非居住者への支払と源泉徴収を徹底解説|国内源泉所得・税率・租税条約の届出

源泉所得税

海外に住む個人や外国法人(非居住者等)へ支払をするとき、日本の源泉徴収が必要になる場面があります。海外に住む地主への家賃、海外オーナーからの不動産購入、外国企業への使用料の支払などです。非居住者への源泉徴収は、国内源泉所得の判定・税率・租税条約が絡み、居住者向けより複雑です。本記事では、その仕組みと実務の難所を深掘りします。

※本記事は非居住者・外国法人への支払(国際課税)の源泉徴収を扱います。居住者(国内の個人)への報酬・料金の源泉徴収は「報酬・料金の源泉徴収の判定」の記事をご覧ください。
目次
  1. 非居住者・外国法人とは
  2. 非居住者は「国内源泉所得」だけが課税対象
  3. 支払者は法人・個人を問わず源泉徴収義務者
  4. 主な国内源泉所得と税率(一覧)
  5. 不動産の賃借料(20.42%)
  6. 土地建物等の譲渡対価(10.21%)とその例外
  7. 租税条約による軽減・免除と届出書
  8. 外貨換算・納付期限・実務の注意点
  9. まとめ

1. 非居住者・外国法人とは

非居住者とは、国内に住所がなく、かつ現在まで引き続き1年以上の居所もない個人をいいます(居住者以外の個人)。海外赴任で1年以上海外に住む日本人や、日本に住んでいない外国人などが該当します。外国法人は、内国法人(日本に本店等がある法人)以外の法人です。

国籍ではなく住所・居所で判定する点に注意してください。日本人でも海外に1年以上住めば非居住者、外国人でも日本に住所があれば居住者です。判定に迷う場合は、滞在期間・生活の本拠・職業などを総合的に見ます。

2. 非居住者は「国内源泉所得」だけが課税対象

居住者は国内外すべての所得が課税対象(全世界所得課税)ですが、非居住者・外国法人は日本国内で生じた「国内源泉所得」だけが課税対象です。したがって、非居住者への支払で源泉徴収が必要かは、まずその支払が国内源泉所得に当たるかで決まります。

国内源泉所得は所得税法で種類が定められており、国内にある不動産の賃貸料・譲渡対価、国内で行う人的役務の対価、国内業務に係る使用料、国内法人からの配当、国内で業務を行う者への貸付金利子などが含まれます。これらに当たらない、純粋に国外で完結する所得は、日本の源泉徴収の対象になりません。

3. 支払者は法人・個人を問わず源泉徴収義務者

非居住者等への国内源泉所得の支払では、支払者が法人か個人かを問わず、また個人が事業者かどうかも問わず、源泉徴収義務を負う場合があります。

これは居住者向けの報酬・料金(給与の支払がない個人は義務なし)と大きく違う点です。例えば、海外に住む大家から日本のマンションを借りて家賃を払う個人や、海外オーナーから日本の土地建物を買う個人も、原則として源泉徴収義務者になります。個人でも、知らずに源泉徴収を怠ると不納付加算税・延滞税の対象になり得るため、支払先が非居住者だと分かった時点で源泉徴収の要否を確認する必要があります。

4. 主な国内源泉所得と税率(一覧)

実務で扱うことが多い国内源泉所得と、国内法上の税率は次のとおりです(租税条約で軽減・免除される場合があります)。

国内源泉所得 税率(国内法)
国内不動産の賃借料 20.42%
国内の土地建物等の譲渡対価 10.21%(例外あり・後述)
国内で行う人的役務の提供(タレント・コンサル等) 20.42%
非居住者の給与・報酬(国内勤務分) 20.42%
使用料(著作権・特許等のロイヤルティ) 20.42%(条約で軽減・免除多い)
配当 20.42%(上場株式等は15.315%等/条約で軽減)
貸付金利子 15.315%(条約で軽減・免除)
税率が所得の種類で違う点が、居住者向けとの大きな違いです。特に不動産の賃借料は20.42%、譲渡対価は10.21%と、同じ不動産でも貸すか売るかで税率が異なります。混同しないようにしてください。

5. 不動産の賃借料(20.42%)

