インボイス制度とは?仕組み・記載事項・経過措置をわかりやすく解説【令和8年度改正対応】

消費税

消費税は、事業者が段階ごとに預かった税額から支払った税額を控除しながら、最終的に消費者の負担する税額を国に納める仕組みです。この控除を正しく行うには、どの取引にどの税率が適用され、いくらの消費税が課されたのかを取引の当事者間で正確に伝える必要があります。インボイス制度は、その伝達手段を法定の様式に統一し、控除の根拠を客観的な書類に結びつけた制度です。

2023年10月に始まったこの制度は、令和8年度税制改正で大きな節目を迎えます。免税事業者からの仕入れに認められてきた8割控除の経過措置が令和8年10月1日に7割へ切り替わり、2割特例が終了して個人事業者限定の3割特例が始まります。本記事では制度の基本から、切替え時期の実務判定までを整理します。

この記事のポイント
・インボイス制度とは、仕入税額控除にインボイスの保存を必要とする制度
・インボイスを発行できるのは、登録を受けたインボイス発行事業者のみ
・免税事業者からの仕入れの経過措置は令和8年度改正で2年延長され、8割から7割・5割・3割へ段階的に引下げ
・8割か7割かは「課税仕入れの時期」で判定する。役務提供は完了日、商品は引渡日が基準
・2割特例の終了後、個人事業者は令和9年分・令和10年分に3割特例を適用できる
・簡易課税への移行届出期限が「翌課税期間の確定申告期限まで」に緩和された
  1. インボイス制度とは
  2. なぜインボイス制度が導入されたのか
  3. 仕入税額控除とその要件
  4. インボイスの6つの記載事項
  5. インボイス発行事業者の登録
  6. 売手・買手への影響
    1. 売手(課税事業者・登録済み)の場合
    2. 売手(免税事業者・未登録)の場合
    3. 買手が対応すべきこと
  7. 免税事業者からの仕入れの経過措置
  8. 令和8年10月1日をまたぐ取引の控除割合
    1. 設例で見る判定
  9. 負担軽減の特例(2割・3割・簡易課税)
    1. 2割特例(令和8年9月30日を含む課税期間まで)
    2. 3割特例(令和8年度改正で新設・個人事業者限定)
    3. 簡易課税制度と届出期限の緩和
  10. 登録すべきかの判断フロー
  11. 実務の落とし穴
    1. 1: 控除割合を支払日で判定してしまう
    2. 2: 賃借期間が10月1日をまたぐ賃料を按分しない
    3. 3: 帳簿への経過措置適用の記載を欠く
    4. 4: 法人が3割特例を使えると誤解する
    5. 5: 1億円の上限を意識せず経過措置を適用する
  12. 想定Q&A
    1. Q1 免税事業者のままだと取引できなくなりますか
    2. Q2 登録番号はどこで確認できますか
    3. Q3 9月に発注し10月に納品された商品はどちらの割合ですか
    4. Q4 短期前払費用なら1年分を8割で控除できますか
    5. Q5 敷金や保証金はどう扱いますか
    6. Q6 2割特例と3割特例は何が違うのですか
    7. Q7 3割特例と簡易課税はどちらが有利ですか
    8. Q8 簡易課税の届出はいつまでに出せばよいですか
    9. Q9 簡易課税を選ぶと経過措置の影響を受けますか
    10. Q10 1万円未満なら本当にインボイスは要らないのですか
  13. まとめ
  14. あわせて読みたい(消費税・インボイスシリーズ)

インボイス制度とは

インボイス制度とは、正式には「適格請求書等保存方式」といい、消費税の仕入税額控除を受けるために、一定の記載事項を満たした請求書等(インボイス)の保存を必要とする制度です。2019年10月に消費税率が8%と10%の複数税率になったことで、どの取引が何%なのかを正確に把握する必要が生じました。インボイス制度はこの複数税率に対応し、消費税を正確に計算・納付するための仕組みとして導入されました。消費税そのものの基本的な仕組みはそもそも消費税とはで解説しています。

インボイス(適格請求書)とは、売手が買手に対して取引に適用される税率や消費税額等を正確に伝えるために交付する書類または電子データをいいます。請求書・納品書・領収書・レシートなど名称を問わず、法定事項が記載されていればインボイスです。1枚の書類ですべての記載事項を満たす必要はなく、請求書と納品書など複数の書類を組み合わせて要件を満たすことも認められています。

