年末調整を徹底解説|令和7年改正(基礎控除・特定親族特別控除)・計算例・実務の落とし穴

源泉所得税

毎月の給与から源泉徴収した所得税を、年末に1年分の正しい税額と精算する手続きが年末調整です。源泉徴収事務の1年の総仕上げにあたり、令和7年分は基礎控除・給与所得控除の引き上げ、特定親族特別控除の新設という大きな改正が重なりました。本記事は、制度の概要にとどまらず、控除額の具体的な数値・計算例・実務で頻発する誤りまで踏み込んで解説します。

※本記事は令和7年12月に行う年末調整(令和7年分)を主対象に、令和8年1月以後の源泉徴収事務の変更、および令和8年度税制改正大綱で示された追加改正にも触れています。数値・様式は国税庁の最新資料で必ずご確認ください。
目次
  1. 年末調整とは(源泉徴収の年間精算)
  2. 対象になる人・ならない人
  3. 提出を受ける各種申告書
  4. 令和7年改正①:基礎控除(段階別の額)
  5. 令和7年改正②:給与所得控除・扶養所得要件・配偶者特別控除
  6. 特定親族特別控除の新設(控除額早見表)
  7. 年末調整の計算手順と計算例
  8. 実務で頻発する誤り・落とし穴
  9. 令和8年1月以後の源泉徴収事務
  10. 源泉徴収票・法定調書への反映
  11. まとめ

1. 年末調整とは(源泉徴収の年間精算)

給与の支払者は、毎月の給与・賞与から源泉徴収税額表に基づいて所得税を天引き(源泉徴収)しています。これは概算であり、1年間の正しい所得税額とは通常ズレが生じます。源泉徴収税額表は、扶養親族等の数や社会保険料控除後の給与額だけで機械的に税額を求める仕組みのため、生命保険料控除や配偶者特別控除など各人の事情が毎月の段階では反映されていないからです。

年末調整は、その年最後の給与の支払時に、1年間の給与総額が確定した段階で正しい年税額を計算し、源泉徴収済みの合計額との過不足を精算する手続きです。源泉徴収しすぎていれば還付、不足していれば追加徴収します。これにより、給与所得者の多くは確定申告をせずに納税が完了します。とくに令和7年分は、後述のとおり月次の源泉徴収税額表に基礎控除の加算特例が織り込まれていないため、年末調整で還付が出るケースが例年より多くなります。

2. 対象になる人・ならない人

対象になる人 対象にならない人
扶養控除等申告書を提出し、年末まで勤務している人 給与収入が2,000万円を超える人
年の中途で就職し年末まで勤務している人 扶養控除等申告書を提出していない人(乙欄・丙欄)
年の中途で退職した一定の人(死亡退職・心身障害による退職等) 2か所以上から給与を受け、他で年末調整を受ける人
年末調整の前提は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出です。これを提出している(甲欄適用)人が対象で、未提出の人(乙欄・丙欄)は年末調整を受けられず、自分で確定申告します。中途入社の人は、前職の源泉徴収票を回収して合算しないと正しい年税額が出せません。回収できない場合は年末調整できず、本人が確定申告することになります。
年末調整をしても、医療費控除・雑損控除・寄附金控除(ふるさと納税のワンストップ特例を使わない分)・初年度の住宅ローン控除は対象外で、本人が確定申告する必要があります。これらがある人には、年末調整後に別途確定申告が必要だと案内しておくとトラブルを避けられます。

3. 提出を受ける各種申告書

年末調整では、従業員から次の申告書の提出を受けます。

申告書 主な役割
扶養控除等(異動)申告書 扶養親族等の申告。甲欄適用と年末調整の前提
基・配・特・所 申告書
(基礎・配偶者控除等・特定親族特別・所得金額調整控除)
令和7年分から1枚に統合。基礎控除額・配偶者(特別)控除・特定親族特別控除・所得金額調整控除を申告
保険料控除申告書 生命保険料・地震保険料・社会保険料(申告分)・小規模企業共済等掛金
(該当者)住宅借入金等特別控除申告書 2年目以降の住宅ローン控除
令和7年分から、従来の「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に特定親族特別控除申告書が統合され、1枚で4つの申告ができる様式(通称「基・配・特・所」)になりました。基礎控除欄は、改正で本人の合計所得金額に応じて控除額(95万円〜)を自分で判定して記載する作りに変わっており、記載を誤ると年税額がズレます。従業員への記入案内が従来以上に重要です。

4. 令和7年改正①:基礎控除(段階別の額)

基礎控除は、従来の一律48万円(合計所得2,400万円以下)から、合計所得金額に応じた段階制に変わり、最大95万円まで引き上げられました。令和7年・8年分は時限的な上乗せ(加算特例)があり、令和9年分以後は一部が縮小されます。

