仕入明細書で仕入税額控除を受ける方法|記載事項6項目と相手方の確認・記載例

消費税

インボイスは通常、売り手が作成して買い手に交付します。しかし建設業の出来高検収や、支払側が明細を作成して支払う取引などでは、買い手が作成した仕入明細書で仕入税額控除を受けることができます。ポイントは、買い手が作成した書類であっても、法定の記載事項を満たし、かつ相手方(売り手)の確認を受けたものであれば、適格請求書に代えて仕入税額控除の要件を満たす請求書等になる点です。逆に、確認を受けていない仕入明細書は要件を満たしません。この記事では、消費税法30条9項と国税庁No.6497・インボイスQ&Aを軸に、仕入明細書の記載事項6項目を記載例つきで示し、相手方の確認を受ける3つの方法、支払通知書等での活用、売り手が免税事業者の場合の注意点までを整理します。

この記事のポイント

  • 仕入明細書は買い手が作成する書類。相手方の確認を受ければ適格請求書に代えて仕入税額控除の要件を満たす。
  • 記載事項は6項目。登録番号は作成者(買い手)ではなく相手方(売り手)のものを記載する。
  • 相手方の確認を受ける方法は3つ。写しの交付後に一定期間内に誤りの連絡がなければ確認とみなす方法もある。
  • 支払通知書・出来高検収書・仕入計算書なども、記載事項と確認要件を満たせば仕入明細書等に該当する。
  • 売り手が適格請求書発行事業者でない(登録番号がない)場合、仕入明細書でも原則として仕入税額控除はできない。

仕入明細書とは(買い手が作る請求書等)

仕入明細書とは、課税仕入れを行う事業者(買い手)が、その仕入れについて自ら作成する明細書・計算書などの書類をいいます。通常のインボイスは売り手が作成しますが、仕入明細書は買い手が作成する点が最大の特徴です。消費税法30条9項3号は、買い手が作成した仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で、法定の記載事項が記載され、かつその内容について課税仕入れの相手方(売り手)の確認を受けたものを、仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等に含めています。

つまり、売り手からインボイスの交付を受けなくても、買い手が作成した仕入明細書について売り手の確認を得れば、その仕入明細書の保存で仕入税額控除ができます。建設業の出来高検収、業種を問わない支払通知書、EDI(電子データ交換)などで広く使われています。仕入税額控除の要件全体は帳簿のみ保存で仕入税額控除できる特例|公共交通機関特例なども参照してください。

記載事項6項目と記載例

仕入明細書に必要な記載事項は、国税庁No.6497で次の6つとされています。適格請求書の記載事項と対応していますが、作成者が買い手である一方、登録番号は相手方(売り手)のものを記載する点に注意が必要です。

番号 記載事項 内容
作成者の氏名又は名称 書類を作成する買い手の名称
相手方の氏名又は名称及び登録番号 売り手の名称と、Tから始まる売り手の登録番号
課税仕入れを行った年月日 取引年月日(一定期間まとめて作成する場合はその期間)
課税仕入れの内容(軽減税率の対象品目である旨) 資産・役務の内容。軽減対象は「※」等で明示
税率ごとに区分した支払対価の額及び適用税率 8%対象・10%対象それぞれの合計額と税率
税率ごとに区分した消費税額等 8%分・10%分それぞれの消費税額

注意点:登録番号を自社のものにしてしまう:仕入明細書の作成者は買い手ですが、②に記載する登録番号は課税仕入れの相手方である売り手のものです。買い手が自社の登録番号を書いてしまうと、要件を満たしません。売り手の登録番号は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで有効性を確認しておくと安全です。

記載事項がどこに入るかを記載例で示します。丸数字は上の表の①〜⑥に対応します。

仕入明細書

(①)作成者 やまもと工業株式会社

(②)株式会社ゼイム商事 御中 / 登録番号 T1234567890123

(③)取引年月日 令和8年7月分

内容(④) 数量 金額
部品加工 一式 50,000円
茶菓子 ※ 一式 5,000円

※は軽減税率(8%)対象品目(④)

