消費税課税事業者選択不適用届出書とは|提出期限・2年縛り・免税事業者に戻る手続きとインボイスの注意

消費税

還付を受けるためなどの理由で、あえて課税事業者を選んでいた事業者が、役目を終えて免税事業者に戻りたいことがあります。そのときに提出するのが、消費税課税事業者選択不適用届出書です。ただし、いつでも自由に戻れるわけではなく、期限や一定期間の縛りがあり、さらにインボイス登録との関係で見落としやすい注意点があります。

本記事では、この届出書の意味、提出期限、2年や3年の縛り、免税事業者に戻れる要件、そしてインボイス登録の取りやめとの違いを、条文と国税庁の手続案内に沿って整理します。課税事業者を選ぶ側の手続きは「消費税課税事業者選択届出書を参照してください。

この記事のポイント
  • 課税事業者選択届出書を出した人が免税に戻るための届出です。
  • 提出期限は、免税に戻る課税期間の初日の前日までです。
  • 選択後2年間は提出できません。調整対象固定資産を取得すると3年間です。
  • インボイス登録者は、この届出だけでは免税に戻れず登録取消も必要です。
  • 選択届出を出した人は、この届出を出さないと2割特例が使えなくなります。

どんな届出書か

消費税課税事業者選択不適用届出書は、課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になっていた事業者が、その選択をやめて免税事業者に戻るときに提出する届出です。この届出を出すと、翌課税期間から選択の効力がなくなり、基準期間の課税売上高などの要件を満たせば免税事業者に戻れます。

項目 内容
提出する人 課税事業者選択届出書を出していた事業者
提出期限 免税に戻る課税期間の初日の前日まで
効果 翌課税期間から選択の効力がなくなる
提出先 納税地を所轄する税務署長
提出期限は前課税期間の末日までです。たとえば個人事業者が令和9年から免税に戻りたい場合、令和8年12月31日までに提出します。期限を過ぎると、その課税期間は課税事業者のままになるため、余裕をもって準備します。

2年縛りと3年縛り

課税事業者を選択したら、すぐには免税に戻れません。選択の効力が生じた課税期間の初日から一定期間は、この不適用届出書を提出できないためです。還付だけ受けてすぐ戻る、といった使い方を防ぐ仕組みです。

縛り 内容
2年縛り 課税事業者となった初日から2年間は提出できない
3年縛り 調整対象固定資産を取得すると3年間戻れない

調整対象固定資産とは、棚卸資産以外で税抜100万円以上の資産です。課税事業者を選択している間にこれを取得すると、取得した課税期間の初日から3年を経過するまで免税に戻れません。この縛りの詳細は「消費税の3年縛り」を参照してください。

届出を出しても課税事業者になる場合

不適用届出書を出しても、必ず免税になるとは限りません。免税事業者になるには、そもそも納税義務が免除される要件を満たす必要があるためです。基準期間の課税売上高が1000万円を超えていれば課税事業者ですし、特定期間の課税売上高が1000万円を超えた場合も課税事業者になります。届出はあくまで選択を解除するもので、本来の納税義務の判定は別に行われます。納税義務の判定は「納税義務判定を参照してください。

インボイス登録の取りやめとの違い

最も間違えやすいのが、インボイス登録との関係です。この不適用届出書は課税事業者の選択をやめる手続きで、インボイス登録をやめる手続きとは別物です。2つの届出は目的が違います。

届出書 やめる対象
課税事業者選択不適用届出書 課税事業者の選択をやめる
登録取消届出書 インボイスの登録をやめる

言い切ると、インボイス登録を受けている限り課税事業者です。したがって、登録している事業者が免税に戻るには、登録取消届出書の提出が必要で、不適用届出書だけでは免税に戻れません。とくに、インボイス制度の開始日に免税事業者から登録した人は、課税事業者選択届出書を出さずに課税事業者になっているため、免税に戻るには登録取消届出書だけで足り、不適用届出書は関係ありません。登録の取りやめは「インボイス登録の取りやめ」を参照してください。

選択届出を出した人は2割特例に注意
インボイス制度の開始日を含む課税期間に課税事業者選択届出書を提出していた場合、その課税期間の末日までに不適用届出書を出さないと、2割特例が使えなくなることがあります。設備投資の還付目的などで選択届出を出していた人は、2割特例が有利かを再計算して対応を確認してください。2割特例は「インボイスの2割特例」を参照してください。

提出の方法

届出書は国税庁のサイトからダウンロードでき、e-Taxでも提出できます。書面の場合は納税地を所轄する税務署へ持参または送付します。記載では、課税事業者となった日や、選択をやめようとする課税期間を正しく書きます。2年や3年の縛りに触れていないか、提出期限に間に合うかを確認したうえで提出します。

実務でありがちな落とし穴

落とし穴1:期限を課税期間の末日と勘違いする
提出期限は、免税に戻る課税期間の初日の前日、つまり前課税期間の末日までです。戻りたい年の途中や末日に出しても間に合いません。前年のうちに提出する必要があります。
落とし穴2:2年や3年の縛りを忘れる
課税事業者を選択した初日から2年間は不適用届出書を出せません。その間に調整対象固定資産を取得すると3年間に延びます。縛りの期間中に提出しても効力は生じないため、選択した時期と資産取得を確認します。
落とし穴3:登録取消を忘れて課税のまま
インボイス登録をしている事業者は、不適用届出書だけを出しても、登録が残っている限り課税事業者のままです。免税に戻るには登録取消届出書も必要です。どちらの手続きが要るかを取り違えないよう注意します。
落とし穴4:選択届出者が不適用を出さず2割特例を失う
制度開始日を含む課税期間に選択届出書を出していた人は、末日までに不適用届出書を出さないと2割特例が使えなくなることがあります。有利な特例を逃さないよう、選択届出の有無を確認します。

