10万円以上20万円未満のパソコンや備品を買ったとき、その費用をどう落とすかで、税負担も事務負担も変わります。選択肢の一つが一括償却資産です。これは、取得価額を3年間で均等に償却する制度で(法人税法施行令133条の2)、通常の減価償却のように耐用年数ごとの管理をしなくてよい、事務負担に配慮した特例です。
一括償却資産の最大の特徴は、償却資産税(固定資産税)がかからないことです。同じ10万円以上40万円未満の資産でも、中小企業者等の少額減価償却資産の特例(40万円未満を即時損金)を使うと償却資産税の課税対象になりますが、一括償却資産なら対象外です。本記事では、一括償却資産の要件と3年均等償却の計算、償却資産税がかからない根拠、少額減価償却資産の特例や通常の減価償却との使い分けを、条文に沿って整理します。
- 一括償却資産は取得価額10万円以上20万円未満の資産を3年間で均等償却する制度(法令133条の2)
- 月割計算が不要で、期中取得でも初年度から取得価額の3分の1を損金にできる
- 資本金規模を問わず全法人・個人が使える(40万円未満の少額特例は中小企業者等に限定)
- 償却資産税(固定資産税)の申告対象外。ここが少額減価償却資産の特例との決定的な違い
- 3年均等が原則で、途中で除却・売却しても除却損・売却損は計上できず償却を継続する
目次
一括償却資産とは
一括償却資産とは、取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産について、その取得価額の合計額を3年間で均等に損金算入できる制度です(法人税法施行令133条の2、個人は所得税法施行令139条)。少額の資産を一つひとつ耐用年数で管理する事務負担を軽くするために設けられた特例で、この制度趣旨が、後述する「途中で除却しても償却を続ける」という取扱いの根拠にもなっています。
通常の減価償却では、たとえば15万円のパソコンは法定耐用年数4年で少しずつ償却します。一括償却資産として処理すれば、耐用年数に関係なく、15万円を3年間で毎年5万円ずつ損金にできます。耐用年数が4年より長い資産なら、一括償却のほうが早く費用化でき、有利です。
3年均等償却の計算
一括償却資産の損金算入額は、その事業年度に取得した一括償却資産の取得価額の合計額を3で割った金額です。各事業年度に、次の金額を損金算入します。
各年の損金算入限度額 = その年に取得した一括償却資産の取得価額の合計 × 1/3
ここで重要なのが、月割計算が不要な点です。通常の減価償却は、期中に取得すると使用月数で月割りしますが、一括償却資産は取得時期に関係なく、初年度から取得価額の3分の1を丸ごと損金にできます。3月決算の法人が3月に取得しても、その年度に3分の1を計上できるため、期末近くの取得でも償却額が減りません。
計算例:18万円のパソコンを3台(合計54万円)取得した場合
なお、会計処理としては、いったん資産計上して3年で費用に振り替える方法と、取得時に全額を費用計上して申告書で3年にわたり調整する方法のいずれも認められています。実務では資産計上して3年で償却する方法が一般的です。
取得価額の判定(20万円未満)
一括償却資産にできるのは、取得価額が10万円以上20万円未満の資産です。「20万円以下」ではなく「20万円未満」なので、20万円ちょうどの資産は対象外です。この取得価額の判定には、実務で押さえるべき2つのポイントがあります。
| 判定のポイント | 内容 |
|---|---|
| 1単位ごとに判定 | 通常1単位として取引される単位で判定する(法基通7-1-11)。応接セットは1組、機械は1台ごと。パソコン本体とセットのモニターなど、機能上一体のものは合算 |
| 税込・税抜で変わる | 取得価額は採用している経理方式で判定。税込経理なら税込金額、税抜経理なら税抜金額で20万円未満かを見る |
落とし穴:税込経理だと20万円を超えて対象外になることがある
償却資産税がかからない根拠
一括償却資産の実務上の最大のメリットが、償却資産税(固定資産税)がかからないことです。事業用の資産を持っていると、毎年1月1日時点の保有資産に対して償却資産税がかかりますが、一括償却資産はその申告対象から除外されます。
根拠は地方税法にあります。地方税法施行令49条により、20万円未満の資産のうち法人税法施行令133条の2(一括償却資産)の規定により3年間で一括償却したものは、償却資産の課税対象から除外されています。つまり、一括償却資産を選んだ時点で、その資産は償却資産税の申告対象外になります。
| 処理方法 | 償却資産税(固定資産税) |
|---|---|
| 10万円未満を一時に損金算入 | 対象外(かからない) |
| 一括償却資産(20万円未満・3年均等) | 対象外(かからない) |
| 少額減価償却資産の特例(40万円未満・即時損金) | 課税対象(かかる) |
