報酬・料金の支払調書の書き方【完全ガイド③】提出範囲・区分細目・士業の源泉計算・未払

法定調書

【法定調書 完全ガイド・全5回】 ① 総論編/② 給与所得の源泉徴収票編/③ 報酬・料金の支払調書編(本記事)/④ 退職所得・不動産関係編/⑤ 合計表・提出実務編

報酬・料金の支払調書は、弁護士・税理士・デザイナー・外交員などへの支払いを税務署へ報告する調書です。提出範囲が報酬の種類で異なり、士業ごとに源泉計算も違い、未払や立替実費の扱いなど判断に迷う点が多くあります。本記事(パート3)では、提出範囲・記載要領・計算・未払処理まで解説します。

目次
  1. 提出範囲(種類別の金額基準)
  2. 法人・未源泉も範囲なら提出
  3. 区分・細目・摘要の書き方
  4. 士業別の源泉計算(弁護士・税理士・司法書士)
  5. 登録免許税等の立替実費
  6. 支払金額・源泉徴収税額の欄
  7. 未払の見積記載と後日の訂正
  8. 消費税が含まれる場合の判定
  9. マイナンバーと提出枚数
  10. 記載例(外交員報酬・未払あり)
  11. 次回(パート4)の予告

1. 提出範囲(種類別の金額基準)

提出範囲は、同一人へのその年の支払金額の合計が、報酬の種類ごとの基準を超えるかで判定します。

区分 提出範囲(同一人・年間)
外交員・集金人・電力量計の検針人・プロボクサーの報酬料金 50万円超
バー・キャバレー等のホステス、バンケットホステス、コンパニオン等の報酬 50万円超
広告宣伝のための賞金 50万円超
診療報酬(医療情報基盤・診療報酬審査支払機構が支払うもの) 50万円超(公共法人等への支払は提出不要)
馬主が受ける競馬の賞金 1回75万円超(該当者の全額)
プロ野球の選手などの報酬・契約金 5万円超
上記以外(弁護士・税理士・司法書士等、原稿料・印税・講演料・デザイン料・翻訳料、放送謝金、工業所有権の使用料等) 5万円超
迷ったら「原則5万円超、外交員・ホステス・診療報酬・広告賞金は50万円超、競馬は75万円超」と覚えます。外交員報酬を5万円超で出したり、逆にデザイン料を50万円超と誤解して5万〜50万円の人を漏らすミスが典型です。判定は税込が原則(第8章)。
提出範囲の判定の具体例(同一人・年間合計で判定)
  • デザイナーに1回4万円を年3回(計12万円) → 年間合計12万円で5万円超 → 提出必要(1回4万円でも合算で判定)
  • 税理士に毎月3万円(年36万円) → 5万円超で提出必要
  • ライターに1回だけ4万円 → 年間4万円で5万円以下 → 提出不要
  • 外交員に毎月10万円(年120万円) → 外交員は50万円超で提出必要
  • 外交員に年間40万円 → 50万円以下で提出不要

判定は同一人へのその年(1〜12月)の支払合計です。1回ごとの金額ではなく、年間を合算して基準額を超えるかで判定します。

2. 法人・未源泉も範囲なら提出

見落としやすい重要点です。次のものも、提出範囲に該当すれば支払調書を提出します。
法人に支払う報酬・料金等で源泉徴収の対象とならないもの(法人への報酬は源泉徴収不要だが、支払調書は提出対象)
支払金額が源泉徴収の限度額以下で源泉徴収をしていない報酬・料金等
「源泉徴収した分だけ出す」と考えると、法人への顧問料や、限度額未満の報酬が漏れます。源泉徴収の有無と支払調書の提出義務は別です。

