更正の請求の実務を徹底解説|期限5年・後発的事由・嘆願との違いとできない場合

法人税

申告した税額が過大だったとき、納めすぎた税金を取り戻す手続きが更正の請求です。一見シンプルですが、実務では「期限はいつまでか」「後から事情が変わった場合はどうか」「有利な処理に変更したいだけでも請求できるのか」で判断に迷います。本記事では、通常の更正の請求と後発的事由による更正の請求の違いを軸に、できる場合とできない場合、嘆願との関係まで深掘りします。

目次
  1. 更正の請求とは
  2. 通常の更正の請求(国税通則法23条1項)
  3. 後発的事由による更正の請求(同23条2項)
  4. 当初申告要件の廃止と、なお残る制限
  5. 「嘆願(更正の申出)」との違い
  6. できる場合・できない場合(事例)
  7. 馴れ合い・納税回避目的は認められない
  8. 手続きの流れ
  9. まとめ

1. 更正の請求とは

更正の請求は、提出した納税申告書の税額が過大だった(または還付金が過少だった、純損失等の金額が過少だった)場合に、税務署長に対して正しい額への更正を求める手続きです。納税者側から「税金を返してほしい」と求める、数少ない救済手段です。

注意したいのは、更正の請求は税額を減らす方向(減額)専用の手続きだという点です。逆に、申告税額が過少だった(納め足りない)場合は、納税者側からは修正申告を行います。更正の請求と修正申告は方向が逆の手続きです。

2. 通常の更正の請求(国税通則法23条1項)

原則的な更正の請求です。申告書の計算が法令の規定に従っていなかった、または計算に誤りがあったことにより税額が過大だった場合に行えます。

期限
  • 原則:法定申告期限から5年以内(平成23年12月改正で、従来の1年から5年に延長)
  • 法人税の純損失等(欠損金)の金額に係るもの:10年以内(平成30年4月1日以後開始事業年度は10年。それ以前は9年)
「計算が法令に従っていなかった・誤りがあった」が要件なので、客観的に正しい税額より多く納めていたことが基本です。単純な計算ミス、適用すべき非課税・控除の適用漏れ、二重計上などが典型です。

3. 後発的事由による更正の請求(同23条2項)

申告時点では正しかったのに、後から事情が変わって税額が過大になった場合の特則です。通常の5年の期限を過ぎていても、一定の後発的事由が生じたときは、例外的に救済されます。

主な後発的事由
  • 申告の基礎となった事実について、判決・和解等により異なることが確定したとき
  • 契約の解除権の行使や、やむを得ない事情による解除・取消しがあったとき
  • 官公署の処分が取り消されたとき
  • その他、国税庁長官の通達等で定める一定の事由
期限

その事由が生じた日の翌日から2か月以内(通常の5年の期限とは別枠。5年経過後でも、事由発生から2か月以内なら請求可)

後発的事由の趣旨は、申告時に予想し得ない事由で後から課税の前提が変わった納税者を救済することにあります。例えば、売上を計上して申告した後、取引が裁判で無効・解除と確定して代金を返還することになった、といったケースです。2か月という期限は短いので、事由が生じたら速やかに動く必要があります。

4. 当初申告要件の廃止と、なお残る制限

かつては、多くの特例について「当初申告で適用していなければ後から更正の請求で適用できない」という当初申告要件がありました。平成23年度改正で、この当初申告要件は多くの項目で廃止され、適用漏れを更正の請求で救済できる範囲が広がりました。

ただし、すべてではありません。当初申告で適用を受けることが要件とされている特例(いわゆる当初申告要件が残っているもの)や、申告書への記載・明細添付が適用の絶対条件とされているものは、後から更正の請求で適用することはできません。税額控除などの政策的な特例には、この制限が残っているものがあります。更正の請求で取り戻せるかは、その規定が当初申告要件を残しているかを個別に確認する必要があります。

5. 「嘆願(更正の申出)」との違い

かつて、更正の請求の期限(改正前は1年)を過ぎてしまった場合に、税務署長の職権による減額更正を促す嘆願という実務上の慣行がありました。これは法律上の権利ではなく、あくまでお願いベースの手続きでした。

