公的年金等の課税と確定申告不要制度|400万円以下の要件を解説

所得税

公的年金を受け取っている人は、その年金に税金がかかるのか、確定申告が必要なのかが気になるところです。結論からいうと、老齢年金などの公的年金等は雑所得として課税の対象ですが、多くの年金受給者は「確定申告不要制度」により申告が不要になります。一方で、申告した方が税金の還付を受けられるケースもあります。

本記事では、公的年金等の課税の仕組み(雑所得・公的年金等控除・源泉徴収)、確定申告不要制度の2つの要件(400万円以下・他の所得20万円以下)、申告した方が得なケース、そして所得税は不要でも住民税の申告が必要な場合を、国税庁タックスアンサー(No.1600)と条文に沿って整理します。

この記事のポイント
  • 老齢年金などの公的年金等は雑所得として課税される(障害年金・遺族年金は非課税)
  • 公的年金等控除を差し引いた額が雑所得。一定額以上は源泉徴収される
  • 確定申告不要制度は「年金収入400万円以下」かつ「他の所得20万円以下」の両方が要件
  • 申告不要でも、医療費控除などがあれば申告して還付を受けられる
  • 所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合がある

公的年金等は雑所得として課税される

公的年金等は、所得税法上「雑所得」に区分され、課税の対象になります(国税庁No.1600)。ここでいう公的年金等には、次のようなものが含まれます。

公的年金等に含まれるもの
国民年金・厚生年金・共済組合などの規定による老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金など)
過去の勤務により会社などから支払われる年金(企業年金など)
確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金
恩給(普通恩給)など
生命保険契約や生命共済契約に基づく個人年金、互助年金などは「公的年金等」には該当しません。これらは公的年金等以外の雑所得(または一時所得)として、別に計算します。公的年金等かどうかで控除の計算が変わるため、区別が重要です。

非課税になる年金(障害・遺族)

すべての年金が課税されるわけではありません。障害年金と遺族年金は非課税です。これらは、生活保障の性格が強いため、所得税・住民税がかかりません。

年金の種類 課税・非課税
老齢年金(老齢基礎・老齢厚生など) 課税(雑所得)
障害年金(障害基礎・障害厚生など) 非課税
遺族年金(遺族基礎・遺族厚生など) 非課税

つまり、課税されるのは主に老齢年金です。障害年金・遺族年金しか受け取っていない場合は、その年金には所得税がかからず、確定申告不要制度の判定においても、これらの非課税年金は収入に含めません。

公的年金等控除と雑所得の計算

公的年金等の雑所得は、収入金額から公的年金等控除を差し引いて計算します。給与所得における給与所得控除に相当するもので、年金収入からまとめて一定額を控除できます。

公的年金等に係る雑所得 = 公的年金等の収入金額 - 公的年金等控除額

公的年金等控除額は、受給者の年齢(その年の12月31日時点で65歳未満か65歳以上か)、年金の収入金額、そして公的年金等以外の合計所得金額によって変わります。65歳以上の方が控除額は手厚くなります。また、年金以外の所得が多い高所得者は、控除額が段階的に縮小されます。

計算例:65歳以上・年金収入480万円(他の所得は基準以下)

公的年金等控除額 = 480万円 × 0.15 + 68.5万円 = 140.5万円。公的年金等に係る雑所得 = 480万円 - 140.5万円 = 339.5万円。この339.5万円に対して、各種所得控除を差し引いたうえで所得税が計算されます。控除率・加算額は収入区分ごとに定められています。

なお、公的年金等の支払を受けるときは、原則として収入金額から一定の控除額を差し引いた額に5.105%を乗じた金額が源泉徴収されます。つまり、多くの場合、年金からあらかじめ所得税が天引きされています。

確定申告不要制度の2つの要件

年金受給者の申告負担を減らすため、確定申告不要制度が設けられています(所得税法121条3項)。次の2つの要件を両方とも満たすと、所得税・復興特別所得税の確定申告が不要になります。

要件 内容
公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象であること
公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であること

①の年金収入は、複数から受給している場合はその合計額で判定します。②の「雑所得以外の所得」には、個人年金・給与所得・生命保険の満期返戻金などが含まれます。年金収入が400万円以下でも、他の所得が20万円を超えると、確定申告が必要です。

落とし穴:外国払いの年金があると申告不要制度は使えない

外国において支払われる公的年金等は源泉徴収の対象になりません。そのため、こうした源泉徴収されない年金を受給している方は、平成27年分以後、確定申告不要制度の適用を受けられず、確定申告が必要です。年金収入や他の所得の多寡にかかわらず、この点に注意してください。

申告した方が得なケース

確定申告不要制度に該当しても、申告した方が税金の還付を受けられることがあります。年金からは源泉徴収されているため、各種控除を反映させると、納めすぎた所得税が戻る可能性があるからです。次のような場合は、申告を検討する価値があります。

申告すると還付が受けられる可能性がある場合
一定額以上の医療費を支払った(医療費控除)
国民健康保険料・介護保険料などを支払った(社会保険料控除)
生命保険料・地震保険料を支払った(生命保険料控除・地震保険料控除)
扶養する家族がいる(扶養控除・配偶者控除)
住宅ローンでマイホームを取得した(住宅ローン控除)
年金の源泉徴収では、源泉徴収票に記載された一部の控除しか反映されていません。医療費控除や生命保険料控除など、源泉徴収に反映されていない控除がある場合は、確定申告(還付申告)をすると税金が戻ることがあります。還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間できます。

所得税は不要でも住民税申告が必要な場合

確定申告不要制度は所得税・復興特別所得税についての制度です。所得税の確定申告が不要でも、住民税(市区町村民税・都道府県民税)の申告が別途必要になる場合があります。ここは見落としやすいポイントです。

住民税の申告が必要になりうる場合
公的年金等の源泉徴収票に記載された控除以外の控除(生命保険料控除・医療費控除など)を受けたい場合
公的年金等に係る雑所得以外の所得がある場合(20万円以下でも住民税では申告が必要なことがある)
所得税の「20万円以下は申告不要」というルールは住民税にはありません。そのため、年金以外に少額の所得がある場合、所得税は申告不要でも、住民税は申告が必要になることがあります。ただし、所得税の確定申告をすれば、そのデータが市区町村に送られるため、改めて住民税の申告をする必要はありません。詳しくはお住まいの市区町村に確認してください。

申告要否の判定フロー

年金受給者の所得税の確定申告が必要かを、順番に確認するフローです。

確認内容と判断
1 受け取っているのは老齢年金か。障害年金・遺族年金のみなら非課税で申告不要
2 公的年金等の収入合計が400万円以下か。超えるなら確定申告が必要
3 その年金の全部が源泉徴収の対象か。外国払いなど源泉徴収対象外があれば確定申告が必要
4 年金以外の所得が20万円以下か。超えるなら確定申告が必要
判定 2〜4をすべて満たせば所得税の確定申告は不要。ただし還付を受けたい場合は申告可能。住民税の申告要否は別途確認

想定Q&A

Q1. 年金には税金がかかりますか?

老齢年金には、雑所得として所得税・住民税がかかります。ただし、公的年金等控除を差し引いた後に所得があり、そこから各種所得控除を引いてなお課税所得が残る場合に課税されます。一方、障害年金と遺族年金は非課税で、これらには税金がかかりません。受け取っている年金の種類によって扱いが異なります。

Q2. 年金収入が400万円以下なら確定申告は不要ですか?

年金収入400万円以下は要件の一つですが、それだけでは足りません。「公的年金等の全部が源泉徴収の対象」であること、そして「年金以外の所得が20万円以下」であることも満たす必要があります。この3つをすべて満たせば、所得税の確定申告は不要です。年金以外に20万円を超える所得があれば、400万円以下でも申告が必要になります。

Q3. 確定申告不要でも申告した方がよいのはどんな場合ですか?

医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除、住宅ローン控除など、年金の源泉徴収に反映されていない控除がある場合です。これらを申告すると、源泉徴収された所得税が還付される可能性があります。とくに医療費を多く支払った年や、家族を扶養している場合は、申告することで税金が戻ることがあるので、確認する価値があります。

Q4. 個人年金を受け取っていますが確定申告は必要ですか?

