居住用賃貸建物とは|仕入税額控除の制限や調整計算を徹底解説

消費税

アパートやマンションなどの居住用賃貸建物を取得した場合、その建物にかかった消費税は、原則として仕入税額控除ができません。これは令和2年度の税制改正により導入された「居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限」(消費税法30条10項)によるものです。不動産投資や賃貸業を営む事業者にとって、消費税の取扱いを誤ると思わぬ税負担につながる重要な論点です。

ただし、仕入税額控除が制限された居住用賃貸建物であっても、その後3年以内に課税賃貸用に転用したり譲渡したりした場合には、一定の消費税額を取り戻す「調整計算」が認められています。本記事では、居住用賃貸建物の定義、仕入税額控除が制限される範囲、合理的区分の方法、取得後の調整計算(転用・譲渡)、法人税の取扱いまで、国税庁の取扱いに基づいて正確に解説します。

この記事のポイント
  • 居住用賃貸建物(税抜1,000万円以上の高額特定資産等)は、取得時に仕入税額控除ができない(消法30条10項)
  • 課税売上割合が95%以上で他の仕入れは全額控除できる事業者でも、居住用賃貸建物は控除できない
  • 店舗・事務所など事業用の建物、旅館・ホテル、税抜1,000万円未満の建物は対象外
  • 店舗併用住宅は使用面積割合等で合理的に区分すれば、事業用部分は控除できる
  • 取得からおおむね3年以内に課税賃貸用へ転用・譲渡すれば、調整計算で一部を取り戻せる(消法35条の2)
  • 取得時に控除できない消費税は、法人税・所得税では控除対象外消費税額等として処理する

  1. 1. 居住用賃貸建物とは
    1. 1-1. 高額特定資産(税抜1,000万円以上)であること
    2. 1-2. 「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」は対象外
  2. 2. なぜ仕入税額控除が制限されたのか
  3. 3. 仕入税額控除が制限される範囲
    1. 3-1. 対象となる建物・対象とならない建物
    2. 3-2. 居住用賃貸建物に該当するかどうかの判定時期
  4. 4. 居住用と事業用が混在する場合の合理的区分
    1. 4-1. 合理的に区分する方法
  5. 5. 調整計算①:課税賃貸用に転用した場合
    1. 5-1. 調整の要件と「第三年度の課税期間」
    2. 5-2. 加算する消費税額の計算(課税賃貸割合)
  6. 6. 調整計算②:譲渡した場合
    1. 6-1. 加算する消費税額の計算(課税譲渡等割合)
    2. 6-2. 具体的な計算例
  7. 7. 法人税・所得税での取扱い
    1. 7-1. 控除対象外消費税額等としての損金算入
    2. 7-2. 調整計算が行われた年度の取扱い(国税庁質疑応答事例)
  8. 8. 判定の手順(判断フロー)
  9. 9. 想定Q&A集
    1. Q1. 税抜900万円のアパートを買いました。仕入税額控除はできますか
    2. Q2. 課税売上割合が99%です。それでも居住用賃貸建物は控除できないのですか
    3. Q3. 1階が店舗、2階以上が住宅の建物です。建物全部が控除できないのですか
    4. Q4. 取得時は用途未定でした。後から事業用と決めれば控除できますか
    5. Q5. 民泊・旅館用の建物は居住用賃貸建物に当たりますか
    6. Q6. 「3年以内に転用すれば控除できる」と聞きました。正確にはいつまでですか
    7. Q7. 転用したのに第三年度末日より前に売却しました。調整できますか
    8. Q8. 取得時に控除できなかった消費税は、法人税ではどう処理しますか
    9. Q9. 調整計算で消費税が戻ったら、過去の決算を修正するのですか
    10. Q10. 簡易課税や2割特例を使っている場合も調整計算はありますか
  10. 10. まとめ

