機械や車、建物などの固定資産を買ったとき、その金額をいくらで資産計上するかを決めるのが取得価額です。取得価額は、買った年に一度に費用にならず、減価償却を通じて使用期間にわたって費用配分されていく出発点になります。ここで付随費用を取得価額に含めるか、その年の費用にするかで、資産の金額も、毎年の減価償却費も、そして少額資産として即時費用化できるかどうかまで変わってきます。
取得価額は「購入代価+付随費用」が基本ですが、付随費用の中には、取得価額に含めなければならないもの、含めないことができるもの、扱いが分かれるものが混在します。とくに不動産取得税や登録免許税、借入金の利子は、含めても費用にしても選べる代表例です。この記事では、取得価額の原則を押さえたうえで、含める費用・含めないことができる費用・判断に迷う費用を整理し、少額判定との関係、会計と税務の違い、仕訳例までを、法人税法施行令54条と基本通達7-3、企業会計原則に沿って解説します。
- 取得価額=購入代価+その資産を事業に使うために直接要した費用(据付費・試運転費など)。値引き・割戻しは控除する
- 引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・仲介手数料・関税などの付随費用は取得価額に含める
- 不動産取得税・登録免許税・登記費用・借入金の利子(使用開始前)・割賦利息は、取得価額に含めないことができる
- 仲介手数料・立退料・当初から取り壊す建物の取壊費用・固定資産税精算金(買主負担)は取得価額に含める
- 少額資産(10万円・20万円・30万円)の判定は付随費用を含めた取得価額で行う。個人は租税公課が原則必要経費
取得価額の原則
購入した固定資産の取得価額は、その資産の購入代価と、事業の用に供するために直接要した費用の合計です(法人税法施行令54条)。購入代価には、引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税など、購入のために要した費用も含まれます。会計上も、購入代金に買入手数料・運送費・据付費・試運転費などの付随費用を加えて取得原価とし、値引き・割戻しは購入代金から控除します。
取得価額 = 購入代価(値引き・割戻し控除後) + 購入のための付随費用 + 事業に使うために直接要した費用
例:機械本体200万円+引取運賃5万円+据付費10万円+試運転費5万円 = 取得価額220万円
取得価額に含める費用
次のような費用は、購入や事業供用のために直接要した費用として、取得価額に含めます。
| 費用 | 内容 |
|---|---|
| 引取運賃・荷役費・運送保険料 | 資産を購入し運び入れるためにかかった費用 |
| 購入手数料・関税 | 購入のために要した手数料や、輸入時の関税 |
| 仲介手数料 | 不動産取得の仲介手数料。土地・建物一括購入なら価額按分して各勘定に加算 |
| 据付費・試運転費 | 機械等を設置し、使える状態にするための費用 |
| 立退料 | 土地・建物取得に際し、居住者等に支払う立退きのための費用 |
取得価額に含めないことができる費用
次のような費用は、取得に関連して支出したものであっても、取得価額に含めないで、その期の費用(損金)にできます(基本通達7-3-1の2・7-3-2・7-3-3の2、No.5400)。流通税としての性格を持つものや、取得そのものに直接要したとはいえないものが中心です。
| 費用 | 内容 |
|---|---|
| 不動産取得税・自動車取得税・事業所税 | 流通税等の性格を持つ租税公課。含めないことができる |
| 登録免許税・登記費用(司法書士報酬等) | 第三者対抗要件を備えるための費用。含めないことができる |
| 売買契約書の印紙税 | 契約文書の作成費用であり、取得そのものの費用ではない |
| 借入金の利子(使用開始前の期間分) | 取得のための借入利子。使用開始前の分も含めないことができる(建設仮勘定に含めると算入したことになる) |
| 割賦販売の利息・代金回収費用相当額 | 契約で購入代価と区分が明らかなら含めないことができる |
| 計画変更で不要になった費用・契約解除の違約金 | 建設計画変更で不要になった調査・設計費や、他の資産取得に切り替えた際の違約金 |
判断に迷う費用の扱い
似た費用でも、取得価額に含めるか否かが分かれるものがあります。とくに次のケースは間違えやすいので注意します。
| ケース | 扱い | ポイント |
|---|---|---|
| 当初から取り壊す前提で取得した建物の取壊費用 | 土地の取得価額に算入 | 建物の帳簿価額と取壊費用を土地に加える |
| 固定資産税精算金(買主負担分) | 取得価額に含める | 実質は取得代金の一部。租税ではなく売買代金として扱う |
| 機械の移設費 | 原則、取得価額に算入 | 移設費が移設直前簿価の10%以下なら損金算入も可 |
| 損害保険料 | 含めない | 期間対応の費用。前払費用として処理 |