なぜインボイス制度が導入されたのか

インボイス制度の導入前は「区分記載請求書等保存方式」が採用されており、免税事業者が発行した請求書でも仕入税額控除を受けることができました。しかし複数税率の導入後は税率ごとに正確な消費税額を把握する必要があり、また免税事業者から仕入れた場合でも控除できていた点が正確な税額計算の観点から問題視され、インボイス制度の導入に至りました。請求書方式の移り変わりは次のとおりです。

時期 方式 免税事業者からの仕入れ
2019年9月まで 請求書等保存方式 控除できた
2019年10月から2023年9月 区分記載請求書等保存方式 控除できた
2023年10月から 適格請求書等保存方式 原則控除不可(経過措置あり)

仕入税額控除とその要件

事業者は、売上で受け取った消費税から仕入れで支払った消費税を差し引いて納付税額を計算します。この差し引く仕組みが仕入税額控除です。事業者にとって預かる消費税は収益ではなく、支払う消費税もコストではありません。仮受金と仮払金のような性格のもので、国に納付することで精算される仕組みです。

納付税額の基本算式
納付税額 = 売上の消費税額 – 仕入れ・経費の消費税額(仕入税額控除)

インボイス制度以降、仕入税額控除を受けるためには原則としてインボイスの保存が必要です。インボイスがない仕入れや経費については、原則として仕入税額控除ができません。

要件 内容
インボイスの保存 取引の相手方から交付を受けたインボイスを保存する
帳簿への記載 課税仕入れに関して一定事項を帳簿に記載する
インボイスなしで控除できる主な例外は次のとおりです。税込1万円未満の課税仕入れ(少額特例。基準期間の課税売上高1億円以下等の事業者が対象、2029年9月30日まで)、簡易課税制度を選択している場合、2割特例・3割特例を適用する場合です。

インボイスの6つの記載事項

インボイスには次の6つの記載事項が必要です。従来の請求書に登録番号と税率ごとの消費税額などを追加したものがインボイスです。

番号 記載事項 補足
1 交付先の氏名または名称 請求書を受け取る相手方
2 売手の氏名または名称と登録番号 Tに続く13桁の数字
3 取引年月日 取引が行われた日付
4 取引内容と軽減税率対象である旨 軽減税率対象品目は記号等で区別
5 税率ごとの合計額と適用税率 8%と10%を分けて記載
6 税率ごとに区分した消費税額等 税率ごとの消費税額を明記
赤字の2・5・6が従来の請求書に追加された主な項目です。特に登録番号と税率ごとの消費税額の記載が新たに必要になりました。なお、消費税額等の端数処理は一のインボイスにつき税率ごとに1回とされています。

インボイス発行事業者の登録

インボイスを発行できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者のみです。登録を受けていない事業者はインボイスを発行できません。

項目 内容
登録できる事業者 課税事業者のみ(免税事業者は登録を受けると課税事業者になる)
登録番号の形式 法人はTに法人番号13桁、個人事業主はTに13桁の数字(マイナンバーとは異なる)
登録後の義務 売上規模にかかわらず消費税の申告・納付義務が生じる
登録の取消 取消届出書を提出することで取り消せる(原則、翌課税期間から効力発生)
免税事業者がインボイス発行事業者として登録すると、自動的に課税事業者となり消費税の納付義務が生じます。登録するかどうかは、取引先との関係や納税負担を慎重に検討する必要があります。取りやめの手続はインボイス登録の取りやめを、納税義務の判定は納税義務判定(個人事業主編)をご覧ください。

売手・買手への影響

売手(課税事業者・登録済み)の場合

インボイスの記載事項を満たした請求書を発行する義務が生じ、買手から求められた場合には交付しなければなりません。発行したインボイスの写しは7年間保存する必要があり、請求書システムや会計ソフトの対応が必要になる場合もあります。

売手(免税事業者・未登録)の場合

インボイスを発行できないため、買手が仕入税額控除を受けられなくなります。買手が同じ11万円を支払っても、登録事業者からの仕入れなら1万円を控除できるのに対し、未登録事業者からの仕入れでは控除できず、その分のコストが買手に残ります。

買手から見た仕入れ 支払額 控除できる消費税 実質コスト
登録事業者から 110,000円 10,000円 100,000円
未登録(7割控除) 110,000円 7,000円 103,000円
未登録(措置終了後) 110,000円 0円 110,000円