3. 区分・細目・摘要の書き方

記載要領
② 区分 原稿料・印税・さし絵料・翻訳料・通訳料・講演料・弁護士報酬・税理士報酬・外交員報酬・ホステス等の報酬・契約金・広告宣伝の賞金・診療報酬等、具体的に。印税は「書き下ろし初版印税」と「その他の印税」を区分
③ 細目 印税=書籍名/原稿料・さし絵料=支払回数/出演料=映画・演劇の題名/弁護士等の報酬=関与した事件名/広告賞金=賞金の名称/教授指導料=講義名
⑥ 摘要 診療報酬の家族診療分は金額の頭に「家族」、流行初期医療確保費用は「流行」、災害猶予税額は「災」。広告賞金が金銭以外ならその種類等。源泉徴収免除証明書提出者等はその旨
区分・細目は、税務署が支払内容を把握するための情報です。単に「報酬」とせず、「弁護士報酬」「デザイン料」のように具体的に書きます。支払を受ける者の欄は、屋号のみの記載は不可で、契約書等で氏名(個人名)・名称(法人名)を確認して記載します。

4. 士業別の源泉計算(弁護士・税理士・司法書士)

支払調書の「源泉徴収税額」欄に書く額は、士業の種類で計算が違います。

支払先 源泉徴収税額の計算
弁護士・税理士・公認会計士・社会保険労務士等 支払金額×10.21%
(1回100万円超の部分は20.42%)
司法書士・土地家屋調査士・海事代理士 (支払金額 - 1万円)×10.21%
司法書士・土地家屋調査士・海事代理士は、1回の支払から1万円を差し引いて10.21%を乗じます。例えば司法書士報酬10万円なら(10万-1万)×10.21%=9,189円。弁護士・税理士報酬10万円なら10万×10.21%=10,210円。同じ10万円でも源泉税が違うため、支払調書の源泉徴収税額欄もこの計算後の額を記載します。100万円超の部分が20.42%になるのは弁護士・税理士等で、司法書士等は一律10.21%(1万円控除後)です。
100万円を超える報酬の計算例(弁護士・税理士等)
源泉税 = 100万円×10.21% + (支払金額 - 100万円)×20.42%
  • 税理士報酬150万円 → 100万×10.21%=102,100円 + 50万×20.42%=102,100円 → 合計204,200円
  • 弁護士報酬300万円 → 102,100円 + 200万×20.42%=408,400円 → 合計510,500円
  • 「100万円超の部分だけ」20.42%になる点に注意(全体に20.42%ではない)
司法書士の計算例(1万円控除)
  • 司法書士報酬5万円 → (5万 - 1万)×10.21%=4,084円
  • 司法書士報酬30万円 → (30万 - 1万)×10.21%=29,609円
  • 司法書士等の1万円控除は1回の支払ごと。月2回払うなら各回で1万円控除

5. 登録免許税等の立替実費

立替の登録免許税・印紙代は支払金額に含めない

司法書士等に報酬と別に支払う登録免許税・印紙代・手数料は、依頼者が本来納付すべきものを立て替えたものなので、源泉徴収の対象にならず、支払調書の「支払金額」欄にも含めません。ただしこの取扱いは、登録免許税のように法令・条例の規定等で金額が客観的に明らかなものに限られます。

同様に、支払者が直接交通機関・ホテル等に支払う交通費・宿泊費で通常必要な範囲のものは、源泉徴収の対象に含めなくてよいとされています。報酬と実費を区分せず一括で支払金額に入れると、源泉税も支払調書の金額も過大になります。請求書で報酬と実費を分けて確認します。

6. 支払金額・源泉徴収税額の欄

  • ④ 支払金額:その年に支払の確定したもの。源泉徴収されなかった報酬や未払の報酬も記載漏れのないように。作成日現在で未払があれば各欄の上段に未払額を内書き
  • ⑤ 源泉徴収税額:その年に源泉徴収すべき所得税・復興特別所得税の合計。未払で未徴収があればその税額を内書き。災害で徴収猶予を受けた税額は含めない
「支払の確定」ベースなので、年内に確定した報酬は実際の支払が翌年でも当年の支払調書に計上します。源泉徴収していない報酬(法人・限度額以下)も支払金額には含めますが、源泉徴収税額は当然0(または該当額)です。