1. 居住用賃貸建物とは

居住用賃貸建物とは、消費税法上、「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物」であって、「高額特定資産」または「調整対象自己建設高額資産」に該当するものをいいます(消費税法30条10項)。少しわかりにくい表現ですが、要するに「住宅として貸す目的の、税抜1,000万円以上の建物」とイメージするとよいでしょう。

1-1. 高額特定資産(税抜1,000万円以上)であること

居住用賃貸建物に該当するためには、まず高額特定資産であることが要件です。高額特定資産とは、一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額(税抜き)が1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産をいいます(消法12条の4第1項、施行令25条の5第1項1号)。したがって、税抜1,000万円未満の建物は、居住用であっても、この仕入税額控除の制限の対象外となります。

1-2. 「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」は対象外

居住用賃貸建物は「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物」と定義されています。裏を返せば、「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」は、居住用賃貸建物に該当せず、仕入税額控除が可能です。国税庁の取扱い(消費税法基本通達11-7-1)では、次のような建物が「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」の例として示されています。

「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」の例(基通11-7-1)
建物の全てが店舗等の事業用施設である建物など、その設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物
旅館またはホテルなど、旅館業法に規定する旅館業に係る施設の貸付けに供することが明らかな建物
棚卸資産として取得した建物であって、所有している間、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかなもの
「住宅の貸付け」の範囲
消費税法上、「住宅の貸付け」は次のように整理されます(消費税法別表第一第十三号)。契約において人の居住の用に供することが明らかにされているもの、または契約で用途が明らかにされていない場合に貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていると認められるものが、住宅の貸付け(非課税)に該当します。事務所・店舗としての貸付けは課税取引であり、住宅の貸付けには含まれません。

2. なぜ仕入税額控除が制限されたのか

居住用賃貸建物の仕入税額控除が制限されるようになった背景には、消費税の「還付スキーム」の問題があります。

本来、住宅の家賃収入は非課税売上げです。非課税売上げに対応する課税仕入れ(建物の取得など)は、原則として仕入税額控除ができません。しかし、改正前は、建物の取得時に金(金地金)の売買などで意図的に課税売上げを作出して課税売上割合を引き上げ、本来控除できないはずの建物の消費税の還付を受けるといった租税回避的なスキーム(いわゆる金地金スキーム)が横行していました。

こうした不適切な還付を防止するため、令和2年度税制改正により、居住用賃貸建物の取得にかかる消費税は、課税売上割合などにかかわらず、取得時には一律で仕入税額控除の対象としないこととされました。この改正は、令和2年10月1日以後に行う居住用賃貸建物の課税仕入れから適用されています(令和2年3月31日までに締結した契約に基づくものは経過措置で対象外)。

課税売上割合が高くても控除できない
この制限の重要な点は、課税売上割合が95%以上で他の課税仕入れは全額控除できる事業者であっても、居住用賃貸建物については仕入税額控除ができないということです。通常の仕入税額控除の制限(課税売上割合95%未満などで生じるもの)とは異なり、居住用賃貸建物は課税売上割合に関係なく、取得時には一律で控除が認められません。課税売上割合による控除の仕組みは個別対応方式と一括比例配分方式で解説しています。

3. 仕入税額控除が制限される範囲

3-1. 対象となる建物・対象とならない建物

仕入税額控除の制限の対象となるかどうかは、次のように整理できます。

仕入税額控除が制限される(対象) 仕入税額控除ができる(対象外)
居住用のアパート・マンション(税抜1,000万円以上) 店舗・事務所など事業用の建物
用途が居住用か事業用か明らかでない賃貸建物(税抜1,000万円以上) 旅館・ホテル(旅館業に係る施設)
(上記は取得時に控除不可) 税抜1,000万円未満の建物