買手が対応すべきこと

取引先がインボイス発行事業者かどうかを国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確認し、受領した請求書に記載事項が揃っているかを点検します。インボイスは適切に保存し、電子インボイスは電子帳簿保存法のルールに従います。あわせて会計ソフト・経費精算システムの対応状況も確認してください。

免税事業者からの仕入れの経過措置

インボイス未登録の免税事業者等からの仕入れについては、急激な取引排除を防ぐため、一定割合の仕入税額控除を認める経過措置が設けられています(平成28年改正法附則52・53)。令和8年度税制改正により、この経過措置の期間と控除割合が見直されました。

当初は令和8年9月末で5割控除に下がり令和11年9月末で終了する予定でしたが、改正により最終的な適用期限が2年延長され、引下げのペースも緩和されました。あわせて、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一の免税事業者等からの対象仕入れの合計額が年で1億円(改正前は10億円)を超える部分にはこの経過措置を適用できないこととされました。
期間 割合 備考
令和5年10月1日から令和8年9月30日 8割 当初からの措置
令和8年10月1日から令和10年9月30日 7割 改正で新設(旧は5割へ引下げ予定)
令和10年10月1日から令和12年9月30日 5割 改正で2年後ろ倒し
令和12年10月1日から令和13年9月30日 3割 改正で新設
令和13年10月1日以後 控除不可 経過措置終了

この経過措置は本則課税で申告する場合に適用されます。簡易課税制度を選択している場合や2割特例・3割特例を適用する場合は、個々の仕入れについてインボイスの確認が不要なため影響を受けません。適用を受けるには、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等と、経過措置の適用を受ける旨を記載した帳簿の保存が必要です。控除できなかった部分の会計処理はインボイス経過措置で控除できない消費税の処理で解説しています。

令和8年10月1日をまたぐ取引の控除割合

8割か7割かの判定で最も誤りやすいのが、令和8年10月1日をまたぐ取引です。結論を先に言い切ると、用いる割合は支払日でも請求書の日付でもなく、その課税仕入れを行った日で判定します。国税庁のインボイスQ&A(問113-3、令和8年4月追加)がこの取扱いを明示しています。

取引の種類 課税仕入れの時期(原則)
役務の提供を受けた場合 約した役務の全部が完了した日
商品の仕入れ(資産の譲受け) その引渡しのあった日
短期前払費用の取扱いを受ける場合 その支出した日の属する課税期間
敷金・保証金のうち返還されない部分 返還されないことが確定した日

設例で見る判定

ケース 用いる控除割合
9月21日開始の役務が10月20日に完了 完了日が10月20日のため全額7割
同じ期間で商品の仕入れの場合 9月引渡分は8割、10月引渡分は7割
10月分の賃料を9月に前払い 10月分の役務であるため7割
9月16日から10月15日分を前払い 9月分は8割、10月分は7割で日割計算
5月に1年分を短期前払費用で処理 1年分の全額が8割
敷金の返還不要が9月30日以前に確定 8割(10月1日以後の確定なら7割)

短期前払費用は法人税で支払時の損金算入が認められる場合に、消費税でも支出した日の属する課税期間の課税仕入れとして扱われます(消基通11-3-8)。したがって、令和8年1月に支払った1年分の保守料を短期前払費用として処理していれば、令和9年分にかかる部分も含めて全額8割控除で差し支えないとされています(問113-4)。契約変更等で金額が変動した場合の加算・減算も、当初適用した割合で行います。

敷金・保証金については、返還されないこととなる部分の金額はその返還されないことが確定した時が課税仕入れの時期とされます(消基通9-1-23、11-3-1)。契約締結時に返還されないことが確定している金額は締結時が基準となるため、令和8年9月に契約を締結していれば8割、10月以後に確定した金額は7割となります。

負担軽減の特例(2割・3割・簡易課税)

2割特例(令和8年9月30日を含む課税期間まで)

インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった方を対象に、納付税額を売上税額の2割に軽減できる特例です。事前の届出が不要で申告時に選択できます。法人の場合は令和8年9月30日を含む課税期間までの適用となる点に注意が必要です。詳しくはインボイスの2割特例とはで解説しています。

3割特例(令和8年度改正で新設・個人事業者限定)

2割特例の終了後、個人事業者を対象に、令和9年分・令和10年分の課税期間について納付税額を売上税額の3割とすることができる経過措置が新設されました(平成28年改正法附則51の3)。計算上は、売上税額から売上げに係る対価の返還等の税額を控除した残額に7割を乗じた金額を特別控除税額とし、結果として納付税額が売上税額の3割になります。2割特例と同様に事前の届出や継続適用の制限はなく、申告書に3割特例の適用を受ける旨を付記することで適用できます。

項目 2割特例 3割特例
対象 法人と個人事業者 個人事業者のみ
適用期間 令和8年9月30日を含む課税期間まで 令和9年分と令和10年分
納付税額 売上税額の2割 売上税額の3割
手続 申告書に付記(届出不要) 申告書に付記(届出不要)
令和10年4月1日以後は、3割特例の計算の対象となる課税標準である金額から特定少額資産の譲渡の対価の額が除かれます。令和10年分の申告では計算対象の範囲が期中で変わるため、売上の区分管理が必要になります。

簡易課税制度と届出期限の緩和

基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は簡易課税制度を選択できます。簡易課税では受け取ったインボイスを保存しなくても、みなし仕入率で計算するため仕入税額控除を受けられます。事業区分によっては3割特例より有利になり、たとえば小売業ならみなし仕入率80%が適用されるため、売上税額の2割の納付で済み3割特例より有利です。

事業区分 みなし仕入率 主な該当事業
第1種 90% 卸売業
第2種 80% 小売業、飲食料品の譲渡に係る農林漁業
第3種 70% 建設業、製造業、鉱業、電気業など
第4種 60% 飲食店業、加工賃を対価とする役務提供など
第5種 50% 運輸通信業、金融保険業、サービス業
第6種 40% 不動産業

簡易課税への移行手続も緩和されました。2割特例または3割特例の適用を受けた事業者は、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出すれば、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受けられます。改正前は課税期間の末日までの提出が必要だったため、申告作業をしながら有利判定をして間に合う形に改善されています。届出書の詳細は消費税簡易課税制度選択届出書を、制度全体は消費税の簡易課税制度をご覧ください。

登録すべきかの判断フロー

手順 確認する内容
1 取引先は仕入税額控除を必要とする課税事業者か。一般消費者や免税事業者が主な相手なら登録の必要性は低い
2 取引先から登録を求められているか、未登録だと取引や価格に影響が出そうか
3 登録した場合の納税額を試算し、一般課税・3割特例・簡易課税のどれが有利かを比較する
4 多額の設備投資の予定があるかを確認する。還付が見込まれる場合は一般課税が有利になる
5 取引維持のメリットと納税・事務負担のデメリットを比べて登録の可否を判断する

実務の落とし穴

1: 控除割合を支払日で判定してしまう

用いる割合は課税仕入れの時期で判定します。10月分の賃料を9月に前払いしても7割、9月に引渡しを受けた商品を10月に支払っても8割です。会計システムで支払日基準に一括処理すると、令和8年9月から10月にかけての取引で誤りが生じます。

2: 賃借期間が10月1日をまたぐ賃料を按分しない

9月16日から10月15日分といった賃借期間が切替日をまたぐ場合、9月分は8割、10月分は7割で日割計算が必要です。一の請求書に一の割合を機械的に当てはめると誤りになります。

3: 帳簿への経過措置適用の記載を欠く

経過措置の適用には、区分記載請求書等と同様の記載事項がある請求書等に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載した帳簿の保存が必要です。割合が8割から7割に変わる時期は、帳簿の記載も新しい割合に合わせて更新してください。

4: 法人が3割特例を使えると誤解する

3割特例は個人事業者限定です。法人は2割特例の終了後、一般課税か簡易課税へ移行する必要があります。簡易課税を選ぶ場合は届出期限の管理が不可欠で、2年間の継続適用義務がある点にも留意してください。

5: 1億円の上限を意識せず経過措置を適用する

令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一の免税事業者等からの課税仕入れの合計額が年1億円を超える部分に経過措置を適用できません。従来の10億円から大幅に引き下げられたため、免税事業者との取引が多額な事業者は取引先ごとの年間仕入額を管理する必要があります。

想定Q&A

Q1 免税事業者のままだと取引できなくなりますか

必ずしも取引できなくなるわけではありません。ただし買手が課税事業者の場合、未登録だと買手は仕入税額控除に制約が生じます。経過措置の期間中は一定割合の控除が可能なため当面は取引が続くケースも多いですが、令和8年10月から控除できない部分が2割から3割に拡大するため、価格交渉が持ち上がる可能性は高まります。

