手形・電子記録債権(でんさい)の仕訳を徹底解説|割引・裏書・不渡りと約束手形の廃止

会計

手形は、商品やサービスの代金を、その場ではなく将来の期日に支払うことを約束する証券です。売り手はすぐに現金を受け取れない代わりに、支払いの約束を書面で受け取り、買い手は手元資金がなくても取引を進められます。この信用取引を支えてきたのが約束手形で、それを電子化したものが電子記録債権(でんさい)です。

近年は、政府方針により紙の約束手形を2026年度末(2027年3月末)を目途に利用廃止する動きが進み、でんさいや振込への移行が急速に進んでいます。そのため、従来の手形の仕訳とあわせて、でんさいの会計処理も押さえておくことが実務で欠かせません。この記事では、受取手形・支払手形の基本仕訳から、裏書譲渡・割引・不渡りの処理、でんさいの仕訳、手形とでんさいの違い、そして約束手形の廃止の動きまでを、具体例を交えて整理します。

この記事のポイント
  • 手形を受け取ると受取手形(資産)、振り出すと支払手形(負債)。期日に当座預金で決済する
  • 受け取った手形は、支払いに使う裏書譲渡や、満期前に換金する割引ができる。割引料は手形売却損
  • 手形が決済されない不渡りが起きたら、不渡手形勘定へ振り替えて管理する
  • 電子記録債権(でんさい)は手形の電子版。電子記録債権(資産)・電子記録債務(負債)で処理し、印紙税は不要
  • 紙の約束手形は2026年度末(2027年3月末)を目途に利用廃止の方針。でんさいや振込への移行が進む

手形とは

約束手形は、振出人(支払う側)が、受取人(受け取る側)に対して、一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する証券です。受け取った側は資産として受取手形勘定で、振り出した側は負債として支払手形勘定で処理します。手形は当座預金口座を通じて決済され、期日になると振出人の当座預金から受取人へ支払われます。

受取手形・支払手形の仕訳

商品を売って手形を受け取った側と、商品を仕入れて手形を振り出した側の、発生から決済までの仕訳です。売り手が50万円の商品を売り約束手形を受け取り、買い手が30万円の商品を仕入れ手形を振り出したケースを示します。

場面 借方 貸方
売り手:手形受取 受取手形 500,000 売上 500,000
売り手:期日決済 当座預金 500,000 受取手形 500,000
買い手:手形振出 仕入 300,000 支払手形 300,000
買い手:期日決済 支払手形 300,000 当座預金 300,000

裏書譲渡・割引・不渡りの仕訳

受け取った手形は、期日を待たずに活用できます。仕入代金などの支払いに手形を渡す裏書譲渡、銀行で満期前に換金する割引、そして手形が決済されない不渡りの処理を示します。割引では、満期までの利息に相当する割引料が差し引かれ、これを手形売却損として処理します。

場面 借方 貸方
裏書譲渡(買掛金20万円の支払) 買掛金 200,000 受取手形 200,000
割引(手形100万円・割引料1万円) 当座預金 990,000/手形売却損 10,000 受取手形 1,000,000
不渡り(手形50万円が不渡り) 不渡手形 500,000 受取手形 500,000

不渡手形は、振出人などへ支払いを求める債権です。その後も回収できず貸倒れとなった場合は、貸倒れの処理を行います。回収不能となったときの処理は貸倒損失の3区分で解説しています。

電子記録債権(でんさい)の仕訳

電子記録債権(でんさい)は、でんさいネット等の記録機関に電子的に記録される金銭債権で、手形の電子版といえます。債権者は電子記録債権(資産)、債務者は電子記録債務(負債)で処理します。売掛金・買掛金をでんさいに置き換えて発生させ、期日に口座間で自動決済されます。売掛金40万円をでんさいに、買掛金40万円をでんさいに切り替えたケースです。

場面 借方 貸方
債権者:発生記録 電子記録債権 400,000 売掛金 400,000
債権者:期日決済 当座預金 400,000 電子記録債権 400,000
債務者:発生記録 買掛金 400,000 電子記録債務 400,000
債務者:期日決済 電子記録債務 400,000 当座預金 400,000

でんさいも、手形と同様に譲渡や割引ができます。割引の場合は、手形の割引と同じく差し引かれる割引料を電子記録債権売却損などで処理し、手取額を当座預金で受け入れます。譲渡は必要な金額だけを分割してできる点が、紙の手形にはない特徴です。

手形とでんさいの違い

でんさいは、紙の手形が抱えていた紛失・盗難のリスクや、作成・郵送・保管の手間、印紙税の負担といった課題を解消します。実務で切り替えを検討する際の主な違いを整理します。

項目 紙の手形 電子記録債権(でんさい)
形態 紙の証券。作成・郵送・保管が必要 電子データ。記録機関に記録
印紙税 課税(金額に応じ収入印紙が必要) 不要
紛失・盗難 リスクあり 現物がなくリスクが低い
分割 額面単位で分割できない 必要な金額だけ分割譲渡・割引できる
決済 取立・呈示の手続が必要 期日に口座間で自動決済

約束手形の廃止に向けた動き

2021年6月の政府方針(成長戦略実行計画)で「約束手形の利用廃止」「小切手の全面的な電子化」が示され、全国銀行協会は2026年度末(2027年3月末)までに電子交換所での手形・小切手の交換枚数をゼロにし、2027年度初から交換を廃止する自主行動計画を掲げています。法律で禁止されるわけではありませんが、金融機関が取扱いを順次終了するため、紙の手形は事実上使いにくくなっていきます。

メガバンクは前倒しで、手形帳・小切手帳の新規発行受付終了や、2027年4月以降を期日とする手形の取立受付終了などを進めています。また2024年11月以降、手形やでんさいのサイト(交付から支払期日までの期間)が60日を超える下請取引は、下請法上の行政指導の対象となっています。代替手段としては、でんさい、インターネットバンキングによる振込、ファクタリングなどがあります。

見落としやすい落とし穴

受取手形を売掛金のまま放置する

代金として手形を受け取ったら、売掛金から受取手形へ振り替えます。手形は期日管理や取立てが必要な独立した債権のため、売掛金のままにすると管理が漏れます。手形を受け取った時点で受取手形に計上し、期日を管理します。

割引料を支払利息や雑費で処理する

手形割引で差し引かれる割引料は、手形売却損として処理するのが一般的です。支払利息や雑費で処理すると、手形取引に伴う損失であることが分かりにくくなります。でんさいの割引も同様に、電子記録債権売却損などで処理します。

不渡りを放置して貸倒れの検討をしない

手形が不渡りになったら、不渡手形に振り替えて回収を図り、回収不能なら貸倒れの処理を検討します。放置すると、回収可能性のない債権が資産に残り続け、決算書の信頼性が下がります。状況に応じて貸倒引当金の計上や貸倒損失の計上を検討します。

手形の廃止に備えず従来運用を続ける

紙の手形は2026年度末を目途に取扱いが終了していきます。期限直前まで対応を先送りすると、取引先との決済方法の調整や社内フローの見直しが間に合わないおそれがあります。でんさいや振込への移行は早めに検討します。

手形・でんさいの処理フロー

手順 確認内容
1 受け取ったら受取手形(でんさいは電子記録債権)、振り出したら支払手形(でんさいは電子記録債務)に計上
2 期日を管理する。支払いに充てるなら裏書譲渡、早期換金するなら割引(割引料は売却損)
3 期日に当座預金で決済する。決済されない場合は不渡手形へ振り替える
4 不渡手形が回収不能なら、貸倒引当金や貸倒損失を検討する
5 紙の手形は廃止の動きを踏まえ、でんさいや振込への移行を早めに準備する

想定Q&A(手形・でんさい)

Q1. 受取手形と売掛金はどう違いますか

証券化されているかどうかが違います。売掛金は通常の売上代金の未回収額ですが、受取手形は支払期日と金額が手形という証券に記載され、割引や裏書譲渡ができる点で異なるからです。反対に、どちらも将来受け取る金銭債権である点は共通します。手形を受け取ったら売掛金から受取手形に振り替えて管理します。

Q2. 手形の割引とは何ですか

満期前に銀行などで手形を換金することです。資金が早く必要なとき、満期を待たずに手形を譲渡して現金化できるからです。反対に、満期までの利息に相当する割引料が差し引かれるため、手取額は額面より少なくなります。この割引料は手形売却損として処理します。資金繰りの手段として使われます。

Q3. 裏書譲渡した手形の仕訳はどうなりますか

受取手形を減らし、支払いに充てた債務を消します。買掛金などの支払いに手形を裏書譲渡した場合、その債務が消え、手形という資産が出ていくからです。反対に、譲渡した手形が万一不渡りになると、遡って支払義務(遡求義務)を負う可能性があります。譲渡後も一定の責任が残る点に留意します。