  • 更正の請求:法律上の権利。認められなければ不服申立て(再調査の請求・審査請求)ができる
  • 嘆願(更正の申出):法律上の権利ではなく、職権発動を促すお願い。応じてもらえなくても不服申立てはできない
更正の請求期間が5年に延長されたことで、嘆願に頼る場面は大きく減りました。現在は、原則として5年以内なら正規の更正の請求を行うのが基本です。なお、増額更正ができる期間内に減額を求める「更正の申出書」の制度もありますが、これも申出のとおり更正されなくても不服申立てはできない点は同じです。

6. できる場合・できない場合(事例)

ケース 可否
計算誤り・二重計上で税額を過大に申告していた 可(5年内)
適用できる非課税・控除(当初申告要件のないもの)の適用漏れ 可(5年内)
申告後、取引が判決で無効・解除と確定し代金を返還 可(後発的事由・2か月内)
当初申告要件が残る税額控除を、当初申告で適用していなかった 不可
「もっと有利な処理(選択)に変えたい」という事後的な選択替え 原則不可
納税回避目的で当事者が合意解除・馴れ合い判決を得た 不可
特に実務で誤解が多いのが、「客観的に正しい税額」より多く納めていたのではなく、適法な範囲で選んだ処理を後から有利な方へ変更したいだけのケースです。これは「計算が法令に従っていなかった・誤りがあった」に当たらないため、原則として更正の請求では認められません。例えば、ある事項を保守的に損金不算入として申告した後に「やはり損金算入できたはずだ」と考え直しても、当初の申告が法令に反していたとはいえない場合、更正の請求で取り戻すのは困難です。申告時の処理の選択は、後から自由に取り戻せるとは限らないという点は、申告方針を決める段階で強く意識すべきところです。

7. 馴れ合い・納税回避目的は認められない

後発的事由の「判決」や「契約の解除」は、納税者の救済のための制度であり、税負担を減らすこと自体を目的とした馴れ合いの判決や合意解除は、後発的事由に当たらないとされています。

裁判例でも、当事者が専ら納税を免れる目的で馴れ合いによって得た判決は、確定判決としての効力にかかわらず、その実質において客観的・合理的根拠を欠くものであるときは、後発的事由の「判決」には当たらないとされています。「とりあえず合意解除して更正の請求」「税金を減らすために訴訟を起こして判決をもらう」といった作為的な手法は通用しない、ということです。

8. 手続きの流れ

  1. 更正の請求書を作成(請求の理由、過大となった事情、正しい税額の計算等を記載)
  2. 事実を証明する書類を添付(更正の請求では、請求の基礎となる事実を証明する書類の添付が求められます)
  3. 税務署長へ提出。税務署側で内容を調査
  4. 認められれば減額更正・還付(還付加算金が付く場合あり)。認められない場合は更正をすべき理由がない旨の通知
  5. 通知に不服があれば再調査の請求・審査請求(不服申立て)が可能
更正の請求は、修正申告と違って提出すれば自動的に税額が変わるものではなく、税務署の審査を経て更正が行われて初めて減額されます。請求の理由と裏づけ資料をしっかり整えることが、認められるかどうかを左右します。

9. まとめ

この記事のポイント
  • 更正の請求は払い過ぎた税金を取り戻す手続き(減額専用。納め足りない場合は修正申告)
  • 通常は法定申告期限から5年以内(法人税の純損失等は10年)
  • 5年経過後でも、判決・契約解除等の後発的事由があれば、その事由から2か月以内に請求可
  • 当初申告要件は多くが廃止されたが、一部の特例には制限が残る
  • 有利な処理への事後的な選択替えは原則できない。馴れ合い判決・納税回避目的の解除も不可
  • 嘆願(更正の申出)は権利ではなく、不服申立てもできない
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出典・参考

※本記事は作成時点の法令・通達・国税庁の取扱いに基づく一般的な解説です。更正の請求が認められるかは個別の事実関係により異なります。具体的な判断は税理士へのご相談をおすすめします。

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