自己建設・少額の付随費用
自社で製作・建設した固定資産は、適正な原価計算による製造原価に、事業供用のために直接要した費用を加えて取得価額とします。会計上は、稼働前の期間に対応する借入資本の利子を取得原価に算入できる場合があります。また、製作等のために要した間接費・付随費用で、その合計額が製作原価のおおむね3%以内の少額であるものは、取得価額に含めないことができるとされています。
取得価額と少額資産の判定
10万円未満の少額減価償却資産、20万円未満の一括償却資産、30万円未満の中小企業者等の少額特例は、いずれも取得価額を基準に判定します。この取得価額には付随費用を含めるため、本体価額が基準ぎりぎりのとき、運賃や据付費を含めると基準を超えて即時費用化できなくなることがあります。逆に、取得価額に含めないことができる費用(不動産取得税等)を含めなければ、判定上の取得価額を抑えられます。判定の基礎となる取得価額の考え方は少額減価償却資産の特例もあわせて確認してください。なお、取得後にかかった支出を取得価額に加えるか経費にするかは修繕費と資本的支出の区分の問題です。
仕訳例
機械本体200万円、引取運賃・据付費20万円を取得価額に含め、不動産取得税等に相当する租税公課10万円は費用処理するケース(すべて現金払い)の仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 機械装置 2,200,000 | 現金 2,300,000 |
| 租税公課 100,000 |
機械装置は取得価額220万円で計上し、これを基礎に減価償却します。租税公課10万円はその期の費用です。もし租税公課も取得価額に含める選択をすれば、機械装置は230万円となり、償却を通じて費用化されます。
見落としやすい落とし穴
含めるべき費用を費用処理してしまう
仲介手数料・据付費・試運転費・立退料などは取得価額に含める費用です。これらを費用処理して損金を前倒しすると、税務調査で否認され、減価償却超過額を毎期少しずつ認容していく煩雑な処理が必要になります。含める費用と含めないことができる費用を区別してください。
固定資産税精算金を租税公課にする
不動産売買で買主が負担する固定資産税精算金は、名前は税金でも実質は売買代金の一部で、取得価額に含めます。租税公課として費用処理すると誤りです。土地分は非課税仕入、建物分は課税仕入となる消費税の区分にも注意します。
少額判定を本体価額だけで行う
10万円・20万円・30万円の少額判定は、付随費用を含めた取得価額で行います。本体価額だけで判定すると、運賃や据付費を加えると基準を超えるのに即時費用化してしまう誤りが起きます。判定は取得価額ベースで行ってください。
借入利子を建設仮勘定に含めてしまう
取得のための借入利子は取得価額に含めないことができますが、建設仮勘定に含めてしまうと、取得価額に算入したことになります。費用にするつもりなら、建設仮勘定に含めないよう経理を分けます。
取得価額を決めるまでの判定フロー
| 手順 | 確認内容 |
|---|---|
| 1 | 購入代価を確定する。値引き・割戻しがあれば控除する |
| 2 | 引取運賃・仲介手数料・据付費・試運転費など、取得・事業供用に直接要した費用を加える |
| 3 | 不動産取得税・登録免許税・借入利子・割賦利息は、含めるか費用にするかを選ぶ(個人は原則経費) |
| 4 | 固定資産税精算金・立退料・当初取壊し前提の取壊費用など、含めるべきものを漏らさない |
| 5 | 確定した取得価額で、少額資産(10万・20万・30万)の判定と減価償却を行う |
想定Q&A(取得価額と付随費用)
Q1. 不動産取得税は取得価額に含めますか
含めないことができます。不動産取得税・登録免許税などは流通税等の性格を持ち、取得価額に算入しないで費用にできるからです。反対に、含める選択をすれば資産計上され、減価償却を通じて費用化されます。早く費用化したいなら含めない方が有利です。なお個人事業主は、業務用資産のこれらの税は原則として必要経費に算入します。
Q2. 仲介手数料は費用にできますか
できません。仲介手数料は取得のために直接要した費用として、取得価額に含めなければならないからです。反対に、不動産取得税や登記費用は含めないことができます。同じ取得時の支出でも、直接取得のための費用か、流通税等かで扱いが分かれます。土地・建物を一括購入した場合、仲介手数料は価額按分して各勘定に加算します。
Q3. 据付費や試運転費はどう扱いますか
取得価額に含めます。据付費・試運転費は、その資産を事業に使える状態にするために直接要した費用だからです。反対に、使用開始後の通常の運転費用や保守費用は取得価額に含めず、その期の費用になります。使えるようにするまでの費用か、使い始めた後の費用かで区別します。
Q4. 借入金の利子は取得価額に含めますか
