法定調書の作成と提出【完全ガイド①総論編】6種類・提出義務者・期限・電子提出義務

法定調書

【法定調書 完全ガイド・全5回】 このシリーズは、検索した方がこの記事だけで法定調書を作成・提出できることを目指し、提出範囲の判定・記載要領・計算例・記入サンプルまで実務目線で解説します。
① 総論編(本記事)/② 給与所得の源泉徴収票編/③ 報酬・料金の支払調書編/④ 退職所得・不動産関係編/⑤ 合計表・提出実務編

法定調書は、給与・報酬・不動産使用料などを支払った事業者が、その内容を税務署へ報告する書類です。種類が多く、誰が・何を・いつ・どの方法で出すかを最初に押さえないと、提出漏れや方法誤りが起きます。本記事(パート1)は、法定調書全体の地図として、提出義務者・6種類・期限・提出方法・電子提出義務・年間スケジュールを整理します。

目次
  1. 法定調書とは(全体像)
  2. 提出義務者は誰か
  3. 中小が扱う6種類と提出先
  4. 提出期限
  5. 作成・提出の5つの方法
  6. 電子提出義務(100枚→30枚)
  7. 本店等一括提出制度
  8. 年間スケジュールと準備チェック
  9. 次回(パート2)の予告

1. 法定調書とは(全体像)

法定調書とは、所得税法・相続税法・租税特別措置法などの規定により、一定の支払いをした者が税務署へ提出を義務づけられた資料の総称です。種類は60種類以上あり、税務署が受け取った側の申告内容を確認するための照合資料として使われます。

支払う側が「誰にいくら払い、いくら源泉徴収したか」を国に報告することで、受け取った側が申告を漏らしていないかを国が把握できます。だからこそ、源泉徴収していない支払い(法人への報酬や限度額以下の報酬)でも、提出範囲に該当すれば提出が必要になります(詳細はパート3)。支払調書は原則として受取側への交付義務はありません(源泉徴収票は本人交付が必要)。

2. 提出義務者は誰か

法定調書の提出義務者は、基本的に源泉徴収義務者(給与や一定の報酬を支払う者)です。

  • 法人:給与等を支払えば必ず源泉徴収義務者(役員報酬のみでも該当)
  • 個人事業主:従業員を雇って給与を支払う、または源泉徴収対象の報酬を支払う場合に該当
  • 該当しない例:給与を支払っていない個人が弁護士等に報酬を払う場合や、常時2人以下の家事使用人にだけ給与を払う個人(家政婦のみ等)は源泉徴収義務がない
新たに給与を支払い始めたら、1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を所轄税務署へ提出します。法人は設立時に従業員・役員報酬がなくても、後日の手続失念防止のため開設届を出しておくのが実務的です。源泉徴収義務者になると、毎月の源泉徴収・納付に加え、年明けの法定調書の提出義務が生じます。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
  • 開設:事務所開設・新たに給与支払を開始した日から1か月以内
  • 移転:事務所を移転した場合(移転前の所轄税務署へ。提出先・記載は提出前に確認)
  • 廃止:給与支払事務所を廃止した(従業員がいなくなった・廃業した)場合
  • 法人設立時に「法人設立届出書」を出していても、給与支払事務所等の開設届は別途必要(設立届で給与支払開始年月日を記載した場合は省略できることもある)
あわせて、納期の特例を受けるなら「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出します(申請月の翌月支払分から適用)。これらの届出・申請は、給与支払開始時にセットで検討すると、源泉徴収・納付・法定調書の事務がスムーズに立ち上がります。

3. 中小が扱う6種類と提出先

多くの事業者が提出する6種類+合計表は次のとおりです。

法定調書 主な提出先
給与所得の源泉徴収票 税務署(一定額超)+本人交付(全員)
給与支払報告書(源泉徴収票と一体) 市区町村(原則全員)
退職所得の源泉徴収票・特別徴収票 税務署・市区町村(役員のみ)+本人交付
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 税務署
不動産の使用料等の支払調書 税務署
不動産等の譲受けの対価の支払調書 税務署
不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書 税務署
給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表 税務署(上記を集約)
ポイントは、税務署向けと市区町村向けが混在することです。給与所得の源泉徴収票は税務署、給与支払報告書は市区町村、退職の特別徴収票は市区町村というように提出先が分かれます。各調書を作ったら、最後に合計表で全体を集約して税務署へ添付します(パート5)。

4. 提出期限

提出期限:支払の確定した年の翌年1月31日(休日は翌営業日)
令和7年分 → 令和8年2月2日(月)
退職所得の源泉徴収票だけは退職後1か月以内が原則ですが、その年中の退職分をまとめて1月31日(令和7年分は2月2日)までに提出しても差し支えありません。1月は、年末調整の確定・源泉徴収票の交付・納期特例の下半期納付(1月20日)・給与支払報告書の提出が重なる繁忙期です。逆算して12月中に源泉データを固め、1月前半で各調書を作成する段取りが現実的です。