本人の合計所得金額
(給与収入のみの目安)
令和7・8年分 令和9年分以後
132万円以下(〜200.3万円) 95万円 95万円
132万円超336万円以下(〜475.1万円) 88万円 58万円
336万円超489万円以下(〜665.5万円) 68万円 58万円
489万円超655万円以下(〜850万円) 63万円 58万円
655万円超2,350万円以下 58万円 58万円
2,350万円超(2,400万円超で逓減・2,500万円超で0) 改正なし 改正なし
95万円〜63万円は、基礎控除58万円に加算特例(37万円・30万円・10万円・5万円)を上乗せした金額です。判定は「年収」ではなく「合計所得金額」で行う点に注意します。たとえば2か所給与や副業がある人は、合算した合計所得で区分が決まるため、年末調整(主たる給与だけ)の基礎控除と、確定申告での正しい基礎控除がズレることがあります(本業給与300万=88万円でも、副業を足すと68万円になる等)。
令和8年度税制改正大綱の追加改正:令和8年分以後は、132万円超489万円以下の区分が104万円に引き上げられる等、基礎控除がさらに拡大する方向が示されています(成立前の情報のため、確定情報は国税庁資料で要確認)。本記事の表は令和7年分(確定済み)を軸にしています。

5. 令和7年改正②:給与所得控除・扶養所得要件・配偶者特別控除

項目 改正内容
給与所得控除 最低保障額 55万円→65万円(給与収入190万円以下に適用)
扶養親族・同一生計配偶者の所得要件 48万円以下→58万円以下(給与収入103万円→123万円)
配偶者特別控除 満額(38万円)の上限が給与収入150万円→160万円
勤労学生控除の所得要件 75万円以下→85万円以下
特定親族特別控除 新設(次章)
基礎控除95万円(低所得帯)+給与所得控除65万円により、給与収入160万円までは所得税がかからないケースが生じます(いわゆる「160万円の壁」、扶養控除等の適用がない単身者の例)。また扶養親族等の所得要件が58万円以下(給与123万円以下)に上がったため、これまで扶養から外れていた家族が新たに扶養対象になることがあり、従業員に扶養控除等申告書の再確認を促す必要があります。なお社会保険の「130万円の壁」は変わっていないため、税と社会保険の壁が別の金額になる点を案内すると親切です。

6. 特定親族特別控除の新設(控除額早見表)

大学生年代の子のアルバイト収入が増えても、親の税負担が急増しないようにするため、特定親族特別控除が新設されました。対象は、生計を一にする19歳以上23歳未満の親族(配偶者・事業専従者を除く)で、合計所得金額58万円超123万円以下(給与収入123万円超188万円以下)の人です。控除額は所得に応じて逓減します。

特定親族の合計所得金額
(給与収入のみの目安)
控除額(所得税)
58万円超85万円以下(〜150万円) 63万円
85万円超90万円以下 61万円
90万円超95万円以下 51万円
95万円超100万円以下 41万円
100万円超105万円以下 31万円
105万円超110万円以下 21万円
110万円超115万円以下 11万円
115万円超120万円以下 6万円
120万円超123万円以下(〜188万円) 3万円
合計所得金額が58万円以下(給与123万円以下)なら、従来どおり特定扶養親族として扶養控除(63万円)の対象です。58万円を超える(給与123万円超)と扶養控除から外れますが、新設の特定親族特別控除で段階的に控除を受けられます。所得58万円超85万円以下(給与150万円以下)までは扶養控除と同額の63万円が維持され、そこから逓減して123万円超で0になります。適用には「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要で、子の所得見積額を表に当てはめて控除額を記載します。共働きで両親双方が同じ子を申告することはできず、いずれか一方のみです。

7. 年末調整の計算手順と計算例

  1. その年の給与・賞与の総額を集計(中途入社は前職分も合算)
  2. 給与総額から給与所得控除を差し引き、給与所得を算出
  3. 各種所得控除(基礎・配偶者・扶養・特定親族特別・保険料・社会保険料等)を差し引き、課税給与所得金額を算出(1,000円未満切捨て)
  4. 課税給与所得金額に所得税の税率を適用し、算出所得税額を計算
  5. (該当者)住宅ローン控除を差し引く(年調所得税額)
  6. 年調所得税額に102.1%を乗じ、復興特別所得税込みの年調年税額を確定(100円未満切捨て)
  7. 毎月の源泉徴収済み合計額との過不足を精算(還付または徴収)
計算例(令和7年分・概算)

前提:給与収入500万円、社会保険料75万円、生命保険料控除10万円、配偶者・扶養なし

  • 給与所得 = 500万円 - 給与所得控除144万円 = 356万円
  • 基礎控除:合計所得356万円は「336万円超489万円以下」なので68万円
  • 所得控除合計 = 社保75万+生保10万+基礎68万 = 153万円
  • 課税給与所得 = 356万 - 153万 = 203万円
  • 算出税額 = 203万×10% - 97,500円 = 105,500円
  • 年調年税額 = 105,500 × 102.1% ≒ 107,700円(100円未満切捨て)
  • 毎月の源泉徴収済み合計が13万円なら、差額約22,300円が還付
令和7年分は、月次の源泉徴収税額表に基礎控除の加算特例(95万円等への上乗せ)が織り込まれていません。そのため、低・中所得帯の人は毎月の源泉徴収が改正前ベースのままで、年末調整で加算分が反映されて還付が出る構造になります。還付額が例年より大きくなる人がいる点を、あらかじめ周知しておくと問い合わせを減らせます。