3-2. 居住用賃貸建物に該当するかどうかの判定時期

居住用賃貸建物に該当するかどうかは、原則として課税仕入れを行った日(建物を取得した日)の状況により判定します(消費税法基本通達11-7-2)。

ただし、課税仕入れを行った日には住宅の貸付けの用に供しないことが明らかでなかった建物(高額特定資産等に限る)であっても、その課税仕入れを行った日の属する課税期間の末日において、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかにされたときは、居住用賃貸建物に該当しないものとして取り扱うことができます。つまり、取得時点では用途が未確定でも、期末までに事業用であることが明らかになれば、仕入税額控除が可能になります。

4. 居住用と事業用が混在する場合の合理的区分

1棟の建物の中に、住宅部分と店舗・事務所部分が混在しているケース(いわゆる店舗併用住宅など)があります。このような場合、建物全体が一律に仕入税額控除の制限を受けるわけではありません。

居住用賃貸建物のうち、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分(事業用部分)がある場合に、その建物を構造・設備の状況などにより住宅部分と事業用部分とに合理的に区分しているときは、その事業用部分については仕入税額控除が認められます(消費税法施行令50条の2第1項)。つまり、合理的に区分すれば、店舗・事務所部分の消費税は控除できるということです。

4-1. 合理的に区分する方法

「合理的に区分している」とは、建物の実態に応じた合理的な基準により区分していることをいいます(消費税法基本通達11-7-3)。具体的には、次のような基準が用いられます。

  • 使用面積割合:建物全体の床面積に占める事業用部分の床面積の割合で区分する方法
  • 使用面積に対する建設原価の割合:事業用部分の建設原価の割合で区分する方法
区分しなければ全体が制限の対象に
店舗併用住宅などで合理的な区分をしていない場合は、建物全体が居住用賃貸建物として仕入税額控除の制限を受けることになります。事業用部分の消費税を控除したい場合は、取得時に使用面積割合などで合理的に区分しておくことが重要です。契約書で事業用途を明示しておくことも、後の判定で有効です。

5. 調整計算①:課税賃貸用に転用した場合

取得時に仕入税額控除が制限された居住用賃貸建物でも、その後一定期間内に課税賃貸用(住宅の貸付け以外の貸付け、例えば事務所・店舗としての貸付け)に供した場合には、控除できなかった消費税の一部を取り戻すことができます。これを「居住用賃貸建物の仕入控除税額の調整計算」といいます(消費税法35条の2第1項)。

5-1. 調整の要件と「第三年度の課税期間」

課税賃貸用に転用した場合の調整は、次の要件を満たすときに行われます。

調整計算(転用)の要件
第三年度の課税期間の末日において、その居住用賃貸建物を有していること
調整期間内に、その居住用賃貸建物の全部または一部を課税賃貸用に供したこと

ここで重要な用語を整理します。「調整期間」とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から、第三年度の課税期間の末日までの間をいいます。「第三年度の課税期間」とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の開始の日から3年を経過する日の属する課税期間をいいます(消法35条の2第3項)。簡単に言えば、取得からおおむね3年以内に課税賃貸用に転用すれば調整の対象になる、ということです。

第三年度末日に「保有」していることが必須
転用の調整は、第三年度の課税期間の末日にその建物を有していることが要件です。途中で課税賃貸用に転用しても、第三年度末日より前に除却・譲渡してしまうと、転用による調整(第1項)は受けられません(譲渡の場合は後述の譲渡の調整=第2項で別途検討)。除却の場合は取り戻せなくなる点に注意が必要です。

5-2. 加算する消費税額の計算(課税賃貸割合)

調整により仕入税額控除に加算される消費税額は、次の算式で計算します。

加算する消費税額 = 居住用賃貸建物の課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税賃貸割合
課税賃貸割合 = 調整期間中の課税賃貸用の貸付けの対価の額 ÷ 調整期間中の貸付けの対価の額の合計額

この調整により加算された消費税額は、第三年度の課税期間の仕入れに係る消費税額に加算され、その課税期間の消費税の納付税額が減少(または還付)することになります。たとえば居住用賃貸建物に係る税額が1,000万円、課税賃貸割合が50%なら、500万円が第三年度の仕入控除税額に加算されます。