| 通常の減価償却 | 課税対象(かかる) |
この表からわかるとおり、10万円以上20万円未満の資産をどう処理するかで、償却資産税の有無が変わります。一括償却資産を選べば償却資産税はかからず、少額減価償却資産の特例(40万円未満)を選ぶと即時に全額損金にできる代わりに償却資産税がかかります。ここが、次に説明する使い分けの決め手になります。
少額の資産をめぐる4つの選択肢
少額の減価償却資産の処理には、取得価額に応じて複数の選択肢があります。混同しやすいので、4つを一覧で整理します。
| 制度 | 取得価額 | 損金算入 | 償却資産税 |
|---|---|---|---|
| 少額の減価償却資産 | 10万円未満 | 全額を即時損金 | 対象外 |
| 一括償却資産 | 10万円以上20万円未満 | 3年で均等 | 対象外 |
| 中小企業者等の少額減価償却資産の特例 | 40万円未満(令和8年3月末までの取得は30万円未満)。年間合計300万円まで | 全額を即時損金 | 課税対象 |
| 通常の減価償却 | 金額制限なし | 耐用年数で償却 | 課税対象 |
10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産、中小企業者等の少額減価償却資産の特例、通常の減価償却の3つから選べます(中小企業者等の場合)。このうち一括償却資産だけが償却資産税の対象外です。中小企業者等の少額減価償却資産の特例は時限措置ですが、令和8年度の税制改正で見直しと延長がされ、対象となる取得価額の上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限も令和11年(2029年)3月31日まで延長されました。あわせて、常時使用する従業員数が400人を超える法人が対象から除外されています。特例の要件や仕訳は少額減価償却資産の特例で詳しく解説しています。
一括償却と少額特例の使い分け
10万円以上20万円未満の資産で、中小企業者等が迷うのが、一括償却資産と少額減価償却資産の特例(40万円未満)のどちらを選ぶかです。両者は、損金算入のタイミングと償却資産税の有無がトレードオフの関係にあります。
| 着目点 | 一括償却資産 | 少額減価償却資産の特例 |
|---|---|---|
| 損金のタイミング | 3年に分けて損金(遅い) | 取得年に全額損金(早い) |
| 償却資産税 | かからない | かかる |
| 向いているケース | 資産が多く償却資産税の負担を抑えたい、早期の損金より税全体を重視 | 今期の利益が大きく早く損金化したい、資産が少なく免税点内に収まる |
判断の軸を言い切ると、こうです。早く損金にしたいなら少額減価償却資産の特例、償却資産税を抑えたいなら一括償却資産。ただし、償却資産税には課税標準額150万円の免税点があり、保有する償却資産の合計が150万円未満なら、そもそも償却資産税はかかりません。免税点に収まる規模なら、少額減価償却資産の特例で即時損金にするデメリットは小さく、早期損金のメリットが上回ります。逆に、すでに多くの償却資産を持ち免税点を超えている事業者は、一括償却資産を選んで課税標準を増やさないほうが有利になりやすいです。
除却・売却しても償却は続く
一括償却資産で見落とされやすいのが、除却・売却時の取扱いです。一括償却資産として処理した資産は、途中で捨てたり売ったりしても、その時点で未償却分を除却損・売却損として一度に落とすことはできません。3年間の均等償却をそのまま続けます。
落とし穴:2年目に廃棄しても残り1年分は一度に損金にできない
この取扱いは、通常の固定資産(除却時に未償却簿価を除却損にできる)と大きく異なる点です。短期間で使わなくなる可能性が高い資産や、早期に手放す予定のある資産は、一括償却資産にすると、手放した後も償却を続けることになります。資産の使用予定も踏まえて、処理方法を選ぶとよいでしょう。
判断フロー
取得した資産をどの制度で処理するか、取得価額から順に判断するフローです。
| 順 | 確認内容と処理 |
|---|---|
| 1 | 取得価額(経理方式に応じ税込/税抜、付随費用込み)は10万円未満か。未満なら全額を即時損金(償却資産税なし) |
| 2 | 10万円以上20万円未満か。該当すれば、一括償却資産(3年均等・償却資産税なし)を選べる。次の3も検討 |
| 3 | 中小企業者等か。該当すれば40万円未満まで即時損金(年300万円まで)を選べる。ただし償却資産税は課税対象 |
| 4 | 2・3の選択は、償却資産が免税点(150万円)を超えるかで判断。超えるなら一括償却で課税標準を抑え、収まるなら少額減価償却資産の特例で早期損金 |
| 判定 | 40万円以上、または特例の対象外なら通常の減価償却。早期に手放す予定の資産は一括償却の除却損不可に注意 |
想定Q&A
Q1. 一括償却資産と少額減価償却資産の特例はどう違いますか?
