会社が役員や従業員に社宅を貸すとき、家賃をいくらに設定するかで給与課税されるかどうかが決まります。相場より安く貸すと、その差額が給与とみなされ、源泉徴収や社会保険にも影響します。基準となるのが賃貸料相当額(通常の賃貸料)で、役員と従業員、住宅の規模で計算が変わります。本記事では、社宅家賃の適正額を、計算方法・給与課税の境界・注意点まで深掘りします。
- 社宅で給与課税される仕組み
- 役員社宅の3区分
- 小規模な住宅の賃貸料相当額(3要素計算)
- 小規模でない自社所有社宅の計算
- 借り上げ社宅の計算(50%との比較)
- 豪華社宅は算式の適用なし
- 従業員社宅の計算と50%ルール
- 計算例(役員・従業員)
- 社宅規程・契約と水道光熱費の扱い
- 社会保険・現物給与への影響
- 誤りやすいポイント
- まとめ
1. 社宅で給与課税される仕組み
会社が役員・従業員に社宅を貸し、賃貸料相当額より低い家賃しか受け取らない場合、その差額(賃貸料相当額 − 実際に受け取る家賃)が、その人への給与(現物給与)として課税されます。無償で貸せば賃貸料相当額の全額が給与課税です。
2. 役員社宅の3区分
役員社宅の賃貸料相当額は、住宅の規模等により3つに区分して計算します(国税庁タックスアンサーNo.2600)。
- 小規模な住宅:法定耐用年数30年以下の建物は床面積132㎡以下、30年超の建物は床面積99㎡以下(区分所有は共用部分を按分して加算して判定)
- 小規模でない住宅:上記を超える一般的な住宅(自社所有か借上げかで計算が分かれる)
- 豪華社宅:床面積240㎡超などで社会通念上一般的でない住宅(算式の適用なし)
3. 小規模な住宅の賃貸料相当額(3要素計算)
小規模な住宅の場合、賃貸料相当額(月額)は次の3つの合計です。自社所有・借上げを問わず、この算式で計算します。
② 12円 ×(建物の総床面積㎡ ÷ 3.3㎡)
③ その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%
賃貸料相当額(月額)= ① + ② + ③
4. 小規模でない自社所有社宅の計算
小規模な住宅に当たらない社宅で、会社が所有している場合の賃貸料相当額(月額)は、次の①と②の合計を12で割った額です。
②(敷地の固定資産税の課税標準額 × 6%)
賃貸料相当額(月額)=(① + ②)÷ 12
5. 借り上げ社宅の計算(50%との比較)
小規模な住宅に当たらない社宅を、会社が他から借り上げて役員に貸す場合は、次のうち多い方が賃貸料相当額になります。
- A:会社が大家に支払う実際の家賃の50%
- B:前章の「小規模でない自社所有社宅の計算」の算式で計算した額
6. 豪華社宅は算式の適用なし
社会通念上一般的でない豪華社宅については、これまでの算式は使えません。
7. 従業員社宅の計算と50%ルール
従業員(使用人)に社宅を貸す場合の賃貸料相当額は、役員の小規模住宅と同じ3要素計算(建物課税標準×0.2%+12円×床面積÷3.3+敷地課税標準×0.22%)で求めます(国税庁タックスアンサーNo.2597)。
従業員から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、賃貸料相当額との差額は給与として課税されません。例えば賃貸料相当額6万円の社宅なら、従業員から3万円以上を受け取っていれば、会社負担分は課税されません。
8. 計算例(役員・従業員)
具体的な数値で、賃貸料相当額と給与課税の有無を確認します。固定資産税の課税標準額は、建物・敷地それぞれの額を使います。
前提:床面積70㎡(小規模に該当)、建物の固定資産税課税標準額1,000万円、敷地の固定資産税課税標準額1,500万円、会社が大家に払う実際家賃15万円
- ① 1,000万円 × 0.2% = 20,000円
- ② 12円 ×(70㎡ ÷ 3.3㎡)= 約255円
- ③ 1,500万円 × 0.22% = 33,000円