税率区分 支払対価(⑤) 消費税額(⑥)
10%対象 50,000円 5,000円
8%対象 5,000円 400円

送付後7日以内にご連絡がない場合、記載内容のとおり確認いただいたものとします。

最後の一文が、後述する「相手方の確認」を得るための文言の例です。作成者(買い手)の名称と、相手方(売り手)の名称・登録番号を取り違えないことがポイントです。

相手方の確認を受ける3つの方法

仕入明細書が仕入税額控除の要件を満たすには、記載内容について課税仕入れの相手方(売り手)の確認を受けることが必須です。基本通達11-6-6とインボイスQ&Aでは、確認を受ける方法として次の3つが示されています。

方法 内容
通信回線等 記載内容を相手方の端末機に出力し、確認の通信を受けた上で自己の端末機から出力する
電子メール等 記載事項の電磁的記録をメール等で相手方に提供し、相手方から確認の通知等を受ける
一定期間の連絡なし 写しの交付又は電磁的記録の提供後、一定期間内に誤りの連絡がなければ確認があったものとする旨を記載しておく

実務で使いやすいのは3つ目の方法です。仕入明細書に「送付後〇日以内に連絡がない場合は記載内容のとおり確認いただいたものとします」といった文言を記載し、相手方に送付します。この場合でも、相手方が実際に確認できる状態にしておくことが前提です。

注意点:確認を得ずに作成しただけでは要件を満たさない:仕入明細書は「相手方の確認を受けたもの」に限って仕入税額控除の請求書等に該当します。買い手が一方的に作成しただけで確認の事実がないものは要件を満たさず、税務調査で仕入税額控除を否認されるおそれがあります。確認の文言を入れる、通知を保存するなど、確認の事実を残しておくことが重要です。

支払通知書・出来高検収書との関係

仕入明細書という名称でなくても、記載事項と確認要件を満たせば仕入税額控除の請求書等に該当します。実務でよく使われる次の書類も、仕入明細書等に含まれます。

書類 使われる場面
支払通知書 支払側が支払額を通知する。業種を問わず広く利用
出来高検収書 建設業で、注文者が出来高を検収して金額を確定する
仕入計算書 農産物等の委託販売・買取りで、買い手が金額を計算する

いずれも、6つの記載事項(相手方の登録番号を含む)を満たし、相手方の確認を受けていれば、その書類の保存で仕入税額控除ができます。名称ではなく記載内容と確認の有無で判定される点は、適格請求書と同じ考え方です。

売り手が免税事業者の場合の取扱い

仕入明細書はあくまで「適格請求書に代わる書類」です。したがって、課税仕入れの相手方(売り手)が適格請求書発行事業者でない場合、登録番号が存在しないため、仕入明細書を作成しても原則として仕入税額控除はできません。

ヒント:免税事業者等からの課税仕入れについては、インボイス制度導入に伴う経過措置により、一定期間は仕入税額相当額の一定割合を控除できる場合があります。この経過措置を適用する場合は、区分記載請求書等の記載事項を満たす仕入明細書等の保存が必要です。相手方が課税事業者か免税事業者かで扱いが変わるため、登録番号の有無を確認します。

適格請求書との違いと保存要件

仕入明細書と適格請求書の違いを整理すると次のとおりです。作成者と確認要件が最大の違いです。

項目 適格請求書 仕入明細書
作成者 売り手 買い手
相手方の確認 不要 必要
登録番号 発行者(売り手) 相手方(売り手)
保存期間 7年間 7年間

仕入明細書等も、課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、帳簿とともに保存します。電子データで作成・提供した場合は、電子帳簿保存法に従って保存します。適格請求書そのものの記載事項はインボイス制度とは?を参照してください。

判断フロー(仕入明細書で控除できるか)

順序 確認内容
1 相手方(売り手)は適格請求書発行事業者か(登録番号があるか)
2 記載事項6項目(相手方の登録番号を含む)を満たしているか
3 相手方の確認を受けているか(3つの方法のいずれか)
4 帳簿とともに7年間保存しているか
5 1〜4を満たせば仕入明細書で仕入税額控除ができる

想定Q&A(仕入明細書)