6. 調整計算②:譲渡した場合

居住用賃貸建物を、調整期間内に他の者に譲渡した場合にも、控除できなかった消費税の一部を取り戻す調整計算が認められています(消費税法35条の2第2項)。建物の譲渡は課税取引であるため、課税売上げに対応する仕入れとして、消費税額の一部が控除可能となるためです。

6-1. 加算する消費税額の計算(課税譲渡等割合)

譲渡した場合に仕入税額控除に加算される消費税額は、次の算式で計算します。

加算する消費税額 = 居住用賃貸建物の課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税譲渡等割合
課税譲渡等割合 =(課税譲渡等調整期間の課税賃貸用の貸付けの対価の額 + 譲渡の対価の額)÷(課税譲渡等調整期間の貸付けの対価の額の合計額 + 譲渡の対価の額)

加算された消費税額は、譲渡をした課税期間の仕入れに係る消費税額に加算されます。

6-2. 具体的な計算例

設例:居住用賃貸建物を取得後に譲渡したケース
・居住用賃貸建物(税抜1億2,000万円)を取得
・取得時の課税仕入れに係る消費税額:1,200万円(取得時は仕入税額控除できず)
・調整期間内に住宅として賃貸(賃料収入の合計):4,500万円
・第三年度の課税期間中に当該建物を譲渡:譲渡対価 9,000万円

【課税譲渡等割合の計算】
課税譲渡等割合 = 9,000万円 ÷(4,500万円 + 9,000万円)= 9,000 ÷ 13,500 = 約66.67%

【加算する消費税額】
1,200万円 × 66.67% = 約800万円

この例では、取得時に控除できなかった消費税1,200万円のうち、約800万円を譲渡した課税期間の仕入税額控除に加算できることになります。賃貸期間中の家賃(非課税売上げ)に対応する部分は引き続き控除できませんが、譲渡(課税売上げ)に対応する部分は取り戻せる、という仕組みです。

7. 法人税・所得税での取扱い

税抜経理方式を採用している場合、取得時に仕入税額控除ができなかった居住用賃貸建物の消費税は、「控除対象外消費税額等」として、法人税法上または所得税法上の処理を行うことになります。

7-1. 控除対象外消費税額等としての損金算入

取得時に控除できなかった居住用賃貸建物の消費税(仮払消費税等)は、資産に係る控除対象外消費税額等に該当します。これは、その資産の取得価額に算入するか、または繰延消費税額等として5年(60か月)で損金算入するなどの方法で処理します(法人税法施行令139条の4)。建物は耐用年数が長いため、繰延消費税額等として5年で償却するほうが早く損金化できるのが通常です。控除対象外消費税額等の具体的な処理方法は、控除対象外消費税の処理|繰延消費税額等の計算や仕訳で詳しく解説しています。

7-2. 調整計算が行われた年度の取扱い(国税庁質疑応答事例)

居住用賃貸建物について、その後に課税賃貸用への転用や譲渡による調整計算が行われた場合、消費税の控除税額が増加します。この場合の法人税の取扱いについて、国税庁は質疑応答事例で次のように示しています。

調整計算が行われた課税期間(事業年度)では、控除対象仕入税額が増加するため、仮受消費税等から仮払消費税等を控除した金額と、実際に納付すべき消費税等の額との間に差額が生じます。この差額は、その調整計算が行われた事業年度の益金の額に算入されます。

また、この調整計算は資産を取得した課税期間の仕入控除税額を修正するものではないため、取得年度に生じた控除対象外消費税額等を遡及して修正する必要はありません

つまり、取得年度に控除対象外消費税額等として処理した内容はそのままで、調整計算が行われた年度において、増加した控除税額に相当する差額を益金(雑収入など)として処理する、ということです。過去の事業年度に遡って修正申告などを行う必要はありません。