対象金額・損金のタイミング・償却資産税が違います。一括償却資産は10万円以上20万円未満を3年で均等償却し、償却資産税はかかりません。少額減価償却資産の特例(40万円未満)は取得年に全額損金にできますが、償却資産税の課税対象になります。また、一括償却資産は全法人・個人が使えますが、少額減価償却資産の特例は中小企業者等に限られ、年間300万円までの上限があり、令和8年度改正で取得価額の上限が40万円未満に引き上げられ期限も令和11年3月31日まで延長されました。早期損金なら少額減価償却資産の特例、償却資産税回避なら一括償却資産です。
Q2. 期の途中で買っても3分の1を損金にできますか?
できます。一括償却資産は月割計算が不要なので、期中のいつ取得しても、初年度から取得価額の3分の1を損金にできます。3月決算の法人が3月に取得しても、その年度に3分の1を計上できます。通常の減価償却は使用月数で月割りするため、期末近くの取得では初年度の償却額が小さくなりますが、一括償却資産にはその制約がありません。期末近くに少額資産をまとめて購入する場合、通常の減価償却より有利になることがあります。
Q3. 20万円ちょうどの資産は一括償却できますか?
できません。一括償却資産の対象は「10万円以上20万円未満」で、20万円ちょうどは含まれません。20万円の資産は、通常の減価償却か、中小企業者等なら40万円未満の少額減価償却資産の特例で処理します。なお、20万円未満かどうかは経理方式で変わります。税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額で判定するので、税込経理では本体価格が18万円台でも消費税込みで20万円以上になることがあります。判定金額を正確に確認しましょう。
Q4. 一括償却資産に本当に償却資産税はかからないのですか?
かかりません。地方税法施行令49条により、20万円未満の資産のうち法人税法施行令133条の2の規定で3年間一括償却したものは、償却資産(固定資産税)の申告対象から除外されています。したがって、一括償却資産を選んだ資産は償却資産税の申告に含めません。一方、同じ金額でも通常の減価償却を選んだり、少額減価償却資産の特例を使ったりすると、償却資産税の課税対象になります。処理方法の選択が、そのまま償却資産税の有無に直結する点が重要です。
Q5. 2年目に壊れて廃棄しました。残りを損金にできますか?
できません。一括償却資産は、途中で除却・廃棄・売却しても、その時点で未償却分を除却損として一度に損金にすることはできず、3年間の均等償却を続けます(法人税基本通達7-1-13)。これは、一括償却資産が個々の資産を管理しないことを前提とした制度だからです。18万円の資産を2年目に廃棄しても、3年目まで毎年6万円ずつ償却を続けます。早期に手放す可能性が高い資産は、この点を踏まえて処理方法を選ぶ必要があります。
Q6. 大企業でも一括償却資産は使えますか?
使えます。一括償却資産は資本金の規模を問わず、すべての法人・個人事業主が利用できます。中小企業者等の少額減価償却資産の特例(40万円未満)は資本金1億円以下等の中小企業者等に限られますが、一括償却資産にはその制限がありません。したがって、少額減価償却資産の特例を使えない大企業でも、10万円以上20万円未満の資産は一括償却資産として3年均等償却でき、かつ償却資産税もかかりません。大企業にとっては、少額資産の償却資産税を抑える有効な選択肢になります。
Q7. 資産ごとに制度を使い分けられますか?