- 賃貸料相当額(月額)= 20,000 + 255 + 33,000 = 約53,255円
実際家賃15万円でも、賃貸料相当額は約53,000円。役員からこの額以上を徴収すれば給与課税なし。小規模住宅は借上げでも3要素計算なので、実際家賃の50%(75,000円)ではなくこの額で判定できる点が有利。
前提:床面積150㎡(小規模に非該当)、実際家賃30万円、自社所有算式での計算額が月8万円とする
- A:実際家賃30万円 × 50% = 150,000円
- B:自社所有算式での計算額 = 80,000円
- 賃貸料相当額 = A・Bの多い方 = 150,000円
小規模でない借上げは、多くの場合「実際家賃の50%」が高くなる。役員から月15万円以上を徴収する必要がある。
前提:3要素計算による賃貸料相当額が月6万円
- 従業員から3万円(相当額の50%)以上を徴収 → 給与課税なし
- 従業員から2万円(50%未満)を徴収 → 差額(6万円 − 2万円 = 4万円が給与課税。50%との差ではなく相当額との差額全額)
- 無償貸与 → 6万円全額が給与課税
9. 社宅規程・契約と水道光熱費の扱い
社宅を給与課税されない形で運用するには、形式面の整備も欠かせません。
- 賃貸借契約は会社名義で結ぶ(会社が借主となり、役員・従業員に転貸する形)。役員・従業員個人が契約し会社が家賃補助を出す形だと、補助額がそのまま給与課税される
- 社宅規程を整備し、入居資格・本人負担額・徴収方法(給与天引き)を定める
- 本人負担額は給与から天引きし、徴収の事実を明確にする
- 水道光熱費・管理費:本人が負担すべき水道光熱費を会社が負担すると、その分は給与課税。賃貸料相当額とは別に扱う
10. 社会保険・現物給与への影響
社宅の取扱いは、所得税だけでなく社会保険にも関わります。
11. 誤りやすいポイント
- 役員に50%ルールを適用:50%ルールは従業員のみ。役員は賃貸料相当額以上の徴収が必要
- 小規模判定を誤る:床面積の判定(耐用年数30年以下132㎡・30年超99㎡)を誤ると計算ルートが変わる
- 実際家賃の50%を一律適用:小規模住宅は3要素計算。借上げの50%比較は小規模でない住宅の話
- 豪華社宅の見落とし:240㎡超等は算式不可・時価全額
- 家賃を給与天引きせず会社が全額負担:本人負担がないと賃貸料相当額が全額課税
- 社会保険の現物給与を失念:所得税と基準が異なる
- 個人契約への家賃補助:社宅でなく住宅手当となり、補助額全額が給与課税
12. まとめ
- 社宅は賃貸料相当額より低い家賃しか取らないと差額が給与課税。相当額以上を徴収すれば課税なし
- 役員は小規模住宅・小規模でない住宅(自社所有/借上げ)・豪華社宅で計算が違う
- 小規模住宅・従業員は固定資産税課税標準を使う3要素計算(実勢家賃より大幅に低い)
- 借上げの小規模でない住宅は実際家賃の50%と算式の多い方
- 豪華社宅(240㎡超等)は算式不可で時価全額
- 50%ルールは従業員のみ。役員にはない。社会保険の現物給与は別基準
- 会社が契約主体となる「社宅」であることが前提。個人契約への家賃補助は全額給与課税
- 役員報酬の否認事例|定期同額給与・事前確定届出給与の落とし穴
- 報酬・料金の源泉徴収の判定|対象範囲・税率・士業ごとの違い
- 使用人兼務役員の判定と賞与|なれない人の範囲と使用人分賞与の要件
- 国税庁タックスアンサーNo.2600(役員に社宅などを貸したとき)
- 国税庁タックスアンサーNo.2597(使用人に社宅や寮などを貸したとき)
- 所得税基本通達36-40〜36-45(通常の賃貸料の額)
※本記事は作成時点の法令・通達・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。社宅の賃貸料相当額の計算や給与課税の判定は個別の事実関係により異なります。具体的な判断は税理士へのご相談をおすすめします。


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