消費税と法人税・所得税の橋渡し
居住用賃貸建物は、消費税(仕入税額控除の制限・調整計算)と法人税・所得税(控除対象外消費税額等の処理)の両方が関係する論点です。税抜経理方式を採用している場合の控除対象外消費税額等の処理については、別記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

8. 判定の手順(判断フロー)

建物を取得したとき、仕入税額控除ができるか・調整できるかは次の順で確認します。

手順 確認すること
1 税抜1,000万円以上の建物か。1,000万円未満なら制限の対象外(通常どおり控除可否を判定)
2 店舗・事務所・旅館ホテル等、住宅の貸付けに供しないことが明らかな建物か。明らかなら制限対象外で控除可
3 住宅部分と事業用部分が混在するか。混在するなら使用面積割合等で合理的に区分し、事業用部分は控除
4 居住用部分は取得時に控除不可。税抜経理なら控除対象外消費税額等として処理(取得価額算入か繰延5年償却)
5 取得からおおむね3年以内(第三年度の課税期間末日まで)に課税賃貸用へ転用したか。転用かつ末日保有なら課税賃貸割合で調整
6 調整期間内に譲渡したか。譲渡なら課税譲渡等割合で調整。調整年度は差額を益金算入(遡及修正不要)

9. 想定Q&A集

Q1. 税抜900万円のアパートを買いました。仕入税額控除はできますか

この制限の対象外です。居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限は、税抜1,000万円以上の高額特定資産等に限られます。税抜1,000万円未満の建物は、居住用であってもこの制限を受けず、通常の仕入税額控除のルール(課税売上割合や用途区分)に従って控除の可否を判定します。ただし、住宅家賃は非課税売上げなので、個別対応方式では非課税売上対応分として控除できない点は別途検討が必要です。

Q2. 課税売上割合が99%です。それでも居住用賃貸建物は控除できないのですか

できません。これがこの制度の最大のポイントです。通常の仕入税額控除では課税売上割合が95%以上なら全額控除できますが、居住用賃貸建物はその例外で、課税売上割合がどれだけ高くても取得時には一律で控除できません。金地金スキームのように課税売上割合を意図的に引き上げて還付を受ける手法を封じるための制度だからです。

Q3. 1階が店舗、2階以上が住宅の建物です。建物全部が控除できないのですか

合理的に区分すれば、店舗部分は控除できます。店舗併用住宅のように住宅部分と事業用部分が混在する場合、使用面積割合や建設原価の割合などで合理的に区分していれば、事業用(店舗)部分の消費税は仕入税額控除の対象になります。制限を受けるのは居住用部分だけです。逆に区分しないと建物全体が居住用賃貸建物として制限を受けるので、取得時に区分しておくことが重要です。

Q4. 取得時は用途未定でした。後から事業用と決めれば控除できますか

課税仕入れを行った日の属する課税期間の末日までに、住宅の貸付けに供しないこと(事業用であること)が明らかにされれば、居住用賃貸建物に該当しないものとして取り扱え、控除できます(基通11-7-2)。取得時点で未確定でも、その期の末日までに用途を確定させれば間に合います。逆に期末まで居住用か事業用か不明なままだと、居住用賃貸建物として制限を受けます。

Q5. 民泊・旅館用の建物は居住用賃貸建物に当たりますか

旅館業法に規定する旅館業に係る施設の貸付けに供することが明らかな建物(旅館・ホテル等)は、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物として、居住用賃貸建物に該当せず控除できます(基通11-7-1)。旅館業の許可を受けた民泊(旅館業民泊)も同様に整理されます。一方、住宅として賃貸する形態のものは居住用賃貸建物に当たり得るため、契約・運営形態で判断します。

Q6. 「3年以内に転用すれば控除できる」と聞きました。正確にはいつまでですか

正確には「第三年度の課税期間の末日まで」です。第三年度の課税期間とは、仕入れ等の日の属する課税期間の開始の日から3年を経過する日の属する課税期間をいいます。年1回決算の法人なら、取得した期を含めて3つ目の事業年度の末日まで、というイメージです。「3年以内」は耳なじみのよい表現ですが、起算点が取得課税期間の開始日である点と、第三年度末日に建物を保有している必要がある点に注意してください。