5. 作成・提出の5つの方法

方法 概要・事前手続
① e-Tax 国税の電子申告。事前に開始届出書を提出し利用者識別番号を取得。e-Taxソフト(WEB版)で6種類とも作成・提出可
② クラウド等 認定クラウドにデータを記録し税務署にアクセス権限を付与。事前に利用契約・利用開始届
③ 光ディスク等 CSV形式で作成しCD・DVDで提出
④ 書面 紙で作成・提出(電子提出義務に該当しない場合)
参考:eLTAX 地方税ポータル。給与支払報告書(市区町村)と源泉徴収票のe-Tax用データを同時作成し、それぞれ提出できる一元化機能
①〜③をまとめて「e-Tax等」と呼び、電子提出義務(次章)の対象方法です。eLTAXの一元化機能を使うと、市区町村への給与支払報告書と税務署への源泉徴収票を一度の操作で作成・提出でき、給与支払報告書の宛先別仕分けの手間が大きく減ります。

6. 電子提出義務(100枚→30枚)

基準引下げで対象が広がる

前々年に提出すべきであった枚数が100枚以上の種類は、e-Tax等(e-Tax・クラウド・光ディスク)による提出が義務です。令和9年1月提出分から、この基準が「30枚以上」に引下げられます。令和7年中に提出した枚数が30枚以上となった種類は、令和9年提出分から電子提出が必要です。

判定は法定調書の種類ごとに行います。例えば給与所得の源泉徴収票が30枚以上なら源泉徴収票は電子、報酬の支払調書が数枚ならそれは書面でも可、という選択ができます。また判定は提出義務者ごと(本社・支社があればそれぞれ)に行います。30枚以上の種類は書面提出ができなくなるため、e-Tax・eLTAX・クラウドソフトの準備を前年のうちに整えます。
判定の具体例(令和9年1月提出分・基準30枚)
  • 従業員35人で給与所得の源泉徴収票を35枚提出 → 源泉徴収票は電子提出が必要
  • 同じ会社で報酬の支払調書が5枚 → 報酬の支払調書は30枚未満で書面でも可(種類ごと判定)
  • 従業員25人(源泉徴収票25枚) → 30枚未満で電子義務なし(任意で電子も可)
  • 「前々年」基準なので、令和9年1月提出分は令和7年の提出枚数で判定

100枚以上の現行基準でも考え方は同じで、種類ごと・提出義務者ごとに前々年の枚数で判定します。引下げ後は該当する事業者が大きく増えるため、早めの電子化が安全です。

7. 本店等一括提出制度

支店等が複数ある場合、本店等がe-Tax等により、支店等が提出すべき法定調書を取りまとめて提出できる「本店等一括提出制度」があります。支店等がこれを選択するには、その支店等の所轄税務署へ「支払調書等の本店等一括提出に係る承認申請書」を提出し承認を受ける必要があります。多店舗・多事業所の事業者で、各支店がそれぞれ電子提出義務の判定にかかる場合に、本店集約で実務を一本化できます。

8. 年間スケジュールと準備チェック

  • 11〜12月:年末調整の申告書回収・計算。報酬・不動産使用料・退職金の年間支払実績を集計。マイナンバーの取得状況を確認
  • 12月:最後の給与で年末調整の過不足を精算。源泉徴収簿を確定
  • 1月前半:源泉徴収票・各支払調書を作成。提出範囲を区分ごとに判定
  • 1月20日:納期特例の下半期分を納付(該当者)
  • 1月31日(令和7年分は2月2日):合計表とともに税務署へ、給与支払報告書を市区町村へ提出
準備チェックリスト
  • 支払先(従業員・役員・士業・外注・大家)のマイナンバー/法人番号は揃っているか
  • 報酬・家賃・退職金の年間支払額を支払先別に集計したか
  • 前々年の提出枚数から電子提出義務の有無を種類ごとに確認したか
  • 給与計算ソフトが令和7年改正(基礎控除・特定親族特別控除・新様式)に対応しているか

9. 次回(パート2)の予告

パート2では、最も枚数が多く記載が複雑な給与所得の源泉徴収票を取り上げます。提出範囲5区分の詳細、支払金額から控除額・特定親族特別控除の区分コードまでの全記載欄の書き方、所得金額調整控除・住宅ローン控除・中途就職の通算の記載、年末調整した一般受給者の記載例を、一つずつ解説します。
このシリーズの記事
  • ① 法定調書の作成と提出【総論編】(本記事)
  • ② 給与所得の源泉徴収票の書き方【全記載欄】
  • ③ 報酬・料金の支払調書の書き方
  • ④ 退職所得・不動産関係の支払調書
  • ⑤ 法定調書合計表と提出実務

※本記事は作成時点(令和7年分)の法令・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。提出範囲・方法・電子提出の基準は改正される場合があります。具体的な判断は国税庁の最新情報の確認および税理士へのご相談をおすすめします。

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