事業所税の免税点以下申告|税額ゼロでも申告が必要な場合を解説

地方税

事業所税は、事業所の規模が一定以下なら課税されない「免税点」が設けられています。床面積1,000平米以下、従業者100人以下なら税額はかかりません。しかし、ここに見落とされやすい落とし穴があります。税額がゼロであっても、一定の規模を超えると申告だけは必要になる場合があるのです。これを「免税点以下申告」といいます。知らずに申告しないと、過料が科されることもあります。

この記事では、事業所税の免税点以下申告について、地方税法や東京都主税局などの公表資料をもとに、なぜ税額ゼロでも申告が必要なのか、どのケースで必要になるのか、しないとどうなるのかを、わかりやすく解説します。免税点判定そのものの詳しい計算は、当サイトの関連記事もあわせてご覧ください。

この記事のポイント
  • 事業所税には、税額がゼロでも申告が必要な「免税点以下申告」がある
  • 東京23区では、床面積800平米超〜1,000平米以下などの場合に申告が必要
  • 根拠は地方税法701条の46第3項(法人)・701条の47第3項(個人)
  • 基準(800平米・80人)は自治体ごとに異なるため、所在地の確認が必要
  • 申告しないと、条例に基づき10万円以下の過料が科されることがある

税額ゼロでも申告が必要な「免税点以下申告」

事業所税の申告には、大きく2種類あります。ひとつは、免税点を超えて税額が生じる場合に行う「納付のための申告」。もうひとつが、税額は生じないものの一定規模に達している場合に行う「免税点以下申告」です。後者は、税金を納めるためではなく、自治体が事業所の状況を把握するために求められる申告です。

免税点(床面積1,000平米・従業者100人)以下であれば事業所税はかかりませんが、免税点に近い規模の事業者には、税額ゼロでも申告の義務が課されることがあります。「うちは免税点以下だから何もしなくてよい」と考えていると、この申告を見落とすおそれがあります。

免税点判定は、課税標準の算定期間の末日(法人は事業年度末日、個人は12月31日)の現況により、資産割(床面積)・従業者割(従業者数)それぞれについて行います。免税点以下申告が必要かどうかも、この末日時点の状況で判断します。

申告が必要になるケース(東京23区の例)

東京23区の場合、納付のための申告とは別に、次のいずれかに当てはまるときは申告が必要とされています。

ケース 内容
(ア) 前期に納税義務があった 前事業年度(個人は前年)において事業所税の納税義務を有していた場合
(イ) 床面積800平米超 算定期間末日に23区内全域の事業所床面積の合計が800平米を超え、1,000平米以下の場合
(ウ) 従業者80人超 算定期間末日に23区内全域の従業者数の合計が80人を超え、100人以下の場合

(イ)と(ウ)は、免税点(1,000平米・100人)には達していないものの、その8割の水準(800平米・80人)を超えた事業者に申告を求めるものです。免税点に近い規模になってきた事業者を、自治体が把握しておくための仕組みといえます。(ア)は、前期に課税されていた事業者が、今期たまたま免税点以下になった場合でも、引き続き状況を申告させる趣旨です。

床面積・従業者数は、23区内全域の事業所等を合計して判定します。1か所ずつではなく、区をまたいでいても23区内の事業所をすべて合算した数値で見る点に注意してください。なお、免税点判定にあたっては、非課税となる施設の床面積や、非課税となる従業者(障害者・65歳以上の者など)は除いて計算します。

なぜ免税点以下でも申告が必要なのか

税額が生じないのに申告を求めるのは、自治体が事業所の状況を継続的に把握するためです。事業所税は、床面積や従業者数が年々変動し、ある年は免税点以下でも翌年は超える、ということが起こります。免税点に近い規模の事業者の状況を把握しておくことで、適正な課税につなげる狙いがあります。

この免税点以下申告の根拠は、地方税法に定められています。事業者が法人の場合は地方税法701条の46第3項、個人の場合は701条の47第3項です。これらの規定では、納付すべき事業所税額がない法人・個人に対しても、指定都市等の条例の定めるところにより、申告書を提出させることができるとされています。つまり、具体的にどの規模から申告を求めるかは、各自治体の条例にゆだねられています。