個人年金(生命保険契約に基づく年金)は「公的年金等」ではなく、公的年金等以外の雑所得になります。この個人年金の所得(収入-必要経費)が20万円を超えると、公的年金の収入が400万円以下でも確定申告が必要です。個人年金は必要経費(支払った保険料に対応する部分)を差し引いて所得を計算し、その額で20万円の判定をします。

Q5. 公的年金等控除はいくらですか?

受給者の年齢(65歳未満か65歳以上か)、年金の収入金額、公的年金等以外の合計所得金額によって変わります。65歳以上の方が控除額は大きくなります。また、年金以外の所得が1,000万円超・2,000万円超になると、控除額が段階的に縮小されます。具体的な額は収入区分ごとに定められているので、国税庁の速算表で確認してください。

Q6. 働きながら年金をもらっています。申告はどうなりますか?

給与所得は「公的年金等に係る雑所得以外の所得」に含まれます。給与所得(給与収入から給与所得控除を引いた額)が20万円を超えると、年金収入が400万円以下でも確定申告が必要です。給与と年金の両方がある場合は、年末調整だけでは精算しきれないことも多く、確定申告で精算するケースがよくあります。所得金額調整控除の適用も影響する場合があります。

Q7. 所得税の申告が不要なら住民税も何もしなくていいですか?

そうとは限りません。所得税の確定申告不要制度は所得税についての制度で、住民税には別の扱いがあります。年金以外に少額の所得がある場合や、源泉徴収票に反映されていない控除を住民税に反映させたい場合は、住民税の申告が必要になることがあります。ただし、所得税の確定申告をすれば、そのデータが市区町村に共有されるので、別途住民税の申告は不要です。

Q8. 障害年金や遺族年金も収入に含めて判定しますか?

含めません。障害年金・遺族年金は非課税所得なので、確定申告不要制度の「年金収入400万円以下」の判定にも、他の所得の判定にも含めません。判定に使うのは、課税対象となる老齢年金などの公的年金等です。非課税年金は、税金の計算からは完全に外れると理解してください。

Q9. 年金は何もしなくても税金が引かれていますか?

一定額以上の老齢年金は、支払時に原則5.105%で源泉徴収されています。「扶養親族等申告書」を提出していると、各種控除を反映した源泉徴収になります。この申告書を出さないと、控除が反映されず源泉徴収額が多くなることがあります。多く源泉徴収された場合は、確定申告(還付申告)で取り戻せます。毎年送られてくる申告書は提出しておくのがよいでしょう。

Q10. 還付申告はいつまでできますか?

還付を受けるための申告(還付申告)は、その年の翌年1月1日から5年間できます。通常の確定申告期間(2月16日〜3月15日)に限られず、5年前の分まで遡って申告できます。医療費控除などを申告し忘れていた場合でも、5年以内なら還付申告が可能です。過去に控除を申告していない年がある方は、確認してみるとよいでしょう。

まとめ

老齢年金などの公的年金等は雑所得として課税され、公的年金等控除を差し引いた額に所得税がかかります(障害年金・遺族年金は非課税)。ただし、年金収入400万円以下・全部が源泉徴収対象・他の所得20万円以下の要件を満たせば、確定申告不要制度により所得税の申告は不要です。一方、医療費控除などがあれば申告して還付を受けられ、また所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要な場合があります。自分の状況を要件に当てはめて、申告の要否と要否とは別の「した方が得か」を判断しましょう。

この記事のまとめ
  • 老齢年金は雑所得として課税(公的年金等控除を差し引く)。障害年金・遺族年金は非課税
  • 一定額以上の年金は5.105%で源泉徴収される
  • 確定申告不要制度=年金収入400万円以下・全部が源泉徴収対象・他の所得20万円以下の3要件
  • 外国払いの年金など源泉徴収対象外があると申告不要制度は使えない
  • 申告不要でも医療費控除等で還付を受けられる。所得税が不要でも住民税申告が必要な場合あり

※本記事は作成時点の法令・公表資料(所得税法35条・121条3項・203条の3・203条の7、国税庁タックスアンサーNo.1600、政府広報オンライン等)に基づく一般的な解説です。控除額や要件は改正により変わる場合があるため、具体的な判断は最新の国税庁公表情報の確認、またはお住まいの税務署・市区町村へのご相談をおすすめします。

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