Q4. 手形が不渡りになったらどう処理しますか

受取手形を不渡手形勘定へ振り替えます。不渡りとなった手形は通常の受取手形と区別し、回収を図る債権として管理する必要があるからです。反対に、その後回収できれば当座預金等で受け入れ、回収不能なら貸倒れとして処理します。償還請求のためにかかった費用も不渡手形に含めることがあります。

Q5. でんさいと手形の会計処理は違いますか

勘定科目が異なりますが、考え方は共通です。でんさいは電子記録債権・電子記録債務という科目を使い、受取手形・支払手形に対応する形で処理するからです。反対に、発生・決済・割引・譲渡といった流れは手形と同じで、印紙税が不要で分割できるなどの違いがあります。手形の処理を理解していれば、でんさいも同様に扱えます。

Q6. でんさいに印紙税はかかりますか

かかりません。印紙税は課税文書という紙の作成に課される税で、電子的に記録されるでんさいには課税文書がないからです。反対に、紙の約束手形は記載金額に応じて収入印紙が必要です。でんさいへの切り替えは、印紙税や作成・保管の手間の削減につながります。

Q7. 約束手形はいつ廃止されますか

2026年度末(2027年3月末)を目途に利用廃止が進められています。政府方針を受け、全国銀行協会が電子交換所での手形・小切手の交換を2027年度初から廃止する計画を掲げているからです。反対に、法律で紙の手形が直ちに禁止されるわけではありませんが、金融機関の取扱終了により事実上使いにくくなります。早めの移行準備が推奨されます。

Q8. 手形の代わりに何を使えばよいですか

でんさいやインターネットバンキングの振込が代表的です。手形と同じく支払期日を設定でき、電子的に完結する決済手段だからです。反対に、資金繰りの調整にはファクタリングなども選択肢になります。取引先の対応状況や自社の資金繰りに応じて、最適な手段を選び、社内の業務フローを見直すことが必要です。

Q9. 手形のサイトに規制はありますか

下請取引では60日以内が求められています。2024年11月以降、手形やでんさい、一括決済方式のサイト(交付から支払期日までの期間)が60日を超える下請取引は、下請法上の行政指導の対象になり得るからです。反対に、これを超える長いサイトは是正が求められます。建設業では建設業法上も同様の取扱いがあり、支払サイトの管理が重要です。

Q10. でんさいは分割して使えますか

分割して譲渡・割引できます。でんさいは電子的に金額を分けて記録できるため、必要な金額だけを取引先への支払いや割引に充てられるからです。反対に、紙の手形は額面単位でしか扱えず、一部だけを譲渡することはできません。分割できる柔軟さは、でんさいの実務上の大きな利点です。

Q11. 手形を受け取ったらすぐ何をすべきですか

記載内容を確認し、受取手形に計上して厳重に保管します。金額・支払期日・署名押印などに不備がないかを確認し、証券を紛失しないよう管理する必要があるからです。反対に、期日管理を怠ると、取立ての時期を逃すおそれがあります。支払期日には銀行へ取立依頼を行い、確実に回収できるようにします。

まとめ

手形は、受け取れば受取手形、振り出せば支払手形で処理し、期日に当座預金で決済します。受け取った手形は裏書譲渡や割引で活用でき、割引料は手形売却損とします。決済されない不渡りは不渡手形へ振り替えて管理します。電子記録債権(でんさい)は手形の電子版で、電子記録債権・電子記録債務で処理し、印紙税が不要で分割もできます。紙の約束手形は2026年度末を目途に利用廃止が進むため、でんさいや振込への移行を早めに準備しておきましょう。

この記事のまとめ
  • 受け取れば受取手形(資産)、振り出せば支払手形(負債)。期日に当座預金で決済する
  • 裏書譲渡は買掛金等の支払に充当、割引は満期前換金で割引料を手形売却損とする
  • 不渡りは不渡手形へ振替。回収不能なら貸倒引当金・貸倒損失を検討する
  • でんさいは電子記録債権・電子記録債務で処理。印紙税不要・分割可能
  • 紙の約束手形は2026年度末(2027年3月末)を目途に利用廃止。でんさい・振込への移行を準備する

※本記事は作成時点の会計実務・関係法令および公表資料(全国銀行協会「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画」、金融庁・全国銀行協会の公表資料、電子記録債権法、下請代金支払遅延等防止法の運用基準等)に基づく一般的な解説です。仕訳例は簡略な設例であり、勘定科目名や処理は会計方針・会計ソフトにより異なる場合があります。廃止の時期・取扱いは今後変わる可能性があるため、最新の公表情報の確認、または顧問税理士・取引金融機関へのご相談をおすすめします。

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