8. 実務で頻発する誤り・落とし穴

  • 扶養親族の年齢判定はその年12月31日時点。19歳・23歳・70歳などの境目は基準日で判定する。特定扶養親族(19歳以上23歳未満)・特定親族(同年齢帯)の年齢も同様
  • 「控除対象配偶者」と「源泉控除対象配偶者」は別概念。源泉控除対象配偶者(本人の所得900万円以下かつ配偶者の所得95万円以下)は月次の扶養人数にカウントするが、年末調整の配偶者控除・配偶者特別控除の判定は別途行う
  • 所得金額調整控除(給与収入850万円超で、本人が特別障害者・23歳未満の扶養親族や特別障害者の同一生計配偶者等がいる場合)の適用漏れ。「基・配・特・所」申告書の所得金額調整控除欄を確認する
  • 生命保険料控除の新旧区分。平成24年契約以降の新契約と旧契約で限度額・計算式が異なる。証明書の区分を取り違えると控除額がズレる
  • 基礎控除欄の所得区分の誤記。改正で自己申告制になったため、本人の合計所得の見積りを誤ると基礎控除額(95万〜)が変わり年税額がズレる
  • 過不足税額の精算。還付は通常その年最後の給与で支給、不足の徴収は翌年に繰り越せるが、原則は年内精算。納付書では年末調整による超過税額を翌月以後の納付分から差し引いて調整する(納期特例なら1月20日納付分等で充当)
とくに令和7年分は、改正項目が多く申告書様式も変わった初年度のため、従業員の記載ミスと担当者の設定ミスの両方が起きやすい年です。給与計算ソフトが改正後の基礎控除・特定親族特別控除に対応しているか、年末調整の前にテスト計算で確認することをおすすめします。

9. 令和8年1月以後の源泉徴収事務

改正は年末調整だけでなく、令和8年1月以後の毎月の源泉徴収事務にも及びます。

  • 扶養控除等申告書等の記載が「控除対象扶養親族」→「源泉控除対象親族」に変更
  • 「源泉控除対象親族」=控除対象扶養親族+合計所得金額100万円以下の特定親族(給与収入165万円以下)
  • 毎月の源泉徴収では、特定親族のうち合計所得100万円以下の人を「扶養親族等の数」にカウント
  • 令和8年分源泉徴収税額表が改定(同じ給与でも源泉税額が変わる)
特定親族でも合計所得100万円超123万円以下(給与165万円超188万円以下)の人は、毎月の源泉徴収では扶養親族等の数にカウントせず、年末調整で最終精算します。令和8年1月の給与計算からは、令和8年分の源泉徴収税額表と源泉徴収簿の令和8年分様式を使う必要があります。なお、令和8年分の税額表には基礎控除の加算特例(95万円等への上乗せ)は織り込まれず、その分は引き続き年末調整・確定申告で適用されます。

10. 源泉徴収票・法定調書への反映

令和7年12月以後用の給与所得の源泉徴収票には、新たに「特定親族特別控除の額」の記載欄が追加されています。年末調整後の源泉徴収票の作成・交付には最新様式を使います。源泉徴収票は、従業員本人への交付に加え、一定の高額者等は税務署へ、全員分を市区町村へ(給与支払報告書として)提出します。法定調書合計表とあわせて、原則として翌年1月31日までに提出します。報酬・料金の支払調書なども同時期に提出するため、年末調整・源泉徴収票・法定調書・給与支払報告書を一連の流れとして1月末までに完了させる段取りが必要です。

11. まとめ

この記事のポイント
  • 年末調整は源泉徴収の年間精算。扶養控除等申告書の提出(甲欄)が前提
  • 基礎控除は合計所得に応じた段階制(令和7・8年は95/88/68/63/58万円)。年収でなく合計所得で判定
  • 給与所得控除65万円・扶養所得要件58万円・配偶者特別控除160万円に改正
  • 特定親族特別控除新設(19〜22歳・給与123万超188万以下・63万→3万で逓減・専用申告書)
  • 令和7年分は月次税額表に加算特例が未反映で年末調整の還付が大きくなりやすい
  • 年齢判定の基準日・所得金額調整控除・保険料の新旧区分など誤りやすい点に注意
  • 令和8年1月以後は「源泉控除対象親族」・新税額表で毎月の源泉徴収事務が変わる
あわせて読みたい
  • 配偶者控除と配偶者特別控除|令和7年改正後の壁と控除額を解説
  • 150万円・160万円の壁とは|配偶者特別控除と令和7年改正を解説
  • マイカー通勤手当はいくらまで非課税?距離区分と改正を解説

※本記事は作成時点(令和7年・令和8年改正反映)の法令・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。計算例は理解のための概算であり、実際の税額は各人の事情により異なります。控除額・要件・様式は国税庁の最新資料でご確認のうえ、個別の判断は税理士へのご相談をおすすめします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました