給与所得の源泉徴収票の書き方【完全ガイド②】提出範囲5区分・全記載欄・特定親族特別控除

法定調書

【法定調書 完全ガイド・全5回】 ① 総論編/② 給与所得の源泉徴収票編(本記事)/③ 報酬・料金の支払調書編/④ 退職所得・不動産関係編/⑤ 合計表・提出実務編

給与所得の源泉徴収票は、法定調書の中で最も枚数が多く、記載欄が複雑です。令和7年改正で様式も変わりました。本記事(パート2)では、提出範囲の5区分から、全記載欄の書き方、特定親族特別控除の区分コード、所得金額調整控除や住宅ローン控除の記載、中途就職の通算まで、全記載欄を一つずつ解説します。

目次
  1. 提出範囲5区分(詳細)
  2. 作成枚数と本人交付
  3. 支払金額・給与所得控除後・所得控除合計・源泉徴収税額
  4. 配偶者欄(源泉控除対象配偶者・配偶者控除の額)
  5. 控除対象扶養親族等の数
  6. 特定親族特別控除の額と区分コード
  7. 16歳未満・障害者・非居住者の各欄
  8. 保険料・住宅ローン控除・基礎控除・所得金額調整控除
  9. 氏名・マイナンバー・支払者欄
  10. 中途就職の通算と摘要欄
  11. 記載例(年末調整した一般受給者)
  12. 次回(パート3)の予告

1. 提出範囲5区分(詳細)

源泉徴収票は全員に交付しますが、税務署提出は次の区分に該当する人だけです。

区分 税務署提出が必要な範囲
年末調整した法人役員 支払金額150万円超
年末調整した弁護士・税理士・司法書士等給与として支払 支払金額250万円超
年末調整した上記以外の一般 支払金額500万円超
年末調整なし・甲欄で中途退職や災害で徴収猶予/還付 支払金額250万円超(役員は50万円超)
年末調整なし・主たる給与2,000万円超 全部
乙欄・丙欄(扶養控除等申告書を提出しなかった方) 支払金額50万円超
「弁護士・税理士等へ給与として250万円超」は、これらの人を従業員として雇い給与を払っている場合の区分です(報酬として払うならパート3の支払調書側)。役員の中途退職は50万円超乙欄は50万円超と基準が大きく下がるため、少額の役員報酬や掛け持ちパートでも税務署提出になり得ます。
判定の具体例
  • 役員報酬120万円・年末調整済 → 役員150万円以下なので税務署提出は不要(本人交付のみ)
  • 役員報酬160万円・年末調整済 → 150万円超で提出必要
  • 一般従業員480万円・年末調整済 → 500万円以下で提出不要
  • 一般従業員が9月に退職・支払300万円(甲欄・年末調整なし) → 中途退職250万円超で提出必要
  • 役員が中途退職・支払60万円(年末調整なし) → 役員の中途退職50万円超で提出必要
  • 掛け持ちパート(乙欄)・支払70万円 → 乙欄50万円超で提出必要
  • 給与2,100万円・年末調整なし → 2,000万円超で金額にかかわらず全部提出

いずれの場合も本人への交付は必須です。税務署提出の要否と本人交付は別の話で、交付は全員に行います。

2. 作成枚数と本人交付

  • 税務署提出を要する人:源泉徴収票2枚(税務署提出用+本人交付用)+給与支払報告書1枚=計3枚
  • 税務署提出を要しない人:源泉徴収票1枚(本人交付用)+給与支払報告書1枚=計2枚
  • 源泉徴収票は提出範囲にかかわらず全ての受給者へ交付(令和8年2月2日まで、中途退職者は退職後1か月以内)
「全ての受給者」には、国内に住所または1年以上居所を有する居住者である外国人従業員も含まれます。本人交付は書面のほか、一定の要件で電子交付(電磁的方法による提供)も可能です。給与支払報告書は提出範囲にかかわらず原則全員分を市区町村へ提出します(パート5)。

3. 支払金額・給与所得控除後・所得控除合計・源泉徴収税額

源泉徴収票の根幹となる4つの金額欄です。

  • ③ 支払金額:その年に支払が確定した給与等の総額。中途就職者で前職分を通算して年末調整した場合は前職分も含む。作成日現在で未払があればその額を内書き
  • ④ 給与所得控除後の金額(調整控除後):「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で求めた金額。所得金額調整控除がある場合はその額を控除した後の金額
  • ⑤ 所得控除の額の合計額:社会保険料・小規模企業共済等掛金・生命保険料・地震保険料・障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生・配偶者(特別)・扶養・特定親族特別・基礎の各控除の合計
  • ⑥ 源泉徴収税額:年末調整後の所得税+復興特別所得税の合計。年末調整しない給与は、その年に源泉徴収すべき合計額(未払で未徴収があれば内書き)
④と⑤、⑥は年末調整をした受給者のみ記載する欄が多くあります(乙欄等で年末調整していない人は支払金額・源泉徴収税額が中心)。④は給与収入から給与所得控除を引いた「給与所得」で、ここから⑤の所得控除を引いて課税所得を求め、税率を当てはめた結果が⑥です。年末調整の計算結果(源泉徴収簿)から転記するのが基本です。

4. 配偶者欄(源泉控除対象配偶者・配偶者控除の額)

  • ⑦ (源泉)控除対象配偶者の有無等:年末調整済なら控除対象配偶者(合計所得1,000万円以下の受給者の同一生計配偶者=配偶者の所得58万円以下)がいれば「有」。年末調整なしなら源泉控除対象配偶者(受給者所得900万円以下・配偶者所得95万円以下)で判定。老人控除対象配偶者は「老人」
  • ⑧ 配偶者(特別)控除の額:配偶者控除等申告書に基づく額。受給者の合計所得1,000万円超は適用なし、配偶者の合計所得58万円以下または133万円超は配偶者特別控除なし
  • ㉒ 配偶者の合計所得:配偶者(特別)控除を受けた場合の配偶者の合計所得金額
「控除対象配偶者」と「源泉控除対象配偶者」は定義が違うため、年末調整の有無で⑦の判定基準が変わります。源泉控除対象配偶者は月々の源泉徴収で扶養人数に数えるための概念(配偶者所得95万円以下)、控除対象配偶者は配偶者控除を受ける概念(配偶者所得58万円以下かつ受給者所得1,000万円以下)です。混同しないよう、年末調整済かどうかでどちらを見るか確認します。

5. 控除対象扶養親族等の数

⑨ 控除対象扶養親族等の数(配偶者を除く)
  • 特定欄:特定扶養親族(19歳以上23歳未満)の数。左の欄=主たる給与から控除した数、右の欄=従たる給与から控除した数
  • 老人欄:老人扶養親族(70歳以上)の数。左の欄の点線の左側=同居している直系尊属の数
  • その他欄:特定・老人以外の控除対象扶養親族(16歳以上)の数
  • 特親欄:特定親族(19歳以上23歳未満・合計所得58万円超123万円以下)の数(年末調整済の場合、左の欄)
16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象外なので、⑨ではなく⑩ 16歳未満扶養親族の数に記載します。同じ19歳以上23歳未満でも、合計所得58万円以下(給与123万円以下)なら特定扶養親族(特定欄)、58万円超123万円以下なら特定親族(特親欄)と書く欄が分かれる点が令和7年改正の新しい注意点です。

6. 特定親族特別控除の額と区分コード

令和7年新設の特定親族特別控除は、額の記載+区分コードの記載の2か所が必要です。

特定親族特別控除の額 区分(居住者) 区分(非居住者) 親族の合計所得金額
63万円 10 11 58万円超85万円以下
61万円 20 21 85万円超90万円以下
51万円 30 31 90万円超95万円以下
41万円 40 41 95万円超100万円以下
31万円 50 51 100万円超105万円以下
21万円 60 61 105万円超110万円以下
11万円 70 71 110万円超115万円以下
6万円 80 81 115万円超120万円以下
3万円 90 91 120万円超123万円以下
記載は2か所です。⑬ 特定親族特別控除の額欄に各特定親族の控除額の合計額を記載し、㉑ 控除対象扶養親族等欄(または㉙摘要欄)の各人の区分に、上表の区分コードを記載します。例えば子の合計所得80万円(控除額63万円)なら区分「10」、95万円(控除額41万円)なら摘要欄に氏名と「(40)」を記載します。控除対象扶養親族等が5人以上いるときは、5人目以降を摘要欄に氏名、備考欄にマイナンバーを記載して対応関係をつけます。

7. 16歳未満・障害者・非居住者の各欄

  • ⑩ 16歳未満扶養親族の数:16歳未満(平成22年1月2日以後生まれ)の扶養親族の人数。扶養控除はないが住民税の判定に使う
  • ⑪ 障害者の数(本人を除く):特別欄=同一生計配偶者や扶養親族の特別障害者(点線の左側=同居)、その他欄=特別障害者以外の障害者
  • ⑫ 非居住者である親族の数:源泉控除対象配偶者・控除対象扶養親族・特定親族等のうち非居住者の人数、16歳未満で国内に住所がない人数
  • ㉑ 区分(非居住者の分類):控除対象扶養親族が非居住者なら、30歳未満/70歳以上=01、30歳以上70歳未満の留学生=02、障害者=03、38万円以上送金=04
非居住者の扶養親族は、年齢や留学・障害・送金額で扶養控除の可否と記載コードが変わります。30歳以上70歳未満の非居住者は原則として扶養控除の対象外ですが、留学生・障害者・38万円以上送金のいずれかに該当すれば対象になり、それぞれ02・03・04のコードを付します。書面で税務署提出する場合、居住者(00)は空欄にします。

8. 保険料・住宅ローン控除・基礎控除・所得金額調整控除

  • ⑭ 社会保険料等の金額:給与から控除した社会保険料+申告分。小規模企業共済等掛金(iDeCo・企業型DC等)は内書き
  • ⑮ 生命保険料・地震保険料の控除額:保険料控除申告書に基づく控除額
  • ⑰ 生命保険料の金額の内訳:新生命保険料(平成24年1月1日以後契約)・旧生命保険料(平成23年12月31日以前契約)・介護医療・新旧個人年金・国民年金保険料等・旧長期損害保険料を区分して記載
  • ⑯⑱ 住宅借入金等特別控除の額・内訳:年末調整で計算した住宅ローン控除額。控除しきれない額は「住宅借入金等特別控除可能額」、居住開始年月日・区分・年末残高も記載
  • ⑲ 基礎控除の額:基礎控除申告書から転記。適用がなければ「0」
  • ⑳ 所得金額調整控除額:適用がある場合に記載
生命保険料は、平成24年1月1日を境に新契約・旧契約で限度額と計算式が違うため、証明書の区分を取り違えると控除額がズレます。所得金額調整控除は、給与収入850万円超で、本人が特別障害者、または23歳未満の扶養親族・特別障害者の同一生計配偶者等がいる場合に適用され、⑳に額を記載し、摘要欄に「氏名(調整)」等を記載します(④の給与所得控除後の金額はこの控除後の金額)。
所得金額調整控除の計算式と例
控除額 = (給与等の収入金額〔上限1,000万円〕 - 850万円) × 10%
(上限15万円・1円未満は切上げ)
  • 給与収入980万円・23歳未満の子あり → (980万 - 850万)×10% = 13万円
  • 給与収入1,200万円・特別障害者の配偶者あり → (1,000万 - 850万)×10% = 15万円(上限)
  • 要件は4つ:本人が特別障害者/23歳未満の扶養親族あり/特別障害者の同一生計配偶者あり/特別障害者の扶養親族あり(いずれか)

この控除は扶養控除と違い夫婦どちらも要件を満たせば双方が適用可(共働きで23歳未満の子が1人でも、夫婦ともに年収850万円超なら両方適用)。④給与所得控除後の金額は、この控除後の金額を記載します。

支払金額から年税額までの流れ(イメージ)
  1. ③支払金額(給与収入) - 給与所得控除 = 給与所得
  2. 給与所得 - 所得金額調整控除 = ④給与所得控除後の金額
  3. ④ - ⑤所得控除合計(社保・生保・配偶者・扶養・特定親族特別・基礎等) = 課税所得(1,000円未満切捨て)
  4. 課税所得 × 所得税率 - 速算控除 = 算出税額
  5. 算出税額 - 住宅借入金等特別控除 = 年調所得税額
  6. 年調所得税額 × 102.1% = ⑥源泉徴収税額(年税額・100円未満切捨て)