非居住者等が所有する国内不動産を借りて賃借料を支払う者は、法人・個人を問わず、支払の際に20.42%を源泉徴収します。海外に住む大家から日本の物件を借りるケースが典型です。

ただし、個人が自己またはその親族の居住用として借りる場合に支払う賃借料は、源泉徴収が不要とされています。法人が借りる場合(社宅・事務所等)や、個人でも事業用に借りる場合は源泉徴収が必要です。例えば月20万円の事務所家賃なら、200,000 × 20.42% = 40,840円を源泉徴収し、差引159,160円を支払います。

6. 土地建物等の譲渡対価(10.21%)とその例外

非居住者等から日本国内の土地等を購入し、その譲渡対価を支払う者は、支払の際に10.21%を源泉徴収します。海外オーナーから日本の不動産を買うケースです。買主が法人でも個人でも(事業者でなくても)源泉徴収義務があります。

源泉徴収が不要になる例外

次の両方を満たす場合は源泉徴収不要です。
・譲渡対価が1億円以下
・買主が個人で、自己またはその親族の居住用として取得したもの

逆にいえば、1億円超の不動産、または法人が買う・個人でも投資用で買う場合は、10.21%の源泉徴収が必要です。海外オーナーからの不動産購入は近年増えており、買主側がこの源泉徴収を見落とすと、後から多額の不納付加算税・延滞税を負担するリスクがあります。決済時に源泉徴収して、売主には差引後の金額を支払うのが原則です。

7. 租税条約による軽減・免除と届出書

日本が相手国と租税条約を結んでいる場合、国内法より低い税率免除が適用されることがあります。特に使用料・配当・利子は、条約で大きく軽減・免除されるのが一般的です。

届出書の提出が必須

租税条約の軽減・免除を受けるには、原則として「租税条約に関する届出書」を、支払を受ける非居住者等が作成し、支払者を経由して支払者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。届出書の提出がなければ、条約の軽減を適用できず、国内法の税率で源泉徴収することになります。

実務では、支払前に相手国・所得の種類を確認し、条約の特典が使えるなら、支払日までに届出書を準備して提出することが重要です。届出が間に合わないと、いったん国内法税率で源泉徴収し、後から還付請求(条約届出に基づく還付)という二度手間になります。相手が条約相手国の居住者であることを示す居住者証明書の添付を求められることもあります。

8. 外貨換算・納付期限・実務の注意点

  • 外貨換算:外貨建ての支払は、原則として支払期日の電信買相場(TTB)で円換算してから源泉所得税を計算
  • 納付期限:源泉徴収した月の翌月10日まで。非居住者向けの所得税徴収高計算書(納付書)を使用
  • 納期の特例の対象外:給与・士業報酬等の納期特例とは別で、非居住者への支払の多くは毎月翌月10日納付。特例でまとめられないものがある点に注意
  • 免除証明書:外国法人等が一定の要件で源泉徴収の免除証明書の交付を受けている場合は、源泉徴収を要しないことがある
  • ペナルティは支払者負担:源泉徴収もれ・納付遅れの不納付加算税・延滞税は、支払者(源泉徴収義務者)が負担
非居住者への支払は、源泉徴収もれが支払者の負担として跳ね返る点が最大のリスクです。相手が源泉徴収後の手取りを前提に交渉してくると、グロスアップ(源泉税込みの金額に割り戻す)で支払者負担が膨らむこともあります。契約段階で源泉徴収の有無・負担を明確にしておくことが大切です。

9. まとめ

この記事のポイント
  • 非居住者・外国法人は国内源泉所得だけが課税対象。まず国内源泉所得か判定
  • 支払者は法人・個人を問わず(事業者でなくても)源泉徴収義務を負うことがある
  • 税率は所得の種類で異なる。不動産賃借料20.42%・土地建物の譲渡対価10.21%
  • 譲渡対価は1億円以下かつ買主個人の居住用なら源泉不要。それ以外は源泉徴収
  • 使用料・配当・利子は租税条約で軽減・免除。受けるには届出書の提出が必須
  • 外貨はTTBで換算、納付は翌月10日。もれのペナルティは支払者負担
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※本記事は作成時点の法令・租税条約・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。非居住者の判定・税率・条約の適用は個別の事実関係や相手国により異なります。具体的な判断は税理士へのご相談をおすすめします。

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