できます。一括償却資産の適用は資産ごとに選択できるので、同じ事業年度に取得した資産でも、ある資産は一括償却資産、別の資産は少額減価償却資産の特例や通常の減価償却、という使い分けが認められます。たとえば、長く使う予定で償却資産税を抑えたい資産は一括償却資産、今期の利益が大きく早く損金にしたい資産は少額減価償却資産の特例、というように、資産の性質や使用予定に応じて選べます。ただし、一度一括償却資産として処理を始めた資産は、途中で他の償却方法に変更できません。
Q8. 償却資産税の免税点とは何ですか?
償却資産税(固定資産税)には、課税標準額150万円という免税点があります。事業者が保有する償却資産の課税標準額の合計が150万円未満なら、償却資産税はかかりません。したがって、そもそも保有資産が少なく免税点に収まっている事業者は、少額減価償却資産の特例で即時損金にしても償却資産税の負担が生じないため、一括償却資産にこだわる必要は小さくなります。逆に、すでに免税点を超えている事業者は、一括償却資産で課税標準を増やさない選択が有利になりやすいです。自社の償却資産の合計額を確認することが判断の出発点です。
Q9. 個人事業主も一括償却資産を使えますか?
使えます。個人事業主の場合は所得税法施行令139条が根拠で、法人と同じく10万円以上20万円未満の資産を3年で均等償却でき、償却資産税もかかりません。青色申告・白色申告を問わず利用できます。個人事業主で青色申告をしているなら、40万円未満の少額減価償却資産の特例も選べるので、法人と同様に、早期損金(少額減価償却資産の特例)か償却資産税回避(一括償却)かを、保有資産の状況に応じて選ぶことになります。白色申告の場合は少額減価償却資産の特例が使えないため、一括償却資産の選択肢がより重要になります。
Q10. 貸付け用の資産も一括償却できますか?
原則としてできません。令和4年度改正により、取得価額20万円未満でも、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産は、一括償却資産の対象から除外されました。これは、少額資産を大量に取得して貸し付け、即時または短期で損金化する節税スキームを封じるための改正です。ただし、その貸付けが主要な事業として行われている場合(リース業など本業としての貸付け)は、引き続き対象になります。本業以外で資産を貸し付ける場合は対象外になる点に注意してください。
まとめ
一括償却資産は、取得価額10万円以上20万円未満の資産を3年間で均等償却する制度で(法人税法施行令133条の2)、月割不要で全法人・個人が使えます。最大のメリットは償却資産税(固定資産税)がかからないことで、これが少額減価償却資産の特例(40万円未満・即時損金だが償却資産税あり)との決定的な違いです。10万円以上20万円未満の資産は、早く損金にしたいなら少額減価償却資産の特例、償却資産税を抑えたいなら一括償却資産、と使い分けます。判断の出発点は、自社の償却資産が免税点(150万円)を超えるかどうかです。ただし、一括償却資産は途中で除却・売却しても除却損を計上できず3年均等を続ける点に注意が必要です。
- 一括償却資産は10万円以上20万円未満の資産を3年で均等償却(法令133条の2)。月割不要・全法人個人が対象
- 償却資産税がかからない。少額減価償却資産の特例(40万円未満)との決定的な違い
- 早期損金なら少額減価償却資産の特例、償却資産税回避なら一括償却資産で使い分ける
- 使い分けの出発点は償却資産が免税点150万円を超えるかどうか
- 途中で除却・売却しても除却損は計上できず3年均等を継続。貸付け用は原則対象外
※本記事は作成時点の法令・公表資料(法人税法施行令133条・133条の2、所得税法施行令138条・139条、法人税基本通達7-1-11・7-1-13、地方税法341条・383条、地方税法施行令49条、租税特別措置法28条の2・67条の5、国税庁タックスアンサーNo.5403・No.5408、令和8年度税制改正の大綱等)に基づく一般的な解説です。要件や取扱いは改正や個別事情により変わる場合があるため、具体的な判断は最新の国税庁公表情報の確認、または顧問税理士へのご相談をおすすめします。