この年税額と、毎月源泉徴収して納めた合計との差額が、年末調整の還付または追徴になります。源泉徴収票の各欄は、この計算過程(源泉徴収簿)の結果を転記したものです。

9. 氏名・マイナンバー・支払者欄

  • ① 支払を受ける者:令和8年1月1日(中途退職者は退職時)現在の住所。氏名にフリガナ。役員は役職名、それ以外は職務名を併記
  • ㉑ 控除対象扶養親族等の氏名・マイナンバー:税務署提出用には記載、本人交付用には記載しない
  • ㉘ 支払者:住所・氏名(名称)・電話番号・マイナンバー(個人)または法人番号。本人交付用にはマイナンバー・法人番号を記載しない
マイナンバーの扱いが最重要の注意点です。税務署提出用にはマイナンバー(受給者・扶養親族・支払者)を記載しますが、受給者に交付する源泉徴収票にはマイナンバーを一切記載しません。同じ様式でも提出用と交付用を分けて出力します。なお市区町村に提出する給与支払報告書には、16歳未満の扶養親族のマイナンバーも記載する点が源泉徴収票と異なります。

10. 中途就職の通算と摘要欄

年の中途で就職した人について、就職前に前職の給与を前職の源泉徴収票で通算して年末調整した場合は、③支払金額・⑭社会保険料等にその前職分を含めて記載し、㉙摘要欄に、(イ)前職の支払者の住所・名称、(ロ)前職を退職した年月日、(ハ)前職が支払った給与等の金額・徴収した所得税等・控除した社会保険料を記載します。前職の源泉徴収票を回収できないと通算できず、本人が確定申告することになります。摘要欄にはこのほか、同一生計配偶者が障害者の場合の「氏名(同配)」、所得金額調整控除の「氏名(調整)」、災害猶予税額、租税条約による免税対象額なども記載します。

11. 記載例(年末調整した一般受給者)

設例

国税太郎(一般従業員・1社のみ・年末調整済)。給与収入900万円、給与から控除した社会保険料135万円、生命保険料控除10万円、配偶者(所得なし)で配偶者控除38万円、長男20歳=特定扶養親族(控除63万円)、長女16歳=一般扶養親族(控除38万円)、基礎控除58万円。23歳未満の扶養親族があり給与850万円超なので所得金額調整控除あり。

記入する金額・内容
③ 支払金額 9,000,000
④ 給与所得控除後の金額(調整控除後) 7,000,000
(900万 - 給与所得控除195万 = 705万、-所得金額調整控除5万)
⑤ 所得控除の額の合計額 3,420,000
(社保135万+生保10万+配偶者38万+特定扶養63万+一般扶養38万+基礎58万)
⑥ 源泉徴収税額 294,500
(課税所得358万×20%-427,500=288,500、×102.1%)
⑦ 控除対象配偶者の有無
⑧ 配偶者(特別)控除の額 380,000
⑨ 控除対象扶養親族の数 特定 1人(長男20歳)、その他 1人(長女16歳は16歳以上なので扶養控除対象)
⑭ 社会保険料等の金額 1,350,000
⑮ 生命保険料の控除額 100,000
⑲ 基礎控除の額 580,000
⑳ 所得金額調整控除額 50,000
㉙ 摘要 所得金額調整控除の対象扶養親族「国税一郎(調整)」
この⑥源泉徴収税額(年税額294,500円)と、毎月の給与・賞与から源泉徴収して納めた合計との差が、年末調整での還付または追徴になります。長女が16歳なので⑨の扶養控除対象(その他)に入りますが、もし15歳以下なら⑩16歳未満扶養親族の数に記載し扶養控除はありません(児童手当の対象のため)。長男20歳は特定扶養親族(19歳以上23歳未満)で控除63万円です。
実際の作成は、年末調整の計算をまとめた「給与所得に対する源泉徴収簿」と保険料控除申告書から各欄へ転記するのが基本です。給与計算ソフトを使う場合も、所得金額調整控除や特定親族特別控除の区分コードが正しく出力されているかを目視で確認します。

12. 次回(パート3)の予告

パート3では、報酬・料金の支払調書を取り上げます。提出範囲(士業5万円超・外交員50万円超等)、区分・細目・摘要の書き方、士業別の源泉計算と司法書士の1万円控除・立替実費、未払の見積記載と訂正、法人・未源泉の扱い、記載例を解説します。
このシリーズの記事
  • ① 法定調書の作成と提出【総論編】
  • ② 給与所得の源泉徴収票の書き方【全記載欄】(本記事)
  • ③ 報酬・料金の支払調書の書き方
  • ④ 退職所得・不動産関係の支払調書
  • ⑤ 法定調書合計表と提出実務

※本記事は作成時点(令和7年分)の法令・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。様式・記載要領は改正される場合があります。具体的な判断は国税庁の最新情報の確認および税理士へのご相談をおすすめします。

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