インボイス経過措置で控除できない消費税の処理|控除対象外消費税額等との違い

消費税

インボイス制度では、適格請求書発行事業者以外(免税事業者など)からの課税仕入れについて、一定割合(80%・70%・50%・30%と段階的に縮小)を控除できる経過措置があります。この経過措置で控除できない部分の消費税は、課税売上割合95%未満などで生じる通常の控除対象外消費税額等とは取扱いが異なります。両者を混同すると処理を誤るため、本記事で違いを整理します。

※通常の控除対象外消費税額等(発生の仕組み・繰延消費税額等の5年償却など)は、基礎記事「控除対象外消費税額等とは」で解説しています。本記事はインボイス経過措置に特有の取扱いを扱います。

インボイス経過措置(80%・70%・50%・30%控除)の概要

インボイス制度の導入により、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れは、原則として仕入税額控除の対象外になりました。ただし、急激な負担増を避けるため、一定割合を控除できる経過措置が設けられています。

期間 控除できる割合
令和5年10月1日〜令和8年9月30日(3年間) 仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日〜令和10年9月30日(2年間) 仕入税額相当額の70%(令和8年度改正で新設)
令和10年10月1日〜令和12年9月30日(2年間) 仕入税額相当額の50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日(1年間) 仕入税額相当額の30%
令和13年10月1日〜 控除なし(経過措置終了)
令和8年度税制改正で見直されました。改正前は「令和8年10月から50%」の予定でしたが、激変緩和のため適用期限が2年延長され、控除割合が80%→70%→50%→30%→0%と多段階化されました。あわせて、一の免税事業者等からの課税仕入れの合計額(税込)がその年・事業年度で1億円(改正前10億円)を超える場合、超えた部分には経過措置を適用できないこととされました(令和8年10月1日以後開始課税期間から)。

通常の控除対象外消費税額等との違い(最重要)

ここが本記事の核心です。経過措置で控除できない部分は、通常の控除対象外消費税額等のように繰延消費税額等として5年償却するわけではありません

国税庁の取扱い(消費税経理通達等)では、税抜経理を行う事業者は、インボイス制度導入前の仮払消費税等の額のうちその時期に控除できる割合(80%・70%・50%・30%)相当額を仮払消費税等の額とし、残額(控除できない部分)を仕入れ等の価額に算入するのが原則とされています。つまり、控除できない部分は、その課税仕入れの対象(費用または資産)の取得価額・費用に上乗せして処理します。
項目 通常の控除対象外消費税額等 経過措置で控除できない部分
生じる原因 課税売上高5億円超・課税売上割合95%未満 免税事業者等からの仕入れ(経過措置の対象)
原則的な処理 資産に係るものは繰延消費税額等として5年償却等 仕入れ等の価額(費用・取得価額)に算入
控除できない部分を価額に上乗せした結果、それが費用なら、その費用としてその事業年度の損金になります。固定資産なら取得価額に含まれ、減価償却を通じて損金になります。「経過措置の控除できない分=控除対象外消費税額等として5年償却」ではない点に注意してください。

計算例(80%控除期間・税抜経理)

設例

免税事業者から、消耗品を税込11,000円(うち消費税相当1,000円)で仕入れた。80%控除の経過措置を適用する。

  • 仮払消費税等とする額 = 1,000円 × 80% = 800円
  • 控除できない額 = 1,000円 × 20% = 200円
  • この200円は消耗品費(仕入れの価額)に上乗せ
(借)消耗品費 10,200 仮払消費税等 800 / (貸)現金 11,000
このように、控除できない200円は消耗品費に含めて処理し、その事業年度の損金になります。固定資産の取得なら、同様に200円相当を取得価額に含めます。なお、控除できない部分を雑損失等として区分計上する方法も認められています(その場合も損金になります)。

簡易課税・2割特例の事業者の場合

簡易課税制度や2割特例・3割特例を適用している事業者は、実際の課税仕入れに係る消費税額にかかわらず、みなしで仕入税額控除を計算します。そのため、これらの事業者では、税抜経理であっても仮払消費税等の額をそのまま(経過措置の按分をせずに)計上し、納付税額との差額を雑収入・雑損失等で調整するといった簡便な方法も認められています。経過措置による価額への上乗せを個々に行う必要は、原則としてありません。

実務上の注意点

  • 経過措置で控除できない部分は、原則として仕入れ等の価額に算入(繰延消費税ではない)
  • 費用なら損金、固定資産なら取得価額に含めて減価償却(取得価額が増えると少額判定・特別償却の基準額にも影響)
  • 令和8年10月から控除割合が80%→70%に下がり(以後さらに50%・30%へ段階的に縮小)、価額に上乗せされる額が増える
  • 通常の控除対象外消費税額等(課税売上割合95%未満等)とは別の論点。両方が生じる事業者は区別して処理
  • 会計ソフトのインボイス・経過措置の設定(控除割合)を正しく行う

まとめ

この記事のポイント
  • インボイス経過措置は80%(〜令和8年9月)→70%(〜令和10年9月)→50%(〜令和12年9月)→30%(〜令和13年9月)→控除なし(令和8年度改正で7割が新設・期限2年延長)
  • 税抜経理では、控除できる割合だけを仮払消費税等とし、控除できない残額は仕入れ等の価額に算入するのが原則
  • これは通常の控除対象外消費税額等(繰延5年償却)とは別の処理
  • 費用なら損金、固定資産なら取得価額に含めて減価償却(雑損失区分も可)
  • 簡易課税・2割特例の事業者は、按分せず差額調整する簡便法も可
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出典・参考

※本記事は作成時点の法令・通達・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。経過措置の会計処理には複数の方法が認められており、個別事情により異なります。具体的な判断は税理士へのご相談をおすすめします。

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