含めないことができます。取得のための借入金の利子は、使用開始前の期間に係る分であっても取得価額に算入しないことができるからです。反対に、建設仮勘定にその利子を含めた場合は、取得価額に算入したことになります。費用にするなら建設仮勘定に含めないよう経理し、使用開始後の利子は期間の経過に応じて損金にします。
Q5. 古い建物付きの土地を買い、建物を取り壊しました。取壊費用は経費ですか
当初から取り壊す前提なら土地の取得価額に含めます。土地を利用する目的で、取得後おおむね1年以内に取り壊すなど当初から取壊しが予定されていた場合は、建物の帳簿価額と取壊費用を土地の取得価額に算入するからです。反対に、しばらく使っていた建物を後で取り壊した場合は、除却損として費用処理できます。取得目的と経過期間で扱いが変わります。
Q6. 固定資産税精算金は租税公課ですか
いいえ、取得価額に含めます。売買に伴い買主が売主へ支払う固定資産税精算金は、税金そのものではなく実質的に売買代金の一部だからです。反対に、租税公課として費用処理するのは誤りです。土地分は非課税仕入、建物分は課税仕入として消費税区分を分ける点にも注意します。
Q7. 割賦で買った機械の利息はどうなりますか
区分が明らかなら含めないことができます。割賦販売契約で、購入代価と割賦期間分の利息・代金回収費用相当額が契約上明らかに区分されている場合、その利息等相当額は取得価額に含めないことができるからです。反対に、区分されていない場合は総額が取得価額になります。契約書で内訳が明示されているかを確認します。
Q8. 値引きを受けたときは取得価額をどうしますか
購入代価から値引き・割戻し額を控除します。取得価額は実際に負担した正味の金額を基礎とすべきだからです。反対に、付随費用は値引き後の代価に加えます。取得後にリベートを受けた場合も、取得価額または費用から控除するのが原則です。正味の取得コストで資産計上します。
Q9. 付随費用を含めるかどうかで少額判定は変わりますか
変わります。少額資産の判定は付随費用を含めた取得価額で行うため、含める費用が増えると基準額を超えることがあるからです。反対に、取得価額に含めないことができる不動産取得税等を費用処理すれば、判定上の取得価額を抑えられます。本体価額が基準ぎりぎりのときは、付随費用の扱いで即時費用化の可否が分かれます。
Q10. 自社で製作した設備の取得価額はどう決めますか
適正な原価計算による製造原価に、事業供用のための費用を加えます。自家建設の固定資産は、材料費・労務費・経費を集計した製造原価を基礎に取得価額を計算するからです。反対に、製作のための間接費・付随費用で、その合計が製作原価のおおむね3%以内の少額のものは、含めないことができます。会計上は稼働前の借入資本利子を算入できる場合もあります。
Q11. 会計と税務で取得原価が違ってもよいですか
基本的な考え方は共通ですが、選択の幅が異なります。会計も税務も「購入代価+付随費用」が原則で、値引きは控除しますが、租税公課や借入利子などを含めるかは、税務では通達で含めないことができるとされ、実務は税務の扱いに合わせることが多いからです。反対に、会計基準に定めのない付随費用は税務の規定を参考にすることが多く、両者が大きく食い違うことは通常ありません。処理は継続適用することが前提です。
まとめ
固定資産の取得価額は「購入代価+付随費用」が基本で、値引き・割戻しは控除します。引取運賃・仲介手数料・据付費・試運転費・立退料などは取得価額に含め、不動産取得税・登録免許税・借入利子・割賦利息は含めないことができます。固定資産税精算金や当初取壊し前提の取壊費用は取得価額に含めます。取得価額は減価償却と少額判定の出発点になるため、付随費用の扱いで費用化のタイミングや即時費用化の可否が変わります。含める費用と含めないことができる費用を正しく区別しましょう。
- 取得価額=購入代価(値引き控除後)+付随費用(運賃・仲介手数料・据付費・試運転費など)
- 不動産取得税・登録免許税・登記費用・借入利子(使用開始前)・割賦利息は含めないことができる
- 仲介手数料・立退料・当初取壊し前提の取壊費用・固定資産税精算金(買主負担)は含める
- 少額判定(10万・20万・30万)は付随費用を含めた取得価額で行う
- 会計と税務の基本は共通。含めるか否かは継続適用が前提で、個人は租税公課が原則必要経費
※本記事は作成時点の会計基準・法令および公表資料(法人税法施行令54条、所得税法施行令126条、法人税基本通達7-3-1の2・7-3-2・7-3-3の2・7-3-12、所得税基本通達、企業会計原則第三・五D、企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書第三、国税庁タックスアンサーNo.5400・No.2215等)に基づく一般的な解説です。仕訳例は簡略な設例です。制度・取扱いは改正により変わる場合があるため、個別の判断は最新の基準・法令の確認、または顧問税理士へのご相談をおすすめします。