免税に戻るための判断フロー

確認する内容
1 課税事業者選択届出書を出しているか。出していれば不適用届出が必要
2 選択から2年、資産取得なら3年の縛りが明けているか
3 インボイス登録があるか。あれば登録取消届出書も提出する
4 基準期間や特定期間の課税売上高が1000万円以下か
判定 前課税期間の末日までに提出すれば翌課税期間から免税

想定問答

問1 いつまでに提出すれば翌年から免税になりますか

結論として、免税に戻る課税期間の初日の前日までです。理由は、届出の効力が提出した課税期間の翌課税期間から生じるためです。個人事業者が令和9年から免税に戻るなら、令和8年12月31日までに提出します。年をまたぐと間に合わないため、前年のうちに提出する点に注意してください。

問2 課税事業者を選択したらすぐ戻れますか

結論として、すぐには戻れません。理由は、課税事業者となった初日から2年間はこの届出を提出できないためです。還付だけ受けてすぐ免税に戻ることを防ぐ縛りです。さらに、その間に調整対象固定資産を取得すると、戻れない期間が3年に延びます。選択する際は、最低2年は課税事業者になることを前提に判断します。

問3 3年縛りになるのはどんなときですか

結論として、課税事業者を選択している間に調整対象固定資産を取得したときです。理由は、税抜100万円以上の固定資産を取得して仕入税額控除を受けた場合、その取得課税期間の初日から3年を経過するまで免税に戻れないと定められているためです。高額な設備投資をした年は、免税に戻れる時期が後ろにずれる点に注意してください。

問4 届出を出せば必ず免税になりますか

結論として、必ずではありません。理由は、この届出は課税事業者の選択を解除するだけで、本来の納税義務の判定は別に行われるためです。基準期間の課税売上高が1000万円を超えていれば課税事業者ですし、特定期間の課税売上高が1000万円を超えた場合も課税事業者です。届出を出しても、これらに該当すれば免税にはなりません。

問5 インボイス登録をしていても、この届出だけで免税に戻れますか

結論として、戻れません。理由は、インボイス登録を受けている限り課税事業者だからです。登録が残ったままでは、不適用届出書を出しても課税事業者のままです。免税に戻るには、登録取消届出書を別に提出して登録をやめる必要があります。2つの手続きのどちらが必要かを取り違えないようにしてください。

問6 制度開始時にインボイス登録した人はこの届出が必要ですか

結論として、多くの場合は不要で、登録取消届出書だけで足ります。理由は、インボイス制度の開始日に免税事業者から登録した人は、登録申請書だけで課税事業者になっており、課税事業者選択届出書を出していないためです。選択届出を出していないなら、やめる対象がないため不適用届出書は関係なく、免税に戻るには登録取消届出書を提出します。

問7 なぜ選択届出を出した人は2割特例に注意が必要ですか

結論として、不適用届出書を出さないと2割特例が使えなくなることがあるためです。理由は、制度開始日を含む課税期間に課税事業者選択届出書を提出していた場合、その課税期間の末日までに不適用届出書を出すことが2割特例の適用の前提になるからです。設備投資の還付目的などで選択届出を出していた人は、2割特例と比べてどちらが有利かを再計算し、期限内に対応を確認してください。

問8 免税に戻ると簡易課税の届出はどうなりますか

結論として、免税事業者である間は簡易課税の計算は行いません。理由は、簡易課税は課税事業者が仕入控除税額を計算する制度だからです。ただし、簡易課税制度選択届出書の効力自体は残ることがあり、再び課税事業者になったときに効いてくる場合があります。将来また課税事業者になる可能性があるなら、簡易課税の届出の状況も確認しておきます。簡易課税は「簡易課税制度」を参照してください。

問9 提出はどこにしますか。e-Taxでもできますか

結論として、納税地を所轄する税務署に提出し、e-Taxでも提出できます。理由は、消費税の届出書は電子申告に対応しているためです。国税庁のサイトから様式をダウンロードして書面で持参・送付するほか、e-Taxソフトで作成・送信できます。様式は改定されることがあるため、提出時に最新のものを使ってください。

問10 出し忘れて課税事業者のままだったらどうなりますか

結論として、その課税期間は課税事業者として申告・納付が必要です。理由は、提出期限までに届出を出さなければ、選択の効力がその課税期間も続くためです。翌課税期間から免税に戻るには、改めて前課税期間の末日までに提出します。出し忘れに気づいたら、次の期限に間に合うよう早めに手続きし、当期はきちんと申告します。

まとめ
  • 課税事業者選択届出書を出した人が免税に戻るための届出です。
  • 提出期限は免税に戻る課税期間の初日の前日まで、効果は翌課税期間からです。
  • 選択後2年間、調整対象固定資産を取得すると3年間は提出できません。
  • インボイス登録者は登録取消届出書も必要で、この届出だけでは戻れません。
  • 選択届出を出した人は、この届出を出さないと2割特例を失うことがあります。
出典・参考

※本記事は令和8年8月時点の法令および公表資料(消費税法9条4項・5項・9条の2、国税庁D1-5消費税課税事業者選択不適用届出手続、タックスアンサーNo.6629)に基づく一般的な解説です。届出の要否や提出期限、インボイス登録との関係、2割特例の適用可否は個々の状況により異なります。具体的な判断は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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