Q1. 仕入明細書とは何ですか

課税仕入れを行う買い手が、自ら作成する仕入れの明細書です。法定の記載事項を満たし、相手方(売り手)の確認を受けたものは、適格請求書に代えて仕入税額控除の要件を満たす請求書等に該当します。請求書が売り手作成であるのに対し、仕入明細書は買い手作成である点が異なります。

Q2. 記載事項は何項目ですか

6項目です。①作成者(買い手)の名称、②相手方(売り手)の名称及び登録番号、③取引年月日、④取引内容(軽減対象である旨)、⑤税率ごとの支払対価と適用税率、⑥税率ごとの消費税額等です。登録番号は買い手ではなく売り手のものを記載します。

Q3. 相手方の確認はなぜ必要ですか

仕入明細書は買い手が一方的に作成する書類のため、内容が正しいことを売り手に確認させる仕組みが要件とされています。確認を受けていない仕入明細書は請求書等に該当せず、仕入税額控除ができません。確認の事実を残すことが不可欠です。

Q4. 確認はどうやって受ければよいですか

3つの方法があります。①記載内容を相手方の端末に出力し確認の通信を受ける、②電磁的記録をメール等で提供し確認の通知を受ける、③写しを交付し一定期間内に誤りの連絡がなければ確認があったものとする旨を記載する、のいずれかです。実務では3つ目の文言方式がよく使われます。

Q5. 「連絡がなければ確認とみなす」だけで大丈夫ですか

その文言を記載し、相手方が実際に内容を確認できる状態で送付していれば、確認の方法として認められます。ただし、送付の事実や文言を残しておくことが前提です。相手方が受け取っていない、内容を確認できないといった状況では、確認があったとはいえません。

Q6. 支払通知書も仕入明細書になりますか

なります。名称ではなく記載内容と確認の有無で判定されるため、支払通知書・出来高検収書・仕入計算書なども、6項目の記載事項(相手方の登録番号を含む)を満たし相手方の確認を受けていれば、仕入明細書等として仕入税額控除の請求書等に該当します。

Q7. 登録番号は誰のものを書きますか

課税仕入れの相手方である売り手の登録番号です。仕入明細書の作成者は買い手ですが、控除の根拠は売り手が適格請求書発行事業者であることにあるため、売り手の登録番号を記載します。買い手が自社の登録番号を書くのは誤りです。

Q8. 売り手が免税事業者でも控除できますか

原則としてできません。仕入明細書は適格請求書に代わる書類のため、売り手に登録番号がなければ要件を満たしません。ただし、インボイス制度の経過措置により、免税事業者等からの課税仕入れについて一定割合を控除できる期間があり、その場合は区分記載請求書等の記載事項を満たす仕入明細書等の保存が必要です。

Q9. 電子データの仕入明細書でもよいですか

よいです。記載事項を記録した電磁的記録を作成・提供し、相手方の確認を受ければ、その電子データの保存で仕入税額控除の要件を満たします。電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法に定める保存方法に従う必要があります。

Q10. 仕入明細書は何年保存しますか

課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、帳簿とともに保存します。適格請求書と同様の保存期間です。電子で作成・提供した仕入明細書は、電子帳簿保存法に従って保存します。

まとめ

  • 仕入明細書は買い手が作成する書類で、相手方の確認を受ければ適格請求書に代えて仕入税額控除ができる。
  • 記載事項は6項目。登録番号は作成者(買い手)でなく相手方(売り手)のものを記載する。
  • 相手方の確認は3方式。写しの交付後に一定期間連絡がなければ確認とみなす文言方式が実務的。
  • 支払通知書・出来高検収書・仕入計算書も、記載事項と確認要件を満たせば仕入明細書等に該当する。
  • 売り手が免税事業者(登録番号なし)の場合は原則控除不可。帳簿とともに7年間保存する。

出典・参考(2026年8月時点)

※本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令・国税庁公表資料に基づく一般的な解説です。記載例は説明用に簡略化したもので、実際の様式や金額とは異なります。個別の判断にあたっては、必ず国税庁ホームページや税務署、顧問税理士にご確認ください。

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