米ドル相当額以下のものが目安です。いずれもオフバランスを選択できます。

Q7. サービス契約や業務委託もリースになりますか

なり得ます。特定された資産の使用を一定期間支配する権利が対価と交換に移転していれば、契約名がサービスや業務委託でもリースに該当します。倉庫の一区画、専用サーバー、車両など、実質的に特定資産を支配している契約は再検討が必要です。

Q8. 適用開始時、過去のリースも計上し直すのですか

適用開始時には、既存のリースについても新基準に基づく処理が必要ですが、実務負担に配慮した経過措置(適用開始時点の残存リース料の現在価値で使用権資産・リース負債を計上する簡便的な方法など)が用意されています。どの方法を採るかは会計方針として決定し、影響額を試算しておくことが重要です。

Q9. 消費税の仕入税額控除は変わりますか

消費税の取扱いは会計基準の変更に連動しません。オペレーティング・リース(賃貸借)は従来どおり、リース料を支払う各課税期間の課税仕入れとして仕入税額控除の対象になります。所有権移転外ファイナンス・リースの引渡時一括控除などの従来の取扱いも変わりません。会計でオンバランスしても消費税の控除時期は変わらない、と整理してください。

Q10. 個人事業主は関係ありますか

新リース会計基準は企業会計基準であり、上場会社や会社法上の大会社などが主な対象です。個人事業主が強制適用の対象になることは想定されておらず、従来どおりの処理で差し支えありません。税務上の賃借料の損金算入の考え方も変わりません。

Q11. 貸手(リースを提供する側)の処理は変わりますか

貸手の会計処理は基本的に従来を踏襲します。ただし、リースの定義・識別の見直しに合わせた整理や、収益認識基準との整合を図る観点からの変更があります。税務上は、貸手側で割賦基準(リース譲渡の延払基準の特例)が廃止された点に注意が必要です。

Q12. 税効果会計や外形標準課税にも影響しますか

影響します。会計と税務の費用計上額のずれは一時差異となり、税効果会計の対象になります。外形標準課税の対象法人では、使用権資産・リース負債の計上や費用区分の変化が付加価値割・資本割に影響し得るため、適用前に影響額を確認しておくべきです。

導入判断・対応フロー

新基準への対応は、次の順で進めると整理しやすくなります。

手順 確認すること
1 自社が強制適用の対象か(上場・会社法上の大会社等か、中小か)を確認する
2 すべてのリース契約・リースを含む契約(サービス契約等を含む)を洗い出す
3 短期リース・少額リースの例外を適用するかの会計方針を決める
4 リース期間・割引率を見積もり、使用権資産・リース負債を測定する
5 減価償却・利息法の会計処理を実装し、契約管理・システム対応を整える
6 税務との差異を別表4・5で申告調整し、税効果会計・外形標準課税への影響を確認する

まとめ

新リース会計基準は、借手のすべてのリースを原則オンバランスとする大きな改正ですが、実務の勘所は「会計は変わっても税務は従来どおり」という点にあります。会計処理の理解に加えて、税務との差異を別表でどう調整するか、自社が強制適用対象かどうか、という2つの視点を持つことが、円滑な移行の鍵になります。

この記事のまとめ
  • 企業会計基準第34号。2027年4月1日以後開始事業年度から強制適用(2025年4月以後は早期適用可)
  • 借手は区分を廃止し、原則すべてのリースを使用権資産・リース負債でオンバランス。短期・少額リースは例外
  • 法人税法53条で税務は従来どおり賃貸借処理。会計と税務のズレを別表4・5で申告調整
  • 中小企業は強制適用の対象外。中小会計要領・指針で従来処理を継続でき、原則申告調整も不要
  • 税効果会計・外形標準課税への影響も確認。契約の網羅的な洗い出しが対応の第一歩

※本記事は作成時点の会計基準・法令・通達・公表資料(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」・企業会計基準適用指針第33号、法人税法53条、法人税基本通達12の5-3-2、令和7年度税制改正、中小企業の会計に関する指針・基本要領等)に基づく一般的な解説です。個別の判定は事実関係により異なるため、具体的な取扱いは最新の会計基準・条文・通達の確認、または税理士・公認会計士へのご相談をおすすめします。

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