7. 未払の見積記載と後日の訂正

支払調書の作成日現在で未払のものがある場合は、源泉徴収すべき税額を見積りによって記載します。そのうえで、後で実際に徴収した税額が見積額と異なった場合は、法定調書の訂正を行う必要があります(訂正の方法はパート5)。年末締めで請求がまだ確定していない報酬などは、見積りで支払調書を作り、確定後に差異があれば訂正する流れです。未払額は支払金額欄の上段に、未徴収税額は源泉徴収税額欄の上段に内書きします。

8. 消費税が含まれる場合の判定

提出範囲の金額基準・支払金額欄は、原則として消費税等を含めた税込で判定・記載します。ただし、請求書等で報酬額と消費税額が明確に区分されている場合は、消費税を除いた税抜で判定して差し支えありません。例えば、報酬48,000円+消費税4,800円=52,800円の原稿料は、税込なら5万円超で提出対象ですが、区分されていれば本体48,000円で提出不要にできます。源泉徴収税額の計算も、区分されていれば税抜ベースで計算できます。

9. マイナンバーと提出枚数

  • 支払を受ける者・支払者のマイナンバー(個人番号)・法人番号を記載(税務署提出用)
  • 支払先へ写しを交付する場合はマイナンバーを記載できない。税務署提出用と交付用を分ける
  • 税務署へ提出を要する支払調書は1枚
支払調書には受取側への交付義務がありませんが、慣行で支払先に写しを渡す場合は、マイナンバーを記載してはいけません(本人確認なく番号を提供することになるため)。マイナンバーを記載するのは税務署提出用のみです。

10. 記載例(外交員報酬・未払あり)

設例

外交員へ1月〜12月の報酬総額240万円(給与の支払なし)、うち作成日現在で未払が20万円のケース

  • 区分:外交員報酬
  • ④支払金額:上段に未払額200,000円(内書き)、下段に2,400,000円
  • ⑤源泉徴収税額:確定分の源泉税+未払分の未徴収税額を上段に内書き
  • 外交員報酬は50万円超で提出対象(240万円なので該当)
外交員報酬(給与に該当しないもの)の源泉徴収には、月ごとに一定額を控除して10.21%を乗じる方式が定められており、支払調書の源泉徴収税額欄にはその年間合計を記載します。報酬の性質(給与か外交員報酬か)で計算が変わるため、実際の区分を確認します。具体的な計算方法は、報酬・料金の源泉徴収を扱う別記事で解説します。
記入サンプル①:税理士報酬(月3万円・年36万円)
区分 税理士報酬
細目 顧問料(支払回数12回)
支払金額 360,000
源泉徴収税額 36,756(各月 30,000×10.21%=3,063円 × 12)

年間36万円で5万円超のため提出対象。月々の源泉税3,063円の年合計が源泉徴収税額欄です。

記入サンプル②:司法書士報酬+立替の登録免許税

登記を依頼し、報酬8万円・登録免許税(立替)15万円を支払ったケース

区分 司法書士報酬
支払金額 80,000(登録免許税15万円は立替なので含めない)
源泉徴収税額 7,147((80,000 - 10,000)×10.21%)

支払金額に登録免許税を含めると23万円となり源泉税も過大になります。報酬8万円のみで判定・計算し、1万円控除を適用します。

11. 次回(パート4)の予告

パート4では、退職所得の源泉徴収票(役員のみ提出・死亡退職・退職所得控除・勤続年数・特定役員)と不動産関係の3つの支払調書(使用料は法人へは権利金等のみ・譲受け・あっせん手数料)を解説します。
このシリーズの記事
  • ① 法定調書の作成と提出【総論編】
  • ② 給与所得の源泉徴収票の書き方【全記載欄】
  • ③ 報酬・料金の支払調書の書き方(本記事)
  • ④ 退職所得・不動産関係の支払調書
  • ⑤ 法定調書合計表と提出実務

※本記事は作成時点(令和7年分)の法令・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。提出範囲・計算・記載要領は改正される場合があります。具体的な判断は国税庁の最新情報の確認および税理士へのご相談をおすすめします。

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