Q7. 転用したのに第三年度末日より前に売却しました。調整できますか

転用による調整(第1項)は第三年度末日に建物を保有していることが要件なので、その前に売却すると転用の調整は受けられません。ただし、調整期間内の譲渡として、譲渡による調整(第2項・課税譲渡等割合)の対象になります。転用と譲渡は別の調整規定なので、売却した場合は譲渡の調整で取り戻せるかを検討します。なお、除却してしまうと譲渡にも当たらず取り戻せなくなるため注意が必要です。

Q8. 取得時に控除できなかった消費税は、法人税ではどう処理しますか

税抜経理なら、控除できない仮払消費税等は資産に係る控除対象外消費税額等として処理します。建物の取得価額に算入するか、繰延消費税額等として5年(60か月)で損金算入します(施行令139条の4)。建物は耐用年数が長い(住宅用RC造で47年など)ため、5年で償却できる繰延消費税額等として処理するほうが早く損金化できるのが通常です。課税売上割合80%以上などの要件を満たせば、その期に全額損金算入できる場合もあります。

Q9. 調整計算で消費税が戻ったら、過去の決算を修正するのですか

遡及修正は不要です。国税庁の質疑応答事例では、調整計算は取得課税期間の仕入控除税額を修正するものではないため、取得年度に生じた控除対象外消費税額等を遡って修正する必要はないとされています。調整計算で控除税額が増えた結果生じる差額は、その調整が行われた事業年度の益金(雑収入など)として処理します。過去の修正申告は行いません。

Q10. 簡易課税や2割特例を使っている場合も調整計算はありますか

居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限・調整計算は、原則課税(一般課税)で仕入税額控除を計算する事業者を前提とした規定です。簡易課税制度や2割特例を適用している課税期間は、実際の課税仕入れに基づく仕入税額控除を行わないため、そもそも取得時の控除制限も第三年度の調整計算も適用されません。原則課税に戻ったときの取扱いなど個別論点があるため、課税方式が変わる場合は慎重に確認してください。

10. まとめ

居住用賃貸建物の消費税の取扱いについて解説しました。重要なポイントを整理します。

居住用賃貸建物の消費税の重要ポイント

1. 仕入税額控除の制限:令和2年10月1日以後取得分から適用。居住用賃貸建物(税抜1,000万円以上の高額特定資産等)は取得時に控除不可。課税売上割合が高くても控除できない

2. 対象外となる建物:店舗・事務所など事業用の建物/旅館・ホテル/税抜1,000万円未満の建物

3. 合理的区分:店舗併用住宅などは使用面積割合等で合理的に区分すれば事業用部分は控除可

4. 取得後の調整計算(おおむね3年以内):課税賃貸用に転用=課税賃貸割合を乗じた額を加算(第三年度末日に保有が要件)/譲渡=課税譲渡等割合を乗じた額を加算

5. 法人税・所得税:取得時の控除できない消費税は控除対象外消費税額等として処理。調整計算が行われた年度の差額は益金算入、過年度の遡及修正は不要

居住用賃貸建物の消費税は、仕入税額控除の制限、合理的区分、調整計算など、判断を誤ると税負担に大きく影響する論点が多くあります。特に不動産の取得・転用・譲渡を検討する際は、事前に顧問税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

※本記事は作成時点の法令・通達・公表資料(消費税法30条10項・35条の2、12条の4、施行令25条の5・50条の2・53条の2、消費税法基本通達11-7-1〜11-7-3、法人税法施行令139条の4、国税庁質疑応答事例「居住用賃貸建物に係る控除対象外消費税額等について」等)に基づく一般的な解説です。個別の取扱いは事実関係により異なる場合があるため、具体的な判断は最新の法令・通達の確認、または税理士へのご相談をおすすめします。

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