Q2 登録番号はどこで確認できますか

国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで、登録番号を入力すると登録済みかどうかを確認できます。受領した請求書の登録番号が有効かどうかをチェックする際に使います。取引先が多い場合はWeb-APIによる一括確認も利用できます。

Q3 9月に発注し10月に納品された商品はどちらの割合ですか

7割です。商品の仕入れは引渡しのあった日が課税仕入れの時期となるため、発注日や支払日ではなく納品日で判定します。逆に9月に納品を受けて10月に支払った場合は8割です。9月末をまたぐ納品が続く取引では、納品書の日付で区分して集計してください。

Q4 短期前払費用なら1年分を8割で控除できますか

できます。短期前払費用の取扱いを受ける課税仕入れは、支出した日の属する課税期間に行ったものとして扱われるためです。令和8年9月30日以前に支出していれば、令和9年にかかる期間分を含めて全額8割控除で差し支えないとされています。ただし継続適用が前提であり、この期だけ短期前払費用に切り替えるような処理は認められません。

Q5 敷金や保証金はどう扱いますか

返還される部分は課税仕入れになりません。返還されないことが確定した部分について、その確定した時が課税仕入れの時期となります。契約締結時に返還されないことが確定している金額は締結時が基準となるため、令和8年9月に契約していれば8割、10月以後に確定した金額は7割です。

Q6 2割特例と3割特例は何が違うのですか

2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間までの措置で、法人と個人事業者の双方が対象でした。3割特例はその終了後に個人事業者限定で令和9年分・令和10年分に適用できる措置です。法人は3割特例の対象外で、一般課税か簡易課税に移行します。いずれも事前届出は不要で申告書への付記により適用します。

Q7 3割特例と簡易課税はどちらが有利ですか

事業区分によります。みなし仕入率が70%を超える第1種(卸売業90%)と第2種(小売業80%)は簡易課税のほうが有利です。第3種(70%)は同水準、第4種以下は3割特例が有利になります。ただし多額の設備投資があり還付が見込まれる場合は、いずれも還付が生じないため一般課税を検討すべきです。

Q8 簡易課税の届出はいつまでに出せばよいですか

2割特例または3割特例の適用を受けた事業者は、その翌課税期間に係る確定申告期限までに届出書を提出すれば、その翌課税期間から簡易課税を適用できます。改正前は課税期間の末日までとされていたため、実務上は大幅な緩和です。ただしこの取扱いは特例適用者に限られ、一般の事業者は原則どおり適用しようとする課税期間の初日の前日までの提出が必要です。

Q9 簡易課税を選ぶと経過措置の影響を受けますか

受けません。簡易課税はみなし仕入率で仕入税額を計算するため、免税事業者からの仕入れかどうかを個別に判定する必要がなく、8割か7割かという問題も生じません。仕入先にインボイス発行事業者が少ない事業者にとっては、事務負担の面でも有利に働きます。

Q10 1万円未満なら本当にインボイスは要らないのですか

少額特例の対象事業者であれば、税込1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存がなくても帳簿のみで控除できます。対象は基準期間の課税売上高1億円以下等の事業者で、適用期限は2029年9月30日までです。1万円未満かどうかは一回の取引の課税仕入れに係る金額で判定し、商品ごとに分割して判定することはできません。

まとめ

この記事のまとめ
・インボイス制度とは、仕入税額控除にインボイスの保存を必要とする制度
・インボイスには登録番号と税率ごとの消費税額など6項目の記載が必要
・免税事業者からの仕入れの経過措置は2年延長され、令和8年10月から7割、以後5割・3割と段階的に引下げ
・8割か7割かは課税仕入れの時期で判定し、役務は完了日、商品は引渡日、短期前払費用は支出日が基準
・令和8年10月以後開始課税期間から、一の免税事業者等からの仕入れは年1億円が経過措置の上限
・2割特例の終了後、個人事業者は令和9年分・令和10年分に3割特例。法人は一般課税か簡易課税へ
・簡易課税への移行届出は翌課税期間の確定申告期限まで提出すればよい

あわせて読みたい(消費税・インボイスシリーズ)

本記事は令和8年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。出典:消費税法30条・37条、消費税法基本通達9-1-23・11-3-1・11-3-8、平成28年改正法附則51の2・51の3・52・53、財務省「令和8年度税制改正の大綱」、国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(問113-3・113-4・114-2・115-2・117-3ほか)、国税庁適格請求書発行事業者公表サイト。個別の適用に当たっては顧問税理士等にご確認ください。

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