免税点以下申告の根拠条文

法人:地方税法701条の46第3項
個人:地方税法701条の47第3項
(納付すべき税額がない者にも、条例の定めにより申告書を提出させることができる)

基準は自治体ごとに異なる

ここが特に注意したいポイントです。免税点以下申告が必要になる基準は、各自治体の条例で定められるため、自治体ごとに異なります。多くの自治体は東京23区と同じく「床面積800平米・従業者80人」を基準としていますが、すべてが同じではありません。

自治体ごとに異なりうる点
基準が「800平米超」か「800平米以上」かといった、超・以上の違い
800平米・80人とは異なる独自の基準を設けている場合
免税点以下申告の基準を特に設けていない自治体もある

わずかな表現の違いでも、ちょうど境目の規模だと申告の要否が変わります。事業所税は、事業所が所在する指定都市等ごとに課される地方税です。免税点以下申告が必要かどうか、その基準は、必ず事業所が所在する自治体の案内や条例で確認してください。複数の指定都市に事業所がある場合は、それぞれの自治体ごとに判断する必要があります。

申告しないとどうなるか

免税点以下申告が必要なのにしなかった場合、自治体の条例に基づき、10万円以下の過料が科されることがあります。税額がゼロだからといって放置してよいわけではなく、申告義務がある以上、果たさなければペナルティの対象になりうるのです。

「税額が出ないから申告は不要」という思い込みが、最も多い失敗です。免税点以下申告は、納税ではなく報告のための申告ですが、義務であることに変わりはありません。床面積800平米・従業者80人に近づいてきた事業者は、自社が申告対象かどうかを必ず確認しましょう。

新設・廃止のときの申告にも注意

免税点以下申告とは別に、事業所等を新設または廃止したときにも、申告が必要になる場合があります。東京23区では、23区内で事業所等を新設・廃止した場合、その日から一定期間内に申告が必要とされています。また、事業所用家屋を貸し付けている所有者にも、新たに貸付けを行ったときなどに申告義務が生じることがあります。

これらも、税額の有無にかかわらず生じる申告義務です。事業所の開設・移転・閉鎖や、ビルの貸付けを行う際は、事業所税の申告が必要にならないか、所在地の自治体に確認しておくと安心です。

まとめ

事業所税には、税額がゼロでも申告が必要な「免税点以下申告」があります。東京23区では、前期に納税義務があった場合、算定期間末日に23区内の合計床面積が800平米超〜1,000平米以下の場合、または従業者数が80人超〜100人以下の場合に、申告が必要です。根拠は地方税法701条の46第3項・701条の47第3項で、具体的な基準は各自治体の条例にゆだねられているため、所在地ごとの確認が欠かせません。申告しないと10万円以下の過料が科されることもあります。「免税点以下だから何もしなくてよい」という思い込みは禁物です。床面積800平米・従業者80人に近づいたら、自社が申告対象かを確認しましょう。免税点判定の計算や申告と納付については、当サイトの関連記事もあわせてご確認ください。

この記事のまとめ
  • 事業所税には税額ゼロでも必要な「免税点以下申告」がある
  • 23区では前期に納税義務/床面積800平米超〜1,000平米以下/従業者80人超〜100人以下で申告が必要
  • 根拠は地方税法701条の46第3項(法人)・701条の47第3項(個人)
  • 基準は自治体ごとに異なる(超か以上か・独自基準・基準なし)ため要確認
  • 申告しないと10万円以下の過料の可能性。新設・廃止時の申告にも注意

※本記事は作成時点の法令・公表資料(地方税法701条の46・701条の47ほか、東京都主税局「事業所税の手引」等)に基づいています。免税点以下申告の基準や過料の取扱い、新設・廃止時の申告期限は自治体ごとに異なります。具体的な判断は、事業所が所在する自治体の最新の情報の確認、または税理士へのご相談をおすすめします。

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